■『しあわせにできる 8』
ISBN:4576051334 文庫 谷崎泉(挿絵:陸裕千景子) 二見書房 2005/08/26 ¥560
!以下、ネタバレ注意報!
「本田自覚!吹き荒れる愛の嵐編」(「しあわせ15」)と「急転直下!威光おそるべし編」(「しあわせ16」)に、文庫用書下ろし番外編「それぞれの出生秘話 〜映は映、三つ子の魂百まで〜」(←そんなタイトルではありません!「しあわせの色彩」)収録。
一大クライマックス、怒涛のごとき8巻。
焦点はやはり自分の中の黙示録を読む本田である。
写真をネタに天敵・昴から呼び出しを食らい、殿には内緒で高級ホテルへ乗り込んで行く本田、緊張の面持ち――と、「しあわせ」シリーズにしちゃーベタなシチュエーションから始まる8巻、「部屋に行った→ビールを飲んだ→睡眠薬入りだった→気を失った→気が付いたら裸でベッドに転がされていた」と、このアタシですらそのネタで軽く数十冊は読んでるんじゃないかと思うくらい、さらにベッタベタなBLクライシスに晒されてしまう主人公・本田、人生最大のピンチである。
――今度こそ絶体絶命か!?
殿は海外出張でまたもや不在、そんなときに本田を助けてくれる人といえば――そう…風車の矢七こと、徳永家の秘書・森田!なんと今回は 悪代官 映とともに登場である。
だが、この8巻はその「危うし!本田」場面(P9〜P26上5)がクライマックス(≒読みどころ)ではない。助けられた本田が徳永家にいったん避難、映から久遠寺兄弟の軋轢を聞き、殿の過去を知って白金の自宅へ戻ろうと徳永家を出た――その後、P40下1〜P56上2こそが一大クライマックス!…運命の相手は殿ただひとりであると悟る本田、そして、昴との一件でダメージを受けた本田にそのわけも訊かず、優しく大切に扱う殿(ラブシーン込み)――なんて素晴らしい、私は大感動した!…ここを読まずして、「『しあわせ』シリーズを知ってるもんね♪」と云ったらアカンよ!!>お嬢さん方
とくに、徳永家を出て自宅に戻って居間で殿を見つけるまで(P40下1〜P44下5)の、本田の心情描写が素晴らしい。
もう大人だし、自分もいろいろあったわけだから、過去のことは割り切って冷静に考えられる。もっと正確に云えば、過去が問題なのではなく、自分に必要なのは今現在の久遠寺であり、そして彼との未来である。
出会ってまだ1年ちょっと、お互い育った環境はまったく違うし、さんざん振り回され、会話が成り立たないこともあったけれど、仕事で組み、なんだかんだで一緒に住んでみれば、次第に彼を理解していく自分がいた。それは認めたくなかった。今まで人に甘えたことがなく、どうして甘えていいのかもわからなかった自分だから、今回もひとりで解決しようとした。でも昴はこれで終わらない、これからも自分を通して久遠寺に圧力を加えてくるだろう。なんとしてでも阻止したい。でもいまは昴から受けたダメージでボロボロだ。そんな状態を久遠寺に知られたくない、でも家に帰って、久遠寺の存在を知らせるものを見ただけ、そして自分にしか見せない表情を向けてくれただけで――その存在に手を伸ばし、助けを求め、すがりたいと思ってしまう。それはどういうことか?
本田は、自分の中の黙示録を読み、自覚する。
…と、ハーレイクインに展開していくのだが、ここで突然ワイルドカード投入!…徳永祖父によって(完全にとは云えないが)一気に問題が解決。なんと昴は祖父に頭が上がらない!…ラスト近くで本田(と殿)を昴から救うあたり、祖父というより水戸黄門である。助っ人は矢七に水戸のご隠居だなんて、ちょっと羨ましい話だー>本田
番外編「しあわせの色彩」もいいね。徳永祖父視点で、殿と本田出生、映が養子に出されるいきさつ(小学生の頃から映は映、ガキんちょのくせに今と変わらない映っぷりに大笑いだ!)、静香お母さんの恋が描かれており、何人ものキャラクターにそれぞれのエピソードを上手く相関させた1本のストーリーになっている。不自然さがないことに驚き、そして上手さに悶えた。素晴らしい!
評価:★★★★★(素晴らしい!ブリリアーント!)
しっかし…根暗な理由から「皇から奪ってやる」とばかり、「ナインハーフ」ごっこまでして本田にちゅーをする昴…って、BL的には実に正しい展開とはいえ、お〜い!ノンケの男がいきなりそこまでできるか?…私だったら、そっちの人を呼んで本田を襲わして、高みの見物だな(オッシーいわく「秋林さん、昴より鬼畜です」…違うってば、BLの読みすぎだってば!←そっちもどうかと)。結局なんだかんだ云ってアナタも弟と一緒、そっちの気があるんじゃ?>昴
ZERO STARS … 論外/問題外作
★ … お好きな人はどうぞ。
★★ … つまんない。
★★★ … 退屈はしないしけっこう面白い。
★★★★ … 面白い。佳作/秀作。
★★★★★ … 天晴れ。傑作。
■表紙キャラは正面が本田(主人公)、後方右が久遠寺(殿)、中央が各務(本田の後輩)、左が今井(各務の同期)。
ISBN:4576051334 文庫 谷崎泉(挿絵:陸裕千景子) 二見書房 2005/08/26 ¥560
君を皇から奪おうと思っている―久遠寺の兄・昴にそう宣言され、キス写真を撮られた本田は、誘われるまま昴の待つホテルに一人で向かう。罠と知りながら、言葉巧みな昴にからめとられ薬を盛られたうえ、ベッドルームで服を脱がされ絶体絶命のピンチに陥るが―。兄弟の確執を知った本田は認められずにいた久遠寺への想いと素直に向き合い、ついに二人はお互いの気持ちを通じ合わせることができた。しかし昴の策略は終わらず、始まったばかりの白金での同居生活も風前の灯火。姑息な手口に、ついには怒り心頭に発した久遠寺が公衆の面前で昴を殴りつけるという事態に―!?波乱の第一部クライマックス!書き下ろしは本田の出生の秘密編。
!以下、ネタバレ注意報!
