■『しあわせにできる 11』
ISBN:4576062093 文庫 谷崎泉(挿絵:陸裕千景子)二見書房 2006/12 ¥560
「そして道は曲がり角へ編」(「しあわせ21」「しあわせ22」)と、文庫用書下ろし番外編「深雪の受難と試練〜勝つなら手段は選らばねえ!(by映)〜」(←そんなタイトルではありません!「令嬢のしあわせ」)収録。
ああ、なるほど、そういうことだったのかあ…と新キャラを巡るいくつかの謎が解かれ、またそれに合わせて今後のストーリーの行方が示唆された11巻。
サラリーマンをやってれば異動や転勤はつきもの。その…比較的大きな組織の会社にいた私も、いろんな人たちが、いろんなところからいろんなところへと、異動していくさまを見てきた。とくに一握りであるエリートは、もうあからさまな異動っぷり。あんなに憎憎しく思ってたヤツ(http://diarynote.jp/d/25683/20070917.html)と、どうにか一緒に仕事することに慣れ、コイツは意外と面白いかも、他の奴ではこうはいかないんじゃないかと気がついてみれば、あれから3年の月日が経っていて、心底憎いあの営業とは、いつの間にか、共通の友人であるFを連れて3人で大笑いしながらゴハンを食べられる仲になっていた…ら、なんとヤツは今度の4月に海外転勤、異動先は花の北米支社ときた。「ああ、やっぱり彼は同期の中でもエリートのトップなんだね…」と、夜9時を過ぎたオフィスのリフレッシュルームで、F(部署は違ったがコイツもエリートだった。「ゲイだから結婚できない。それはつまりここでは出世できない」と30代に入って独立)と語り合ったもんである…と、そんな思い出話は横に置いて。
!以下、ネタバレ注意報!
やっぱり殿は将来を約束されたエリート、なんと海外転勤を命じられる。
殿の様子がヘンだったのは、どうしても本田と離れたくない以上、辞令を固辞しなければならず、そうなると社内的に立場が悪くなってしまうわけであり――そのことで今後の自分、そして本田にどう影響するかに不安があったからなんだと思う。いくら久遠寺の坊ちゃんでも、会社組織のヒエラルキーに属するいちサラリーマンであり、スーパーマン(いやスパイディというべきか)並みの体力を誇り、鉄壁のポーカーフェイスを持っていても、やっぱりフツーの男なんだよなあ…と、ちょっと嬉しくなった。
そしてそんな殿を支える本田――9巻の感想で「もう本田はひとりじゃない、以前と違って理解し相談し合えるパートナーがいるんだなあ」と書いたけど、この11巻では殿がそうだ。いまの殿には本田がいる。強引で我関せず、天上天下唯我独尊で弱みを見せない殿だったけれど、本田に出会って確実に変わったね。
11巻に出てくる私の好きな一節が、それを物語っている。
(以下、本編を引用)
辞令を固辞、さらに薮内の秘密を知った殿が考えて下した決断とは。
そして道の曲がり角、人生の岐路に立たされたふたり――次はとうとう最終巻。人生は続いてもストーリーはフィナーレである。
評価:★★★★☆(谷崎センセは本田と殿が愛しいんだろうね。読んでてよく伝わってくる。半星はジャージ姿の映に)
書き下ろし「令嬢のしあわせ」で爆笑。ぎゃははははは!…映、相変わらず汚ったねー!(←ホメてます)…あんな父親を持つと反面教師になるのか、初登場の息子・蒼はとてもマジメな好青年という感じ。でもそうなると、徳永〜水戸黄門〜ジジイ→映と受け継がれた徳永家のキョーレツ個性が途絶えるの?なんだかちょっと淋しくもあり…そーいえば蒼はホモじゃないの?…いっそのこと、和哉とどうにかなるってのは?…って、そんな提案なんかしたら「腐ってます!」とオッシーに云われそうだー。
ホモと云えば。この11巻で昴が再登場しているんだけども、昴って独身なの?(40過ぎだよね?)…奥さんや子供がいるとは書かれてないような…あれ?あれれれれれれ?(誰か教えて下さーい!)…で、もし昴が独身で結婚できない男となってしまったのならば、その原因を作ったのはやっぱ殿?…うわ〜!そうだったら、そりゃー10年経ったって許せないかもしれないなあ。「私を差し置いてしあわせになるだと?しかも相手は男だ〜!?」…まだ10代の高校生だった弟に女寝取られ、10年経ってみりゃ、弟は男に夢中。そりゃプライドがミジンコになるね。お気の毒。
■判明しました!「昴は既婚」
由木さんから情報を頂きました(うわ〜ん!ありがとうございます〜!)。昴は「既婚で子供はいない」という設定だそうです。そっかそっか。昴、結婚してたのか。打算で結婚してなきゃいいけど。結婚してるくせに、まだ根に持ってるなんざ暗いヤツめ、松下由樹に石田純一を奪われても、立ち直った今井美樹を見習え!(出典:内館牧子『想い出にかわるまで』…って、なんかこれを出典すること自体、間違ってませんか?>秋林さん)…こうなりゃ本田&殿の援護射撃で密告だ!奥さ〜〜ん!旦那さん、男に睡眠薬飲ませて、裸に剥いて、「ナインハーフ」ごっこして、ちゅーまでしてましたよ〜!?ヘンタイですよーっ!?いいんですかあ〜!?
