「モンスター」
2005年1月15日
←この人が、米国犯罪史上初の女性連続殺人犯アイリーン・ウォーノス。その生涯を映画化した作品を、映画評論家であるロジャー・エバートが大絶賛していたので、観に行ってきました。
■「モンスター」MONSTER(2003・米)
IMDb→http://us.imdb.com/title/tt0340855/
日本公式サイト→http://www.gaga.ne.jp/monster/
監督:パティ・ジェンキンス
脚本:パティ・ジェンキンス
出演:シャーリーズ・セロン、クリスティーナ・リッチ、ブルース・ダーン、他
上映時間:109分
ストーリー:
1986年米国。不幸な少女時代を送り、娼婦としての人生に疲れたアイリーン(S・セロン)は、自殺を考えていた。だが立ち寄ったバーで、レズビアンのセルビー(C・リッチ)と出会い、アイリーンは自分を受け入れてくれる彼女を愛するようになる。やがて一緒に暮らし出すふたり。だが金銭的に行き詰ってしまい、アイリーンは再び娼婦として道に立ち始めるが――。
一本通して観てみると、極悪犯罪者としてのアイリーン・ウォーノスの人生というよりは、米国という自由かつ消費的な大国でも、光あるところではなく、その裏にある影や闇の中でしか生きる術を知らなかった/できなかった、不器用でどうしようもなく不幸…だけれども、とても純粋な女性であるアイリーンの、傍(はた)から見えてくる、本人が気付いてない悲しみを重点的に描いた作品、というか…「アイリーンが極悪犯罪者になったのは、本人のせいじゃなくて、米国の社会や男どもが悪いんだ」という印象を観る側に与えちゃいそうな映画だなあ。もちろん、それが狙いなのかもしれないけれど。
それにしてもすんごい青臭いとゆーか、チープとゆーか、インディペンデント節炸裂とゆーか…明らかに描写不足・演出不足・脚本不足、足りないものはい〜っぱいあるのに、ピッタリ配役陣が文句ナシな演技を見せるし、拙いながらも勢いが伝わってくるしで――時折り画が一気にチープ&ベタになるのは、初監督・脚本作だからある程度仕方がないとは云え――逆にそれが青い魅力を放つんだから…ホント、映画ってマジックよね。
本作の評価が分かれるのは、そういったマジックによる相殺が許せる人がいるもいれば、どうしても鼻についてしまう人もいるからでしょう。
鼻につくってあんまりじゃん!と思われそう…でもね、挿入歌としてラブシーンやエンドロールでTommy James & The Shondellsの「CRIMSON AND CLOVER」や、Journeyの「Don’t Stop Believin’」が流れるんですよ!?…前者は今でも使われそうですが、いまどきジャーニーの「Don’t Stop Believin’」を流すなんて!ひっさしぶりに聴いたよう!これがワザとなら、監督の手を持ち上げて「技あり一本!」とコールするところですが、このベタで80’sバリバリ選曲を監督のセンスという言葉で片付けていいのかどうか…。ボーゼンとしながらエンドロールを見送ってしまいましたよ…。
で、俳優陣ですが。
美貌を誇るシャーリーズ・セロンが、特殊メイク+増量によって、けっして美しいとはいえない(はっきり云うと不細工な)アイリーン・ウォーノスに化け、全身全霊で役になりきり、体当たり演技をしていることがとにかく話題になってただけに、すごいなあ〜、あんな美人がこんなに風になっちゃうんだと驚きながら観てました。いやもうすごいのなんの、ヨゴレ演技だってたいへん素晴らしかったですよ。
特殊メイクによる不細工化が、映画の話題性に貢献していることは事実、美人をわざわざ不細工に仕立てて演技させなくたっていいじゃん、だったらニコール・キッドマンだってよかったんじゃない?と思われそうですが、私はシャーリーズがピッタリだと感じました。
そのピッタリな理由…シャーリーズの悲しい過去の話(母親が父親を銃で撃って殺害したとかなんとか)を、本人だけでなくみんな持ち出すけれど、私はそれだけじゃないと思う。彼女って、カテゴリ的には「ブロンドでスタイルバツグン、セクシーなタイプ女優」という印象ですが、こう…美人系の中でも痛めつけられると映える女優とゆーか、DVに耐えながら最後は爆発する妻役が似合いそうとゆーか、最初から強い役を演じてもなんだかやっぱり弱さ(精神的なものではなく、雰囲気的な面で)を感じさせるとゆーか…とにかくニコールにはない、そしてアンジェリーナ・ジョリーの反対側にいるという印象(そうだな…アシュレイ・ジャッド、ハリ・ベリーあたりもシャーリーズと同じ雰囲気かと)。監督も本能的にそれを感じて、彼女に主役をオファーしたんじゃないのかな…。
そしてセルビー役のクリスティーナ・リッチ。これもう…彼女しかいない、オンリーキャストでしょう。私が監督だったとしても、彼女以外の配役は考えられません。セルビーの背景や言動、アイリーンに対する感情、行動など、はっきり云っちゃえば描写不足もいいところなのに、彼女が演じるだけで説得力がある。キャスティングの大勝利だよなあ。
シャーリーズの演技が評価されるのはよくわかる、でも演出のベタさ&拙さが気になる人には気になる、インディペンデントらしい青〜い作品。私にはその青さが本作の魅力であると思ってますが、極悪犯罪者としてのアイリーン・ウォーノスを求めるならば、ドキュメンタリーを観たほうがいいでしょうね。たぶん。
