←これが出ると発表された当時、休憩時間のオフィスで「今度、イナバのソロアルバムが出るんだけどさ〜…」と後輩に話していたら、向かいの席にいる「けっこう人気はあるけど、目立たない、でも机はまるでスラム街のようにとっちらかってる男性社員」くんが、突然「秋林さんっ!…稲葉さんのアルバムが出るってホントですか?マジっすか!?」と目を輝かせ、熱心に訊きにやってきました。ごくフツーの彼がB’zのファンであることにたいへんビックリし(その後、ふたりでコソっと会社のネットで、立ち上がったばかりのオフィシャルサイトを覗いたりしたっけ〜…)、女子だけでなく男子からも「稲葉さん」と「さん」付けで呼ばれ、そしてリスペクトされてることを知り、コアなファンばかり見てきた私の目から、ポトリとウロコが落ちたのでした。う〜む。

とゆーわけで、8/18(水)「稲葉浩志LIVE2004〜en〜」を観に、神戸ワールド記念ホールへ行ってきました(3年2ヶ月ぶり)。10年以上会員登録しているB’zのファンクラブからは、「抽選」という名目で…以下略。

なんつーかその…TMGと違ってイナバソロの場合、まったくもって安心できないとゆーか、「ウチのコーシったら、ひとりでダイジョブかしら?」と、期待やライブ前のワクワク感はどこへやら、一人暮らしを始めた大学生の息子が気になって、つい下宿先に訪ねて行ってしまう母親のような気持ちがどうにも出てきてしまい、頭の中が別のドキドキ感で支配された状態のまま、チケットを握り締め、ゲートをくぐってしまいましたよ…。イナバ、すまんのう…。

(以下、ネタバレありのため、ライブに行かれる予定の方はお気をつけ下さい)

いつものように京都人Nちゃんと合流、ポートライナーに乗り、会場へ。ゲート前で2回ガチャガチャをし、水色のリストバンド&フェイスタオルをゲット。時計を見ると18:20だったので、そのままゲートイン。相変わらず重役出勤のふたりである(座席指定だし)。

会場:アリーナクラス・全席指定。客層男女比:2対8。

B’zのKoshi Inabaとしてではなく、ひとりのミュージシャン稲葉浩志としての初ライブツアー「en」。いざ始まってみると、やはりというか…彼との間に恐ろしいまでの距離感を感じてしまった。私の席があるスタンドから、彼のいるステージまでの距離もあったと思う。でもそれだけじゃない。稲葉浩志というアーティストのライブを楽しむ…というより、それを眺めてる自分――アーティストと観客がそれぞれの情熱をぶつけ、交換しあい、同じ時を過ごすその空間に…ポイと放り込まれ、どうしたらいいのかわからない自分に気づいてしまった。まわりの熱狂的な稲葉ファンの声までもが、私には遠く聞こえた。

なんでこんなに遠いんだろう?

ソロアルバムを聴くと、B’z以上にメタファーまみれでインナートリップしている彼の世界が見えてくる。ミディアムな曲調でダーク。B’zでの短パンイメージしか持ってない人には、驚きの連続のアルバムだろう。彼は最初から上手いシンガーではなかった。大学時代は、エモーションなんて感じられない、がなってるだけのハイトーンボイスシンガーでしかなく、なにを歌っても「ただ歌ってるだけ」で、歌詞の世界がまったく見えてこなかった。数年後B’zとしてデビューし、松本孝弘の曲に自ら詞(詩)をつけ、歌い、フロントマンとしてライブで経験値を上げていくうちに――いつしか声は伸びて太くなり、シャウトは研ぎ澄まされ、ライブをうねらせ、作詞家としての個性を確立し、たとえそれが二次元的に書かれたごく普通の歌詞だったとしても、彼が歌えばその世界は三次元・四次元へと広がりをみせ、聴いてる者をいざない――そして魅了するアーティストにまで成長した。彼は天才じゃない。完全に努力の人だ。

そんな彼の、内面をえぐってくる/えぐられるような、どちらかと云えば座ってじっくり聴きたい曲が多いソロで、会場はアリーナクラス、客層は初期のB’zを思い出させるほど圧倒的に女子率が高く、曲の間に「稲葉さ〜〜〜んっvv」という黄色い声援が飛ぶ。それでもB’zのときとは勝手が違う雰囲気に戸惑っている観客はいて、そんな微妙な状態をなんとかすべく(観客との距離を縮めようと)努力している(ように見える)ステージ上の稲葉――いったいなんなんだこれは?

