「JM」
2005年5月15日
←みなさま――覚えておられますでしょうか?…今から約10年ほど前に、「『スピード』のキアヌ・リーブスと北野武が初共演!」と、我が日本でも鳴り物入りで公開されたこの作品のことを。今となっては完全に忘れ去られた本作ですが、当時の私めは、ウィリアム・ギブスン作「記憶屋ジョニィ」(短編小説)をベースにしていること、そしてギブスン自ら脚本を書いているということに大期待し、初日の初回、「サイバーパ〜ンク!」と口走りながらチケットを握りしめ、最寄り映画館まで観に行ったんですよ。そしたらね…I want ROOM SERVICE ! ………。涙出ました…。
■「JM」Johnny Mnemonic(1995・米)
IMDb→http://us.imdb.com/title/tt0113481/
監督:ロバート・ロンゴ
脚本:ウィリアム・ギブスン
出演:キアヌ・リーブス、北野武、ディナ・メイヤー、アイス・T、ドルフ・ラングレン、他
上映時間:107分
ストーリー:
近未来。自らの脳にチップを埋め込み、依頼された情報をそのチップに記憶させて運ぶ「運び屋」のジョニー(K・リーブス)は、北京である重要なデータを運ぶ依頼を受ける。だがそのデータは重く、ジョニーのチップ容量は完全オーバー。さらにDLするためのコードも失い、彼の生命は次第に危うくなる。そんなジョニーをヤクザのタカハシ(北野武)が執拗に狙う。ジョニーが記憶したデータはいったい何なのか――。
「サイバーパンクは死んだ。だが、俺の中で生きている」
が、全世界のキブスンファンの間で合言葉となってしまった本作。ギブスン自ら脚本化したんだから、ファンはもうなにも云えない。ええ、たしかに私の心の中でも生き続けてましたよ、でも相対的な面で死後硬直が続いちゃったことは事実。「マトリックス」までの約4年間、かっちんこっちん状態だったよなあ…(遠い目)。
ギブスンの脚本だけが問題なんじゃない。80年代に流行ったこの手のSF作品は、現代において映像化するならば、設定なりストーリーなりをその時代(=製作時)に即して再翻訳(再構成・再構築というか)をしないと、たいへん古臭いものになる。もともとぶっとんだ設定だしね。…いかにスタイリッシュにまとめるか――監督やクルーのセンスが最大限に要求される中、それがまったくないとなると、悲惨な結果が目にみえてくる。
たとえば「ターミネーター」や「マトリックス」だって、よくよくみれば実にB級臭い内容なのに、監督のジェイムズ・キャメロンやウォシャウスキー兄弟が、アイデアに自らの持つセンスを乗っけてA級に押し上げてる。みんな熱狂したでしょ?「マイノリティ・リポート」なんて、(好き好きはあるでしょうし、ディック臭はかなり控え目にもなってるけど)スピルバーグとクルーが丁寧に設定を再翻訳し、練り上げてるかがよくわかったもの。でも「JM」には、それらがカケラも感じられないだもんなあ…。
で、なにが当時の私にとって1番ショックだったかって、キアヌでもなく、世界のキタノでもなく、アイス・Tでもなく、ラングレンでもなく、ウド・キアでもなく、結局のところ――電脳空間(と書いて「サイバースペース」とルビを打つ!)の描写がたいへん陳腐だったってこと。もともと「記憶屋ジョニィ」には電脳空間が描かれていないため、ギブスンが追加したんでしょうが…あんなダッサイ空間だったわけ?…あんまりじゃんよう〜!だから「マトリックス」では余計に感動させられた私。
ストーリー(原作とは違う内容になってる)もなあ…悪くないんだけど、エピソードが単発すぎて弾まない。アクション映画にしたかったとか?…でもいったいどこが見所だとゆーのだ!?イルカか!?
キブスンの小説を読んだことがある人ならば、キャラクターやセリフ、小道具などで頷く部分がある。だけれども読んだことのない人にはチンプンカンプンだったのでは?…千葉市(と書いて「チバシティ」とルビを打つ!)って?筋肉増強移植ってナニ?あのカラフルなツメはいったい?なんでイルカ?…ってか、ほとんどイミなかったし。
そして今となっては一番のツッコミどころなのは、なにも人間の脳にそんなもの入れなくなって、ディスクに入れて持ち運べばいいじゃん、インターネット使ってボタンひとつポチっとな、で送信できるじゃん…ってところでしょう。でもね、人間の肉体を媒体にするところがギブスン節の特徴であり、原作だって80年初頭に出版されたSFなんだから、時代ががるのはどうしても仕方ないわけであって…ってか、あの当時はクールだったの!…ってことにしてちょうだい…。
いまの言葉でジョニーさんの設定を翻訳すると、ジョニーさんの脳は、DLにパスワードが必要な320GB限界のハードディスクになっている(いまや東芝製HDD-DVDレコーダーが600GBの時代…せめてギガをテラにしたら良かったかも…って、10年前だから仕方がないか)、その手術を受けるにあたってジョニーさんは、自分の幼い頃の記憶を犠牲にしている(なので昔の記憶がない)…という感じでしょうか。私だったら、この「昔の記憶を犠牲にしてる」ってところを幅広げて話を作るけどなあ。なんでサラっと説明するだけにしたんだろう?
――ああ、なんてこと!
