■『しあわせにできる 12』
ISBN:4576070606 文庫 谷崎泉(挿絵:陸裕千景子) 二見書房 2007/04 ¥560
「それぞれの人生、わかれても道は続く編」(「しあわせ23」「しあわせ24」)と、文庫用書下ろし番外編「結城さんっ!がんばれ、各務に負けるな! 〜ビバ!送別会幹事対決〜 」(←そんなタイトルではありません!「しあわせ三角また来て四角」)収録。
!以下、ネタバレ注意報!
企業で働いている以上、いつまでも同じメンツで一緒に仕事できるわけもなく、殿は日芳退社→ロングランナー専務就任(予定)、新人・東郷は殿の後任として建材3課からプロジェクト2課へ異動、そして複雑な思いに駆られつつも日芳に残ることを決めた本田…と、それぞれがそれぞれの道へ歩み出す――最終巻である。
多忙で激務に追われる毎日に耐えられたのは、単に責任感からという理由だけでなく、たとえば一緒に働いている仲間と、なんだかんだ云いながらも楽しく仕事ができていたからとか、意思疎通が容易で「コイツとならレベルの高いことができる、こういうヤツはほかにいない」というパートナーがいて、互いに切磋琢磨できていたからだとか、問題のあった新人が成長、使えるようになっていくさまを見ているのがちょっと嬉しかったりとか、そういう充実した人間関係や恵まれた環境に、わが身が置かれていたからなんじゃないかと、ふと思うことがある。
たいがいあとになってからそう気付くもので、何年か経ち、当時一緒に働いていた仲間と近況報告のついでに、つらかったことですら「そうそう、そんなことあったよねー」と、笑い話に変えて思い出語りしてしまったりする。きっと本田を含めた3課の人間にとって、殿はそういう「思い出語り」で駆り出される人になるんだろうなあ、殿ってキョーレツだったもんなあ…と、落合さんの涙のシーンを読んでいて、(相変わらず)腐女子最末席組の私は(BLなのに!)ラブそっちのけで、しんみりそんなことを思ってしまった。別に悲しい話ではないのに。
11巻の最後で殿は本田に「一緒に働こう」と誘い、12巻はそのことで本田が揺れる。日芳でまだやりたい(やり遂げてないという意識があるんだと思う)という思い。殿と一緒に働くことの楽しさ・面白さを知っていて、なおかつ、環境が変わる彼を支える意味でも、ロングランナーへ行ったほうがいいのだろうかという思い――まさに狭間。人生の岐路だから、考えるよね…。
でもまあ、日芳で殿と一緒にあのまま働いていたら、たしかに殿と本田の関係がバレてたかも。「お互い独身で何年も一緒に住んでるんだって、あのふたり!…本田さんったら『いつもアイツがみなさんに迷惑かけてすみません』なんて、云ってたわよ〜、あっやしいったら!」。絶対いるぞ、そんな女子社員!(わははは!)
