■『ダブル ―犬も歩けば棒に当たる―』『ダブル ―花より団子―』『ダブル ―論より証拠―』 (『ダブル1〜3』)
ISBN: 4344808371/434480998X/434480998X 単行本 谷崎泉(挿絵:小路龍流) 幻冬舎コミックス 2007/05 ¥898
清楚な面立ちの鴻上と精悍な容貌の村上は、高校の時に恋人同士として付き合っていたが、気まずい別れ方をしていた。あれから会わないまま、十年以上の月日が経った今、二人は刑事として再び巡り会う。未だに村上は鴻上を想っていたが彼にさけられ続け、一方の鴻上も過去への罪悪感からか、自分に素直になれないでいた。そんな折、ある爆破事件を解決する為、急遽村上と鴻上はチームを組むことになる。お互いに相手を意識しながら事件解決を目指すが…。

JUNEっぽいものを目指して撃沈した、もしくは、レーベルと挿絵イメージに助走から着地まで引き摺られ転んでしまったという印象の(申し訳ないが、そうとしかいえない)失敗作『エスケープ』から3年。多少似た設定を残しつつも、ストーリーやキャラを新たに、谷崎泉が満を持してリベンジ作に挑んだ(と私が勝手に思っている)、謎解きミステリーというより捜査に重点を置いてラブを絡めた、キャリア(年上)×刑事(年下)モノ。

まずキャラ設定に驚く。攻(村上)は大型ワンコ、受(鴻上)はそれに合わせて年上クールビューティのツンデレだ。谷崎泉でワンコ×ツンデレ――なんだかずいぶん売れ線なカップル設定にしたような感じだが、なにを書いても谷崎泉とゆーか、相変わらず受がワケあり状態で、やっぱり過去は多く語られない。そのため村上は一苦労に二苦労重ね、またもや苦戦を強いられる攻キャラである。

独特の神視点(ダブル視点三人称とでもゆーか)谷崎節が復活、主要キャラもそれぞれに動いてくれるため、『エスケープ』よりサクサクと読めるんだが――今度は登場人物が多すぎてMY脳内にて捌ききれず、「あれ?コイツ誰だったっけ?」となってしまうことしばしば。捜査モノなので、刑事だの容疑者だのとキャラが多くなるのは仕方がないとはいえ、ラブも絡んでいるし、当て馬らしき黒柳の存在はあるしで、ここはなんとかキャラを把握しておきたい…ギブミー相関図っ!と思っていたら、なんと2〜3巻に付いてきた<相関図(でも足りなかった…ガーン!)。本作に限らず、谷崎作品は通りすがりの人にすら名前があるものと覚悟したほうがいい。

!以下、ネタバレ注意報!

1巻は爆弾事件、2〜3巻は汚職絡みの麻薬捜査――捜査の進行とともに村上と鴻上のラブ再燃、鴻上の過去に千葉研修の謎などが明らかになっていく。BL系の刑事モノとして、充分読ませる作品に仕上がっている。がしかし、黒柳と鴻上の関係や、高校卒業時に爆発したという村上の思いなどが端折られ、またしても「だーかーら!みんな、そこを読みたいんだってば!>谷崎センセ」という消化不良を起こしてしまった。残念というより無念である。

残念だったのは、好みの作品ではなかったことか。おかしいなあ、年下大型ワンコはキライじゃないはず、キラキラ表紙のアレのときだって「好きだ」と云ってたのに――

↓キラキラ表紙のアレ「兄貴とヤス」(英田サキ)感想
http://diarynote.jp/d/25683/20070701.html
(「エロ不足を実感、修行する」って…英田兄貴!問題はエロじゃなくオチだってば!)

なんでだ?としばし考え、出した結論は――「受がクールビューティだったから」。勝気だったりどーしよーもないバカだったりする方が、私にはヒットする模様。また、谷崎作品にしては珍しい甲斐甲斐しい年下ワンコくん攻も、BLではよく見かけるタイプだったせいか、逆に凡庸な印象を(私に)与えてしまったらしく、村上の優しさにイラついてしまった。作品が問題というより、すべて私のツボを外してしまったということだろう。本編より、書き下ろしとして巻末についてきた番外編「磯の鮑の片想い編1〜3」(高校時代の村上と鴻上の話)のほうが面白く感じたあたり、私の差し出す「論より証拠」だな…ごめんちゃい!>谷崎センセ

評価:★★★(挿絵も好みじゃなかった…)
当て馬な活躍をすると思ってた黒柳には、まったく以って肩透かしを食らわされたよ!ったくっ!…っつーことはなんだ、当て馬まで好みから外れたということか!?(ガーン!)

今回初めてリンクスロマンス(幻冬舎)に手を出した。これはリンクスに限ったことではないのだけど、やはりSHYノベルス(大洋図書)好きには重く、ホールドがシンドイ(内容ではなく本自体に重さがあるという意)。みんなSHYのサイズや装丁を見習おうよ…。

絵師の小路龍流さんもなあ…ゴメンなさい、個人的にはニガテなタイプ。最初表紙を見たとき、村上がヤクザかと思ってしまった。BL評価は、好みやツボに思いっきり左右されてしまうもんなんだなと、しみじみ実感。

ZERO STARS … 論外/問題外作
★ … お好きな人はどうぞ。
★★ … つまんない。
★★★ … 退屈はしないしけっこう面白い。
★★★★ … 面白い。佳作/秀作。エクセレント。
★★★★★ … 天晴れ。傑作。ブリリアント。

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