「マスター・アンド・コマンダー」
2004年3月8日
←これは20巻ある原作本で、映画のベースになったと云われている第10巻目(の上巻)。現在3巻まで翻訳されているのですが、映画化になったせいで10巻目が先に翻訳・刊行されてしまいました。ちなみに私は読んでません……ってか、えっちらおっちら原書を読んでるのに、いくら日本語訳が出たって10巻を先に読めるか〜〜〜〜!!
…というわけで、映画の感想をば。
「マスター・アンド・コマンダー」Master and Commander: The Far Side of the World(2003・米)
IMDb→http://www.imdb.com/title/tt0311113/
原作:パトリック・オブライアン
監督:ピーター・ウィアー
脚本:ピーター・ウィアー、ジョン・コリー
出演:ラッセル・クロウ、ポール・ベタニー、ジェイムズ・ダーシー、マックス・パーキス、他
ストーリー:
1805年、英国海軍サプライズ号艦長ジャック・オーブリー(R・クロウ)は、命を受けフランスの私掠船アケロン号を追っていた。そんな彼らの前に、不意打ちのように何度も現れるアケロン号。攻撃力・走力などそのすべてが上の彼らに対し、サプライズ号に勝機はあるのか――。
ハマる人にはハマっちゃう映画なんだろうニャ〜…。
私なんかもう4回観に行っちゃって、ここ数日は「公開が終わるまであと何回観に行けるか?」ってことばかり考えてるもん。できれば毎日スクリーンで観ていたい……。
数日前に、この映画を観に行った米国在住歴の長い方のお話を某サイトで読んだら、「映画が終わったあと、スクリーンに向かって拍手してる人が何人もいた。米国で何百本と映画を観てきたけれど、こんなことは滅多にお目にかかれない」と書かれてあって、思わず納得してしまった。わかんない人にはわかんないだろうけど、私はその拍手したという人たちの気持ちがとてもよくわかる。私がその場にいたら、きっと一緒になって拍手してただろうニャ…。
だって…海洋冒険小説のスピリットを、これほどまでに丁寧かつ迫力満点に、直球勝負した作品って――ほかにないもの。
ほとんどオリジナルストーリーといっていい脚本ながら、20巻ある原作のスピリットはそのままに、無駄や虚飾が一切ないストレートで丁寧な演出、ディテールの素晴らしさ、CGなのか実写なのかその境目がわからないほどリアルで迫力に満ちた映像、正直で素直かつ的確な演技をするすべての俳優……2時間ちょっとの作品に引き込まれ、私自身サプライズ号に乗っているかのような気持ちになってしまった。ウィアー監督は原作を本当に大切に思っておられるんだろうな〜……スクリーンに映るすべてに愛が感じられるもの。うるるるる……泣く。
…と云っても、映画と原作がすべて同じだとは云えなくて、たとえばラッシー演じるジャックは、映画だとひっじょーにカッコよくて、見るからに「よ!カリスマ艦長!英国海軍一!」という感じなのですが、原作ではもっと陽気(そして女好き)で巨漢、陸に上がるとバカやったりする可愛らしさがあるし、ベタニー演じるもうひとりの主役スティーブンに至っては、まずそのルックスが原作より劇的に向上、妙に小奇麗だし、変人ぶりも実に控え目。舞台がほとんど海上だけのせいか、諜報員としての姿だって拝めない。
ストーリーはかなり映画的に叙情的になっていて、なんともせつないエピソードが絡んでいる。
そして、ふたり以外の登場人物ときたら――男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男。
女性はまったく出てこない(ちらりと10秒ほどなら登場…しかもジャックの意味深視線付き)、ロマンスなし、男だけの世界。
それでも原作および映画ファンとして、こんなに嬉しい作品はないんだよニャ〜…。
あのサプライズ号内の素晴らしいディテール描写。
本を開いたら活字が浮かび上がり、そのまま映像化したかのよう。
ハンモックってあんなに狭い間隔で吊られてるんだ、砂時計がちゃんとひっくり返されてる、砲撃するのにあれだけ手間がかかってるんだ、当時の砲撃音ってあんな音だったんだ…とか。
原作に出てくる数々のエピソードを映像で観れるしあわせ。