熟考した本田、日芳を去る殿、送別会を開く建材3課(&プロジェクト2課)。ほかに劇的な大事件が起こることもなく(結城さん除く)、場面は流れ、物語はしっとりとフィナーレをむかえる。だが、ラストで打たれるのは「これで終わり」というピリオドではなく、「ここでちょっと区切らせてね」というカンマ。本田と殿のストーリーは、新たな章をむかえ、そして続いていく。山あり谷あり(映あり昴あり)、泣いたって笑ったってLife goes on(byイナバ)――「できちゃった♪ふたりの内面が、しみじみと描かれていいねえ…彼らの人生はこれからどうなるのかなあ…」なんてそこまで思ったBLは、依田沙江美の『真夜中を駆けぬける1・2』以来だ(…って、『真夜中〜』もシャレードやんか!)。
この私が12巻を一気読み。
面白かったです、ありがとう!>谷崎センセ&陸裕センセ
12巻のカラー口絵、最終巻らしくっていいなあ。
しみじみといいね、うん。
評価:★★★★☆(しみじみと感じ入ってしまった。半星は結城さんに)
シリーズ評価:★★★★★(後半の展開が特に好きです)
←でリンクしている夜霧のネオンサインさんが、「BLというのは100人の腐女子がいれば100通りのはまる理由があり1000通りの萌えツボがある」と書かれておられていて、ドキっとしちゃった。このシリーズでは私、人と思いっきり違う萌え方をしてしまったかもしれない。頭の中が思い出走馬灯状態だったもの。だからBLの感想になってない(すみません…)。
で、めでたく終了した「しあわせにできる」。本編読んでいる間、個人的にず〜っと気になってたのが殿のアシスタント結城さん(女性)。あんな仕事の鬼のアシスタントなんて、ものすご〜く大変だったはず。ちょこちょこっと名前が出てくる程度、「クールで事務的、イマイチ協調性がない」だなんて書かれてたけど、いったいどんな人かしら?一度ちゃんと本編中に出てきてくれないかな?と思ってたら、最後の番外編で大フィーチャー(陸裕さんの挿絵付き!)、お花男・各務くんと爆笑対決だ!わはは!…いや〜結城さん、アナタの気持ちわかる!…でも相手が悪かったね〜!わはははは!
ZERO STARS … 論外/問題外作
★ … お好きな人はどうぞ。
★★ … つまんない。
★★★ … 退屈はしないしけっこう面白い。
★★★★ … 面白い。佳作/秀作。エクセレント。
★★★★★ … 天晴れ。傑作。ブリリアント。
■表紙キャラは、左「本田雪彦」(主人公)と右「久遠寺皇」(殿。本田の恋人でダンナ)
ISBN:4576070606 文庫 谷崎泉(挿絵:陸裕千景子) 二見書房 2007/04 ¥560
本田の仲介によってかつての共同経営者・藪内と和解した久遠寺は、余命いくばくもない彼から会社を引き継ぐべく日芳退社を決意する。一緒に新しい会社で働こうという久遠寺の言葉に、本田の心は揺れる。想いが徐々に身の内から溢れ、言葉や態度に表れてゆくことへのおそれ、職場が離れすれ違いが増えていくことへの不安…。一方、久遠寺の退社を知った3課の面々は情報収集に躍起。東郷の意外な行き先も決まり、プロジェクト2課と合同の送別会へと話題は流れていく。少しずつ、それぞれの道が分かれていく仲間たち。久遠寺と本田もまた、二人で歩む人生を誓い合う──。書き下ろしは本田の早とちりも微笑ましい送別会幹事奮闘記。シリーズ最終巻!
「それぞれの人生、わかれても道は続く編」(「しあわせ23」「しあわせ24」)と、文庫用書下ろし番外編「結城さんっ!がんばれ、各務に負けるな! 〜ビバ!送別会幹事対決〜 」(←そんなタイトルではありません!「しあわせ三角また来て四角」)収録。
!以下、ネタバレ注意報!
