「2007年BLちょっとだけ感想&デキゴトロジー」です。これは私が昨年読んだBL作品の中で、ちょっとだけ感想を書いておきたい、感想は別に書いたけどそれに補足をしておきたい、本屋さんや舞踏会や友人とお出かけ先などにて、トンデモ事件に遭遇したので報告しておきたい…など、基本的に簡単な感想と、ヨタ話を記したものです。ただし、読んだ作品すべての感想を書くことは絶対ムリ!不可能!なので、一部だけとなっております。←実は映画版「ちょっとだけ感想&デキゴトロジー」を、コピペ修正した前置きだったり…。

「1」は、主に英田サキ作品の感想を。
ちょっとした「英田兄貴スペシャル!」かな?…Dさんに捧げてみる?

ZERO STARS … 論外/問題外作
★ … お好きな人はどうぞ。
★★ … つまんない。
★★★ … 退屈はしないしけっこう面白い。
★★★★ … 面白い。佳作/秀作。エクセレント。
★★★★★ … 天晴れ。傑作。ブリリアント。

!以下、ネタバレ注意報!

■『いつわりの薔薇に抱かれ』
ISBN:4862632262 単行本 挿絵:石原理 リブレ出版 2007/06 ¥893

評価:★★★☆(英田兄貴作「Tokyo Holiday」、ソープオペラだね)
休暇とある目的のため、はるばる日本までやって来た香港マフィア(攻)が、滞在先の高級ホテルで出会った部屋つき専属バトラーに化けた潜入捜査官(受)を、手ごめにする…しまった、まだ松田クセが抜けない…違うな、バトラー(でも本当は捜査官)に恋をし、身も心も展開もメロメロメロメロメロウ〜になってしまう甘〜い話。リブレでは「マフィア×刑事」と謳っていたけれど、実際は「香港セレブ×バトラー」…ってか、なんでこんなしちメンドクサイ設定にしたの?>英田兄貴 …まあ、あの結末なら最後まで「惹かれ合ってはいけないふたり」でなければいけないわけで、そう思えば、そんな設定にしたのもわからんことはないか。う〜む。

しっかし…作家が英田兄貴で、絵師がヤクザ系・東の正横綱イシハーラ先生なもんだから、てっきり「香港マフィア(攻)vs.日本ヤクザ(当て馬)、そしてふたりに翻弄される刑事(受)による硬派ロマン!」な話かと思ってたら、これが「香港マフィアがホテルのスイートルーム貸し切って、バトラーになりきった刑事の身体を作り変えちゃった♪ラブラブ♪」な話だった…。「攻が受に対して異常にメロメロ、手取り足取り腰取りで受にご教授」…あれ?それって花嫁モノに近くない?…「マフィア×刑事だけど実質セレブ×バトラー、そして花嫁モノ」……。もしかして、最初は硬派な話にするつもりだったのが(だからリブレもイシハーラ先生に頼んだんだと思う)、流れ流れて止まらなくなっちゃって、なんでかそんな話に行き着いてしまったんじゃ?…ラストは別にあれでいいと思うけど、全体的には煮え切らないどっちつかずの中途半端な印象になっちゃったなあ。英田作品だからヤクザは下衆なセリフを吐くと期待したんだけど(そう思いませんか?みなさーん!)、アレックスはセレブ系マフィアだったので、それもあまりなく…。でも、ゴムとローションを買いにドラッグストアへ行くセレブ系香港マフィアのボス…って、どうよ?

あと、高峰!キミはバトラーに転職したほうがいい。刑事より絶対向いてるって!

