About Her 3

2004年11月26日 エッセイ
数年後、仕事に追われ休みのない状態だった私に、一本の電話が入った。

クタクタに疲れて帰り、ひと息ついたところに、母から「***さんから電話よ」という呼び出し。なんで今ごろになって彼女からの連絡が?と思いつつ、受話器を耳に当てた。

「秋林、久しぶり〜♪…あのね、元気かな〜と思って…。なんだか忙しそうだし…」

そんな場当たり的な電話をかけてくるような人ではない。なにか聞いてもらいたいことがあるに違いない。そう察した私は、疲れているだけにさっさと用件を済ませてもらうと、声を聞いておおよその見当がついたこともあり、こう切り出した。

「うん、とっても忙しいよ。…で、なに?結婚でもするの?」

「うん♪」

ここで「おめでとう」と云って切ってしまいたかったが、なんだかまだ聞いて欲しそうな彼女のそぶりが電話を通して感じられ、またおめでたいことでもあるため、とりあえず角が立たないよう当たり障りのないことを尋ねてみた。

「おめでとう。相手はどんな人?」

すると彼女は――

「男の人♪」

この回答を聞いた瞬間、彼女に対する積年の思いが噴出、憤怒の河を一気に渉った私は、「ふ〜ん、よかったね♪」と答え、それ以上訊くことはしなかった。だがそれでもまだ喋り続けようとする彼女は、「忙しいと思うけど、結婚式出てもらえたらって…」と云ってくる。疲れてるときに彼女の甲高い甘ったるい声は、ただただ耳につらい。うんざりし「わからないわ。でもとにかくおめでとう。じゃ!」と電話を切ってしまった。

結局、彼女から招待状は来なかった。
現在も連絡は取り合っていない。
たぶん、幸せに暮らしているのだろう。

なんで合わない彼女と「友達風な付き合い」を長々としてしまったのか。実は彼女と興味の対象がいつもまったく違ってたわけではなく、その対象が同じだったときは電話をよくかけ合ったりした。ただ会うとなると話は別で、彼女と一緒にいるとストレスでおかしくなりそう、早くその場から逃げ出したくてたまらない自分がいた。彼女の話は、私にとって面白くない/興味のないものばっかりだったが、ほかにもそんな話をする人は数多くいる。「話がつまらないから、興味がないから」という理由で人をバッサリ斬るなんてこと、自分は基本的にしないタイプのはずだ。でもなんで彼女に付き合ったんだろう?

それはたぶん――だれも彼女の相手をしないんじゃないか、だったら可哀想だなという彼女への哀れみを含んだ気持ち、またもしかしたらいつか親友となるときが来るかもしれないという思いが、私の心の中のどこかにあり、多少なりとも期待をしてしまったからだろう。そして、私がとことんチャレンジャー気質だったからだろう。

なにげない彼女の言葉で傷ついたことが何度もあった。でもこれだけすべてが合わない以上、私も同じように、彼女を何気ない言葉で傷つけていたはずだ。その点に関してはお互い様であり、謝るつもりはない。彼女だって、自分のブログやサイトで私のことを書いているかもしれない。でももし、そこに私の悪口が書かれてあったとしても、私は流して読むことができるだろう。彼女がどんな人間であるかわかっているから。自分をつらくしてまで無理をする必要はないから。そして相手にはもうしないから。

いまでもたまに、彼女を思い出すことがある。

彼女と「お友達付き合い」をしている人は――いったいどんな思いをしているのだろう?

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