こんな忘れ去られた映画について、長々と書いてしまったじゃない!…早急にまとめに入らねば。
サイバーパンクや近未来SFってのは、「凡庸なストーリーでセンスなし」だと非常にしんどい、そういえば基本的に凡作が少なく、「傑作・駄作・珍作」に分けられるカテゴリだよな、こりゃ当たりハズレが大きいはずだ…と思い知らされることになった作品。
ちなみに「JM」の翌年、懲りもせず「バーチュオシティ」を観に行き、見事玉砕。でも「バーチュオシティ」は、いま観ると別の意味でたいへん面白い作品だと思うので、物好きな方は「JM」と合わせてどうぞ。
■「JM」Johnny Mnemonic(1995・米)
IMDb→http://us.imdb.com/title/tt0113481/
監督:ロバート・ロンゴ
脚本:ウィリアム・ギブスン
出演:キアヌ・リーブス、北野武、ディナ・メイヤー、アイス・T、ドルフ・ラングレン、他
上映時間:107分
ストーリー:
近未来。自らの脳にチップを埋め込み、依頼された情報をそのチップに記憶させて運ぶ「運び屋」のジョニー(K・リーブス)は、北京である重要なデータを運ぶ依頼を受ける。だがそのデータは重く、ジョニーのチップ容量は完全オーバー。さらにDLするためのコードも失い、彼の生命は次第に危うくなる。そんなジョニーをヤクザのタカハシ(北野武)が執拗に狙う。ジョニーが記憶したデータはいったい何なのか――。
「サイバーパンクは死んだ。だが、俺の中で生きている」
が、全世界のキブスンファンの間で合言葉となってしまった本作。ギブスン自ら脚本化したんだから、ファンはもうなにも云えない。ええ、たしかに私の心の中でも生き続けてましたよ、でも相対的な面で死後硬直が続いちゃったことは事実。「マトリックス」までの約4年間、かっちんこっちん状態だったよなあ…(遠い目)。
ギブスンの脚本だけが問題なんじゃない。80年代に流行ったこの手のSF作品は、現代において映像化するならば、設定なりストーリーなりをその時代(=製作時)に即して再翻訳(再構成・再構築というか)をしないと、たいへん古臭いものになる。もともとぶっとんだ設定だしね。…いかにスタイリッシュにまとめるか――監督やクルーのセンスが最大限に要求される中、それがまったくないとなると、悲惨な結果が目にみえてくる。
たとえば「ターミネーター」や「マトリックス」だって、よくよくみれば実にB級臭い内容なのに、監督のジェイムズ・キャメロンやウォシャウスキー兄弟が、アイデアに自らの持つセンスを乗っけてA級に押し上げてる。みんな熱狂したでしょ?「マイノリティ・リポート」なんて、(好き好きはあるでしょうし、ディック臭はかなり控え目にもなってるけど)スピルバーグとクルーが丁寧に設定を再翻訳し、練り上げてるかがよくわかったもの。でも「JM」には、それらがカケラも感じられないだもんなあ…。
で、なにが当時の私にとって1番ショックだったかって、キアヌでもなく、世界のキタノでもなく、アイス・Tでもなく、ラングレンでもなく、ウド・キアでもなく、結局のところ――電脳空間(と書いて「サイバースペース」とルビを打つ!)の描写がたいへん陳腐だったってこと。もともと「記憶屋ジョニィ」には電脳空間が描かれていないため、ギブスンが追加したんでしょうが…あんなダッサイ空間だったわけ?…あんまりじゃんよう〜!だから「マトリックス」では余計に感動させられた私。
ストーリー(原作とは違う内容になってる)もなあ…悪くないんだけど、エピソードが単発すぎて弾まない。アクション映画にしたかったとか?…でもいったいどこが見所だとゆーのだ!?イルカか!?
キブスンの小説を読んだことがある人ならば、キャラクターやセリフ、小道具などで頷く部分がある。だけれども読んだことのない人にはチンプンカンプンだったのでは?…千葉市(と書いて「チバシティ」とルビを打つ!)って?筋肉増強移植ってナニ?あのカラフルなツメはいったい?なんでイルカ?…ってか、ほとんどイミなかったし。
そして今となっては一番のツッコミどころなのは、なにも人間の脳にそんなもの入れなくなって、ディスクに入れて持ち運べばいいじゃん、インターネット使ってボタンひとつポチっとな、で送信できるじゃん…ってところでしょう。でもね、人間の肉体を媒体にするところがギブスン節の特徴であり、原作だって80年初頭に出版されたSFなんだから、時代ががるのはどうしても仕方ないわけであって…ってか、あの当時はクールだったの!…ってことにしてちょうだい…。
いまの言葉でジョニーさんの設定を翻訳すると、ジョニーさんの脳は、DLにパスワードが必要な320GB限界のハードディスクになっている(いまや東芝製HDD-DVDレコーダーが600GBの時代…せめてギガをテラにしたら良かったかも…って、10年前だから仕方がないか)、その手術を受けるにあたってジョニーさんは、自分の幼い頃の記憶を犠牲にしている(なので昔の記憶がない)…という感じでしょうか。私だったら、この「昔の記憶を犠牲にしてる」ってところを幅広げて話を作るけどなあ。なんでサラっと説明するだけにしたんだろう?
――ああ、なんてこと!
こんな忘れ去られた映画について、長々と書いてしまったじゃない!…早急にまとめに入らねば。
サイバーパンクや近未来SFってのは、「凡庸なストーリーでセンスなし」だと非常にしんどい、そういえば基本的に凡作が少なく、「傑作・駄作・珍作」に分けられるカテゴリだよな、こりゃ当たりハズレが大きいはずだ…と思い知らされることになった作品。
ちなみに「JM」の翌年、懲りもせず「バーチュオシティ」を観に行き、見事玉砕。でも「バーチュオシティ」は、いま観ると別の意味でたいへん面白い作品だと思うので、物好きな方は「JM」と合わせてどうぞ。
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