松田美優スペシャル!【2】:『自己破壊願望』 大洋図書 2006年
2007年12月18日 Rotten Sisters!
■『自己破壊願望』
ISBN:4813011357 新書 松田美優(挿絵:あじみね朔生) 大洋図書 2006/07/31 ¥903
デビュー作『赤い呪縛』で注目された松田美優の2作目。風俗支配人(30代?ヤクザ)×呼び込みアルバイター(19歳)、企業舎弟ヤクザでも、金融系経済ヤクザではなくピンサロ支配人というあたりに、松田節が感じられる設定である。
あらすじを読んだら、なんだか水原とほるが書いたほうがしっくりきそうな内容だったので、正直ちょっとビビってしまったのだが、「好みから激しく外れているけど、『赤い呪縛』路線ならダイジョブ♪」と勢いつけて本編を読んでみたらば、前作で感じた不安が痛恨の一撃ヒットしてしまった。
!以下、ネタバレ注意報!
前作とは異なり、ハッキリ鬼畜系に分類されるストーリーラインだと思われるんだけども(たぶん)――
「千葉(攻)が言葉と行為で亮太(受)を貶めまくる」→「そんな千葉にホレてしまい、されるがまま、肉奴隷と化す亮太」→「事件発生」→「事件(なんでか)解決」→「亮太を貶め続ける千葉に女の影、身を引こうとする亮太」→「第三者が事件解決に千葉が動いたと亮太に告げる」→「千葉の真意を知る亮太」→「両思い、めでたしめでたし♪」
……どうしよう。
何度読んでも、サッパリわからねー!
なんでやー!?
千葉がなにを考えてるかサッパリわからない。松田美優の「ちょっと乾いて冷めた他人事描写」は、王道鬼畜系なストーリーになるとこうも攻キャラが見えなくなるのか。「嗜虐的なのは単に愛情の表現がヘタだからで、本当は千葉は亮太が好きなのよ」と読み手に知らしめる…そうだな、たとえば亮太を思う千葉の思いやりの行動にしぐさ、あるいは行間など(たぶん腐女子がもっとも読みたい、BLで期待するものだと思う)描写があれば、まだ理解できるんだけれども――これがほとんどない(『赤い呪縛』もほとんどなかったけど、「禁忌と逆転」という支点があったから絶妙なバランスを保っていたんだと思う)。そして両思いになっても、延々と続いていく言葉攻めにも参った。ダメだ、まったく魅力が感じられない。白旗揚げる。降参。
「なんでこんなヤツが好きなのよ、かわいそう、せつないわ〜」と、逆転劇ナシ、ただただヤラれっぱなしな健気受に同情できて、鬼畜な攻に愛を感じられる(=好物)人向け。
もしかして鬼畜×健気の場合、攻が見えないのが当たり前の世界で、最大ポイントは「そんな状態でどれだけ受の心情に入れ込めるか」になるの?
評価:★(すべてニガテ、好みの真逆。お好きな方はどうぞ)
世の鬼畜×健気の傾向を見て、返り討ちに遭ってしまったとゆーか。鬼畜属性などまったくない私が面白いと感じた前作『赤い呪縛』は、フロックだったかなあ…。
千葉と亮太をめぐるキャラたちがへのへのもへじ、書き割り背景のよう。出てくるけど印象に残らないし、絡んでこない。説明のために出てきて、役目を終えたら消えていく。いくらでも当て馬になれただろう長谷川は、自然消滅したかのよう。もったいない。
とは云っても、ハードな設定とストーリーなわりに陰湿的でなく、あいかわらずJUNEっぽくもない。痛そうな道具に媚薬、スカだのなんだのを出してこないあたりも実に松田美優らしいし、彼女のいいところだと思う。逆に云えば、それらを出してきたら「あ〜あ、とうとう出しちゃったか。フツーになっちゃったなあ」と、ガッカリしてしまいそう。あと、亮太がネクタイが結べない、いままで女性に結んでもらってたというエピソードがいいね。そんな男の子いそうだもの。
絵師のあじみねさんは悪くない…けど、松田作品…というより、ハード鬼畜系に向いてない気がする。刺青の描き方が雑で、もう少し丁寧に描いて欲しかったかな。
ZERO STARS … 論外/問題外作
★ … お好きな人はどうぞ。
★★ … つまんない。
★★★ … 退屈はしないしけっこう面白い。
★★★★ … 面白い。佳作/秀作。エクセレント。
★★★★★ … 天晴れ。傑作。ブリリアント。
ISBN:4813011357 新書 松田美優(挿絵:あじみね朔生) 大洋図書 2006/07/31 ¥903
「この際だ。見極めようぜ?俺とお前、本当にやべえのはどっちなのか…」
父親の借金を返すため、ピンサロで呼び込みの仕事をすることになった夏目亮太は、店の支配人でありヤクザでもある千葉に、力づくで身体を奪われる。男が男に抱かれる惨めさ、思い出したくもない自分の嬌態。たった一度のセックスで心を囚われることなどあり得ない。まして男相手に… 苛立つ一方で、千葉の圧倒的な強さに反発しつつも惹かれずにいられない自分に気づいていた。身体を繋ぐことはあっても、視線は冷たい。優しい言葉をかけられたことなど一度もない。どんなに虐げられても、裏切られても、千葉から離れることができない夏目だったが… 快楽と自尊心。暴力と誘惑。ハードコア・ラブ登場!!
