■『最後のテロリスト 2 〜鼓動〜』
ISBN:457607086X 文庫 谷崎泉(挿絵:シバタフミアキ) 二見書房 2007/05 ¥580
氷川の指示で警察庁幹部・唐沢の養子になり、東京の大学に進んだ蓮。良家の子息を演じながらも、内面は渇き、飢えていた。そんな時、耳に入ってきた故買屋・セキの存在。ヤクザとクスリを嫌い、決して人前に姿を現さない慎重な仕事の手腕に興味を覚えた蓮は、セキの正体を突き止めようと画策する。果たしてセキは蓮の欲望を満たすにふさわしい、極上の獲物だった。追いつめ、身体を征服し、心を奪う――。抑圧されてきた蓮の激しい本性が迸る、シリーズ第二弾、蓮とセキの出会い編!

現時点(2007年11月)において、秋林の2007年BL小説カバー絵ベスト1作品。

!以下、ネタバレ注意報!

興津組の若頭補佐・氷川に拾われた形で菅生家に入り、威士の義弟となった蓮が主人公の第2巻である。

カリスマ性を持ち、一見荒っぽいがまっすぐな気質を持つ威士と正反対の蓮。常に影を引き摺り、怜悧な頭脳を持っているが、ワイズというよりクレバー(賢明というより狡猾)、内面を周囲に覚らせない――そんな彼には、さらに複雑で興味深い背景がある。

まず、いつ倒れても(≒死んでも)おかしくない爆弾を脳内に抱えているという身体的な事情。その怪我の後遺症によって無痛症となり、ナイフで刺されても背中に爪を立てられも、本人はまったく痛みを感じない。蓮が血を流がす場面はよく出てくるのだが、事情を知らない人間の目には平然としている蓮が不気味に映るだろう。まるでサイコダイバー美空(夢枕獏)である。もともと長生きできそうにないタイプだと思っていたが、それらの設定によって蓮はさらにギリギリな時限の――生き急がねばならないエッジに立たされた感がある。読み手としては実に切ないのだが、本人は気にするどころか「残された時間」を受け入れており、その上で「威士と興津のトップに立ち」、「氷川とケリをつける」ことを第一の身上としている。氷川との確執については、どうやら蓮の実の父親が関係しているらしいのだが、氷川は多くを語ろうとせず、蓮自身も父親を知らないため、正面から「氷川vs蓮」が描かれないと真実はわからない。抱えるものは影や爆弾だけでない――という実に複雑で魅力的な設定(もちろんルックス上々の美形である)と背景を背負った蓮は、威士以上に腐女子心をそそってくれる面白い存在なのである。表紙カバー絵は、そういう蓮を見事に表現していると思う。

そんな蓮が、威士や氷川と離れて数年ぶりにひとりとなる2巻では――単独で悪さをしていた、威士と出会う前の蓮、つまり彼本来の姿を見ることができる。だが昔とは違い、威士や氷川に洋三といったしがらみ(≒身内)と情が増えたことによって、自分のシマではない東京においては、大学生で警視庁キャリア・唐沢の息子という仮面を被り、おのれのポジションを常に把握・確認しながら、悪さをせねばならない。ガキのままではいられないのは威士だけでなく蓮も同じ、自由はあるが縛りもある状況下で、蓮はある日、運命の相手・セキを見つけることになる。「この男をなんとしてでも手に入れたい、たとえ汚い手を使っても」――読んでいてこっぱずかしくなるほど純愛路線(←ホメてます)だった1巻とは対照的、淡々と描写される蓮の内面の黒さにクラクラさせられ、とくにカジノシーンで見せる蓮の駆け引き、狡猾さは見事であり、「なんて素晴らしいの!」とその描写を絶賛していた…のだが。

また、やられた。
肝心要、核心を端折られてしまった。

!以下、完全ネタバレしていますので要注意!