そして蒼くんはホモではないらしいです(やっぱり)。残念!…って、「このシリーズで好感を持てるのは、気が付けば主人公の周りはホモばかり、という図式になっていないところだな」とかなんとか3巻の感想で書いてたじゃんよう…>私
ZERO STARS … 論外/問題外作
★ … お好きな人はどうぞ。
★★ … つまんない。
★★★ … 退屈はしないしけっこう面白い。
★★★★ … 面白い。佳作/秀作。エクセレント。
★★★★★ … 天晴れ。傑作。ブリリアント。
■表紙キャラは、正面「久遠寺皇」(殿。本田の恋人にしてダンナ)と、後方「薮内直嗣」(久遠寺の元共同経営者。ロングランナー社長)
ISBN:4576062093 文庫 谷崎泉(挿絵:陸裕千景子)二見書房 2006/12 ¥560
問題児だった新入社員・東郷の信頼を得て、ますます3課の尊敬の眼差しを集める本田だったが、プライベートでは久遠寺を訪ねてきた薮内の存在が気にかかっている。漏れ聞こえてくる過去の二人の確執、重病説…。その久遠寺には異動・転勤の正式な辞令が下るが、固辞したことで社内の立場が微妙なものに。人生の岐路に立った恋人に本田ができることはただひとつ「好きだ」と想いを伝えること…。一方、徳永から託された絵を静香に見せた本田は、彼女と訪れた「蘭月」でついに主人との浅からぬ関わりを知る。過去の苦い出来事があたたかな縁となり、すべてを優しく包んでいく―。シリーズ第11弾、書き下ろしは徳永家の令嬢・深雪の、かなり悩ましい父兄参加イベント。
「そして道は曲がり角へ編」(「しあわせ21」「しあわせ22」)と、文庫用書下ろし番外編「深雪の受難と試練〜勝つなら手段は選らばねえ!(by映)〜」(←そんなタイトルではありません!「令嬢のしあわせ」)収録。
ああ、なるほど、そういうことだったのかあ…と新キャラを巡るいくつかの謎が解かれ、またそれに合わせて今後のストーリーの行方が示唆された11巻。
サラリーマンをやってれば異動や転勤はつきもの。その…比較的大きな組織の会社にいた私も、いろんな人たちが、いろんなところからいろんなところへと、異動していくさまを見てきた。とくに一握りであるエリートは、もうあからさまな異動っぷり。あんなに憎憎しく思ってたヤツ(http://diarynote.jp/d/25683/20070917.html)と、どうにか一緒に仕事することに慣れ、コイツは意外と面白いかも、他の奴ではこうはいかないんじゃないかと気がついてみれば、あれから3年の月日が経っていて、心底憎いあの営業とは、いつの間にか、共通の友人であるFを連れて3人で大笑いしながらゴハンを食べられる仲になっていた…ら、なんとヤツは今度の4月に海外転勤、異動先は花の北米支社ときた。「ああ、やっぱり彼は同期の中でもエリートのトップなんだね…」と、夜9時を過ぎたオフィスのリフレッシュルームで、F(部署は違ったがコイツもエリートだった。「ゲイだから結婚できない。それはつまりここでは出世できない」と30代に入って独立)と語り合ったもんである…と、そんな思い出話は横に置いて。
!以下、ネタバレ注意報!