デビュー作『赤い呪縛』で注目された松田美優の2作目。風俗支配人(30代?ヤクザ)×呼び込みアルバイター(19歳)、企業舎弟ヤクザでも、金融系経済ヤクザではなくピンサロ支配人というあたりに、松田節が感じられる設定である。
あらすじを読んだら、なんだか水原とほるが書いたほうがしっくりきそうな内容だったので、正直ちょっとビビってしまったのだが、「好みから激しく外れているけど、『赤い呪縛』路線ならダイジョブ♪」と勢いつけて本編を読んでみたらば、前作で感じた不安が痛恨の一撃ヒットしてしまった。
!以下、ネタバレ注意報!
前作とは異なり、ハッキリ鬼畜系に分類されるストーリーラインだと思われるんだけども(たぶん)――
「千葉(攻)が言葉と行為で亮太(受)を貶めまくる」→「そんな千葉にホレてしまい、されるがまま、肉奴隷と化す亮太」→「事件発生」→「事件(なんでか)解決」→「亮太を貶め続ける千葉に女の影、身を引こうとする亮太」→「第三者が事件解決に千葉が動いたと亮太に告げる」→「千葉の真意を知る亮太」→「両思い、めでたしめでたし♪」
……どうしよう。
何度読んでも、サッパリわからねー!
なんでやー!?
千葉がなにを考えてるかサッパリわからない。松田美優の「ちょっと乾いて冷めた他人事描写」は、王道鬼畜系なストーリーになるとこうも攻キャラが見えなくなるのか。「嗜虐的なのは単に愛情の表現がヘタだからで、本当は千葉は亮太が好きなのよ」と読み手に知らしめる…そうだな、たとえば亮太を思う千葉の思いやりの行動にしぐさ、あるいは行間など(たぶん腐女子がもっとも読みたい、BLで期待するものだと思う)描写があれば、まだ理解できるんだけれども――これがほとんどない(『赤い呪縛』もほとんどなかったけど、「禁忌と逆転」という支点があったから絶妙なバランスを保っていたんだと思う)。そして両思いになっても、延々と続いていく言葉攻めにも参った。ダメだ、まったく魅力が感じられない。白旗揚げる。降参。
「なんでこんなヤツが好きなのよ、かわいそう、せつないわ〜」と、逆転劇ナシ、ただただヤラれっぱなしな健気受に同情できて、鬼畜な攻に愛を感じられる(=好物)人向け。
もしかして鬼畜×健気の場合、攻が見えないのが当たり前の世界で、最大ポイントは「そんな状態でどれだけ受の心情に入れ込めるか」になるの?
評価:★(すべてニガテ、好みの真逆。お好きな方はどうぞ)
世の鬼畜×健気の傾向を見て、返り討ちに遭ってしまったとゆーか。鬼畜属性などまったくない私が面白いと感じた前作『赤い呪縛』は、フロックだったかなあ…。
千葉と亮太をめぐるキャラたちがへのへのもへじ、書き割り背景のよう。出てくるけど印象に残らないし、絡んでこない。説明のために出てきて、役目を終えたら消えていく。いくらでも当て馬になれただろう長谷川は、自然消滅したかのよう。もったいない。
とは云っても、ハードな設定とストーリーなわりに陰湿的でなく、あいかわらずJUNEっぽくもない。痛そうな道具に媚薬、スカだのなんだのを出してこないあたりも実に松田美優らしいし、彼女のいいところだと思う。逆に云えば、それらを出してきたら「あ〜あ、とうとう出しちゃったか。フツーになっちゃったなあ」と、ガッカリしてしまいそう。あと、亮太がネクタイが結べない、いままで女性に結んでもらってたというエピソードがいいね。そんな男の子いそうだもの。
絵師のあじみねさんは悪くない…けど、松田作品…というより、ハード鬼畜系に向いてない気がする。刺青の描き方が雑で、もう少し丁寧に描いて欲しかったかな。
ZERO STARS … 論外/問題外作
★ … お好きな人はどうぞ。
★★ … つまんない。
★★★ … 退屈はしないしけっこう面白い。
★★★★ … 面白い。佳作/秀作。エクセレント。
★★★★★ … 天晴れ。傑作。ブリリアント。
コメント