松田美優スペシャル:「コンクルージョン」
2007年12月27日 Rotten Sisters!
■…というわけで、昨年12月から書いてきた(って、これ書いているのは1/6、でもブログの日付は12/27、書き終えたのは1/13)「松田美優スペシャル!」、これでようやく終了となります。
世に出た作品はたった4冊という新人、しかも私の好みからかなりズレてるはずの「年上×年下、鬼畜×健気」な作家を、なんで「スペシャル!」と銘打ってまで取り上げたのかというと――JUNEっぽい設定や内容が多いのに閉塞感や悲壮感はないし、キャラはリアルなヤンキー系のイマドキにーちゃんで、軽々と禁忌を超えてくるし、ヘンに理想のあるエロは書いてこないし、ハード系にありがちな道具だのスカだの媚薬だの(いまのところ)ないし、攻は受に痛そうなことはしないし(している話もありますが)、文章は強いクセがなくて、スッキリと読みやすく、リズムもいい、一人称なんか新人とは思えないほど上手いじゃないの!
なんだなんだなんだ!
アタシでも読めるじゃん!
鬼畜系になんだか面白い人が出てきたよ!
…ということを伝えてみたかったからです。
がしかし。お手並み拝見だったデビュー作『赤い呪縛』は良かったのですが、2作目以降となると「基本的に受視点とはいえ、攻の心情が読み手に最後までよく伝わらないまま、受にマジ好き告白してオワリ」、キャラ相関が甘い、メインキャラ以外はへのへのもへじで面白みがない。エピソードの繋がりが滑らかではなく、プツンと切れた感じ。感動的なエピソードを挿入しても、なんだか取ってつけたかのよう、ストーリーから浮いてしまって深みがない。
デビュー作はフロックだった?
それとも鬼畜属性がない私が単に読めてないだけ?
手に入る4冊すべての本編とあとがき、そして大洋図書公式HPの特集など読んで思ったのは――松田美優はもしや…ストーリーというより、「ヤンキー系で倫理観のうすーい攻が受を追い詰め、いつの間にかそんな攻にホレてしまう可愛い受」を書きたいだけ、つまり「自分の書きたいキャラとシーンだけ書いて楽しんでいる」のでは?
「自分の書きたいものを書く、そして楽しむ」というのは基本だろうし、松田センセに「そんなんじゃダメ、ウケ狙いになれ、鬼畜攻や高校生受ばかりでなく、たとえば大人同士など書いて欲しい」と叫びたいわけでもないのだけれど(それで個性がなくなるほうがもっとイヤで困るから…でも読んでみたい)、誤解を承知で書けば――読み手をあまり意識していないなあ、という印象が付いて回って離れない(たまに樹生かなめあたりにも感じる)。
「読者にへりくだるべし」と云いたいのではない、でもこのまま本当になにも変わらず、「ストーリー長編というよりシークエンスの連続」(『巧みな狙撃手』感想参照…新刊が短編集と聞いたとき、松田美優の特徴を考えると「やっぱりそうなるよね」と思ったけど)な作品ばかりが、ずっと続くようなら……なんともったいないことだろう、これだけ文章が上手くて個性だってあるのに、あとは伏線絡めたストーリーや魅力ある脇キャラが書けていれば、長編は面白いことになるはず、ああそれなのに!…と、ため息ついて終わってしまう。
『巧みな狙撃手』に収録されていた短編を酷評している人がなぜ多いのか。WEB上で短編発表していた時代は終わり、いまはもう4冊の作品が世に出たプロのBL作家だ。あとがきにも書かれていたように「ありんこ並みのペース」でいい、じっくりと作品に取り組んで、ドラマティックな長編に仕上げて欲しい。
少数派だろうけど、私はあの短編集は悪くないと思っている。松田美優にも、シニカルで素直という複雑な受、穏やかな外ヅラでクールなオヤジ攻が書けるんだと知った「堕ちていく」「掴み取れない」は、(母親がやっぱりへのへのもへじだったが)面白かったし、上手いと思った。正直云うと、オチのしっかりした長編で読みたかった。
デビュー作に、密林で19ものレビュー(しかもほぼすべてが好評)がつく?
注目して期待しているのは、私だけじゃないと思う。
面白い長編を待ってるからね!>松田センセ
■秋林の「松田作品ベスト3」
1.『赤い呪縛』
2.『巧みな狙撃手』収録の「堕ちていく」「掴み取れない」
3.該当作なし
■秋林の「松田キャラベスト3」
該当なし
…共感が難しいからかも。
以上、「松田美優スペシャル!」でした!