企業で働いている以上、いつまでも同じメンツで一緒に仕事できるわけもなく、殿は日芳退社→ロングランナー専務就任(予定)、新人・東郷は殿の後任として建材3課からプロジェクト2課へ異動、そして複雑な思いに駆られつつも日芳に残ることを決めた本田…と、それぞれがそれぞれの道へ歩み出す――最終巻である。
多忙で激務に追われる毎日に耐えられたのは、単に責任感からという理由だけでなく、たとえば一緒に働いている仲間と、なんだかんだ云いながらも楽しく仕事ができていたからとか、意思疎通が容易で「コイツとならレベルの高いことができる、こういうヤツはほかにいない」というパートナーがいて、互いに切磋琢磨できていたからだとか、問題のあった新人が成長、使えるようになっていくさまを見ているのがちょっと嬉しかったりとか、そういう充実した人間関係や恵まれた環境に、わが身が置かれていたからなんじゃないかと、ふと思うことがある。
たいがいあとになってからそう気付くもので、何年か経ち、当時一緒に働いていた仲間と近況報告のついでに、つらかったことですら「そうそう、そんなことあったよねー」と、笑い話に変えて思い出語りしてしまったりする。きっと本田を含めた3課の人間にとって、殿はそういう「思い出語り」で駆り出される人になるんだろうなあ、殿ってキョーレツだったもんなあ…と、落合さんの涙のシーンを読んでいて、(相変わらず)腐女子最末席組の私は(BLなのに!)ラブそっちのけで、しんみりそんなことを思ってしまった。別に悲しい話ではないのに。
11巻の最後で殿は本田に「一緒に働こう」と誘い、12巻はそのことで本田が揺れる。日芳でまだやりたい(やり遂げてないという意識があるんだと思う)という思い。殿と一緒に働くことの楽しさ・面白さを知っていて、なおかつ、環境が変わる彼を支える意味でも、ロングランナーへ行ったほうがいいのだろうかという思い――まさに狭間。人生の岐路だから、考えるよね…。
でもまあ、日芳で殿と一緒にあのまま働いていたら、たしかに殿と本田の関係がバレてたかも。「お互い独身で何年も一緒に住んでるんだって、あのふたり!…本田さんったら『いつもアイツがみなさんに迷惑かけてすみません』なんて、云ってたわよ〜、あっやしいったら!」。絶対いるぞ、そんな女子社員!(わははは!)
熟考した本田、日芳を去る殿、送別会を開く建材3課(&プロジェクト2課)。ほかに劇的な大事件が起こることもなく(結城さん除く)、場面は流れ、物語はしっとりとフィナーレをむかえる。だが、ラストで打たれるのは「これで終わり」というピリオドではなく、「ここでちょっと区切らせてね」というカンマ。本田と殿のストーリーは、新たな章をむかえ、そして続いていく。山あり谷あり(映あり昴あり)、泣いたって笑ったってLife goes on(byイナバ)――「できちゃった♪ふたりの内面が、しみじみと描かれていいねえ…彼らの人生はこれからどうなるのかなあ…」なんてそこまで思ったBLは、依田沙江美の『真夜中を駆けぬける1・2』以来だ(…って、『真夜中〜』もシャレードやんか!)。
この私が12巻を一気読み。
面白かったです、ありがとう!>谷崎センセ&陸裕センセ
12巻のカラー口絵、最終巻らしくっていいなあ。
しみじみといいね、うん。
評価:★★★★☆(しみじみと感じ入ってしまった。半星は結城さんに)
シリーズ評価:★★★★★(後半の展開が特に好きです)
←でリンクしている夜霧のネオンサインさんが、「BLというのは100人の腐女子がいれば100通りのはまる理由があり1000通りの萌えツボがある」と書かれておられていて、ドキっとしちゃった。このシリーズでは私、人と思いっきり違う萌え方をしてしまったかもしれない。頭の中が思い出走馬灯状態だったもの。だからBLの感想になってない(すみません…)。
で、めでたく終了した「しあわせにできる」。本編読んでいる間、個人的にず〜っと気になってたのが殿のアシスタント結城さん(女性)。あんな仕事の鬼のアシスタントなんて、ものすご〜く大変だったはず。ちょこちょこっと名前が出てくる程度、「クールで事務的、イマイチ協調性がない」だなんて書かれてたけど、いったいどんな人かしら?一度ちゃんと本編中に出てきてくれないかな?と思ってたら、最後の番外編で大フィーチャー(陸裕さんの挿絵付き!)、お花男・各務くんと爆笑対決だ!わはは!…いや〜結城さん、アナタの気持ちわかる!…でも相手が悪かったね〜!わはははは!
ZERO STARS … 論外/問題外作
★ … お好きな人はどうぞ。
★★ … つまんない。
★★★ … 退屈はしないしけっこう面白い。
★★★★ … 面白い。佳作/秀作。エクセレント。
★★★★★ … 天晴れ。傑作。ブリリアント。
■表紙キャラは、左「本田雪彦」(主人公)と右「久遠寺皇」(殿。本田の恋人でダンナ)
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