まず、興津5代目が死んだことによる跡目争いを避けるため、氷川が蓮とともに中国へ行くことに「?」である。なぜ中国なのか。海外へ留学だの引越しだのと、その唐突さは、まるで大昔のTVドラマ、もしくは韓国ドラマのよう。変化球で逃げたとしか思えない。ここは日本で「仁義なき戦い」(そして流れる「仁義なき戦い」のテーマ…若いにーちゃんたちが主人公なので、もちろん布袋寅泰バージョンだ!)、京都と東京の同時進行、威士は関西で自分の「アキレスの踵」である凪を守ることで精一杯、蓮は平然と(!)大学生をしながらも、影で興神会を証拠なく(←最大ポイント)次々と陥れていく――が、思いがけずセキが巻き込まれてしまい(あるいはセキが興神会関係者で蓮の敵として現れ、いつしか惹かれ合ってしまうとか。ああ…なんてハーレクインなの!)、身動きが取れなくなる。威士も蓮も互いを必要としているが、ひとりで行動せねばならない。だがふたりの前に次々と敵が現れて――といった展開を期待していたのに。

さらに大ショックだったのは、氷川の扱いだ。なぜ氷川が中国で殺されないといけないのか。いや違うな、正確にいうと――なぜ氷川の最期にして最後の「氷川vs.蓮」が描かれなかったのか。ここを端折ってどうする!?…氷川と蓮の確執がどうなったか、何度も出てきて長く感じる蓮とセキの情事を削ってでも、書くべきじゃないのか!?…ガッカリだ、私は密林の書評のように手放しで絶賛はできない!

「○○年後――」と容赦なく時が流れていくので、文庫から読んでる身としては取り返しのつかないストーリー展開に、ただただ呆然とするだけ。威士と蓮を中心に、凪やセキが関わってくるストーリーだと思っていたのに、「ラステロ」の実質的な主人公は――もしかしてセキで、谷崎センセはそのセキが一番のお気に入りなんじゃ?と気付いた時点で、大ショックである。セキの本名「真冬」だし、タイトルは『最後のテロリスト』だし。

2巻は、嗜虐的にセキを奪っていく蓮が描かれている。谷崎作品ではよく嗜虐的な攻が出てくるので(威士みたいなタイプが珍しい。だから威士が好きだという人は多いと思う)、「ああ、またか。理解できない」とニガテな人にはつらく感じるかもしれない。ただ今回は蓮が複雑で面白いキャラであり、ダークな彼を理解できなくてもいいと思っていたので、私はさほどイヤにならなかったのだが、セキが蓮のいう「極上な獲物」には到底思えなかった。逃げてばかり、あるいはよがってばかりだったし、簡単に蓮の手に落ちたように思える。セキはもっと手強い相手だと思ってたのに。なにか特別な…たとえばあの蓮をキリキリ舞いさせ、ぎゃふんと云わせるような(って蓮はそんなこと云わないだろうけどさ)スペシャルな出会い方をし、ふたりの間に食うか食われるかの熾烈な駆け引きと緊張感――セキを貶めようとして逆に陥れられる蓮、とかね――が、あったならば面白かったかも。

なぜ蓮はセキを手に入れたいのか。「自分とセキが似てるから」って――それってつまり蓮はナルシストだってこと?……。またしてもショックを受けてしまった。

とりあえず3巻へ。

評価:カジノシーンまで★★★★★、それ以降は★★★(呆然)
威士と蓮の物語だと思ってた。それを求めるほうが少数派なのかな…。さまざまな出版社からさまざまな内容のBLが出ている昨今、エロやラブを削ってでも「血よりも濃い絆」を読ませてくれるBLが出てきたっていいのに。そういう本を読みたいと心底願ったし、実際1巻はそういう内容だったし、絵師もBL系ではないシバタさんがスタイリッシュにキメてくれたので、私は飛び上がるほど嬉しかったんだと思う。なんで1巻が面白かったんだろう?とちょっと考えてみた。「ラステロ」は、もともと私家版で出たシリーズで、文庫化にあたり、威士と蓮(そして凪)の出会い編が書かれたのだそう。2〜3巻が本編で、1巻は番外編という位置づけになるの?…ってことは、「番外編のほうが面白い」と云われる作家の番外編から、私は読んでしまったのか。そっか……。文庫派はツライね…。

ZERO STARS … 論外/問題外作
★ … お好きな人はどうぞ。
★★ … つまんない。
★★★ … 退屈はしないしけっこう面白い。
★★★★ … 面白い。佳作/秀作。エクセレント。
★★★★★ … 天晴れ。傑作。ブリリアント。

コメント

nophoto
りん
2007年11月30日22:53

どうもこんばんは。ラステロシリーズのこまやかなレビューありがとうございますvv

表紙ホント素晴らしいですよね♪不穏で挑発的な青…シバタ先生の見事なキャラクター表現に脱帽。
全三巻、キャラクター単体で痺れるほどに格好良いBL表紙が拝めたというのもしみじみ嬉しかったです(^^)
(ちなみに私は2→1→3の順で今年の小説カバー絵ベスト3ですv)

