■「ナイロビの蜂」 The Constant Gardener(2005)
IMDb→http://www.imdb.com/title/tt0387131/
日本公式サイト→http://www.nairobi.jp/
DVD 日活 2006/11/10 ¥3,990
静かなる良人(おっと)ジャスティンによる、女ゲバラな妻テッサへの愛を綴った物語。
「長編小説が原作の、異国情緒豊かなアフリカを舞台にした、英国夫婦のロマンス映画」だと思っていたので、ベルトルッチの「シェルタリング・スカイ」や、ミンゲラの「イングリッシュ・ペイシェント」みたいだったらどうしよう…とマジで心配していたんだけれど、ある程度の情報を得てのち観に行ってみれば、「社会派ドラマとロマンスの融合――ロマンスのレンズを通して見られた社会派ドラマ」という位置づけの映画だった。
ただ個人的には、社会派ドラマというより、せつなく美しいラブストーリーとして覚えておきたいかな…。やっぱり私も女なので、一途に妻を思う夫(しかも演じるのはレイフ・ファインズだし)というのには弱いのよ。
監督は、ブラジル国籍のフェルナンド・メイレレス(「シティ・オブ・ゴッド」)。ナルホドなあ、上手いよなあ。もしこれがアンソニー・ミンゲラ(英国人)だの、ジェイムズ・アイボリー(この人は米国人)だのといった、ブンゲイ作品お得意な欧米人が撮っていたらば、私もいままでよ〜く観てきた、お決まりな英国、異国情緒が豊か過ぎるアフリカになっていたように思う。
ところがメイレレスは、英国もブラジルも一緒。英国の上流階級は乾いたグレーの世界、スクリーンに映るアフリカは、太陽は黄色く、空は澄んでいるけど、どこか無機質で憂鬱な感じ。汗が流れ落ちてくるような暑い国には思えない。とてもクールで乾いている。似たような撮り方をする人で、アンドリュー・ニコル(「ロード・オブ・ウォー」)がいるけど、彼のようにスノッブなスタイリッシュさはなくて、血は残されてる。だからなのか、ストーリーが進むにつれわかってくるテッサの情熱、綺麗なのは表面だけで、裏は汚い社会に殺された妻を追い求めるジャスティンの姿に、心打たれてしまった。
真実を追い求めるうち、死んだ妻をどんどん愛していく良人――同じ女だからなのか、私はジャスティンがなぜテッサを、というより、テッサがなぜジャスティンを愛したのかがわかる気がする。
勝てないかもしれないけど不正には黙っていられない、先はわからないけれど、まだ自分は走り続けることができる、でも巨大な相手に押しつぶされそうで、どうしたらいいかわからない。そんなときにパートナーが同じく熱い人ならば、疲れてしまう。趣味は庭じり、平凡だけど善良な良人(おっと)、なにも知らないまま優しく自分を包んでくれる――テッサはそういうジャスティンに救われていて、自分を救っていることの自覚がないままの彼が好きだったんだと思う。
クールだからこそ、重苦しい悲壮感に覆われたラストにはならず、血が通っているからこそ、ふたりのロマンスは美しく、そしてただただせつない……絶妙だね。
それにしても、第三世界と先進国が絡んだ問題を取り扱った映画が増えたよなあ(昨年は「ロード・オブ・ウォー」、今年だったら「ホテル・ルワンダ」「イノセント・ボイス」あたり)。ドキュメンタリーにせず、エンタテイメントを感じさせる映画となると、そのさじ加減は難しいんだろうな…。
IMDb→http://www.imdb.com/title/tt0387131/
日本公式サイト→http://www.nairobi.jp/
DVD 日活 2006/11/10 ¥3,990
外交官のジャスティン(レイフ・ファインズ)は、妻テッサ(レイチェル・ワイズ/本作でアカデミー賞助演女優賞を受賞)と駐在先のナイロビで暮らしていたが、ある日突然テッサが殺人事件で死亡したとの知らせが届く。疑念に駆られて真相を究明しようとするジャスティンは、やがて世界的な陰謀と対峙(たいじ)することになってしまう…。
静かなる良人(おっと)ジャスティンによる、女ゲバラな妻テッサへの愛を綴った物語。
「長編小説が原作の、異国情緒豊かなアフリカを舞台にした、英国夫婦のロマンス映画」だと思っていたので、ベルトルッチの「シェルタリング・スカイ」や、ミンゲラの「イングリッシュ・ペイシェント」みたいだったらどうしよう…とマジで心配していたんだけれど、ある程度の情報を得てのち観に行ってみれば、「社会派ドラマとロマンスの融合――ロマンスのレンズを通して見られた社会派ドラマ」という位置づけの映画だった。
ただ個人的には、社会派ドラマというより、せつなく美しいラブストーリーとして覚えておきたいかな…。やっぱり私も女なので、一途に妻を思う夫(しかも演じるのはレイフ・ファインズだし)というのには弱いのよ。
監督は、ブラジル国籍のフェルナンド・メイレレス(「シティ・オブ・ゴッド」)。ナルホドなあ、上手いよなあ。もしこれがアンソニー・ミンゲラ(英国人)だの、ジェイムズ・アイボリー(この人は米国人)だのといった、ブンゲイ作品お得意な欧米人が撮っていたらば、私もいままでよ〜く観てきた、お決まりな英国、異国情緒が豊か過ぎるアフリカになっていたように思う。
ところがメイレレスは、英国もブラジルも一緒。英国の上流階級は乾いたグレーの世界、スクリーンに映るアフリカは、太陽は黄色く、空は澄んでいるけど、どこか無機質で憂鬱な感じ。汗が流れ落ちてくるような暑い国には思えない。とてもクールで乾いている。似たような撮り方をする人で、アンドリュー・ニコル(「ロード・オブ・ウォー」)がいるけど、彼のようにスノッブなスタイリッシュさはなくて、血は残されてる。だからなのか、ストーリーが進むにつれわかってくるテッサの情熱、綺麗なのは表面だけで、裏は汚い社会に殺された妻を追い求めるジャスティンの姿に、心打たれてしまった。
真実を追い求めるうち、死んだ妻をどんどん愛していく良人――同じ女だからなのか、私はジャスティンがなぜテッサを、というより、テッサがなぜジャスティンを愛したのかがわかる気がする。
勝てないかもしれないけど不正には黙っていられない、先はわからないけれど、まだ自分は走り続けることができる、でも巨大な相手に押しつぶされそうで、どうしたらいいかわからない。そんなときにパートナーが同じく熱い人ならば、疲れてしまう。趣味は庭じり、平凡だけど善良な良人(おっと)、なにも知らないまま優しく自分を包んでくれる――テッサはそういうジャスティンに救われていて、自分を救っていることの自覚がないままの彼が好きだったんだと思う。
クールだからこそ、重苦しい悲壮感に覆われたラストにはならず、血が通っているからこそ、ふたりのロマンスは美しく、そしてただただせつない……絶妙だね。
それにしても、第三世界と先進国が絡んだ問題を取り扱った映画が増えたよなあ(昨年は「ロード・オブ・ウォー」、今年だったら「ホテル・ルワンダ」「イノセント・ボイス」あたり)。ドキュメンタリーにせず、エンタテイメントを感じさせる映画となると、そのさじ加減は難しいんだろうな…。
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