←昨日感想を書いた小説「レス・ザン・ゼロ」の映画がこれ。そーなんです、いまでこそすっかり「そんなのあったっけ?」と忘れ去られた感のある作品ですが、実は原作本が出版された2年後に鳴り物入りで製作・公開となり、日本ではさらにその2年後に公開されてたんです。ええ、当時10代でカワイイ少女だった私(ツッコミ不可)もイソイソと観に行きましたよ。だって主演はアンドリュー・マッカーシーだったんだもん!!←まだ云ってる…。ただ共演のロバート・ダウニーJr.が、この数年後にマジでドラッグスキャンダルを起こしちゃったってのが、シャレになんないよニャ…。

20世紀FOX「1枚買ったら1枚タダ!」キャンペーン(2980円)で購入した、映画DVDの感想第七弾(兼、「アンドリュー後援会/ニッポン支部」による「アンドリュー映画特集第三弾」)です。…まだ続いてる模様…ってか、ほとんど不定期連載状態っスね。

■「レス・ザン・ゼロ」Less Than Zero(1987・米)
IMDb→http://us.imdb.com/title/tt0093407/
監督:マレク・カニエフスカ
脚本:ハーリー・ペイトン
出演:アンドリュー・マッカーシー、ジャミー・ガイツ、ロバート・ダウニーJr.、ジェイムズ・スペイダー、他

ストーリー:(今回はamazonを引用)
クリスマス休暇で東部の大学からビバリーヒルズに帰省してきたクレイ(アンドリュー・マッカーシー)は、事業に失敗して麻薬に溺れているかつての友人ジュリアン(ロバート・ダウニーJr)と再会。何とか彼を立ち直らせようと、クレイは恋人のブレア(ジャミー・ガーツ)とともに腐心するが…。

ブラット・イーストン・エリスの「レス・ザン・ゼロ」が映画化されると聞いたとき、「へ?映画化できるの?あのヤマなしオチなし小説をどうやって?」と、無気力・無関心でスキャンダラスなゼロ・ジェネレーション描写より、淡々としたクレイの一人称で綴られている展開自体が、あんまり映画向きではないこと、そしてさらに主人公クレイをアンドリュー・マッカーシーが演じるとわかるや、極東少女(当時)の私でもそのあまりのミスキャスティングぶりに、鑑賞前からイヤ〜ンな予感はあったんですよ。

そしたらばですね――これがもう予感大的中
小説とまったく別物、ごくフツーのブラットパック映画に仕上がっていたのでした。

なにもすべてを原作通りにしなくたっていいとは思うのですが、せめて根底に流れるスピリットだけは同じ色…というか、流れを感じさせて欲しかったよニャ…。あ〜…。

のっけからいきなり「セント・エルモス・ファイアー」っぽいノリに、まず愕然。そんな学園モノでいいのか!?…と思っていると、次のシーンでダルそうなアンドリュー版クレイ(ここでサービスカット有…泣いて喜ぶ秋林)となり、名曲「A HAZY SHADE OF WINTER」と雰囲気バツグンなタイトルバックが流れ、おおおおお!エリスらしくなってきたと喜んでいたら――ここまででした。

登場人物とストーリーは、エリスの原作からマテリアルと雰囲気だけをイタダキしたほぼオリジナル。クレイはにこやかに笑って愛想いいわ、ブレアに未練タラタラだわ、ジュリアンとラブトライアングル状態だわで、もはや別人28号。パーティ・ドラッグ・セックス三昧描写や快楽に陥る若者たちだって、思ったほどモラルに欠けてなかった。ここらへんはロジャー・エイヴァリー監督による「ルールズ・オブ・アトラクション」のほうが、80年代に限定してない設定だったというのに、よっぽどエリスな雰囲気を醸してたなと。

そしてなによりビックリしたのは、クレイの冷えた心はどこへやら、「クレイとブレアがジュリアンを救おうと頑張る、青春ホロ苦ストーリー」な、せつなく儚い青春映画として仕上がっていたこと。ラストも決定的に違う。映画で大フィーチャーされたジュリアンのエピソードは、原作ではあくまでもワンエピソードに過ぎないし、彼が最終的にどうなったかも語られてないのにね。

ブラットパック映画として見た場合、ごくフツーな出来。ただやっぱり、簡単には共感させない、乾ききってどよ〜んとした作品にして欲しかったかな…。キレイ過ぎだし、どちらも繊細だけど、これままた種類が違い過ぎる

クレイがドラッグでキメるシーンがない。ゼロの説得力がなくなる原因のひとつか。次第に堕ちて行くジュリアンの運命が映画のすべてとなり、最後は反面教師。時が経ち、昔を思い出したとき、ふとせつなくなる…そんな凡庸な青春映画にして良かったのかどうか。

それでも、カラフルな80年代的な色使いの中、青を基調としたスタイリッシュな画面構成と、どことなく物憂げな印象を与える雰囲気がたいへん素晴らしく、いったい誰が撮ってたんだろう?と今回調べてみたら、エドワード・ラックマンと判明し、思わず納得。浮世離れした中でリアル感を与える色使いと画面構成が上手い人ですよね。

監督は「アナザー・カントリー」のマレク・カニエフスカ。よって、主人公クレイよりロバート・ダウニーJr扮するジュリアンがドラッグに溺れ、男娼として堕ちて行く様が大フィーチャーされたことに、これまた納得してしまいましたよ。…もし年齢的な問題がなければ、ジュリアンをルパート・エヴェレットにやらせたかったに違いないっ!

で、アンドリュー。原作通りのストーリーだったとすれば、完全にミスキャストだし、それにあの時点でクレイを演じきるだけの演技力は彼になかったと思うので、フツーのブラットパック映画になってよかったのかも。

ブレア役のJ・ガイツ。彼女もブレアのイメージではないし、アンドリューと一緒にいると、恋人同士というよりは魔女と弟子。そして映画版ブレアは女子からの共感は少なそう。

ドラッグ・ディーラー役のJ・スペイダー。…素晴らしいっ!!お若い頃から歪んでる役が似合ってたとは云え、「マネキン」で見せたベタギャグよりよっぽど良かったです。

そしてロバート・ダウニーJr.。この時代、この人は飛び抜けて上手く、映画版ジュリアンを好演していたなと。多少オーバーアクトなところは目をつぶるとしても、ジュリアンが彼でなかったら、もっと白々しい出来になっていたかと思いまする。

原作を知ってる人にはエリス臭がなくガッカリ、ブラットパック映画として観たならば、「ま、こんなもんかな」という出来な、マレク・カニエフスカらしい作品。

ところで。実はこの映画にブラピが出てます。何度観てもその場面がわからなかったので、海外の掲示板で確認したところ――「最初のパーティ場面、アンドリューがドアに向かったとき、彼の後ろを通り過ぎたふたりの男のうち、二番目の男」。「clearly Brad Pitt」って…ほんの一瞬、顔もまともに見えなかったのに…クリアにわかるか、そんなのっ!!

■DVD仕様評価

1.惹句(DVDの帯についてる宣伝コピー)

「セックスとドラッグに溺れるビバリーヒルズの若者たち――。全米を震撼させた絶望の青春」

震撼させたのは原作だってば…。

2.仕様・特典など
ピクチャー・レーベル、英語4.0chサラウンド、英語字幕あり、ビスタ・サイズ。

この手の映画はいつも特典ナイないよね…。

3.総括
エリス臭を求めない、青春映画にキレイさとせつなさを求める人にはオススメな映画。

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