■「硫黄島からの手紙」Letters from Iwo Jima(2006・米)
IMDb→http://us.imdb.com/title/tt0498380/
日本公式サイト→http://wwws.warnerbros.co.jp/iwojima-movies/
1944年、陸軍中尉・栗林が硫黄島に降り立った。本土防衛の最後の砦の硫黄島だったが、場当たり的な作戦と非情な体罰により、兵士たちは疲労と不満が渦巻いていた。ところが栗林は違った。アメリカ留学の経験があり、敵国を知り尽くした男は、体罰をやめ、島のすみずみまで歩き、作戦を練りに練った。そして米国が来襲。硫黄島は5日で落ちると予想されていたが、壮絶な闘いは36日間にも及んだ。しかし、その闘いで兵士たちは何を思ったか。それは61年後に掘り起こされた、出されることのなかった家族への手紙にしたためられていた…。

「硫黄島からの手紙」を観てきました。

エンドロールが終わってからも涙が止まらず――下を向きながら映画館を出ました。スクリーンに映し出されていたものが、ジャパンでもニッポンでもジパングでもない――紛れもなく日本だったからです。

邦画では散っていく姿の美しさ、洋画では日本のカミカゼぶりにうんざりさせられることも多い戦争映画ですが、「お国のため」ではない、いまを生きる私たちのように、「生き延びたい、家に帰りたい」と生に執着する二宮くん演じる西郷の視点がメインだったこともあって、このハリウッド製の「日本映画」にはそういった過剰な美化は一切なく、強いられる自決の不条理さ、米兵を助ける日本兵に、邪魔だからと日本捕虜を殺す米兵の対比など――描かれた数々のエピソードから、戦争の虚しさや愚かさといったものが、シンプルかつストレートに、そしてフェアに伝わってきました。

もっと生きたかったろうと思います。
もっと生きていて欲しかったと思います。

これはまさしく硫黄島で戦った人たちへのトリビュート作品です。

↓クリント・イーストウッドからの手紙(公式サイト)
http://wwws.warnerbros.co.jp/iwojima-movies/letter/index.html
(一読をオススメします)

日本軍の中には、栗林中将やバロン西のような西洋的な思考を持つ者もいれば、中村獅童演じる伊藤のようなステレオタイプな日本兵もいた――それだけで終わらず、彼らひとりひとりにドラマが用意されていたことにたいへん驚きました。どうしてあれだけ描くことができたのか。トンチキジャパンが多いだけに、イーストウッドの凄さをまざまざと感じさせられました。

「父親たちの星条旗」も面白くてよくできた映画ですが、時間軸を交差させるいまどきの脚本(書いたポール・ハギスは素晴らしいですね)と構成だったせいか、イーストウッド作品の中でもなんだか妙に複雑でテクニカルな印象が強く、「硫黄島からの手紙」のほうがより彼らしいというか――この…淡々と穏やかに燃える内炎を見つめるかのような感覚にさせられるところは、やはりイーストウッドの真骨頂なんだなと思いました。シンプルな旋律のスコアも心に深く残ります。

【内炎 ないえん】
ほのおの内層。可燃性気体が集まって不完全燃焼をしている部分で、外炎にくらべ温度が低い。還元炎。(『大辞林 第二版』)

↓「ミリオンダラー・ベイビー」のちょっとだけ感想
http://diarynote.jp/d/25683/20050830.html
(年間ベストの1本です)

米国での興行は期待できないだろうに、その上さらに、使用言語を英語ではなく日本語にしてまでこの映画を作ってくれたイーストウッドとスピルバーグに、心から感謝したいと思います。

ジェイムズ・ボンドを演じるのが英国(系)俳優であるのと同様、日本人役を日本人俳優が演じないと日本にならないことを、ハリウッドにはもっともっと知って欲しいです。二宮くんがとくに褒められているようですが、日本人俳優はみな素晴らしく、私は誇りに思います。

日本人だけでなく、ひとりでも多くの米国人にこの映画を観てもらいたいですね…。

追記するかもしれませんが、とりあえず簡単な感想でした。

コメント

codomo
codomo
2006年12月11日23:51

裕木奈江の年齢知らないんですが、二宮くんとひとまわりくらい違う?
ちょっと違和感ありますよねぇ。今の時代ならそんな歳の差カップルも
アリかもしれないが。

秋林 瑞佳
秋林 瑞佳
2006年12月12日21:56

裕木奈江に対しては、その配役や演技にまったくケチをつける気はなくて、逆に「そうだろうなあ」と納得してます。

とゆーのも、海外では二宮くんがティーンエイジャーに見えるはず。でも彼の演じた西郷は妻子持ち(西郷は年齢がもっと上の設定だったところを、イーストウッド監督が二宮くんを抜擢した時点で年齢を変更したと聞いています)。ここで実際の二宮くんに合った年齢の女優さんを配すれば、かなり幼い夫婦に見えてしまうと思うんです。彼よりある程度年齢が上で童顔の女優さんを使えば、落ち着きが出るはず。なので欧米人には二宮くんよりちょっと上くらいしか(スクリーン上では)見えないだろう裕木奈江ってのは、よくわかる配役なんですけどね……彼女が35歳、二宮くんが23歳と知ってる私には、「うわ〜…スゴイ差だわ」と思っちゃうわけです。

「これは私が彼女の年齢を知ってるがゆえ、だろうけど」というのはそういう理由からです。

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