■『DEADSHOT―DEADLOCK 3』
ISBN:4199004408 文庫 挿絵:高階佑 徳間書店 2007/06/23 ¥560

感想はこちら→http://diarynote.jp/d/25683/20070807.html
評価:★★★☆(英田兄貴が頑張って書いてると伝わってきたので、好感が持てる)
ラブ最至上主義で派手。こーゆー作品が売れるんだろうなあ、と思いながら読んだ。「人種の坩堝の米国、登場キャラはすべて米国人、FBIにCIA、監獄」…う〜ん。私のように、洋画をガンガン観るのが趣味、読書家ではないけれど翻訳小説を読むのが好きなタイプは、どうしても外国が舞台で外国人が主人公なBLには、辛口になってしまう。ラブ以前の問題。設定と描写が甘くてツラい。みなコドモ過ぎるし。この手の作品で上手く騙されたい、それを心の底から待ち望んでいるのに、いまのところ作家の描く上手いウソ(≒リアル)に騙されて面白いと感じたのは、羅川真里茂『ニューヨーク・ニューヨーク』と、吉田秋生『BANANA FISH』だけ(ともにBLではない)。あと、かなり甘いのに、作品に「マンガ力」があることで面白かった真東砂波『FAKE』(これ米国人にもウケてるよ)かな。……。私が望む作品は間口が狭すぎて売れない、BLでは必要とされないだろうね。あーあ。英田兄貴の売れっぷりに思いっきり反比例する、自分の腐女子最末席っぷりを痛感させられちゃった。

あと気になったのはディックだな。なんかこう…キメ台詞(パンチライン)がモタつく。ダサい。もっとスマートになって欲しい。「綺麗なベッドの上で〜」とかなんとかも、ベッドじゃなくてシーツと云ってみるとか、コトを中断してピザ注文するならアメニティを探しにいけよ、とか…う〜む。

■「兄貴とヤス」(『エロとじv』収録)
ISBN:4862631908 コミック リブレ出版 2007/06 ¥1,100

感想はこちら→http://diarynote.jp/d/25683/20070701.html
評価:★★★★(ギュッとよくまとまった短編だけど、ラストがなあ…)
各系統の人気作家を勢ぞろいさせた、競作っぽい一発勝負アンソロジー『エロとじv』収録作。『エロとじv』で面白かった作品は、作家が無理をせず、自分の得意とする話を楽しく書こうとしたところに、力点が置かれたからなんだと思う。英田兄貴もそうで、イキイキとガチホモを書いてくるんだもんなあ(わははは♪)。しっかし、ヤスは大丈夫か?…あの羽鳥の相手を毎日するんだったら、並みの体力じゃダメだよねえ?

■『素直じゃねぇな』
ISBN:4862632637 単行本 挿絵:桜城やや リブレ出版 2007/10 ¥893

評価:評価不能(だって読んでいないから♪)
レーベルがSLASHな上、表紙にドン引きしてしまったため、購入には至らず。買ったのはオッシー。いつもの居酒屋で、オッシー(属性:オヤジ)が「面白かった♪」と云っていたところをみると、エロオヤジ好きな人向けかと。やはり時代は「受・攻ともにオヤジ」なのかと、これまた痛感。

■『すべてはこの夜に』
ISBN:4773003839 単行本 挿絵:海老原由里 笠倉出版社 2007/10 ¥900

評価:★★★☆(ベタな小作品という印象、でも好感が持てる)
いまは亡き「JUNE」に掲載された、英田兄貴のデビュー作(表題作)と、その周辺他2編を収録したヤクザ×一般人もの。借金背負ってどうにもならない男(受)が、金のために襲撃依頼を受け、ターゲットの家へ行ってみれば、その相手は関係を持ったことがある大学時代の友人で、現在はヤクザな男(攻)だった――って…あれ?あれれれれれれ?友だちの家に転がっていたスクラップで読んだことあるよ、これ!…うわ!英田兄貴の作品だったんだ!(不覚)…アタシってば、英田兄貴のデビュー作を雑誌で読んだことあったのね…当時はヤクザものが現在のように隆盛を極めておらず、しかもラストがあんな風だったから、印象が強く残っていたんだよなあ。ああ、思い出走馬灯。

というわけで、センシティブ系を得意とするクロスノベルス(笠倉出版社)から改めて出た本作を読んでみたんだけど、青臭い…言葉が悪いな、少ない手持ちのカードを精一杯切って書いたんだろう、そして「読んでもらいたい」という書き手の思いがとても感じられる、渋くて青い光を放つ作品だった。同収録の書き下ろし作品を読むと、文章も展開も小慣れていてさらに甘〜く仕上げてあるので、やっぱり「プロだなあ」と思うんだけど、基本的にデビュー作から兄貴は変わってないよね。

