←左から「我が永遠の憧れの人」ことナスターシャ・キンスキー、真ん中がトムトムが台頭してくるまで若手人気No.1だった(かもしれない)ロブ・ロウ、右がイェール大生で学業専念中だったにも関わらず、本作に惚れて出演をしたという才女ジョディ・フォスター。みなさん、若いっすね〜〜!…公開当時、予備知識まったくナシで観に行ったのですが、その設定のスゴさにウブな私はビックリしたもんです。で、最近このDVDが紀伊国屋書店(シネフィル・イマジカ)より再リリースされまして、前回買い逃したこともあって「今度こそは!」と慌てて購入、イソイソと中を見てみれば――なんともいえない素敵なポスターがついてたり、その裏に貴重な話が記載されていたりと、たいへん愛情のある作りにビックリ。シネフィル系のDVDって、いつもこんな感じなのでしょうか?…廉価版に慣れた目にはメチャ眩しいゴーカさでしたよぅ!

「ホテル・ニューハンプシャー」The Hotel New Hampshire(1984・英/加/米)
IMDb→http://us.imdb.com/title/tt0087428/
監督:トニー・リチャードソン
脚本:トニー・リチャードソン
出演:ジョディ・フォスター、ロブ・ロウ、ボー・ブリッジス、ナスターシャ・キンスキー、セス・グリーン、他
上映時間:109分

ストーリー:
教師であるウィン・ベリー(B・ブリッジス)は、優しい妻、ゲイの長男フランク、活発な長女フラニー(J・フォスター)、姉を愛する次男ジョン(R・ロウ)、身長が伸びない次女リリー、耳が不自由な三男エッグ(S・グリーン)とともに、「クマのいるホテルを経営をすること」が夢だった。ある日、ジョンは学校跡地を買い取り、念願のホテル経営を始める。だが次々と不幸が訪れ、困難な状況に陥ってしまう一家。そして――

「人生はおとぎ話。夢は儚く逃げるけれど、それでも人生は続いていく――」(惹句より)

あるとき突然、人生最大の悲しみや困難がやってきて、叩きのめされ打ちひしがれ、もうダメだ、立ち直れないと思ってみても、時間が経てばおなかはすいちゃうし、毎日はごく普通にどんどんと過ぎていく。仕方ないよ、だって人間だもの――と、相田みつを的思想に到達する瞬間って、何十年と人間やってれば、誰しもにやってくるんじゃないんでしょうかね?どうでしょ?それとも私だけ?

80年代、日本でも流行った作家ジョン・アーヴィングの「ホテル・ニューハンプシャー」を映画化した本作。ウェス・アンダーソンの「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」を観たとき、「『ホテル・ニューハンプシャー』のマネやんかっ!」と思ったのですが、私のまわりでそれを指摘した人は皆無でした。あ〜あ…いまとなっては完全に忘れ去られた作品ってことか。

超個性的なメンバーとはいえ、一家は幸せそのもの、家は庭付き一戸建て、大きな犬がいる――そんな絵を描いたようなごく普通のアメリカンファミリーだったベリー一家。夢であるホテル経営に乗り出してみたものの、次々と苦難と悲しみが襲い掛かってきて、いつしか普通ではない境遇へと陥っていく。

(以下、ネタバレあるのため、本作をご鑑賞予定の方はお気をつけ下さい)

ゲイであるため、ボコられる長男。
レイプされ、のちに過激派とねんごろになる長女。
長女を愛し、近親相姦となるヘタレ次男。
べストセラー作家となったが、自殺にいたってしまう次女。
優しい母とともに飛行機事故で死んでしまう難聴気味の三男。
発作で突然死の祖父。
失明してしまう父。
自分に自信がなく、クマの着ぐるみで自己を隠そうとする使用人。
結局、ホテル経営が軌道に乗らないべリー一家。

…と書くと、ジェットコースター悲劇で重め、なんだか暗い映画のように見えますが、実はトニー・リチャードソンらしいシニカル風味なコメディドラマで、重いどころかフワフワ…摩訶不思議な浮遊感に包まれた演出と映像、時折り挿入されるブラックなユーモア、淡々と不幸がやってきては流れていく怒涛の展開、不幸の重さと反比例する軽い仕上がり感――そして、個性的な一家による奇妙な人生ストーリーを、ごく一般的な家族による普遍的な人生賛歌ストーリーに見せようとしているところが、この映画(および原作)の最大のポイントになってるかな、と。

ただし。時間軸がよくわからなかったり、悲劇連鎖の速度についていけなかったり、倫理観がぶっ飛んでたり、補足説明的なものがほとんど描写されないために、観る側のイマジネーションが他作より必要となってしまう傾向があったりと、人によってはつまらない(あるいはニガテ)、観る人を選んでしまう作品になってるとも云えるかな。よって、手放しではオススメしません。それでもウェス・アンダーソンが「テネンバウムズ」でやろうとしたことを思えば、それがたとえ一部の層だったとしても、ある程度の影響力はあったんだろうなあ。…と思いたい。

ボー・ブリッジス演じる父親の「長いものに巻かれていけば、どうにかなるさ」という楽天的な性格が羨ましかったり、レイプされた後、次男からなにか欲しいものは?と訊かれ、「昨日までの私を」と答えた長女のセリフが痛かったり、背が伸びなくても実は誰よりも大人だったかもしれない次女の最期など――たぶん、観た人にはなにかしら心に残るエピソードがあるはず。私がず〜〜っと心に残っていて忘れられなかったのは、過激派の女の子と次男の話。「明日死ぬから、その前に経験しておきたい」と云った彼女、そしてその直後――いやもうホント、ずっと残ってましたよ。

俳優陣については…ナイスキャスティングだな、と。なかでも当時はちょっと太めだったジョディ・フォスター。昔からこういう役が多いせいか、あらためて観直してもやはりあのシーンは目に痛く、ほかの女優さんだったらここまで思わなかったでしょう。そして当時19歳くらいでブイブイ云わせてたロブ・ロウ。いや〜実にお美しい!…軟弱ヘタレぶり、最高ですわ♪

そして今回、再見したことで新たに知ったことがひとつ。
カワイイ三男エッグを演じたのが、あのセス・グリーン(当時10歳)だったとは!

↓あのセス・グリーンさん(IMDb)
http://us.imdb.com/name/nm0001293/

クレジット見てビックリしましたよう!…実はかなり好きな俳優さんのひとりなんですが、そっか〜…これがデビュー作だったのね…。ちなみにジョディのプロダクション「EGG PICTURES」は、彼が演じたエッグがその名の由来なんだそーです。「へ〜」ボタンひと押し。

人生、山あり谷あり。どん底から一気に浮上することだってある。苦しくても希望がないわけじゃないし…まあ、なんとかなるさ!という人生論を、シニカルかつふわ〜んと描いた摩訶不思議な感動作。ただし、観る人を選ぶので注意。

もし本作をリメイクするなら、次男は「トロイ」でのヘタレぶりが麗しかったオーランド・ブルームがいいなあ…。

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