■『しあわせにできる 1』
ISBN:4576030604 文庫 谷崎泉(挿絵:陸裕千景子) 二見書房 2003/05 ¥560
………。
1巻10ページ読んだだけで、オッシーが私に薦めたわけがわかった。
うおおおお!
本田ぁぁあああああああああ〜〜っ!(←呼び捨て)
アナタの気持ち、よくわかるっ!!
マジわかるっ!!
だってアタシもアナタと同じだったのよ!
主な業務は営業フォローとバックアップ(つまり営業業務系)、信じられないくらい忙しく…いつか仕事に殺されると思う日々の中、運悪く営業部の切れ者エリートの担当になってしまって、出勤すると机の上はFAXと書きなぐられたメモの山、始業時間前からクレームと打ち合わせ電話の対応に追われ、物件は同時進行当たり前、常に状態を把握せねばならず、ミスは許されない。あっという間に終業時間になり、そのまま深夜まで残業(女子なのに!しかも連日)、それでも仕事が終わらわず休日出勤。家には寝に帰るだけ。曜日感覚ゼロ。流行ってるTVドラマもわからない。チームのメンバーとはいい関係を築き上げているけど、仕事は一向に減らずいつもギチギチ、新人が入ってきたら逃したくない…ってか、絶対逃すもんか!
花のOLどころじゃない、これじゃまるっきりサラリーマン、なんでこんなことに?…そんなのアイツのせいに決まってる、バカ野郎、そんなタイトな締め切りをしれっと云うなっ!だれがやると思ってんのよ!?そんなの今からできるわけないでしょ!?(と連日オフィスで遠慮ナシの言い争い)…でもやらなきゃいけない………。
いくらヤツがルックス良くスマート(賢いという意)で、女子社員に大モテ、イヤミなくらい仕事がデキて、上からはホープ視されている絵に描いたようなエリートだったとしても――
アタシは別、あの営業が心底憎いのよ〜〜っ!
…というわけで、BLとゆーのにラブ以前、本田の仕事っぷりにまず共感。激務に追われる会社員がそれだけリアルに描かれているということであり、これにはビックリさせられた。
!以下、ほんのりネタバレ注意報!
ただでさえ印象悪なスタートを切ってるのに、仕事でもなかなか折り合いつかない本田と久遠寺。そんな彼らが信頼関係を築いていくプロセスとして、日々さまざまな出来事や問題が待ち受けている。プロジェクトの獲得・受注・達成といった業務面だけでなく、見え隠れするプライベートな横顔、思いがけない真実などを知ることで、ふたりは少しずつ少しずつその距離を縮めていく。ただし仕事で認め合うようになっても、信頼から理解に至るまではやはり互いの牽制は続くわけで――そんなガチンコな状況でラブが絡むとどうなるか?…というシリーズだと思う(1〜7巻まで)。
↑のあらすじにもあるように、信頼確定プロセス中に「とある物件のトラブルで板挟みになった本田は結果的に彼を裏切る選択」をする。とても理解できるというか、私でも彼と同じ選択をして平沢課長に根回ししたと思う。どんなにデキる男だとわかっていて、ある程度信頼するようになっても、一緒に仕事を始めてまだ半年、まだまだ過程でしかない。そしてそんな本田に激怒した久遠寺の気持ちもわかるというか…これも仕方がない話だと思う。会社で生きていく上での自分の立ち回り、人間関係、意地とプライド――実に上手い描写だ。
がしかし。
悔しい気持ちはわかる、でも…あんなところであんなことを本田にするか!?あんまりだ!!>久遠寺