おお!ジャックがネルソン提督の話をしてる、ダジャレ云ってる、スティーブンが開頭手術してる、顔を引きつらせて「約束は約束だ!」と怒ってる、虫や動物見て喜んでる、あいかわらず航海の知識ゼロで間の悪いセリフ云ってる、ジャックとスティーブンが仲良く演奏してる、ケンカしてる、プリングスくんの鼻にちゃんと傷がある、キリックが例によって例のごとくブツブツ文句云ってる、あの山羊(…)がいる――などなど、そんな姿を観てるだけで私はしあわせ(=2時間ずっとしあわせ)。
ちなみに、普通の人がこの映画を観たときに違和感を感じる点があるとすれば(憎っくき宣伝によるものは別として)――
「ちっともアケロン号側が描かれてないし、アクションシーン以外の展開が間延びしている」
アケロン号に関してはわざと描いてないでしょうね。この映画はハデなドンパチアクション映画であるけど、一番見せたいのはサプライズ号の乗組員たち。彼らの生活、仕事、常識、会話、考えが――そのまんまストーリーになっている。それらはアケロン号の描写より大切だってこと(「王の帰還」も敵があまり描かれてないと一部で云われてたけど、これと同じ理由からでしょうね)。そして水兵にとってアケロン号は「幽霊船」。不気味な存在にしたいなら、敵の内情はいらないでしょ?
――以上、このあたりかニャ?
最後に…製作側へ感謝を。
こんなハリウッド映画らしくない作品を作ってくれてありがとう。どんなに大作だろうと大味にならない、いつもながらきめが細かくて無駄のないウィアー監督の演出は素晴らしかったです。マイケル・マンやリドリー・スコット、ウォルフガング・ペーターゼンあたりが監督してたらどうなっていたことか(って、別に彼らがキライなわけではありません)。演じる俳優たちは、そのだれもが当時の人間に見えてしまうほどリアルでした。もちろんキャスティングがよかったこともあるでしょう。でもそれだけでなく、ディテールの素晴らしさ、役柄への理解、ひとりひとりの存在感…そういったものが相乗効果となって、スクリーンに表現されていたからだと思います。
映画を観終わっても…まだ私の中には深い余韻が残ってます。
2時間ちょっとだけ一緒に過ごしたサプライズ号の乗組員たち。
彼らはいま――どのあたりを航海中なんだろう?
…というわけで、映画の感想をば。
「マスター・アンド・コマンダー」Master and Commander: The Far Side of the World(2003・米)
IMDb→http://www.imdb.com/title/tt0311113/
原作:パトリック・オブライアン
監督:ピーター・ウィアー
脚本:ピーター・ウィアー、ジョン・コリー
出演:ラッセル・クロウ、ポール・ベタニー、ジェイムズ・ダーシー、マックス・パーキス、他
ストーリー:
1805年、英国海軍サプライズ号艦長ジャック・オーブリー(R・クロウ)は、命を受けフランスの私掠船アケロン号を追っていた。そんな彼らの前に、不意打ちのように何度も現れるアケロン号。攻撃力・走力などそのすべてが上の彼らに対し、サプライズ号に勝機はあるのか――。
ハマる人にはハマっちゃう映画なんだろうニャ〜…。
私なんかもう4回観に行っちゃって、ここ数日は「公開が終わるまであと何回観に行けるか?」ってことばかり考えてるもん。できれば毎日スクリーンで観ていたい……。
数日前に、この映画を観に行った米国在住歴の長い方のお話を某サイトで読んだら、「映画が終わったあと、スクリーンに向かって拍手してる人が何人もいた。米国で何百本と映画を観てきたけれど、こんなことは滅多にお目にかかれない」と書かれてあって、思わず納得してしまった。わかんない人にはわかんないだろうけど、私はその拍手したという人たちの気持ちがとてもよくわかる。私がその場にいたら、きっと一緒になって拍手してただろうニャ…。
だって…海洋冒険小説のスピリットを、これほどまでに丁寧かつ迫力満点に、直球勝負した作品って――ほかにないもの。