英田兄貴の良さって、ストーリーの面白さうんぬんよりまず、読み手を冒頭1ページ目からグイグイっと引っ張っていくストーリーテリングとリズムの軽快さ、けっして垢抜けた文章とはいえないし、セリフも下衆だったり芝居がかったりするのだけれど、それらと相反するかのように、センシティブなエピソードを挿入してくるその絶妙さ、紙面から浮き上がってくるほど立ったキャラたち、そして「読んで欲しい」という兄貴の思い――なんじゃないかと思う。兄貴に関しては、ある種の雑音がどうしても聞こえてくるし、ぬぐい切れないものがあるのも事実(これに関しては後述予定)。でも「私はこれが書きたい、読んで欲しい」という溢れる思いが行間から伝わってくるだけに、私はやっぱり悪い印象が持てないんだよなあ(あとは兄貴がどう自分のものにしていくか、だね)。

で、感想だ感想!(←忘れちゃいけません)

表題作は、「過去のあるふたりが偶然再会、でっかい誤解を抱えたまま、再び体を重ねるようになる。やがて時間と周囲により誤解が解かれ、真実が判明、実は互いに好き合ってたのでした」という、感情表現下手な攻と受による、不器用ラブの王道もの。一緒に日々を重ねていくうち、とうとうふたりに分かり合う時が来たか?と思わせといて、ジャケットのポケットに入っていた手紙がさらに誤解を生む、というエピソードがイイね。誤解がさらに深くなれば、そのあとに来るだろう「真実が明かされた瞬間のふたり」が、より印象的かつ感動的になるというのもあるけど、後ろめたい恋をしている女は、そんな手紙を書いて真実を告げたくなるだろう、懺悔にしているのかも、というズルさがリアルに感じられて良かった。ただ、学生時代の湊がどうして加持を選んで求めたのか、ちょっとわかりにくいかな?

下衆なセリフを連発する湊(攻)と可愛らしい舎弟に、英田兄貴らしさを感じながら、このままどうオチづけるのかと思っていたら――そうきたか。懐かしいね。う〜んJUNEっぽい。

本編スピンオフ「夏の花」「春に降る雪」(予約特典小冊子収録)は、若き日の武井の話。小作品という印象を持つ、田舎を舞台にした、これまたベタなストーリー。本編に充分な面白さがある英田作品は、サブキャラによるスピンオフは別になくてもいいと思うんだけれども、そんな兄貴の本でこういう話を入れてきたあたりに、業界の「番外編・スピンオフBL商法」を感じる。番外編のほうが面白く感じるのは…それも正直困るんだけどさ…ごにょごにょ…英田作品では珍しいと思う。ベタなストーリーは徹底的にベタであって欲しいし、ちょうど秋が深まる頃に出たということもあり、秋になるとちょっとJUNEっぽい、しっとりとしたストーリーが読みたくなるので、時期的にも良かったかなと。

「春宵一刻」は表題作の続編。あんなシーンから始まるもんだから、「え!?加持って死んだの?英田作品なのに!?」と驚いちゃったじゃない!…でもやっぱり英田作品、死んじゃいなかった…。そして甘〜い話だった…。ちょっとばかり砂を吐かせて下さい。
ザァァァァァ!!

絵師は、兄貴とは初コラボ(かな?)海老原由里。「社会の底辺に這いつくばって生きようとする受、ズタボロな貧乏っぷり、受にメロメロなコワモテ攻、せつなくセンシティブなストーリーにあんま〜いラブv」なので、私が絵師を選ぶなら「海老原由里より志水ゆきだな、こりゃ」と思ったけれど、よくよくよーく見てみれば、海老原さんの描線って志水ゆき系。う〜む。やはり感じた印象はみな同じ?