彼のパフォーマンスが悪いわけではなく――たとえば、声の状態は最高じゃないかと思えるほどで、歌詞をハデに忘れたり、昔のようにここぞというところでギターをトチることもなく、エモーションが…確実に、ダイレクトに、伝わってくる。

「遠くまで」にいたってはもう素晴らしいとしか云えず、もともと彼の真骨頂を知る最適かつ最高の曲とはいえ、私はただうっとりと聴いてる僕(しもべ)でしかなかった。「Brotherfood」ツアーのときとは違い、ストリングスを使わず、シンプルにキーボード伴奏のみで歌っているのに、歌(詩/詞)の奥底に流れるものを感じさせる彼の力量――そこにテクニックは存在するのだろうけれど、観客側に伝える情報量の多さは圧倒的だ。

がしかし――アリーナクラスでやる内容のライブではないのでは?

どちらかというと、ホールクラスの空間でしっとりと聴かせて欲しかった…というのが本音だ(神戸なら神戸国際会館、大阪なら大阪フェスティバルくらいの大きさがベストかと)。キャパの問題で、アリーナクラスのツアーになったのだろうが、いきなり「冷血」で始まるセットリスト、途中「正面衝突」というロック色の強い曲が織り込んであっても、基本はミディアムテンポかつイナバコード進行(これのおかげで、みんな似たような曲に聴こえる…すまんのう…>稲葉)な曲ばかりのため、アリーナやドームクラスでやるようなアオリやかけ合いをされても、ピンとこない。

どちらかというと、「追っかけレポーターの松宮で〜す♪」と、「ザ・ベストテン」の中継が入りそうな、アットホームな雰囲気で通したほうがよかったのでは?…MCがなかなか面白く、身近に感じられるネタで楽しかっただけに、曲とMCとかけ合いとアオリ――それらの落差がかなり気になってしまった。稲葉信者で、なんでもかんでも「稲葉さんカッコイイ〜〜〜♪」な人には気にならないことでも、信者だったのは過去のこと、もはやまったりファンな私には少々ツラく――逆に距離感を感じてしまった。

それに、「ファミレス午前3時」は――女子が歌うにはキー取りが難しいんだって!

サポメンとのやりとりが内輪的であること、ライブ進行がそれほど洗練されてないこと…などなど、往年のB’zのライブを思わせるあたりがほほ笑ましいと云えば、ほほ笑ましい。でも昔より歌が上手くなってるのは明らかで、いまさら黄昏てみても時間の流れを痛感して切なくなるだけだ。

私が云う「距離感」。たぶんご本人だって(それなりに)感じたはず。
B’zのときには得られなかった手ごたえも、感じたはず。
そしてB’zのボーカルではなく、ひとりのアーティスト稲葉浩志としてのポジションも。

彼のこれからのキャリアにそれらがどう影響するか――今からとても楽しみである。

■ご母堂発見
あるブロックに稲葉さんのご母堂がいらっしゃるのを発見(間違いない)。ご母堂はちゃんとファンクラブでチケットを取っておられる(ご本人から聞いたんだから間違いない。たしか会員番号は200番台だ)。もちろん、取れなかったらご子息に融通してもらうだろうし、楽屋だって行くのだろうけど、自力で取ろうとする姿勢は素晴らしい。ちなみに、ご子息は基本的にご尊父似だが、目元などパーツ的にはご母堂似である。

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