ほとんどオリジナルストーリーといっていい脚本ながら、20巻ある原作のスピリットはそのままに、無駄や虚飾が一切ないストレートで丁寧な演出、ディテールの素晴らしさ、CGなのか実写なのかその境目がわからないほどリアルで迫力に満ちた映像、正直で素直かつ的確な演技をするすべての俳優……2時間ちょっとの作品に引き込まれ、私自身サプライズ号に乗っているかのような気持ちになってしまった。ウィアー監督は原作を本当に大切に思っておられるんだろうな〜……スクリーンに映るすべてに愛が感じられるもの。うるるるる……泣く。
…と云っても、映画と原作がすべて同じだとは云えなくて、たとえばラッシー演じるジャックは、映画だとひっじょーにカッコよくて、見るからに「よ!カリスマ艦長!英国海軍一!」という感じなのですが、原作ではもっと陽気(そして女好き)で巨漢、陸に上がるとバカやったりする可愛らしさがあるし、ベタニー演じるもうひとりの主役スティーブンに至っては、まずそのルックスが原作より劇的に向上、妙に小奇麗だし、変人ぶりも実に控え目。舞台がほとんど海上だけのせいか、諜報員としての姿だって拝めない。
ストーリーはかなり映画的に叙情的になっていて、なんともせつないエピソードが絡んでいる。
そして、ふたり以外の登場人物ときたら――男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男男。
女性はまったく出てこない(ちらりと10秒ほどなら登場…しかもジャックの意味深視線付き)、ロマンスなし、男だけの世界。
それでも原作および映画ファンとして、こんなに嬉しい作品はないんだよニャ〜…。
あのサプライズ号内の素晴らしいディテール描写。
本を開いたら活字が浮かび上がり、そのまま映像化したかのよう。
ハンモックってあんなに狭い間隔で吊られてるんだ、砂時計がちゃんとひっくり返されてる、砲撃するのにあれだけ手間がかかってるんだ、当時の砲撃音ってあんな音だったんだ…とか。
原作に出てくる数々のエピソードを映像で観れるしあわせ。
おお!ジャックがネルソン提督の話をしてる、ダジャレ云ってる、スティーブンが開頭手術してる、顔を引きつらせて「約束は約束だ!」と怒ってる、虫や動物見て喜んでる、あいかわらず航海の知識ゼロで間の悪いセリフ云ってる、ジャックとスティーブンが仲良く演奏してる、ケンカしてる、プリングスくんの鼻にちゃんと傷がある、キリックが例によって例のごとくブツブツ文句云ってる、あの山羊(…)がいる――などなど、そんな姿を観てるだけで私はしあわせ(=2時間ずっとしあわせ)。
ちなみに、普通の人がこの映画を観たときに違和感を感じる点があるとすれば(憎っくき宣伝によるものは別として)――
「ちっともアケロン号側が描かれてないし、アクションシーン以外の展開が間延びしている」
アケロン号に関してはわざと描いてないでしょうね。この映画はハデなドンパチアクション映画であるけど、一番見せたいのはサプライズ号の乗組員たち。彼らの生活、仕事、常識、会話、考えが――そのまんまストーリーになっている。それらはアケロン号の描写より大切だってこと(「王の帰還」も敵があまり描かれてないと一部で云われてたけど、これと同じ理由からでしょうね)。そして水兵にとってアケロン号は「幽霊船」。不気味な存在にしたいなら、敵の内情はいらないでしょ?
――以上、このあたりかニャ?
最後に…製作側へ感謝を。
こんなハリウッド映画らしくない作品を作ってくれてありがとう。どんなに大作だろうと大味にならない、いつもながらきめが細かくて無駄のないウィアー監督の演出は素晴らしかったです。マイケル・マンやリドリー・スコット、ウォルフガング・ペーターゼンあたりが監督してたらどうなっていたことか(って、別に彼らがキライなわけではありません)。演じる俳優たちは、そのだれもが当時の人間に見えてしまうほどリアルでした。もちろんキャスティングがよかったこともあるでしょう。でもそれだけでなく、ディテールの素晴らしさ、役柄への理解、ひとりひとりの存在感…そういったものが相乗効果となって、スクリーンに表現されていたからだと思います。
映画を観終わっても…まだ私の中には深い余韻が残ってます。
2時間ちょっとだけ一緒に過ごしたサプライズ号の乗組員たち。
彼らはいま――どのあたりを航海中なんだろう?
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