←これは香港版DVD(リージョン3)のジャケット。ウォン・カーウァイ監督作「若き仕立て屋の恋」(原題:「The Hand」)が、デザインに選ばれています(ちなみに日本版レギュラーポスターも、これとほぼ同じ)。なんつーかその…ウォン・カーウァイ作品は、スクリーンに映し出される映像をそのまま切り抜いて1枚絵にしてもたいへん美しいため、ポスターやジャケットで使われると非常に人目を引きます。ですが映画の内容となると、その評価はいきなり真っ二つ、なんとも好みが激しく分かれちゃう監督だな…というイメージがあります。

■「愛の神、エロス」EROS(2004・米/伊/仏/中)
IMDb→http://us.imdb.com/title/tt0377059/
日本公式サイト→http://www.ainokami-eros.com/intro.html
監督:ウォン・カーウァイ、スティーブン・ソダーバーグ、ミケランジェロ・アントニオーニ
上映時間:109分

カンヌを制した3人の監督(ウォン・カーウァイ、スティーブン・ソダーバーグ、ミケランジェロ・アントニオーニ)が、「愛とエロス」をテーマに競作したオムニバス映画。3人ともあんまり好みじゃない監督なのに、短編映画好きとしてはどうしても好奇心が抑えきれず、結局観に行って来ました。そーいえば以前、「アート・オブ・エロス」という、監督別の似たようなオムニバス映画があったっけ…。

なお各作品の上映時間は、たぶん――

「カーウァイ作品>アントニオーニ作品>ソダーバーグ作品」

…と思われます(私の体内時計による測定)。

1.エロスの純愛〜若き仕立屋の恋 The Hand
監督:ウォン・カーウァイ
脚本:ウォン・カーウァイ
出演:コン・リー、チャン・チェン、他
ストーリー:
1960年代の香港。若き仕立て屋であるチャン(C・チェン)は、報われぬ愛を抱きながら、高級娼婦であるホア(G・リー)のために美しいドレスを作り続けていた。そして数年が経ち、チャンは腕を上げて一人前の仕立て屋に成長するが、逆に彼女は身を持ち崩して行く。そして――。

ウォン・カーウァイ作品って、タイトルが違うだけ、1本通して観れば、結局どれも(だいたい)同じなんだよなあ。近年作は特に。

お得意の60年代香港が舞台、ゆったりと流れるような美しいカメラワーク、官能的なチャイナドレス、見目良い男と女、汚いホテル、ひとの情事を覗き見するような感覚、電話で駆け引きする女、目が口ほどにものを云う男、軋むベッド、「花瓶に挿した椿の花がポロリと落ちた」ことで何があったか察して頂戴ね――そんなアングルを持ってる作品とゆーか。

たぶん、これもひとつのエゴイスト(自分の世界を持っている人、という意味)による作品なんでしょうが、ほかのエゴイスト監督と違って、こう似たような恋愛ものばかり毎回並べられてもねえ…とかなんとか云いつつ――今回は珍しくストーリーが感じられた仕上がりになってたかなと。

ただし。「ストーリーが感じられた」のは、最初の場面でこれからどんなストーリーになっていくかわかってしまうから。いつものようにアジア〜ンな官能に包まれた様式美最優先な作風でも、ストーリーを「察しなければいけない」ものではなく、誰にだって展開の予想がつくオーソドックスなものにすれば、そして短尺であれば、カーウァイ作品はかなりとっつき易くなるんだなと、実感させられたナリ。

ウォン・カーウァイは、あれもこれもと入れ過ぎる長編より、短編映画を撮ってたほうがいいんじゃない?――そんなことを思った作品。

2.エロスの悪戯〜ペンローズの悩み Equilibrium
監督:スティーブン・ソダーバーグ
脚本:スティーブン・ソダーバーグ
出演:ロバート・ダウニーJr.、アラン・アーキン、他
ストーリー:
1950年代のニューヨーク。広告プランナーのペンローズ(R・ダウニーJr.)は、毎夜青い服を着た女の夢を見、なぜそのような夢を見るのか、女が誰なのかを精神分析医パール(A・アーキン)に相談する。診察室のカウチに横たわり、夢の内容を話し出すペンローズ。だがパールは窓の外に気を取られており――。

な〜に小難しいことやってんだか。
考えすぎじゃない?

「夢」がモチーフのエロスだそうですが、私はちっともエロスなるものを感じませんでした。どーしてくれるの?…ったく。

抽象的な内容の短編映画なんざ世にゴロゴロしてるので、ストーリーや内容がワケわかんなくてもいい。本編をモノクロとカラーに分けたのはたぶん――「いったいどちらが夢だったのか?」ってことなんでしょう。モノクロな夢を見る人もいれば、カラーだという人もいるんだから。ただ、モノクロとカラーを分けてるだけ、特に凝ってるわけでもない映像を観続けるのは、内容が抽象的な分、至極退屈。

ここ数年のソダーバーグにはガッカリさせられる、やっぱりそんな出来だった作品。

3.エロスの誘惑〜危険な道筋 Il filo pericoloso delle cose
監督:ミケランジェロ・アントニオーニ
脚本:トニーノ・グエッラ
出演:クリストファー・ブッフホルツ、レジーナ・ネムニ、ルイザ・ラニエリ、他
ストーリー:
現代のイタリア、トスカーナ。アメリカ人である夫クリストファ(C・ブッフホルツ)は、イタリア人で妻のクロエ(R・ネムニ)との仲が冷えているのを感じていた。ある日、ふたりはドライブに出かけるが、いつものように口ゲンカをしてしまう。怒ったクロエは先に帰り、クリストファはひとり残される。そんな彼の前に、灯台に住む若い女(L・ラニエリ)が現れ、ふたりは関係を持ってしまう――。

前半まではガマンして観てたけど、クライマックス、浜辺で女性が全裸になって踊りだしたところで――「そりゃないよ」とガッカリ。まさか「ダンスがエロティシズムを表現してる」とか云わないでしょうね? ………。

アントニオーニは今年93歳だそうですが、同い年でも新藤兼人の描くエロスのほうが、アントニオーニよりはるかに上じゃん…って、比較になんないか。系統違うし。

じっさまによるゲージツ的なエロスを悟るには、まだ私は小娘だってことね…と実感させられた作品。

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年5月  >>
27282930123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

お気に入り日記の更新

日記内を検索