■『秘書の嗜み』
ISBN:4862632076 鳩村衣杏 リブレ出版 2007/07 ¥893
奈良千春画伯のリブレデビュー本である。
あのリブレが画伯に目をつけないわけがない、いつかお目見えするだろうとは思っていたが、画伯といえば、「キラキラ黒紫系な表紙めくって、カラー口絵と裏表紙を見て、下を向いて終わる」レーベルでのお仕事が多かっただけに、「ホップでエッチ、セレブとイケメン」その華やかさでは業界No.1レーベルであるBBN、しかも絵付け先作家は「働く男、特殊リーマン専科」シャレードで定評のある鳩村衣杏とくれば、これは鬼畜でもヤクザでもマフィアでもないはず、うわ〜ん!画伯がフツーのリーマンものなんてぇえええ〜!…と、秋林、アニメイト(ヴィレッジヴァンガードに置いてくれ!)にてひとり感慨もひとしお、本作を手に取り、いつもの「画伯チェック」を(念のため)しようとしたら――
シュリンクかかっていて開けられなーいっ!!
………。
事前チェックができないのは心もとなかったが、書き手が鳩村衣杏なので無体なことはないだろう(たぶん)…という直感のもと、そのままレジへと直行、お買い上げ893円也。以下、感想。
!たいしたネタバレはありませんが、念のためネタバレ注意!
「社内一ナンパ男×カタブツ秘書」ちょっとしたツンデレ系、且つ、押しかけ男房攻(?)なリーマンもの。一見すちゃらかナンパ男でも仕事がデキる攻、カタブツな受、というパターンはBLにおいてありがちだが、「夜は社長の淫愛に翻弄されること」などとゆー、やたらインビに持って行きたがっているオビ惹句、そして、エロ系絵師(だと思われてる)奈良画伯に騙されてはいけなーい!本作はコメディタッチながらも、真っ当なリーマンものであーる!
主人公・誉(ちなみにメガネくん)の、滅私奉公で時代錯誤的な秘書ぶりが実に楽しい。なにもそこまで…と思うのだが、実生活でOLやってる私に云わせれば、会社に尽くしきってるマジメなリーマンというのはけっこういて、「定年になったら、この人はどうなるんだろう?」とつい心配になってしまう人がいたりする。誉もそのタイプ(極端だけど)なんだが、本作で注目すべきは、及川がラブアタックだけの攻ではなく、そんな誉の軌道修正をしているという点だ。プライドを傷つけないよう、まわりを見ながら、さりげなく誉を諭していく。もちろん個性を潰さずに。木を見ず森を見るタイプだな。う〜む、ウチのオフィスにも及川が欲しい。
そして、誉の部下である女性陣の好感度も高い。彼女たちが云っていることが私にはよくわかる。うん、そうなんだよね――「厳しい意見をぶつけてくれるのは、同等に扱ってくれてる証拠、期待されてるから」――面白いリーマンBL小説は、OLがイキイキと描かれているように思える。それはさらにOL系腐女子の共感を呼ぶ。その傾向がマンガより小説のほうに顕著なのは、作家業だけでなく、会社員やってる/やってた人が多いからなのかもしれない。鳩村センセがそうであるかはわかりません。念のため。
誉と及川の話に戻るが、ふたりの関係がラブに発展する経過は自然であり、誉が及川を認めていくエピソードの数々も、ナルホド説得力があり、面白い。そしてだれもいない駅待合のシーン。読んでいて、しっとりとした気分にさせられた(画伯の挿絵がまたいい雰囲気で…くうう!!バンバンバンバンバンっ!←机を叩く音)。上手いね。ただエロシーンになると、及川が甘すぎて私にはちょっと鬱陶しいのだが…誉みたいなカタブツタイプには、あれくらい甘いほうがいいのかもしれない。鬱陶しくても、私の好きな年下攻であることには変わりない。文句は(私にしては珍しく)云わないでおくか。
さすが鳩村衣杏、安心して読めるリーマンものな1本。
評価:★★★(なかなか面白い)
「えー!?けっこうホメてたのに三ツ星??」と云われそう。なんつーかその…上質だけど決め手に欠くとゆーか、なにか足りない。ガツンとくるパンチラインがない。「まとまってるね〜」で終わっている。まとまる以前なBLが多い中、よくできているんだけども。う〜む。しっかし…惹句にある「秘蜜の淫潤愛!」ってナニ!?>リブレ編集部…「淫潤」の意味も読み方もわかんなくて、辞書見ちゃったじゃない!…でもやっぱりわかんなかった。ガツンときたのが本編じゃなく惹句だった、っつーのもなあ…。
昨年半ばくらいから、奈良画伯のタッチが変わった。スレンダー時代(『窓』『エス1巻』)→般若時代(『エス4巻』『赤い呪縛』)を経て、繊細描線&トーン時代(『交渉人は黙らない』ほか)に突入とゆーか。絵の上手い人は、タッチを意識的に変え(大御所では井上雄彦センセ、コッチ系では茶屋町勝呂さんとか)、さらに上手くなっていく。今後も要チェックや!