ついにきてしまいましたね二巻と三巻…(笑)

セキ…真冬ちゃんな名前からして谷崎先生の相当なお気に入りキャラだとは思うんですが、蓮もハマるスピードが早いというか、罠におとして一度身体を奪ったかと思ったら、もうすでに「すべてを捨ててもよかった」って心情になってるし…(おいおい)
あの蓮から「美しい」「綺麗」という形容が繰り返されるのにも意外な驚きが…というより蓮フィルターのセキってどんだけすごいことに…(爆)

しかし惹かれる理由が(外見上じゃなくて内面的なこととはいえ)「自分に似てるから」で始まるっていうのは…ちょっといや十分にナルな理由ですよね…。
二巻を読んだ時点では、もしかしたら蓮はラストで死んでその遺志を似たもの同士・分身的な存在でもあるセキが引き継ぐ形になって(え〜?)、蓮亡き後に興津組トップとなった威士に、やくざ嫌いを返上してセキが関わりあっていく…なんてシナリオを予想してみなくもなかったんですが、まったくの杞憂でした(汗)

そして二重三重にショックだった中国展開…(T_T)
他作品『目眩』も二巻は香港が舞台だったりするし、先生的に思い入れがおありになるところなのだろうかと考えてもみるんですが…それにしては三巻の劉といい、描写がいまいち中途半端で盛り上がらな…ゲフンゴフン。
しかしもう秋林さんのおっしゃる通り仁義なき戦いは国内にとどまって繰り広げてほしかったなあと今も正直…血よりも濃いはずの威士と蓮の絆をもっと活かしてほしかったし、それぞれに弱点を抱えこんで孤軍奮闘しながらも支えあっていくような二人の姿も読んでみたかったです…!(もちろん凪の出番も増やしてもらいたかった…/笑)

そのほか蓮の父親のこととか、氷川と唐沢との間の過去を示唆しつつ、若くして亡くなったとだけあって結局死因なども謎。
うかがえない動きを見せていた加賀もこの巻のみの登場で、これ以降の動向も謎。
意味深な含みを持たせながらも次に続いてくれないというか…いろいろ設定は出てきても限定された情報に留まったまま上手くドラマにフィードバックしてこないうちに物語が終わってしまうというか…脇筋ながらも一つ一つの要素になまじ存在感があるだけに、心底「惜しい!!」と悶えたくなります…。

思えば威士・蓮・凪の京都三人組がそろう場面って結局一巻だけのことなんですよね…。
文庫派の肩入れかもしれませんが、この三人の出会いがすべての出発点だと思って、威士と蓮をストーリーラインの中心軸として読み進んできた者としては、シリーズ後半の主役シフト転換に…うう。
一般的にBL・ライトノベル系含めてキャラクター重視傾向にある作品だと、読者がどのキャラクターに感情移入するか、または作者がどの登場人物に重心を置いて描くかによって、全体的な印象が左右されやすくなってしまうところも善かれ悪しかれあるのかもしれませんね。
とはいえ、いきなり一巻から番外編が始まるなんて、さすがに読者にとっては予想外だと思いました…(T_T)
(長い繰言になってしまってスミマセン…)

秋林 瑞佳
秋林 瑞佳
2007年12月2日12:21

こんばんは〜!…って、これを書いているのはお昼ですが(わはは!)

>真冬ちゃんな名前からして谷崎先生の相当なお気に入りキャラ
超お気に入りなんじゃないかと(たぶん)。わっかりやすいですよよねえ、タニザキーノ先生の場合。

>あの蓮から「美しい」「綺麗」という形容が繰り返されるのにも意外な驚きが…というより蓮フィルターのセキってどんだけすごいことに…(爆)
威士よりこっ恥ずかしいセリフの連続に、「ちょお、待てや!…お前、そんなこと云うヤツやったんか!?」とショックを受けました。1巻読む限り、そんなヤツには到底思えない…。セキは蓮のストライクゾーンど真ん中だったのかもしれませんが、蓮ビジョンの超越ぶりにはどーにもついていけない…トホホ。

>ちょっといや十分にナルな理由ですよね…。
「ちょお、待てや!…お前、そんなナルなヤツやったんか!?」1巻読む限り、そんなヤツには到底思えない…。なので、私の2巻の感想が「蓮はこうヤツである」という設定や背景語りからスタートするのは、「蓮はこういうヤツだと思ってたんだけど…ねえ違うの?」という気持ちで悶々してしまったからです(たぶん)。

