「旅立ちの時」
2005年10月21日
←今年3月(だっけ?)、アカデミー賞受賞式を見ていたら、いつの間にかトリビュートが始まり、この「旅立ちの時」の映像――リバーが走っている場面が流れてドキっとしてしまいました。いったいなぜ?と思ったら、シドニー・ルメット監督が名誉賞を受賞するにあたり、過去に彼が手がけた作品を流したからで、そういえばリバーは、この映画のダニー役でアカデミー助演男優賞にノミネートされたっけなあ…と、懐かしい思い出が蘇ってきました。たしか昨年放送された「アクターズスタジオ・インタビュー」で、イーサン・ホークが、「リバーがノミネートされたと聞いたときは、ものすごく焦ったよ」と云ってましたよね。ブラットパック時代が終わりを告げたあのころ、リバーが若手の筆頭株でしたから。それが本人を苦しめるひとつの要因になっていたことは、当時まったく気付きませんでしたけど。
■「旅立ちの時」Running on Empty(1988・米)
IMDb→http://us.imdb.com/title/tt0096018/
監督:シドニー・ルメット
脚本:ナオミ・フォナー
出演:クリスティーン・ラーチ、リバー・フェニックス、ジャド・ハーシュ、マーサ・プリンプトン、他
上映時間:111分
ストーリー:
60年代に反政府運動をしていたため、指名手配を受けている両親と暮らすダニー(R・フェニックス)。一家は名前を変え、各地を転々としながら逃亡生活を送っていた。そんなある日、ダニーは転校先の音楽教師フィリップスにその才能を見出される。だが、音楽学校への進学は、家庭の事情で叶いそうにない。そんなダニーを見て、なんとかしてやりたいと思う母アニー(C・ラーチ)だったが、あるきっかけで一家はまた局面を向かえることになり――。
「大人への階段を誰よりも早く上らねばならない、どこか影を持つ、アウトサイダー的なティーンエイジャー」。
それは、当時のリバーがもっとも得意とした――かどうかは、もう本人に訊けないから実際のところはわからないけど――そして、もっともスクリーンに映えたキャタクター。
リバー・フェニックスが、他の若手俳優と一線を画していたのは、類稀な美貌を持っていたからだとか、ハリウッドの異端児だったからだけでなく、なにを演じてもやっぱり本人そのままに見えてしまう、それを演技力からくるものだと評価していいのかがわからない――云い換えれば、キャラクターを完全に取り込んでしまったリバー本人を見ているような、実際に同一性の高い役柄を選んで演じているような――そんな感性と個性を持った俳優だったから。
映画自体の評価や出来や個人の好みは別として、彼自身に対する世の評価が高い作品(「スタンド・バイ・ミー」「モスキート・コースト」「旅立ちの時」「マイ・プライベート・アイダホ」)を並べると、やっぱりそういう感性や個性が彼の最大の魅力だったんだろうな…としみじみ思う。
この「旅立ちの時」は、一見普通の家族、でも実は大きな秘密を抱えていた…という点では、「リトル・ニキータ」とよく似た設定を持っているけれど、出来となるともう雲泥の差。
それはやはり、家族を取るか夢を取るかの板挟みで悩む少年ダニー、過去の罪に対して葛藤する両親、それぞれの立場が丁寧に描かれている脚本があった上で、キャスティングはイメージ通り、クライマックスで観客の目をどこに誘う(いざなう)か、シドニー・ルメットがツボを押さえた的確な演出をしてるからだと思う。
60年代の反政府運動なんてピンと来ない人もいるだろうし(私含む)、この手のせつない家族ドラマ、繊細な少年の心を描いたストーリーが苦手だったり、両親が下した決断に逃げを感じてイヤな人もいるでしょう。
それでも映画としては上質の部類に入ると思うし(米国の有名な映画評論家ロジャー・エバートは、本作を1988年のベスト10に選出してます)、もしいまティーンエイジャーで、リバー・フェニックスに興味のある子がいるならば、リバーファンのおねーさんとしては――やっぱりオススメしたい1本、かな。
■「旅立ちの時」Running on Empty(1988・米)
IMDb→http://us.imdb.com/title/tt0096018/
監督:シドニー・ルメット
脚本:ナオミ・フォナー
出演:クリスティーン・ラーチ、リバー・フェニックス、ジャド・ハーシュ、マーサ・プリンプトン、他
上映時間:111分
ストーリー:
60年代に反政府運動をしていたため、指名手配を受けている両親と暮らすダニー(R・フェニックス)。一家は名前を変え、各地を転々としながら逃亡生活を送っていた。そんなある日、ダニーは転校先の音楽教師フィリップスにその才能を見出される。だが、音楽学校への進学は、家庭の事情で叶いそうにない。そんなダニーを見て、なんとかしてやりたいと思う母アニー(C・ラーチ)だったが、あるきっかけで一家はまた局面を向かえることになり――。
「大人への階段を誰よりも早く上らねばならない、どこか影を持つ、アウトサイダー的なティーンエイジャー」。
それは、当時のリバーがもっとも得意とした――かどうかは、もう本人に訊けないから実際のところはわからないけど――そして、もっともスクリーンに映えたキャタクター。
リバー・フェニックスが、他の若手俳優と一線を画していたのは、類稀な美貌を持っていたからだとか、ハリウッドの異端児だったからだけでなく、なにを演じてもやっぱり本人そのままに見えてしまう、それを演技力からくるものだと評価していいのかがわからない――云い換えれば、キャラクターを完全に取り込んでしまったリバー本人を見ているような、実際に同一性の高い役柄を選んで演じているような――そんな感性と個性を持った俳優だったから。
映画自体の評価や出来や個人の好みは別として、彼自身に対する世の評価が高い作品(「スタンド・バイ・ミー」「モスキート・コースト」「旅立ちの時」「マイ・プライベート・アイダホ」)を並べると、やっぱりそういう感性や個性が彼の最大の魅力だったんだろうな…としみじみ思う。
この「旅立ちの時」は、一見普通の家族、でも実は大きな秘密を抱えていた…という点では、「リトル・ニキータ」とよく似た設定を持っているけれど、出来となるともう雲泥の差。
それはやはり、家族を取るか夢を取るかの板挟みで悩む少年ダニー、過去の罪に対して葛藤する両親、それぞれの立場が丁寧に描かれている脚本があった上で、キャスティングはイメージ通り、クライマックスで観客の目をどこに誘う(いざなう)か、シドニー・ルメットがツボを押さえた的確な演出をしてるからだと思う。
60年代の反政府運動なんてピンと来ない人もいるだろうし(私含む)、この手のせつない家族ドラマ、繊細な少年の心を描いたストーリーが苦手だったり、両親が下した決断に逃げを感じてイヤな人もいるでしょう。
それでも映画としては上質の部類に入ると思うし(米国の有名な映画評論家ロジャー・エバートは、本作を1988年のベスト10に選出してます)、もしいまティーンエイジャーで、リバー・フェニックスに興味のある子がいるならば、リバーファンのおねーさんとしては――やっぱりオススメしたい1本、かな。
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