■「モンスター」MONSTER(2003・米)
IMDb→http://us.imdb.com/title/tt0340855/
日本公式サイト→http://www.gaga.ne.jp/monster/
監督:パティ・ジェンキンス
脚本:パティ・ジェンキンス
出演:シャーリーズ・セロン、クリスティーナ・リッチ、ブルース・ダーン、他
上映時間:109分
ストーリー:
1986年米国。不幸な少女時代を送り、娼婦としての人生に疲れたアイリーン(S・セロン)は、自殺を考えていた。だが立ち寄ったバーで、レズビアンのセルビー(C・リッチ)と出会い、アイリーンは自分を受け入れてくれる彼女を愛するようになる。やがて一緒に暮らし出すふたり。だが金銭的に行き詰ってしまい、アイリーンは再び娼婦として道に立ち始めるが――。
一本通して観てみると、極悪犯罪者としてのアイリーン・ウォーノスの人生というよりは、米国という自由かつ消費的な大国でも、光あるところではなく、その裏にある影や闇の中でしか生きる術を知らなかった/できなかった、不器用でどうしようもなく不幸…だけれども、とても純粋な女性であるアイリーンの、傍(はた)から見えてくる、本人が気付いてない悲しみを重点的に描いた作品、というか…「アイリーンが極悪犯罪者になったのは、本人のせいじゃなくて、米国の社会や男どもが悪いんだ」という印象を観る側に与えちゃいそうな映画だなあ。もちろん、それが狙いなのかもしれないけれど。
それにしてもすんごい青臭いとゆーか、チープとゆーか、インディペンデント節炸裂とゆーか…明らかに描写不足・演出不足・脚本不足、足りないものはい〜っぱいあるのに、ピッタリ配役陣が文句ナシな演技を見せるし、拙いながらも勢いが伝わってくるしで――時折り画が一気にチープ&ベタになるのは、初監督・脚本作だからある程度仕方がないとは云え――逆にそれが青い魅力を放つんだから…ホント、映画ってマジックよね。
本作の評価が分かれるのは、そういったマジックによる相殺が許せる人がいるもいれば、どうしても鼻についてしまう人もいるからでしょう。
鼻につくってあんまりじゃん!と思われそう…でもね、挿入歌としてラブシーンやエンドロールでTommy James & The Shondellsの「CRIMSON AND CLOVER」や、Journeyの「Don’t Stop Believin’」が流れるんですよ!?…前者は今でも使われそうですが、いまどきジャーニーの「Don’t Stop Believin’」を流すなんて!ひっさしぶりに聴いたよう!これがワザとなら、監督の手を持ち上げて「技あり一本!」とコールするところですが、このベタで80’sバリバリ選曲を監督のセンスという言葉で片付けていいのかどうか…。ボーゼンとしながらエンドロールを見送ってしまいましたよ…。
で、俳優陣ですが。
美貌を誇るシャーリーズ・セロンが、特殊メイク+増量によって、けっして美しいとはいえない(はっきり云うと不細工な)アイリーン・ウォーノスに化け、全身全霊で役になりきり、体当たり演技をしていることがとにかく話題になってただけに、すごいなあ〜、あんな美人がこんなに風になっちゃうんだと驚きながら観てました。いやもうすごいのなんの、ヨゴレ演技だってたいへん素晴らしかったですよ。
特殊メイクによる不細工化が、映画の話題性に貢献していることは事実、美人をわざわざ不細工に仕立てて演技させなくたっていいじゃん、だったらニコール・キッドマンだってよかったんじゃない?と思われそうですが、私はシャーリーズがピッタリだと感じました。
そのピッタリな理由…シャーリーズの悲しい過去の話(母親が父親を銃で撃って殺害したとかなんとか)を、本人だけでなくみんな持ち出すけれど、私はそれだけじゃないと思う。彼女って、カテゴリ的には「ブロンドでスタイルバツグン、セクシーなタイプ女優」という印象ですが、こう…美人系の中でも痛めつけられると映える女優とゆーか、DVに耐えながら最後は爆発する妻役が似合いそうとゆーか、最初から強い役を演じてもなんだかやっぱり弱さ(精神的なものではなく、雰囲気的な面で)を感じさせるとゆーか…とにかくニコールにはない、そしてアンジェリーナ・ジョリーの反対側にいるという印象(そうだな…アシュレイ・ジャッド、ハリ・ベリーあたりもシャーリーズと同じ雰囲気かと)。監督も本能的にそれを感じて、彼女に主役をオファーしたんじゃないのかな…。
そしてセルビー役のクリスティーナ・リッチ。これもう…彼女しかいない、オンリーキャストでしょう。私が監督だったとしても、彼女以外の配役は考えられません。セルビーの背景や言動、アイリーンに対する感情、行動など、はっきり云っちゃえば描写不足もいいところなのに、彼女が演じるだけで説得力がある。キャスティングの大勝利だよなあ。
シャーリーズの演技が評価されるのはよくわかる、でも演出のベタさ&拙さが気になる人には気になる、インディペンデントらしい青〜い作品。私にはその青さが本作の魅力であると思ってますが、極悪犯罪者としてのアイリーン・ウォーノスを求めるならば、ドキュメンタリーを観たほうがいいでしょうね。たぶん。
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