やっぱり殿は将来を約束されたエリート、なんと海外転勤を命じられる。
殿の様子がヘンだったのは、どうしても本田と離れたくない以上、辞令を固辞しなければならず、そうなると社内的に立場が悪くなってしまうわけであり――そのことで今後の自分、そして本田にどう影響するかに不安があったからなんだと思う。いくら久遠寺の坊ちゃんでも、会社組織のヒエラルキーに属するいちサラリーマンであり、スーパーマン(いやスパイディというべきか)並みの体力を誇り、鉄壁のポーカーフェイスを持っていても、やっぱりフツーの男なんだよなあ…と、ちょっと嬉しくなった。
そしてそんな殿を支える本田――9巻の感想で「もう本田はひとりじゃない、以前と違って理解し相談し合えるパートナーがいるんだなあ」と書いたけど、この11巻では殿がそうだ。いまの殿には本田がいる。強引で我関せず、天上天下唯我独尊で弱みを見せない殿だったけれど、本田に出会って確実に変わったね。
11巻に出てくる私の好きな一節が、それを物語っている。
(以下、本編を引用)
以前だったら本田を押し流して引き止めるのは自分の方だったのに、つい、いろんなことを考えてしまった。各務との約束、明日は仕事である本田の体調。いつの間にか、本田の生真面目さが伝染ってきているかもしれないなんて思って、まだ暖かいシーツに頬をつけて苦笑した。11巻にはもっとドラマティックな文章が他にもあるというのに、こんなちょっとした心情吐露に(「なんて思って〜」という表現の選択、「ふいに思いが横切った」感がよく出ていて素晴らしいね。「シーツ」ではなく「まだ暖かいシーツ」としているのも、色っぽくて大人な表現だ)思わず感動、陸裕センセの描く――苦笑している殿の姿が容易く想像できる自分にビックリだ。
辞令を固辞、さらに薮内の秘密を知った殿が考えて下した決断とは。
そして道の曲がり角、人生の岐路に立たされたふたり――次はとうとう最終巻。人生は続いてもストーリーはフィナーレである。
評価:★★★★☆(谷崎センセは本田と殿が愛しいんだろうね。読んでてよく伝わってくる。半星はジャージ姿の映に)
書き下ろし「令嬢のしあわせ」で爆笑。ぎゃははははは!…映、相変わらず汚ったねー!(←ホメてます)…あんな父親を持つと反面教師になるのか、初登場の息子・蒼はとてもマジメな好青年という感じ。でもそうなると、徳永〜水戸黄門〜ジジイ→映と受け継がれた徳永家のキョーレツ個性が途絶えるの?なんだかちょっと淋しくもあり…そーいえば蒼はホモじゃないの?…いっそのこと、和哉とどうにかなるってのは?…って、そんな提案なんかしたら「腐ってます!」とオッシーに云われそうだー。
ホモと云えば。この11巻で昴が再登場しているんだけども、昴って独身なの?(40過ぎだよね?)…奥さんや子供がいるとは書かれてないような…あれ?あれれれれれれ?(誰か教えて下さーい!)…で、もし昴が独身で結婚できない男となってしまったのならば、その原因を作ったのはやっぱ殿?…うわ〜!そうだったら、そりゃー10年経ったって許せないかもしれないなあ。「私を差し置いてしあわせになるだと?しかも相手は男だ〜!?」…まだ10代の高校生だった弟に女寝取られ、10年経ってみりゃ、弟は男に夢中。そりゃプライドがミジンコになるね。お気の毒。
■判明しました!「昴は既婚」
由木さんから情報を頂きました(うわ〜ん!ありがとうございます〜!)。昴は「既婚で子供はいない」という設定だそうです。そっかそっか。昴、結婚してたのか。打算で結婚してなきゃいいけど。結婚してるくせに、まだ根に持ってるなんざ暗いヤツめ、松下由樹に石田純一を奪われても、立ち直った今井美樹を見習え!(出典:内館牧子『想い出にかわるまで』…って、なんかこれを出典すること自体、間違ってませんか?>秋林さん)…こうなりゃ本田&殿の援護射撃で密告だ!奥さ〜〜ん!旦那さん、男に睡眠薬飲ませて、裸に剥いて、「ナインハーフ」ごっこして、ちゅーまでしてましたよ〜!?ヘンタイですよーっ!?いいんですかあ〜!?