「きっかけは陵辱でした」だなんてサイアク、話が重くなってしまったら困ると、正直この時点でギブアップしようかと思った。それでも読み続けたのは、フツーだったら確実に混乱するはずのダブル視点三人称(谷崎泉の圧倒的な個性だと思う)が実に読みやすく、本田をめぐるキャラ達が立っていて、人物相関にかなりの伏線が張り巡らさせてると気付いたから。話の終わり方が「待て!次号!」と、焦らしテクニックに長けてたことも挙げられる。
…というわけで1巻クリア。妙にマジメな感想になってしまったが、基本的にコメディ作品なので、2巻以降の感想はもう少し楽しく(そして短く端的に!)書いてみたいと思う。
評価:★★★☆(けっこう面白い。共感した。サクサク読める)
三人称は基本的に「主人公(もしくは神)視点」で書かれることがほとんどで、視点を一定させることがセオリーだったりする。ところが谷崎泉は、作品や章単位でなく1シーンに「ダブル視点三人称」(受と攻視点の交互)で書いてくることがある。とくにラブシーンにその傾向が顕著。最初ビックリしたけれど、わからなくて混乱したのではなく、コロリと視点が変わるのにサクっと読めたことに驚いただけで、こういうのもありえるんだ、個性のひとつだなあ、谷崎泉は文章に特徴があって面白いと、逆に感心してしまった。
ニガテな人もいるだろうけど、セオリーを覆してきてこれだけ読ませるんだったら、私は支持したい。ただし、文庫用に付いてきた書き下ろし短編が「各務くん一人称」で書かれていて、話は面白いのにフックがなく残念だった。やっぱ谷崎泉は三人称がイイね。
ZERO STARS … 論外/問題外作
★ … お好きな人はどうぞ。
★★ … つまんない。
★★★ … 退屈はしないしけっこう面白い。
★★★★ … 面白い。佳作/秀作。
★★★★★ … 天晴れ。傑作。
■表紙キャラは「本田雪彦(主人公)」
ISBN:4576030604 文庫 谷崎泉(挿絵:陸裕千景子) 二見書房 2003/05 ¥560
東京・丸の内―大手商社建材部勤務の本田雪彦は所属の3課を代表する有能社員。サラリーマンらしからぬ華やかな美貌に色めき立つ女性社員もものともせず、多忙な仕事に走り回る日々。そんな本田がNY支社から鳴り物入りで本社に配属されてきた久遠寺皇のフォロー役を命じられる。男らしい容貌に、漂う育ちのよさ、仕事も超がつくほどのやり手。久遠寺は噂以上の男だったが、とある物件のトラブルで板挟みになった本田は結果的に彼を裏切る選択をしてしまう。信頼が芽生え始めた矢先の出来事に、久遠寺がとった行動とは…。早朝出勤、深夜残業、休日出勤は当たり前。頑張る本田に次々とふりかかる災難、トラブル、強引男!?王道リーマンラブシリーズ第一弾。
………。
1巻10ページ読んだだけで、オッシーが私に薦めたわけがわかった。
うおおおお!
本田ぁぁあああああああああ〜〜っ!(←呼び捨て)
アナタの気持ち、よくわかるっ!!
マジわかるっ!!
だってアタシもアナタと同じだったのよ!
主な業務は営業フォローとバックアップ(つまり営業業務系)、信じられないくらい忙しく…いつか仕事に殺されると思う日々の中、運悪く営業部の切れ者エリートの担当になってしまって、出勤すると机の上はFAXと書きなぐられたメモの山、始業時間前からクレームと打ち合わせ電話の対応に追われ、物件は同時進行当たり前、常に状態を把握せねばならず、ミスは許されない。あっという間に終業時間になり、そのまま深夜まで残業(女子なのに!しかも連日)、それでも仕事が終わらわず休日出勤。家には寝に帰るだけ。曜日感覚ゼロ。流行ってるTVドラマもわからない。チームのメンバーとはいい関係を築き上げているけど、仕事は一向に減らずいつもギチギチ、新人が入ってきたら逃したくない…ってか、絶対逃すもんか!