「本田自覚!吹き荒れる愛の嵐編」(「しあわせ15」)と「急転直下!威光おそるべし編」(「しあわせ16」)に、文庫用書下ろし番外編「それぞれの出生秘話 〜映は映、三つ子の魂百まで〜」(←そんなタイトルではありません!「しあわせの色彩」)収録。
一大クライマックス、怒涛のごとき8巻。
焦点はやはり自分の中の黙示録を読む本田である。
写真をネタに天敵・昴から呼び出しを食らい、殿には内緒で高級ホテルへ乗り込んで行く本田、緊張の面持ち――と、「しあわせ」シリーズにしちゃーベタなシチュエーションから始まる8巻、「部屋に行った→ビールを飲んだ→睡眠薬入りだった→気を失った→気が付いたら裸でベッドに転がされていた」と、このアタシですらそのネタで軽く数十冊は読んでるんじゃないかと思うくらい、さらにベッタベタなBLクライシスに晒されてしまう主人公・本田、人生最大のピンチである。
――今度こそ絶体絶命か!?
殿は海外出張でまたもや不在、そんなときに本田を助けてくれる人といえば――そう…風車の矢七こと、徳永家の秘書・森田!なんと今回は
だが、この8巻はその「危うし!本田」場面(P9〜P26上5)がクライマックス(≒読みどころ)ではない。助けられた本田が徳永家にいったん避難、映から久遠寺兄弟の軋轢を聞き、殿の過去を知って白金の自宅へ戻ろうと徳永家を出た――その後、P40下1〜P56上2こそが一大クライマックス!…運命の相手は殿ただひとりであると悟る本田、そして、昴との一件でダメージを受けた本田にそのわけも訊かず、優しく大切に扱う殿(ラブシーン込み)――なんて素晴らしい、私は大感動した!…ここを読まずして、「『しあわせ』シリーズを知ってるもんね♪」と云ったらアカンよ!!>お嬢さん方
とくに、徳永家を出て自宅に戻って居間で殿を見つけるまで(P40下1〜P44下5)の、本田の心情描写が素晴らしい。
もう大人だし、自分もいろいろあったわけだから、過去のことは割り切って冷静に考えられる。もっと正確に云えば、過去が問題なのではなく、自分に必要なのは今現在の久遠寺であり、そして彼との未来である。
出会ってまだ1年ちょっと、お互い育った環境はまったく違うし、さんざん振り回され、会話が成り立たないこともあったけれど、仕事で組み、なんだかんだで一緒に住んでみれば、次第に彼を理解していく自分がいた。それは認めたくなかった。今まで人に甘えたことがなく、どうして甘えていいのかもわからなかった自分だから、今回もひとりで解決しようとした。でも昴はこれで終わらない、これからも自分を通して久遠寺に圧力を加えてくるだろう。なんとしてでも阻止したい。でもいまは昴から受けたダメージでボロボロだ。そんな状態を久遠寺に知られたくない、でも家に帰って、久遠寺の存在を知らせるものを見ただけ、そして自分にしか見せない表情を向けてくれただけで――その存在に手を伸ばし、助けを求め、すがりたいと思ってしまう。それはどういうことか?
本田は、自分の中の黙示録を読み、自覚する。
…と、ハーレイクインに展開していくのだが、ここで突然ワイルドカード投入!…徳永祖父によって(完全にとは云えないが)一気に問題が解決。なんと昴は祖父に頭が上がらない!…ラスト近くで本田(と殿)を昴から救うあたり、祖父というより水戸黄門である。助っ人は矢七に水戸のご隠居だなんて、ちょっと羨ましい話だー>本田
番外編「しあわせの色彩」もいいね。徳永祖父視点で、殿と本田出生、映が養子に出されるいきさつ(小学生の頃から映は映、ガキんちょのくせに今と変わらない映っぷりに大笑いだ!)、静香お母さんの恋が描かれており、何人ものキャラクターにそれぞれのエピソードを上手く相関させた1本のストーリーになっている。不自然さがないことに驚き、そして上手さに悶えた。素晴らしい!
評価:★★★★★(素晴らしい!ブリリアーント!)
しっかし…根暗な理由から「皇から奪ってやる」とばかり、「ナインハーフ」ごっこまでして本田にちゅーをする昴…って、BL的には実に正しい展開とはいえ、お〜い!ノンケの男がいきなりそこまでできるか?…私だったら、そっちの人を呼んで本田を襲わして、高みの見物だな(オッシーいわく「秋林さん、昴より鬼畜です」…違うってば、BLの読みすぎだってば!←そっちもどうかと)。結局なんだかんだ云ってアナタも弟と一緒、そっちの気があるんじゃ?>昴
ZERO STARS … 論外/問題外作
★ … お好きな人はどうぞ。
★★ … つまんない。
★★★ … 退屈はしないしけっこう面白い。
★★★★ … 面白い。佳作/秀作。
★★★★★ … 天晴れ。傑作。
■表紙キャラは正面が本田(主人公)、後方右が久遠寺(殿)、中央が各務(本田の後輩)、左が今井(各務の同期)。
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