>それにしては三巻の劉といい、描写がいまいち中途半端で盛り上がらな…ゲフンゴフン。
セキはマフィアから見てもスペシャルな存在だったんでしょうか。それにしては肩透か…ゲフンゴフン。

>血よりも濃いはずの威士と蓮の絆をもっと活かしてほしかったし、それぞれに弱点を抱えこんで孤軍奮闘しながらも支えあっていくような二人の姿
私家版派の方々はどうかわかりませんが、文庫派は読みたい人が多かったんじゃないでしょうか…うううう。

>もちろん凪の出番も増やしてもらいたかった
同感です。「ラステロ」で一番好きなキャラが凪なので、3巻の完全スルーに大ショックです。

>うかがえない動きを見せていた加賀
もったいないキャラの筆頭です。威士と蓮の味方?敵?…腹黒そうで何を考えてたのか…実に興味深いキャラでした。氷川と対決させるとか、味方と思わせておいて氷川を殺り、威士&蓮と全面対決…という展開でもよかったのに。

>いろいろ設定は出てきても限定された情報に留まったまま上手くドラマにフィードバックしてこないうちに物語が終わってしまうというか…脇筋ながらも一つ一つの要素になまじ存在感があるだけに、心底「惜しい!!」
もしそれがなかったら、谷崎センセはとっく昔にもっと幅広い層に支持されてたと思います。「惜しい人」で終わって欲しくないんですけどね…一皮むけてくれないかなあ。誰も(たとえば担当さんとか)指摘しないのか。センセには「大きなお世話!」と云われそうですが、「惜しい!」ことが本当に悔しいですよ、私は。

>この三人の出会いがすべての出発点だと思って、威士と蓮をストーリーラインの中心軸として読み進んできた者としては、シリーズ後半の主役シフト転換に…うう。
呆然でした。こんな思いをするならば、いっそセキの幼少時代を描くとか、セキ中心の番外編として1巻をスタートさせてくれたほうがまだ諦めもついたのに(←私家版派の人に怒られるか)。でもそれだとここまでハマれなかったでしょうね…とほほ。

>読者がどのキャラクターに感情移入するか、または作者がどの登場人物に重心を置いて描くかによって、全体的な印象が左右されやすくなってしまうところも善かれ悪しかれあるのかもしれませんね
それを思い知らされたシリーズでした。そして「読者の感情移入先=作家の書きたいもの」だったとき、谷崎作品は自分に見事クリーンヒットするということもよくわかりました。

>いきなり一巻から番外編が始まるなんて、さすがに読者にとっては予想外
誰も予想できないですよね。もともと伏線張り好きで謎引っ張り系な作家が、最初からやたら背景が分かってる話、出会いから書き始めるなんておかしい、なにかあるんじゃ?と心理的に距離を置いておけばよかったです。1巻の面白さに見事騙されたぶん、惨敗した気持ちが大きくなってしまうと云うか。センセには大変失礼な言い方になってしまうけど、やっぱそういう印象です。あー。

>長い繰言になってしまってスミマセン…
とんでもないです!…この惜しさと悔しさの悶々は、朝まで語れますっ!

nophoto
由木
2007年12月4日1:24

谷崎スペシャル終了お疲れ様でした。楽しみに読ませていただきました。いろいろ書きたいことがありますが、とりあえず『ラスト・テロリスト』について一言。(一言じゃすまないかもしれないですが)

私は同人誌を入手して未読のまま積んでおいて、文庫一巻がすごく面白かったので、同人誌を読みました。『パイキー』が文庫二巻、『ラスト・テロリスト』が文庫三巻にあたります。それぞれ、3冊、合計6冊あって(私が持っている『パイキー』は総集編ですが)、シンプルな装丁でイラストは全くなく、文章だけの本ですがとても面白かったです。同人誌には威士は登場しますが、凪は登場しません。セキ視点で一貫して語られていたように思います。文庫の一巻を読んだあとで同人誌を読んだので、ちょっとしか登場しない威士なのに背景がよくわかって、それが同人誌版の時点で出来上がっていたことに驚きました。おそらく谷崎さんの頭の中には物語が完成していて、それが文章にされるのを待っているんだろう。そしたら文庫の二巻、三巻はこのお話の最後が読めるだろうと期待していました。

