まずは思い出話から。

小学生の頃からよくひとりで映画を観に行っていた私。雑誌「ロードショー」「スクリーン」を参考にしつつ(いま思うとスゴイ小学生だったかも)、観たい映画が公開されると、親にお金をもらってはその映画(洋画)を観に行っていました。だいたい月…4〜5回くらい。当時は2本立てが主流だったので、2本観て帰ることがほとんどでした。

当然、そんな小学生は映画館でも目立ちます。フツーならば親と一緒に観に来る年頃の女の子が、映画館(しかも洋画上映館)の前や中を、ひとりでうろちょろしているのですから。おかげで迷子に間違われたり、「『東映まんがまつり』は隣の映画館よ〜?」と云われたり、「『黄昏』、小学生1枚」と云っても「??」な顔をされたり。そういうことがしょっちゅうありました。

そんな中、私はちょっとしたきっかけで某映画館の経営者であるMさんご夫婦と知り合いになり、いつの間にやらタダで映画を観るようになりました。たぶん…洋画をひとりで(たまに友達と一緒だったけど)観に来る小学生の女の子が珍しかったのと、私を孫のように思って下さったからじゃないかな〜?と思うのですが…本当のところはわかりません。とりあえずその状態は、高校まで続きました。

現在、その映画館はありません。私自身も、生まれ育った街から離れた場所に住んでいます。それでも不思議なことに、あの映画館のことは今でも鮮明に覚えています(どの席がベストだったとか、三番目のトイレが流れなかったとか)。そしてあの頃観た映画をDVDで見直すたびに…当時のことが走馬灯のように思い出されるのでした――。


というわけで、「すちゃらか映画レビュー!」どす!
今回のお題は「ピーター・ウィアー」。
私が好きで好きでたまらない、P・ウィアー監督。

↓どれくらい好きかという話(4/15の日記)
http://diary.note.ne.jp/25683/20030415

あの思い出の映画館で観た、初めてのウィアー作品を取り上げてみました。
でも…この映画を知ってる人は少ないんだろうニャ〜…。


「誓い」Gallipoli(1981・豪)
IMDb→http://us.imdb.com/Title?0082432
監督:ピーター・ウィアー
脚本:デビッド・ウィリアムソン
出演:メル・ギブソン、マーク・リー、ビル・カー、ロバート・グラブ、他

ストーリー:
第一次大戦時のオーストラリア。将来を期待されている短距離ランナー、アーチー(M・リー)は、ある大会でフランク(M・ギブソン)というランナーに出会う。ふたりは親友となり、オーストラリア軍に入隊。訓練を経て、最前線であるトルコのガリポリに派兵される。そして最悪な戦況の中、ふたりの運命を大きく分ける出撃命令が下されようとしていた――。


1915年4月25日から始まり、多くの若きオーストラリア兵の命が犠牲となった「ガリポリの戦い」。
友人でオーストラリア人のMちゃんいわく「オーストラリア人にとって、第一次世界大戦におけるガリポリ戦というのは、とても特別なものなのよ」。

この作品は、オーストラリアとガリポリを舞台に、青年ふたりの友情とその運命が描かれている。戦争もの…というよりは、青春ものといったほうがいいかもしれない。

戦争はとても悲惨なもの。でも戦場を知らないまま若者は「国のため」、あるいは「自分と将来のため」、志願兵となっていく。性格は違うけれど、親友となったそんな志願兵ふたりの共通点は…誰よりも速く走れる脚を持つ、スプリンターであるということ。本来は競技場で一緒に競い合うはずなのに、彼らは戦火のガリポリをそれぞれ別方向に走り抜ける。そして……。………泣く。

フランクは――「あと数分速く走ることができていれば…」「もし自分とアーチーが逆だったら…」と悔やみ続けるんだろう。彼が悪いわけではないのに……。

フランクを演じたのはM・ギブソン(当時24歳くらい)で、私はこの映画で初めて彼を観た。野性味のある顔立ちなのに、演技は自然で繊細。気負いもなく、なんて純粋なんだと思った。実際、ウィアーも当時のギブソンについて「彼はまだ若くて、俳優としての野望などは感じられなかったね」と語っていたけれど、戦場を必死に走る彼の姿は…目に焼きついてはなれない。

ピーター・ウィアーの作品は、一見、雄弁な映画には見えない。静かなクライマックスでは、セリフは極端に少なくなり、演技はシンプルになり…ただ音楽だけが静かに流れていく。観終わっても「なんでここで終わるの?」と思う人も多いだろう。たとえばこの「誓い」の――「LIFE」誌に掲載されたロバート・キャパによる戦場写真のような――あのラストシーン。フランクの叫び。地味で印象がないと云う人もいるけれど…私はそれだけですべてが見え、胸がいっぱいになる。


あ〜…。……また、せつなくなってしまった…。


♯こんな人にオススメ
「『戦争映画は圧倒的なリアリティがすべて』だと思っている人」

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