花のOLどころじゃない、これじゃまるっきりサラリーマン、なんでこんなことに?…そんなのアイツのせいに決まってる、バカ野郎、そんなタイトな締め切りをしれっと云うなっ!だれがやると思ってんのよ!?そんなの今からできるわけないでしょ!?(と連日オフィスで遠慮ナシの言い争い)…でもやらなきゃいけない………。
いくらヤツがルックス良くスマート(賢いという意)で、女子社員に大モテ、イヤミなくらい仕事がデキて、上からはホープ視されている絵に描いたようなエリートだったとしても――
アタシは別、あの営業が心底憎いのよ〜〜っ!
…というわけで、BLとゆーのにラブ以前、本田の仕事っぷりにまず共感。激務に追われる会社員がそれだけリアルに描かれているということであり、これにはビックリさせられた。
!以下、ほんのりネタバレ注意報!
ただでさえ印象悪なスタートを切ってるのに、仕事でもなかなか折り合いつかない本田と久遠寺。そんな彼らが信頼関係を築いていくプロセスとして、日々さまざまな出来事や問題が待ち受けている。プロジェクトの獲得・受注・達成といった業務面だけでなく、見え隠れするプライベートな横顔、思いがけない真実などを知ることで、ふたりは少しずつ少しずつその距離を縮めていく。ただし仕事で認め合うようになっても、信頼から理解に至るまではやはり互いの牽制は続くわけで――そんなガチンコな状況でラブが絡むとどうなるか?…というシリーズだと思う(1〜7巻まで)。
↑のあらすじにもあるように、信頼確定プロセス中に「とある物件のトラブルで板挟みになった本田は結果的に彼を裏切る選択」をする。とても理解できるというか、私でも彼と同じ選択をして平沢課長に根回ししたと思う。どんなにデキる男だとわかっていて、ある程度信頼するようになっても、一緒に仕事を始めてまだ半年、まだまだ過程でしかない。そしてそんな本田に激怒した久遠寺の気持ちもわかるというか…これも仕方がない話だと思う。会社で生きていく上での自分の立ち回り、人間関係、意地とプライド――実に上手い描写だ。
がしかし。
悔しい気持ちはわかる、でも…あんなところであんなことを本田にするか!?あんまりだ!!>久遠寺
「きっかけは陵辱でした」だなんてサイアク、話が重くなってしまったら困ると、正直この時点でギブアップしようかと思った。それでも読み続けたのは、フツーだったら確実に混乱するはずのダブル視点三人称(谷崎泉の圧倒的な個性だと思う)が実に読みやすく、本田をめぐるキャラ達が立っていて、人物相関にかなりの伏線が張り巡らさせてると気付いたから。話の終わり方が「待て!次号!」と、焦らしテクニックに長けてたことも挙げられる。
…というわけで1巻クリア。妙にマジメな感想になってしまったが、基本的にコメディ作品なので、2巻以降の感想はもう少し楽しく(そして短く端的に!)書いてみたいと思う。
評価:★★★☆(けっこう面白い。共感した。サクサク読める)
三人称は基本的に「主人公(もしくは神)視点」で書かれることがほとんどで、視点を一定させることがセオリーだったりする。ところが谷崎泉は、作品や章単位でなく1シーンに「ダブル視点三人称」(受と攻視点の交互)で書いてくることがある。とくにラブシーンにその傾向が顕著。最初ビックリしたけれど、わからなくて混乱したのではなく、コロリと視点が変わるのにサクっと読めたことに驚いただけで、こういうのもありえるんだ、個性のひとつだなあ、谷崎泉は文章に特徴があって面白いと、逆に感心してしまった。
ニガテな人もいるだろうけど、セオリーを覆してきてこれだけ読ませるんだったら、私は支持したい。ただし、文庫用に付いてきた書き下ろし短編が「各務くん一人称」で書かれていて、話は面白いのにフックがなく残念だった。やっぱ谷崎泉は三人称がイイね。
ZERO STARS … 論外/問題外作
★ … お好きな人はどうぞ。
★★ … つまんない。
★★★ … 退屈はしないしけっこう面白い。
★★★★ … 面白い。佳作/秀作。
★★★★★ … 天晴れ。傑作。
■表紙キャラは「本田雪彦(主人公)」
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