ところがご存知のとおり、物語は完結しませんでした。威士と蓮の話はまだ始まってもいません。文庫の二巻、三巻は同人誌版を少し視点を変えて書いただけで、新しい展開はほとんどありません。同人誌が書かれていた時点での谷崎さんの未熟さを抱えたまま、現在の谷崎さんが書いた一巻のあとに続く形になりました。第一巻が一番出来がいいのはそのせいかもしれないと思います。あ、でも私は同人誌版のパイキーがけっこう好きです。セキ視点の方が読みやすいです。久遠寺視点だったら多分しあわせもそんなに面白くないでしょう。

文庫三冊で完結なのか、それとも物語の一部なのか、読者には判断できません。でも、一度同人誌で書いているのだから、せっかくの商業出版の場をもっと有効に使ってほしかったように思います。『しあわせにできる』の完結と、シャレードの休刊と、担当編集者が外れるとか外れないと行った理由で、今年春先の谷崎さんの新刊ラッシュがあったのかな?と推測しているんですが…ラステロが表に出て喜ぶべきなのか、こういう形になったことを悲しむべきなのか、どっちでしょうね。

谷崎さんのブログをずっと読んでいると、ネット対応の未熟さとか甘さを感じるんですが、一方では作品の中に懐の深い描写があって、大人なのか子供なのか、未熟なのか上手なのか判断が難しいです。だから編集さんが上手に誘導して、読者が上手にほめてあげたら、もっと良い本を書いてくれるかもしれない。できればもうちょっと自分に厳しくなってくれるといいと思うんだけれど。でも、今後も期待したいと思っています。(一言ですみませんでしたー)

秋林 瑞佳
秋林 瑞佳
2007年12月4日21:54

>由木さん
こんばんは、そして今回も情報をありがとうございます、うわ〜ん、嬉しー!

>ちょっとしか登場しない威士なのに背景がよくわかって、それが同人誌版の時点で出来上がっていたことに驚きました。
私の場合は『16』がそうだったんですけども、背景がよくわかるとすごく面白くて、驚いちゃうんですよね。たとえば、「しあわせ」も文庫に載ってる番外編はどれも面白いですし。

>おそらく谷崎さんの頭の中には物語が完成していて、それが文章にされるのを待っているんだろう。
私は一気読みした「しあわせ」に同じ印象を持ちました。

>ところがご存知のとおり、物語は完結しませんでした。威士と蓮の話はまだ始まってもいません。文庫の二巻、三巻は同人誌版を少し視点を変えて書いただけで、新しい展開はほとんどありません。
ええええええええええええええええええええ!?
そ…そんな…それは私家版派の方もおつらいのでは…。

>でも、一度同人誌で書いているのだから、せっかくの商業出版の場をもっと有効に使ってほしかったように思います。
>ラステロが表に出て喜ぶべきなのか、こういう形になったことを悲しむべきなのか、どっちでしょうね。
…フクザツですよね。私は「私家版派」=「セキ派」、「文庫派」=「凪派」かなと思っていたので、私家版派の方はみな文庫に満足されていると思ってました。私家版派でも悶々されている方がおられたようで…そっか、そうだったのか…と、またもやフクザツな気持ちになってしまいました。

>一方では作品の中に懐の深い描写があって、大人なのか子供なのか、未熟なのか上手なのか判断が難しいです。それ、すんごくよくわかります。

>だから編集さんが上手に誘導して、読者が上手にほめてあげたら、もっと良い本を書いてくれるかもしれない。できればもうちょっと自分に厳しくなってくれるといいと思うんだけれど。
すんごくよくわかります。たぶん…ほめて伸びる人のように思えます。そういう作家のほうが私は好きです(なぜって、私もそういうタイプだから〜)。

全然別の業界ですが、私は日々厳しく批評される側にいまして、この数年でずいぶんとタフになりました。作家業の方は、今の時代、ネットで読者のダイレクトな批評が読めますよね?…たぶん同じようにタフに…とゆーか、タフにならざるを得ないと思うのですが、感想を書く側として私は、ポテンシャルの高い、期待ができる、頑張って欲しい作家には、もっともっと面白くて良い本を書いて欲しいので、真面目に感想を書きたいと思っているんです(だって成長して欲しいじゃないですか!)。谷崎泉はそこまで思える作家だったので、今回「スペシャル」扱いしたんですけども…どうだったかなあ…。

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