世に出た作品はたった4冊という新人、しかも私の好みからかなりズレてるはずの「年上×年下、鬼畜×健気」な作家を、なんで「スペシャル!」と銘打ってまで取り上げたのかというと――JUNEっぽい設定や内容が多いのに閉塞感や悲壮感はないし、キャラはリアルなヤンキー系のイマドキにーちゃんで、軽々と禁忌を超えてくるし、ヘンに理想のあるエロは書いてこないし、ハード系にありがちな道具だのスカだの媚薬だの(いまのところ)ないし、攻は受に痛そうなことはしないし(している話もありますが)、文章は強いクセがなくて、スッキリと読みやすく、リズムもいい、一人称なんか新人とは思えないほど上手いじゃないの!
なんだなんだなんだ!
アタシでも読めるじゃん!
鬼畜系になんだか面白い人が出てきたよ!
…ということを伝えてみたかったからです。
がしかし。お手並み拝見だったデビュー作『赤い呪縛』は良かったのですが、2作目以降となると「基本的に受視点とはいえ、攻の心情が読み手に最後までよく伝わらないまま、受にマジ好き告白してオワリ」、キャラ相関が甘い、メインキャラ以外はへのへのもへじで面白みがない。エピソードの繋がりが滑らかではなく、プツンと切れた感じ。感動的なエピソードを挿入しても、なんだか取ってつけたかのよう、ストーリーから浮いてしまって深みがない。
デビュー作はフロックだった?
それとも鬼畜属性がない私が単に読めてないだけ?
手に入る4冊すべての本編とあとがき、そして大洋図書公式HPの特集など読んで思ったのは――松田美優はもしや…ストーリーというより、「ヤンキー系で倫理観のうすーい攻が受を追い詰め、いつの間にかそんな攻にホレてしまう可愛い受」を書きたいだけ、つまり「自分の書きたいキャラとシーンだけ書いて楽しんでいる」のでは?
「自分の書きたいものを書く、そして楽しむ」というのは基本だろうし、松田センセに「そんなんじゃダメ、ウケ狙いになれ、鬼畜攻や高校生受ばかりでなく、たとえば大人同士など書いて欲しい」と叫びたいわけでもないのだけれど(それで個性がなくなるほうがもっとイヤで困るから…でも読んでみたい)、誤解を承知で書けば――読み手をあまり意識していないなあ、という印象が付いて回って離れない(たまに樹生かなめあたりにも感じる)。
「読者にへりくだるべし」と云いたいのではない、でもこのまま本当になにも変わらず、「ストーリー長編というよりシークエンスの連続」(『巧みな狙撃手』感想参照…新刊が短編集と聞いたとき、松田美優の特徴を考えると「やっぱりそうなるよね」と思ったけど)な作品ばかりが、ずっと続くようなら……なんともったいないことだろう、これだけ文章が上手くて個性だってあるのに、あとは伏線絡めたストーリーや魅力ある脇キャラが書けていれば、長編は面白いことになるはず、ああそれなのに!…と、ため息ついて終わってしまう。
『巧みな狙撃手』に収録されていた短編を酷評している人がなぜ多いのか。WEB上で短編発表していた時代は終わり、いまはもう4冊の作品が世に出たプロのBL作家だ。あとがきにも書かれていたように「ありんこ並みのペース」でいい、じっくりと作品に取り組んで、ドラマティックな長編に仕上げて欲しい。
少数派だろうけど、私はあの短編集は悪くないと思っている。松田美優にも、シニカルで素直という複雑な受、穏やかな外ヅラでクールなオヤジ攻が書けるんだと知った「堕ちていく」「掴み取れない」は、(母親がやっぱりへのへのもへじだったが)面白かったし、上手いと思った。正直云うと、オチのしっかりした長編で読みたかった。
デビュー作に、密林で19ものレビュー(しかもほぼすべてが好評)がつく?
注目して期待しているのは、私だけじゃないと思う。
面白い長編を待ってるからね!>松田センセ
■秋林の「松田作品ベスト3」
1.『赤い呪縛』
2.『巧みな狙撃手』収録の「堕ちていく」「掴み取れない」
3.該当作なし
■秋林の「松田キャラベスト3」
該当なし
…共感が難しいからかも。
以上、「松田美優スペシャル!」でした!
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