■『愛してると言う気はない』
ISBN:4813011586 挿絵:北畠あけ乃 大洋図書 2007/12/26 ¥903

評価:★★★(雑音OFFしてるけど、やっぱウッチーと麻生さんが好きなのよ、私)
警察を辞めて探偵になったしがない中年の男(攻)、出会った12年前は内向的な少年だったのに、大物ヤクザの愛人を務めたのち組の幹部となってしまった、美形だけど口の悪い「魔性の男殺し」ヤクザ(受)、身内による愛憎劇、受の暗い過去、そんな受を放っておけない攻――なんつーかその…まったく同じとは云わない、でも申し訳ないんだけれども、オリジナル某作品の影響がどこかしらに感じられ、雑音が聞こえてきて仕方がなかった『さよならを言う気はない』の続編。

まあその…某作品とは圧倒的な筆力の差があるし、求められるものがまったく違うBLと区別されて然りだろうし、これはこれでよし、雑音OFFして感想を書くならば――前作にも増してガチホモ度がアアア〜ップ!倍率ドン!さらに倍!になったのには、万年青コーナーでなんだって読んでやるさ!な私でも、さすがに参ったぞー。キレイな顔で下衆なセリフを吐きまくる凶暴な受、でも棘付き殻によって見えない心はピュアなのよん、おっしゃ!オヤジになっちゃったけど、おれ(攻)が守ってやろうじゃないの…と、ガチホモ度とともに受・攻キャラ相関を深く掘り下げてきた続編は、やっぱりラストがメロメロメロ〜で英田作品らしい感じがする。個性が出てきたね。攻のために、現在の自分を譲歩しない(=ヤクザを辞めない)受もいい。たいへんな相手を選んじゃった陣内(攻)、ガンバレよ!…と、ネット場末からエールを送っておこう。

ただなあ…私、絵師の北畠さんは好きなの、でもタッチが前作と変わってしまって、ガチホモ度がアップした本作とはイマイチ合ってないような気がする。本編の挿絵は、当たり障りのないシーンを描いたものが多く、センシティブな内容なわりにエピソードがどれもけっこうハードだから、北畠さんだとちょっとツライ、なので避けられちゃったのかな。かと云って、たとえば鹿乃しうこにバトンを渡しても、ポップ過ぎて浮いちゃうような気がする。内容をもっとハードにして、BL的な甘さとセンシティブさを取ってしまったら、今度こそ田亀先生の出番?……。難しいね。表紙カバー絵は「2007年BL小説カバー絵ベスト2」(1位はシバタさんの「ラステロ」)で、素晴らしい出来なんだけど。

英田兄貴はコーヒーがお好きなんだろうなあ。コーヒーが出てこない作品ってないもの(たぶん)。それからキャラに愛を誓わせるのもお好きだよねえ?

以上、「英田兄貴スペシャル!」な1でした♪…2に続きます。

あ、しまった!『エス』が書けなかった…。

コメント

”D”
”D”
2008年1月13日21:22

捧げられました(笑)!
続き楽しみにしていますよ。
私は普段、秋林さんのレビューを読んでから(あるいはさわりだけ流し見てから)その小説を読むパターンになることが多いのですが、英田作品に関しては先に読んでいるものも多いので、後から秋林さんのレビューを見て新しい発見があることにいつもビックリ面白く思ってマス。(^_-)

秋林 瑞佳
秋林 瑞佳
2008年1月14日20:24

ガンバリマス!<続き

あとは、ままりん(母)とのPC争奪戦にどう勝つか、です。
むむむむむ。

”D”
”D”
2008年1月21日1:44

「1」終了、お疲れ様でした。楽しく読ませていただきましたよ!
実をゆーと『素直じゃねえな』は私も未読だったのですが、オッシー氏が面白いと仰るならということで昨日読みました。そしたらけっこう面白かったんですよ!さすが英田兄貴。

あと、『春宵一刻』の冒頭部は私も、一瞬、死んだ?と思いかけましたが、英田作品だからというよりは「BLだから」絶対死んでない、と思いましたね。むしろ、そんなドキリにすら昨今のBLではあまり出会わないので、やるね兄貴と思ったくらいでしたよ(笑)。

秋林 瑞佳
秋林 瑞佳
2008年1月23日20:52

>そしたらけっこう面白かったんですよ!
そっか〜、「素直になって読め!」ってことでしょうか(わははは♪)

>『春宵一刻』の冒頭部は私も、一瞬、死んだ?と
思いますよ…ええ、一瞬。しっかしホントに死んでたら、珍しいBLになってただろうなあ。

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