■『16』 some novels Books no,16
IZUMI TANIZAKI 2006年

『最後のテロリスト』全3巻を読み終わって、「いやさ〜、キミにオススメしてもらった『しあわせにできる』、たしかに面白かったんだけども、どっちかとゆーとキャラ的には『ラステロ』のほうがヒットしたってか、好みだったんだよね。2〜3巻の内容はともかく」と、いつもの居酒屋でオッシーに語ったらば。

オッシー:「そうだと思いましたよ。だって読書中の秋林さんの顔、すごい真剣でしたから。近寄りがたいっていうか。仕事場でだってあんな顔してる秋林さん、見たことないですもん、僕。当ててあげましょうか?…威士・蓮・凪がお気に入りなんでしょ?」

………。
ほっとけや!(←まだエセ関西弁)

オッシー:「そういえば、『ラステロ』番外編が私家版で出てますよ。買ったらどうですか?…買ったら、回して下さいね。僕もキャラ的にヒットしたんです。好きなんですよね――嘉手納が」

嘉手納って……あの「おっさん嘉手納」かっ!?

………。
お前も物好きなやっちゃな――選り取り見取りのくせに!>オッシー

…というわけで、本編の消化不良を癒してくれるだろう私家版『16』(注)を、楽天にて購入。私と同じように「ちょっと!威士と凪はどうなったの!?もっと読みたいんだけど!」と思った方がおられるかもしれないので、あえて私家版の感想をば。

(注)『16』:まだ楽天で売ってますよー。

■「棘」
「ラステロ」番外編。エピソードとしては本編1巻と2巻の間くらい?舞台はもちろん京都。背景がすべてわかって読める短編自体が谷崎作品では稀、ストレスまったくなしで読めた。嬉しい。本編をフォローする番外編というよりは小ネタ、メンツを保つために芸妓と浮気した威士、隠したつもりが凪にバレちゃった!いつもなら間に入ってくれるはずの蓮はいないし…あ〜あ、知らへんでぇ〜、凪、めっちゃ怖いからな〜♪という痴話ゲンカ話である。

「夫婦喧嘩は犬も食わない」ので、「ラステロ」と威士と凪に興味のない人にはあまりヒットしない内容だと思うが、それを抜きにしても…正味30ページほどの短編で、各エピソードが実に効果的に並べられてるね、これ。上手いなあ。その中でも、犬も食わないシーン(…)を挟んで描かれるふたりの事情、凪によって語られる「棘」の意味とそれがまったく理解できない威士――が最大の「ラステロ」ポイントだと思う。

決して甘ったるくならない。なぜふたりの間に緊張感が存在しているのか。格差カップルなのになぜ惹かれ合っているのか。甘くならないのは、「ラステロ」の世界観、凪の性格による影響を受けてるせいもあるけど、BL短編にありがちな「ヤってお終い、ほら仲直り♪」では終わらない、理由付けとなる各エピソードの持つ説得力と時間軸の切り方に上手さがあるから。それでもめっちゃエロ(=犬も食わないシーン)を入れて来たあたり――グッジョブ!である。…座布団は3枚でいいかしら?>タニザキーノせんせー

で、そのエロなんだけれども。「普段からは想像できないほど乱れる凪」にクラクラさせられたのは…威士だけじゃない、アタシもだ〜〜っ!

だって!…私、この本の前にシバタフミアキの絵で本編読んじゃったんだもん!…シバタさんのあの絵であれを想像する、だなんて――動悸・息切れ・目眩を併発、強烈なギャップ食らってクラクラだっつーの!発行当時の2006年に読んだ人(および谷崎センセ)、ゴメン!…これ絶対、「本編(1巻)→16」の順で読んだほうがいいと思う。

「誰を抱いてもいいよ。威士にとって俺が一番だって分かっているから、平気だ。でも、相手の人に情を起こさせるような抱き方はしないで欲しい」

!!!!!!!!!!!!!!!
なんて強烈なパンチライン、こんなことアタシも云ってみたーーーいっ!

