「オペラ座の怪人」
2005年2月5日
←いまから10年ちょっと前、劇団四季で初代ファントムだった市村正親さんが年末の紅白歌合戦に出場したほど、「オペラ座の怪人」が大ブームとなりまして、私めも友人Hさんと近鉄劇場(!)まで観に行ったことがあります。そのときはすでに市村さんが退団した後だったので、ファントムを演じたのは芥川英司(現・鈴木綜馬)さん。市村ファントム時代にラウルを演じてた芥川さんは、歌はバツグンに上手いけれど線が細く、また市村ファントムの倒錯ぶりがキョーレツだった(観たことない方でもなんとなく想像つきません?)後だけに、芥川さんで大丈夫なの?と心配したのですが、いざ幕が上ってみれば――たいへんロマンティックに苦悩するファントムが現れ、女子ふたりはいつの間にやらメロメロになってしまっていたのでした。
舞台で充分じゃん、なんで映画化するんだろう?と思いつつ、ジョエル・シューマカーが監督で、アンドリュー・ロイド・ウェバーも関わっているならば、やはりチェックしないとなあ…というわけで、「オペラ座の怪人」を観に行ってきました。
■「オペラ座の怪人」The Phantom of the Opera(2004・米/英)
IMDb→http://us.imdb.com/title/tt0293508/
日本公式サイト→http://www.opera-movie.jp/
監督:ジョエル・シューマカー
脚本:ジョエル・シューマカー、アンドリュー・ロイド・ウェバー
出演:ジェラルド・バトラー、エミー・ロッサム、パトリック・ウィルソン、ミランダ・リチャードソン、ミニー・ドライヴァー、他
ストーリー:
1900年初頭パリ。1870年代のシャンデリアが、朽ち果てたオペラ座でオークションにかけられた。そのシャンデリアは、オペラ座で起きた怪事件によって破壊されたもの。やがて舞台は華やかな1870年代パリのオペラ座へ。駆け出し歌手クリスティーヌ(E・ロッサム)は、姿を現せないまま彼女を指導するファントム(J・バトラー)を「音楽の天使」だと信じていた。そんなある夜、クリスティーヌは代役で主役を演じることになり、オペラ座のパトロンで幼なじみのラウル(P・ウィルソン)と出会う。惹かれあうふたり。だが、人知れず密かにクリスティーヌを愛するファントムは激怒、オペラ座に怪事件が頻発する。そして――
ジョエル・シューマカーは、私の中でタイプの違う2人の監督として存在する。ただし、基本的に娯楽作がメイン、「ふたりとも若い子が好き」という共通点アリ。
1人目:「タイガーランド」「セント・エルモス・ファイアー」「フォーン・ブース」「ヴェロニカ・ゲリン」「フォーリング・ダウン」など、タイトな製作条件ながら面白くて小気味の良い作品(いわゆる「拾いもの」)を手がける監督。ドラマ系…群像劇がお得意?…その中でも「フォーリング・ダウン」は、もうひとりの監督に近い出来のキワモノ作かも。2に入れたほうがいいかなあ…。
2人目:「ロストボーイ」「バットマン・フォーエヴァー」「バットマン&ロビン」「8mm」…倒錯気味/狂ってるキャラクター・全体的に独特なビュジュアル・キッチュな色香が匂い立つ仕上がり――人よって好き嫌いがハッキリ出てしまう、そしてたまに「悪趣味!」とバッサリ斬られてしまう作品を手がける監督。でも私、「ロストボーイ」が大好きなんですよう♪…ってことは、私も悪趣味なのか…がーん。
で、本作の場合はそうだな〜…「やや控え目な2人目のシューマカー監督作」、あるいは「2人目作になり損ねた1人目シューマカー監督作」になるでしょうね。
それにしても「ファントム」って、こんなにトロい展開だったっけ?
