■『ラブシック』
ISBN:4062559218 文庫 橘紅緒(挿絵:笹上) 講談社 2006/12/02 ¥609
「俺はあんたのなに?」ボーイズバーで働く奥菜朗の前に、客と一緒に現れた男は、朗が夏に別れた恋人、赤穂万里だった。一年前に出逢い、あっという間に恋に落ちた。魅力的なぶん、厄介な相手だとわかっていても、気持ちを止めることはできなかった。とてもとても好きで、夢中だった。そう、万里のてひどい裏切りを知るまでは…。ほろ苦く、そして甘い恋の物語、ついに登場。
注:たいへん長くなってしまったので、「ダイジェスト」を外しました。

表紙カバー絵に、万年青コーナー腐女子も完全ノックアウト、よろよろよろよろ…(中略)めいて、密林ポチリにて購入。表紙は男ふたりでも、あまりベタベタしない構図にクールでシブイ配色、タイトル文字はシンプルにキメた白ゴシック体で、明朝体を選択していないところが素晴らしい。実に心憎いデザインだ。最近こーゆーのが少ないからホント貴重。←でリンクしているはゆたさん同様、私も「イラストは無きゃ無いで読みますが、あるとどうしても色々と左右されがちです」なため、装丁だけなら文句ナシ★★★★★。挿絵担当の笹上さんって初めて見るけど、「スクリーントーン多めの高階佑」という感じで、なかなか良い。いい人を見つけてくれたよ、ありがとう!>講談社

!以下、ネタバレ注意報!

…と、装丁のホメはさておき。あらすじに目を通すと、なにやらたいへんせつない恋物語のようだったので、そーゆーのが大好きな私は、イラストによる相乗効果もあり、かなり期待して読み始めたのだが、攻氏の万里(ばんり)がなあ…。リッチで生活感がなく、外国の血が入っている美しい優男という設定は、(好みではないけど)まあいいとして、「…なの?」「…ってこと?」などと、会話がほとんど疑問形で進むもんだから、え〜い!このオレ様がキサマに日本語を教えてやる!と、終始イライライライラ…(中略)イラ。イラついては落ち着いてエロも読めないということを教えてくれた1本である。

がしかし、つかみどころがないフシギちゃん優男がなにより好物で、そんな攻に傷つけられながら振り回されてしまう受、というシチュエーションが好きな人には、ストライクゾーンど真ん中といえるので、オススメしておこう。

ストーリーを簡単に云ってしまうと、「当て馬を投げられたのに、いつの間にか好きになってしまった」系か。ただし、主人公・朗(ロウ)の姉でキーパーソンでもあるはずの奈帆の描写が甘く(彼女のイラストすらない!)、BLにありがちな「女に魅力がない」ため、いっそのこと姉ではなく兄という設定のほうがよかったのでは?…せっかくBLなんだし。

あとたいへん残念なのは、一度別れたふたりの間に流れた時間が短すぎるため、朗のせつなさが心に響かないこと。「一年前に出逢い、あっという間に恋に落ちた」ふたり。でもその恋は8ヶ月しか持たず、冒頭の再会シーンから4ヶ月前に終わっていた…って、そんな、たった4ヶ月後に再会って短すぎるでしょ!…せめて1年、できれば2〜3年、5年以上でもいい。たった4ヶ月では、再会シーン後に描かれるであろう「このふたりの過去にいったいなにがあったのか」「再び恋に落ちるのか」に、興味(いや、「萌え」か)が薄れる。再会も出会ったときと同じクリスマスにしたいのはわかる、でもそれは別れて何年後かでもいいはずで、「あの年のクリスマスも〜」と出だしたほうが、胸キュンだと思うんだが。金持ちのボンである朗がホストになってしまうほど(源氏名でなく本名でホストやってるなんて信じられないけど)、ふたりの間にはなにかあったはず。おかげで、フラッシュバックを狙っただろう時間軸を前後させた文章も、その効果がさほど感じられない。もったいない。

あの頃は若かった、でもいろいろ経験して大人になった、そして再会。ふたりの間に流れた時間が、二度目の恋にせつなさを与える――たとえ攻がフシギちゃん優男でも、そんな風に描いてくれたらば、また別の印象や評価を持ったと思う。

評価:★★☆
「つまんない」とは云えない…けど、面白いとも云えない。「もうちょっとなんとかなったのでは?」という印象。でもこれはこれでいいのかもしれない。せつなさに基準はないのだから。

NO STAR … 論外/問題外作
★ … お好きな人はどうぞ。
★★ … つまんない。
★★★ … 退屈はしないしけっこう面白い。
★★★★ … 面白い。佳作/秀作。
★★★★★ … 天晴れ。傑作。

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年5月  >>
27282930123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

お気に入り日記の更新

日記内を検索