ところで。本作にシュリンクがかかっていたのは、中に作家の手書き文字印刷物(ペーパー?)が入っていて、抜け落ち/抜き取り防止のためだと思われる。書店でポップを見ることはたまにあるけど、本に入っているのはリブレのBBN以外、あまり見かけないなあ。中身を確認できないのは困るけど、ペーパーは好き。「ふ〜ん、こーゆー字を書く人なのか〜」と身近に感じるから。できれば絵師の字も見たいんだけど…ダメ?
NO STAR … 論外/問題外作
★ … お好きな人はどうぞ。
★★ … つまんない。
★★★ … 退屈はしないしけっこう面白い。
★★★★ … 面白い。佳作/秀作。
★★★★★ … 天晴れ。傑作。
ISBN:4862632076 鳩村衣杏 リブレ出版 2007/07 ¥893
有能でクールな『氷の秘書』・誉は、何かと構ってくる美丈夫・及川が苦手。ある日、泥酔した誉が目を覚ますと及川の温もりが! なんと誉に迫られたと言われ?? 更に誉は、なりゆきで及川の秘密―実は次期社長候補―を知る。戸惑う誉に及川は灼けるような愛を告げ、傲慢に同居まで決めてしまい…誉の心とカラダは及川の悦愛に翻弄されて!?強引年下攻と、秘蜜の淫潤愛!
奈良千春画伯のリブレデビュー本である。
あのリブレが画伯に目をつけないわけがない、いつかお目見えするだろうとは思っていたが、画伯といえば、「キラキラ黒紫系な表紙めくって、カラー口絵と裏表紙を見て、下を向いて終わる」レーベルでのお仕事が多かっただけに、「ホップでエッチ、セレブとイケメン」その華やかさでは業界No.1レーベルであるBBN、しかも絵付け先作家は「働く男、特殊リーマン専科」シャレードで定評のある鳩村衣杏とくれば、これは鬼畜でもヤクザでもマフィアでもないはず、うわ〜ん!画伯がフツーのリーマンものなんてぇえええ〜!…と、秋林、アニメイト(ヴィレッジヴァンガードに置いてくれ!)にてひとり感慨もひとしお、本作を手に取り、いつもの「画伯チェック」を(念のため)しようとしたら――
シュリンクかかっていて開けられなーいっ!!
………。
事前チェックができないのは心もとなかったが、書き手が鳩村衣杏なので無体なことはないだろう(たぶん)…という直感のもと、そのままレジへと直行、お買い上げ893円也。以下、感想。
!たいしたネタバレはありませんが、念のためネタバレ注意!
「社内一ナンパ男×カタブツ秘書」ちょっとしたツンデレ系、且つ、押しかけ男房攻(?)なリーマンもの。一見すちゃらかナンパ男でも仕事がデキる攻、カタブツな受、というパターンはBLにおいてありがちだが、「夜は社長の淫愛に翻弄されること」などとゆー、やたらインビに持って行きたがっているオビ惹句、そして、エロ系絵師(だと思われてる)奈良画伯に騙されてはいけなーい!本作はコメディタッチながらも、真っ当なリーマンものであーる!