ま〜だシャンデリアは落ちんのか!って思ってしまったじゃない。舞台版はいろいろと仕掛けが施されてたり、「マスカレード」などを生で観られるわけだから、やっぱ退屈しないってことか。
あとは…やはりジェラルド・バトラー演じるファントムがねぇ…。
映画版ファントムときたら、やたらと人間的な過去を背負っていてビックリ。あんな「エレファントマン」な生い立ちがあったなんて知りませんでしたよ。感情移入しやすくするための映画オリジナル設定でしょうが、そのせいで人間味が増し、不気味な迫力さや恐ろしさ、残虐ぶりは控え目となり、なんというかウチのとなりにお住まいの不幸なファントムさんという感じ。せっかくシューマカーなんだから、もっとアクが強い、もっとヘンタイ、もっと不気味な存在のファントムにしてもよかったのに。なのでここはひとつ、ファントム候補だったというアントニオ・バンデラスに、こってりと演じてもらいたかったなあ。
ほか、エミーロッサム演じるクリスティーヌはたいへん可憐なお声でしたが、お顔立ちが生来の笑い顔系なので、若ければ若いほど(可憐に見えて)いいという感じ。あえて云うならラウル役のパトリック・ウィルソンが1番「らしい」配役だったなと。でもこの人、私とたいして年が変わらないくせに、青年のように見えるわ、かといって「エンジェルス・イン・アメリカ」じゃあ、10歳も年上のはずのメアリー・ルイーズ・パーカーと夫婦役演じても違和感ないわで、スゴイっすね。
そして最もガッカリしたのは、「オルガンがひとりでに鳴り出すシーン」がなかったこと。私の見逃し?だったら、痛恨の見逃しだ!…あと「パーン!…暗転」があるかとワクワクして待ってたのに、ありませんでした…って、それは舞台だからこそ映える演出で、映画では効果的じゃないから、なくて当然か。
…と、ここまで書けば、本作が駄作だったように思われるのですが、舞台版を知ってる人はいろいろツッコミを入れたくなるだけで、基本的にストーリーに忠実だと思うし、逆に映画だからこそできるシーン――たとえば、朽ち果てたオペラ座でシャンデリアが浮かび上がったあと、1870年代の豪華絢爛オペラ座へと変わっていく場面はたいへん素晴らしく、アンドリュー・ロイド・ウェバーは、このシーンが観たくて映画化したんだろうと思ったほど。舞台じゃ絶対できないもんねぇ。
みんなが云うほど悪くはないし、シューマカーらしく平均ライン上に乗っかってる作品なのに、ケチをつける人が多いのは、ストーリーが基本的に忠実で仰々しいばっかりに、ブロードウェイや劇団四季などの舞台と比べて、やれ歌がどうの、装置がどうの、演出がどうのと云ってしまいがちになる――つまり映画としてピンで評価する人が少なかったからでは?
だったらもっとシューマカーNo.2節を出してもよかった、でもそうなると総スカンを食らう可能性もある、アンドリュー・ロイド・ウェバーだって製作に関わっている以上メンツがある、俳優陣は酷評されるほど悪くはないが印象に残らない、そうなるとなんだか上映時間が長く感じる――う〜ん。結局、悪くない、でも舞台の存在が大きすぎて損した作品。あ〜あ、もったいない。
「主演:アントニオ・バンデラス、監督:バズ・ラーマン」だったら、また評価は変わってたかも。
しっかし…♪じゃじゃじゃ〜ん♪と名曲「The Phantom of the Opera」を引っさげてファントムが出てくるシーンは、ダースベイダーが自らのテーマ曲で登場するシーンと同じく、観客の背中に戦慄を走らせますね。
舞台で充分じゃん、なんで映画化するんだろう?と思いつつ、ジョエル・シューマカーが監督で、アンドリュー・ロイド・ウェバーも関わっているならば、やはりチェックしないとなあ…というわけで、「オペラ座の怪人」を観に行ってきました。
■「オペラ座の怪人」The Phantom of the Opera(2004・米/英)
IMDb→http://us.imdb.com/title/tt0293508/
日本公式サイト→http://www.opera-movie.jp/
監督:ジョエル・シューマカー
脚本:ジョエル・シューマカー、アンドリュー・ロイド・ウェバー
出演:ジェラルド・バトラー、エミー・ロッサム、パトリック・ウィルソン、ミランダ・リチャードソン、ミニー・ドライヴァー、他
ストーリー:
1900年初頭パリ。1870年代のシャンデリアが、朽ち果てたオペラ座でオークションにかけられた。そのシャンデリアは、オペラ座で起きた怪事件によって破壊されたもの。やがて舞台は華やかな1870年代パリのオペラ座へ。駆け出し歌手クリスティーヌ(E・ロッサム)は、姿を現せないまま彼女を指導するファントム(J・バトラー)を「音楽の天使」だと信じていた。そんなある夜、クリスティーヌは代役で主役を演じることになり、オペラ座のパトロンで幼なじみのラウル(P・ウィルソン)と出会う。惹かれあうふたり。だが、人知れず密かにクリスティーヌを愛するファントムは激怒、オペラ座に怪事件が頻発する。そして――
ジョエル・シューマカーは、私の中でタイプの違う2人の監督として存在する。ただし、基本的に娯楽作がメイン、「ふたりとも若い子が好き」という共通点アリ。
1人目:「タイガーランド」「セント・エルモス・ファイアー」「フォーン・ブース」「ヴェロニカ・ゲリン」「フォーリング・ダウン」など、タイトな製作条件ながら面白くて小気味の良い作品(いわゆる「拾いもの」)を手がける監督。ドラマ系…群像劇がお得意?…その中でも「フォーリング・ダウン」は、もうひとりの監督に近い出来のキワモノ作かも。2に入れたほうがいいかなあ…。
2人目:「ロストボーイ」「バットマン・フォーエヴァー」「バットマン&ロビン」「8mm」…倒錯気味/狂ってるキャラクター・全体的に独特なビュジュアル・キッチュな色香が匂い立つ仕上がり――人よって好き嫌いがハッキリ出てしまう、そしてたまに「悪趣味!」とバッサリ斬られてしまう作品を手がける監督。でも私、「ロストボーイ」が大好きなんですよう♪…ってことは、私も悪趣味なのか…がーん。
で、本作の場合はそうだな〜…「やや控え目な2人目のシューマカー監督作」、あるいは「2人目作になり損ねた1人目シューマカー監督作」になるでしょうね。
それにしても「ファントム」って、こんなにトロい展開だったっけ?