威士と一緒にギャップでクラクラしたい人、楽天内C書店に今すぐアクセスだ!

評価:私家版なので評価対象外
「ラブシーンでクラクラさせられた」と書いたけれど、あの凪をあんな風にした威士も罪な男だよ、まったく。それにしても――あの状態で凪を抱えて隣の部屋へ…って、それってつまり駅(品位を損ねるので自粛)。……やっぱ威士ってスゴい。つくづく感心した。

あと、ひとつ提案があるんだけどね――ヤクザはメンツの世界だとわかってるけどさ、そんな全面防弾硝子でスモーク仕様な黒のメルセデスAMG(アナタにピッタリ過ぎ!)でお迎えだなんて、そりゃー凪にも嫌がられるって、どうせお金持ってるんだから、もう1台「凪お迎え号」を買ったら?アウディあたり――そうだな、R8選びたい気持ちをぐっと抑えてここはQ7、カラーはブルーなんてどう?>威士

■『16』にはもう1編オリジナルの短編が載っていますが、私にはコンボなヒットとならなかったので、感想はナシ。印象としてはそうだな…クリスタル文庫っぽい感じ、かな。

■「おっさん嘉手納」の下の名前がこの本で判明。鉄平ちゃん、だって♪

コメント

nophoto
りん
2007年11月16日21:14

どうもはじめまして。
「谷崎泉スペシャル!」すごく楽しみに読ませていただいております。
『最後のテロリスト』一巻からもう心臓を鷲掴みされ、夢中で最後まで読み終えて、「…ホ、ホントに完結!?続かないの?威士と蓮は?凪は?てか残されたあれやそれは?そんな殺生な〜!!」な感想が渦巻いてちょっと呆然としてしまったファンの一人です…。

心の殿堂入りBL確実な作品ではあるものの、読み返すたびに悶々とした気持ちが拭えず書評検索などしていたら、こちらの特集に巡り会えて、思わず感涙してしまいました。
こまやかで深い記事の数々、読み応えあって最高です。本当におつかれさまです。
谷崎作品のその独特な魅力と痛し痒しの面(汗)も的確にすくいあげてくださっていて、ついパソコン画面に頷きながら読んでいます…(^_^;)

私家版まで取り上げてもらえて嬉しいです♪
同じく文庫版から入った者としては、やっぱりシバタ先生の素敵イラストの印象を踏まえた上でのイメージのギャップに、見事にくらくらでした…。
威士もホント罪作りというか果報者というか、あまり無茶はしてやるなよ…というか(爆)
挿絵と本文の相乗効果の大きさというのも、ラステロでは魅力の一つだったなあと何だかしみじみ思ってしまいました。
(一巻カラー口絵の凪とかすごく良かったですね!水彩の淡い清涼感もまたぴったりでしたv斎場の待合室ででしんみりと三人で座っているイラストもお気に入りですv)

新刊(『釣瓶落とし〜』)の方も読まれました?
これ読みたさにイベントにまで行ってしまいましたが(汗)、威士と凪の犬も食わない喧嘩その2に加えて、仲裁役の蓮の出番も多くておすすめです♪
というか『16』ともあわせて思うんですが、事情背景がすでに明らかな私家版の方がある意味本編より描写や展開に余裕が感じられて安心して読め(以下自粛)

つい勢いのまま書きこんでしまいました。
スペシャルな特集もあともう一息ですねv頑張ってくださいv

秋林 瑞佳
秋林 瑞佳
2007年11月17日18:43

ぎゃあああああああああああああああああ!
同じことを考えておられる方が!
うわあああん!嬉しいぃ〜〜〜〜〜〜!!

由木さんが書き込んで下さったときと同じ、感想を書いていて、こんな嬉しいことはありませんっ!