主人公・誉(ちなみにメガネくん)の、滅私奉公で時代錯誤的な秘書ぶりが実に楽しい。なにもそこまで…と思うのだが、実生活でOLやってる私に云わせれば、会社に尽くしきってるマジメなリーマンというのはけっこういて、「定年になったら、この人はどうなるんだろう?」とつい心配になってしまう人がいたりする。誉もそのタイプ(極端だけど)なんだが、本作で注目すべきは、及川がラブアタックだけの攻ではなく、そんな誉の軌道修正をしているという点だ。プライドを傷つけないよう、まわりを見ながら、さりげなく誉を諭していく。もちろん個性を潰さずに。木を見ず森を見るタイプだな。う〜む、ウチのオフィスにも及川が欲しい。
そして、誉の部下である女性陣の好感度も高い。彼女たちが云っていることが私にはよくわかる。うん、そうなんだよね――「厳しい意見をぶつけてくれるのは、同等に扱ってくれてる証拠、期待されてるから」――面白いリーマンBL小説は、OLがイキイキと描かれているように思える。それはさらにOL系腐女子の共感を呼ぶ。その傾向がマンガより小説のほうに顕著なのは、作家業だけでなく、会社員やってる/やってた人が多いからなのかもしれない。鳩村センセがそうであるかはわかりません。念のため。
誉と及川の話に戻るが、ふたりの関係がラブに発展する経過は自然であり、誉が及川を認めていくエピソードの数々も、ナルホド説得力があり、面白い。そしてだれもいない駅待合のシーン。読んでいて、しっとりとした気分にさせられた(画伯の挿絵がまたいい雰囲気で…くうう!!バンバンバンバンバンっ!←机を叩く音)。上手いね。ただエロシーンになると、及川が甘すぎて私にはちょっと鬱陶しいのだが…誉みたいなカタブツタイプには、あれくらい甘いほうがいいのかもしれない。鬱陶しくても、私の好きな年下攻であることには変わりない。文句は(私にしては珍しく)云わないでおくか。
さすが鳩村衣杏、安心して読めるリーマンものな1本。
評価:★★★(なかなか面白い)
「えー!?けっこうホメてたのに三ツ星??」と云われそう。なんつーかその…上質だけど決め手に欠くとゆーか、なにか足りない。ガツンとくるパンチラインがない。「まとまってるね〜」で終わっている。まとまる以前なBLが多い中、よくできているんだけども。う〜む。しっかし…惹句にある「秘蜜の淫潤愛!」ってナニ!?>リブレ編集部…「淫潤」の意味も読み方もわかんなくて、辞書見ちゃったじゃない!…でもやっぱりわかんなかった。ガツンときたのが本編じゃなく惹句だった、っつーのもなあ…。
昨年半ばくらいから、奈良画伯のタッチが変わった。スレンダー時代(『窓』『エス1巻』)→般若時代(『エス4巻』『赤い呪縛』)を経て、繊細描線&トーン時代(『交渉人は黙らない』ほか)に突入とゆーか。絵の上手い人は、タッチを意識的に変え(大御所では井上雄彦センセ、コッチ系では茶屋町勝呂さんとか)、さらに上手くなっていく。今後も要チェックや!
ところで。本作にシュリンクがかかっていたのは、中に作家の手書き文字印刷物(ペーパー?)が入っていて、抜け落ち/抜き取り防止のためだと思われる。書店でポップを見ることはたまにあるけど、本に入っているのはリブレのBBN以外、あまり見かけないなあ。中身を確認できないのは困るけど、ペーパーは好き。「ふ〜ん、こーゆー字を書く人なのか〜」と身近に感じるから。できれば絵師の字も見たいんだけど…ダメ?
NO STAR … 論外/問題外作
★ … お好きな人はどうぞ。
★★ … つまんない。
★★★ … 退屈はしないしけっこう面白い。
★★★★ … 面白い。佳作/秀作。
★★★★★ … 天晴れ。傑作。
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