ま〜だシャンデリアは落ちんのか!って思ってしまったじゃない。舞台版はいろいろと仕掛けが施されてたり、「マスカレード」などを生で観られるわけだから、やっぱ退屈しないってことか。
あとは…やはりジェラルド・バトラー演じるファントムがねぇ…。
映画版ファントムときたら、やたらと人間的な過去を背負っていてビックリ。あんな「エレファントマン」な生い立ちがあったなんて知りませんでしたよ。感情移入しやすくするための映画オリジナル設定でしょうが、そのせいで人間味が増し、不気味な迫力さや恐ろしさ、残虐ぶりは控え目となり、なんというかウチのとなりにお住まいの不幸なファントムさんという感じ。せっかくシューマカーなんだから、もっとアクが強い、もっとヘンタイ、もっと不気味な存在のファントムにしてもよかったのに。なのでここはひとつ、ファントム候補だったというアントニオ・バンデラスに、こってりと演じてもらいたかったなあ。
ほか、エミーロッサム演じるクリスティーヌはたいへん可憐なお声でしたが、お顔立ちが生来の笑い顔系なので、若ければ若いほど(可憐に見えて)いいという感じ。あえて云うならラウル役のパトリック・ウィルソンが1番「らしい」配役だったなと。でもこの人、私とたいして年が変わらないくせに、青年のように見えるわ、かといって「エンジェルス・イン・アメリカ」じゃあ、10歳も年上のはずのメアリー・ルイーズ・パーカーと夫婦役演じても違和感ないわで、スゴイっすね。
そして最もガッカリしたのは、「オルガンがひとりでに鳴り出すシーン」がなかったこと。私の見逃し?だったら、痛恨の見逃しだ!…あと「パーン!…暗転」があるかとワクワクして待ってたのに、ありませんでした…って、それは舞台だからこそ映える演出で、映画では効果的じゃないから、なくて当然か。
…と、ここまで書けば、本作が駄作だったように思われるのですが、舞台版を知ってる人はいろいろツッコミを入れたくなるだけで、基本的にストーリーに忠実だと思うし、逆に映画だからこそできるシーン――たとえば、朽ち果てたオペラ座でシャンデリアが浮かび上がったあと、1870年代の豪華絢爛オペラ座へと変わっていく場面はたいへん素晴らしく、アンドリュー・ロイド・ウェバーは、このシーンが観たくて映画化したんだろうと思ったほど。舞台じゃ絶対できないもんねぇ。
みんなが云うほど悪くはないし、シューマカーらしく平均ライン上に乗っかってる作品なのに、ケチをつける人が多いのは、ストーリーが基本的に忠実で仰々しいばっかりに、ブロードウェイや劇団四季などの舞台と比べて、やれ歌がどうの、装置がどうの、演出がどうのと云ってしまいがちになる――つまり映画としてピンで評価する人が少なかったからでは?
だったらもっとシューマカーNo.2節を出してもよかった、でもそうなると総スカンを食らう可能性もある、アンドリュー・ロイド・ウェバーだって製作に関わっている以上メンツがある、俳優陣は酷評されるほど悪くはないが印象に残らない、そうなるとなんだか上映時間が長く感じる――う〜ん。結局、悪くない、でも舞台の存在が大きすぎて損した作品。あ〜あ、もったいない。
「主演:アントニオ・バンデラス、監督:バズ・ラーマン」だったら、また評価は変わってたかも。
しっかし…♪じゃじゃじゃ〜ん♪と名曲「The Phantom of the Opera」を引っさげてファントムが出てくるシーンは、ダースベイダーが自らのテーマ曲で登場するシーンと同じく、観客の背中に戦慄を走らせますね。
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