…という叫びからコメント始まってすみません、書き込みありがとうございますっ!>りんさん

>「…ホ、ホントに完結!?続かないの?威士と蓮は?凪は?てか残されたあれやそれは?そんな殺生な〜!!」な感想が渦巻いてちょっと呆然としてしまったファンの一人です…。
私もまったく同じです。フツーだったら「なんて面白かったんだろう♪うふ♪」なのに、読み終わってボーゼンとさせられるなんて…そんなのアリ?ってなもんです。

>心の殿堂入りBL確実な作品ではあるものの、読み返すたびに悶々とした気持ちが拭えず書評検索などしていたら
私もまったく同じです。

「なんでこんな悶々せなあかんのや!?…ってか、悶々している人は他にいないんか!?アタシだけなん??(←まだエセ関西弁)」

ネットで感想を書かれている方のほとんどは私家版から追いかけてた方のようで、みなさん「蓮×セキ♪…セキが好きだから、文庫が出て嬉しい」。密林書評は絶賛ばっかり。私としては「1巻は絶賛したいけど、2〜3巻はいやその…ちょっと…面白くないとは云わないけどね…」なので、こんな風に思ってるのは私だけなん?…と、ひとりボーゼンとしていたのです。「ラステロ」は――大プッシュしたい、腐女子のみなさんにゼヒ読んでもらいたいと思うのですが、2〜3巻の展開があんな風なので、手放しでオススメできません。「1巻だけ読んで」とも云えず…文庫版から入ったクチとしては、歯がゆいです。

>同じく文庫版から入った者としては、やっぱりシバタ先生の素敵イラストの印象を踏まえた上でのイメージのギャップに、見事にくらくらでした…。
どうやって口説いたのか、あのシバタさんを引っ張ってきたシャレードには感謝したいです。フツーなら「イメージとしては石原理かな?」となると思うんですが、1巻のあの真摯さはシバタさんにしか出せない。ホントにありがとう!>シャレード

>一巻カラー口絵の凪とかすごく良かったですね!
すごく良かったです!…私の凪のイメージはまさにあんな感じ。絶対に女々しくないし、どんな目に遭おうと穢されない人。そして「ああ、シバタさんだ、タッチは変わったけど、シバタさんはシバタさんのまんまだ」と感動しました。印象はちょっと変わっても、中身は変わってない…そんな初恋の人に再会した気分です。

>斎場の待合室でしんみりと三人で座っているイラストもお気に入りですv
いいですよね〜、あの三人がそれぞれの方向に座ってるという描写にドンピシャ。誰がどんな仕草で座っているかなんて谷崎センセは書いていないのに、シバタさんはそれぞれのキャラに合った座り方をさせてたところに、キャラつかみの上手さを感じました。威士は真ん中座って腕組んでそうだし、凪は一点をただただ見つめてそうだし、蓮はあっち向いてそうだし(わはは!)。見事でした。

>新刊(『釣瓶落とし〜』)の方も読まれました?
読んでないんですよー。やっぱ年末に東京へ行かねばならないのか…。「しあわせ」シリーズと違って、すぐ売り切れることはないと思うのですが(くっそー)、楽天で取り扱ってくれないかなあ。センセのところで通販ってのも…う〜ん。年末の上京考えますです、はい。

>事情背景がすでに明らかな私家版の方がある意味本編より描写や展開に余裕が感じられて安心して読め(以下自粛)
まったく同(以下自粛)。

>つい勢いのまま書きこんでしまいました。
「ラステロ」の悶々に苦しんでいる人間は、どうしても勢いがつきますって(わははは♪)…なので、どうかお気になさらず〜♪

>スペシャルな特集もあともう一息ですねv頑張ってくださいv
ありがとうございます。もうちょっとなので、ガンバリマス♪

ちなみに当ブログは、映画系ブログだったんですが…なんか最近すっかりBL系になってしまいまして。いやはや。それでも取り扱っているネタはBL以外もいろいろとあるので、サイドバーにある「テーマ一覧」の「Rotten Sisters!(BL系)」をクリックして頂くと、見やすいと思います。

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