そして蒼くんはホモではないらしいです(やっぱり)。残念!…って、「このシリーズで好感を持てるのは、気が付けば主人公の周りはホモばかり、という図式になっていないところだな」とかなんとか3巻の感想で書いてたじゃんよう…>私
ZERO STARS … 論外/問題外作
★ … お好きな人はどうぞ。
★★ … つまんない。
★★★ … 退屈はしないしけっこう面白い。
★★★★ … 面白い。佳作/秀作。エクセレント。
★★★★★ … 天晴れ。傑作。ブリリアント。
■表紙キャラは、正面「久遠寺皇」(殿。本田の恋人にしてダンナ)と、後方「薮内直嗣」(久遠寺の元共同経営者。ロングランナー社長)
コメント
初めまして。信じられない!うわ〜〜ん!嬉しい〜〜!こんなネット場末な当ブログにようこそお越し下さいました!
>昴さんについての疑問にお答えします。既婚で子供はいないという設定だそうです。
そうなんですか!そうだったんだ〜…愛のある家庭なのかしら…。10年前のように愛じゃなく打算で結婚してたら不幸だな…。
>映の息子の蒼くんが久遠寺の跡取りで、深雪ちゃんが徳永を継がざるをえないだろうというのが、皇おじさんの予想です。
なるほど。今度は昴が徳永じーちゃんの身になるのですね(「蒼を久遠寺にくれ」とかなんとかいうのかなあ?)。「本田ダイスキーと1〜2親等で仲悪い」のが久遠寺家のDNAなだけに、たぶん蒼も本田が好きなはず!
>秋林さんの感想を読んで、また読み返したくなりました。
ありがとうございます♪…このシリーズ、基本的に伏線張られまくりだし、キャラの心情変化も丁寧に描かれているので、「そうそう、これがあとからこうなってああなるんだよねえ」と確認することができるんですよね。なので何度読み返ししても楽しいです♪
>最終巻+andまで、感想のアップをお待ちしています。
わははは♪「AND,」までですか♪リクエストされちゃったので頑張ってそこまでまで書きます♪ちなみに私は、記念小冊子(未来なんとかというタイトルのです)は、読んでないのですよー。そして谷崎センセの私家版「しあわせ」シリーズも読んだのは「AND,」だけで、「結婚して」や「しあわせしあわせ」は読んでません…残念。
ちなみに「しあわせ」以降の「谷崎泉スペシャル!」は、「エスケープ」「ダブル」「地上に堕ちる間に」「最後のテロリスト」を予定しています。
私が谷崎さんを読み始めてからまだ二年ほどですが、ちまちまと同人誌を集めているので、しあわせ関連はほぼ読みました。どれも面白いですが、森田と早紀と映の出会い編(『イノセント』ハピハピ1収録)が、興味深いんじゃないかと思います。冬以降に再版されるような話です。
谷崎さんは商業誌で連載が終わっても、延々と続編が同人誌に連載されるので(君好きとか〜)『しあわせにできる』も続きが読めるかなと思っています。なんか殿がめろめろで笑っちゃいますけれどね。
ttp://it-novel.jugem.jp/
↑こういう小ネタも楽しいです。
>延々と続編が同人誌に連載されるので
ええ!?そうなんですか!?…まさに「零細終わっても人生は続く、どこまでも」なんですねえ。ちなみに私は、「最後のテロリスト」で一番読みたかったところを、単行本で「〜年後」と思いっきり端折られ、「マジ!?うっそやろ!?が〜ん!」と打ちひしがれたのですが、どうやらその読みたかったあたりがJ庭で出た本に書かれているらしく、「それなら買わねばならんやん…」と呆然としています。フツーの通販でなく、楽天ショップで売ってくれないかな…。
>↑こういう小ネタも楽しいです。
わははは!情報、ありがとうございます〜♪