地元の本屋さんでことごとく西田狩りに失敗し(中略)――あ、ちょっと待って!これは新書館から出てるのね?…じゃあ比較的大丈夫だ!(…ってなにが?)

■『影あるところに』
ISBN:440366105X コミック 西田 東 新書館 2005/02 ¥580
外科医・中道の医局にやってきた調子のいい後輩・堤は、脳梗塞で倒れた院長の息子。その院長とつき合っていた中道は、居心地が悪い。そんな折、院長は他界する。父親を奪った相手として憎みながらも、中道を心配する堤は、彼に以前の笑顔を取り戻してほしくて……。描き下ろしも収録した、西田印、大人のビター・スイート・ラブ!!

西田東による医者モノ長編。
くろこお姉さまご推薦の1冊ですが――これは面白い!

中道の堤院長に対する思いがせつない。彼は本当に院長のことを好き…じゃない、愛してたんだね。

院長の家庭が円満だったのか、はたまた崩壊していたのか、仮面夫婦だったのかはわからないけど、男の愛人作っておきながらそのまま「奥さんを大事にしていた」(中道談)あたり、院長はズルイ男といえる。実際、院長にとって中道は理想的で都合のいい愛人だったのかもしれないけど、中道自身はそんな院長をまったく責めていないし、恨んでもいない。それどころか、中道の行動や言動から、読み手は「院長はズルイ男なんじゃなくてとても素晴らしい人だったんじゃないか、だって中道がこんなにホレてるんだから」と、ズルイはずの院長に好印象まで持ってしまう。それほど中道の愛に説得力があって、またそんな彼の誠実さに、読者(つーか、私だ私!)はしみじみと感動するんだろうね…。

愛する人を失って悲しむ主人公、果たして次の恋はやって来るのか――という設定は、別にBLに限らなくたって、一般マンガでもよく見かける。でもこの作品ほど、主人公の失った愛がどれほど素晴らしく、大きく、そして深いものであったかを読者にしみじみと訴えかけるマンガなんて、なかなかお目にかかれないよ。

院長の息子が出てきて、中道と恋愛に発展していく過程も面白い。仕事はできるくせに院長がいないとダメだった男が、いかにして再生し、ひとりだちをしていくのか。うん――再生・成長・恋愛の物語だね。影あるところに光あり。光がなくなれば、影どころか暗闇の世界になってしまう。そんな暗闇の世界に立ってたはずなのに、ふと気が付けば、自分のまわりに影ができていた。いま自分を再び照らしてくれるこの光とは?――素晴らしいタイトルだ〜。

エピソードの間にあるほんわかギャグが、またいい味出しててgood。プラスティック製のおもちゃ風な背景ビルディングも愛おしくなってきた(←バカにしてないからね。西田マンガに森田まさのりみたいなリアルな背景がついてたら、逆にヘンでしょ?)。

ただね――感動的な場面なはずなのに、思わずツッコミしたくなるところが、ポロポロと出てくるんだよなあ。

(たいしたネタバレはしてませんが、少しでも気になる方は以下ご注意下さい)

病院内で悲しみに暮れる中道の独白――「このまま世界が終わってしまえばいい…いますぐ…ここを誰か…」ときて、「爆破してくれ!」…え〜〜〜!?爆破!?いきなり爆破なんですか!?>西田先生 ちゅど〜んっ!!

出棺の前、御棺に入れるお花を渡される人々――って…え〜〜〜〜!?そのお花、薔薇なんですか!?しかも茎の長い薔薇…こういうときのお花って、短く切った菊が定番なんじゃないんでしょうか??まあ、薔薇はある意味彼らにとってピッタリ(…)とも云えるんですが。

そして最後のほうでナゼいきなり体毛の話に??…もしかしてあとがきマンガでチラリと見えたように、このマンガが連載された『Dear+』誌は、毎月「○○特集」といったお題があるBL誌なんでしょうか?…そしてちょうどそのとき「剛毛特集」だったんでしょうか?「爆破特集」「薔薇特集」なんてのもあったのかな…。

私、西田信者に殺されるかも…。

評価:★★★★
こんなにホメといて星4つ?――自分の弱いツボを直押しされた完全好みな作品というより、自分にこんなツボがあったんだ〜と、思いがけずツボ開拓されてしまった作品だから。

NO STAR … 論外/問題外作
★ … お好きな人はどうぞ。
★★ … つまんない。
★★★ … 退屈はしないしけっこう面白い。
★★★★ … 面白い。佳作/秀作。
★★★★★ … 天晴れ。傑作。

コメント

はゆた
HAYUTA
2006年9月12日16:04

私も【新書館】からのこれは好きです〜(←何気に「新書館」を強調)。 
西田東作品について続々とアップされる、秋林さんの感想が待ち遠しい今日この頃なんです。ふふ〜♪

秋林 瑞佳
秋林 瑞佳
2006年9月12日22:20

>(←何気に「新書館」を強調)。 
はははは♪…私も強調しちゃいます♪

感想はですね、家に帰ってきてからコツコツ書いてます。ちょっといま目の具合があまりよくないので、「以下続く」がちになってしまいますが。

でもBL感想文を書くと、一気に男性陣は引いちゃうようで…いま当ブログにアクセスして下さってるのは、女性陣がメインでしょうね♪…女の園だ〜い♪

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