■『菫の騎士』新書 大洋図書 発売:2008/05/09 903円
伽の地と呼ばれる緑豊かなベネボレントの領主・アルヴィンは、ある昼下がり、菫の褥で眠る男と出会う。それは、幼い頃を一緒に過ごした大好きな従弟・ダンテの成長した姿だった。優しく、可愛らしかったダンテは、いまでは逞しく立派な、けれど何を考えているのかわからない青年へと様変わりしていた……哀しみと憎しみ、そして勇気と愛の物語、誕生!

♪ぴんぽんぱんぽ~ん♪
こちらはDiaryNoteバージョンの感想となりまーす。

! 以下、ネタバレ注意報 !

中世ファンタジー風な騎士×領主モノ(年下攻)。

ファンタジーを書かせたら、これまたBL界ではトップだろうと思わせるエダさん。実際、別名義・別出版社で発表されているファンタジー作品でも固定ファンを多く得ている方なので、そのままBLにスライドしても安心して読めるだろう…と思いきや。

ファンタジー部分があまりにジュブナイルすぎて、アダルトなラブシーンとどーにもマッチせず、そーゆーシーンが出てくるたびに、いたたまれない気持ちになってしまった。

やわらかな日差しを感じさせてくれる文章。

やさしい気持ちにさせてくれる素朴な領民たち。
忍び寄る戦争の影。
ダンテの暗い過去とアルヴィンの後悔。

…ときて、いつものそーゆーシーン。

う~ん…。

導入部は相変わらず素晴らしく、キャラは活きているし、お約束だろう主要キャラのワケアリ告白だって、要所にしっかり置かれている。もともとエダさんは1冊キッチリストーリーをまとめてくる人。なので、本作もエンドマークがちゃんとついている作品に仕上がっているのだが、比較的ページ数の少ないSHYでは、どうしてもゴーインかつ中途半端な印象がついてしまう。ファンタジーにBLがあるのか、BLにファンタジーがあるのか。レーベルを思えば後者なのだろう。だが正直云うと、BLじゃなく、もっと設定を作りこんだジュブナイルファンタジー作品として読みたかった。それほどBL部分が邪魔に感じてしまった。アルヴィンとダンテの友情物語だったら――たとえば、角川や講談社などで正統派ファンタジーとして発表されてたら、もっと世界観のある、素敵な作品に仕上がっていたんじゃないだろうか。

これがもし、純粋なファンタジーだったら。

ああ!
ボースンさんにオススメできたのにぃぃ~~っ!


きっと書けるだろう、でも書きれてない。そしてラブより読みたいと思わせる他の要素が多かったことが、BLとして中途半端な印象を植え付けてしまったのかもしれない。

評価:★★★(エダ作品はタイトルが凡庸だと、「あ、これは凡作かも」と予感してしまう)
エンタ色高めでジャンル豊富なSHYというレーベルにも功罪があるね。いろいろ読めるのは嬉しいし、作家もチャンレジできていいと思うけど、1冊でまとめるには苦しい作品になっていると、読み手にもその苦しさがダイレクトに伝わってしまうんだもの。

それから大洋図書さー、お願いだからオビ惹句で誤植しないでよー、頼むからさー!もう!

×「恋をしているから すてべを赦したい」 → ○「恋をしているから すべてを赦したい」

絵師はライトグラフIIさん(PNを変えててもOさんとわかるとゆーか)。う~ん…合っていると思うし、なにも問題はないんだけれど…やっぱ私は青樹そう(漢字が出ない)さんの絵で読んでみたかったかな…。


ZERO STARS … 論外/問題外作
★ … お好きな人はどうぞ。
★★ … つまらない。
★★★ … 退屈しない。なかなか面白い。
★★★★ … とても面白い。佳作/秀作。エクセレント。
★★★★★ … 天晴れ。傑作。ブリリアント。

「オススメ作品」は基本的に★★★☆以上。
「絶対オススメしておきたい作品」には@RECOMMEND@マークがつきます。
性格上の理由から、★評価は厳しくなりがちなので、★5つ作品はあまり出ないと思います。

コメント

ボースン
2008年10月22日23:30

わははははー。
PCの前で吹いてしまいました(笑)
召喚されてしまっていたワタシ。

そうですねー、たまに、凄ーく部分的にウケてしまって、自分ならあーいう展開にこういう展開にとか想像力が刺激され、スルメのようにしがんでしまう「もうひといき突っ込んでほしい設定」ってありますよね。わかる気がします。
…いつか、スピンオフ(というのかな?)な純ファンタジー作品の傑作が新たに生まれてくれるといいなと思います。

とりあえず、「少年神官…」についに予約つけてみました。どきどき。(いやBLではない筈なので、そんな緊張しなくていい筈なんですが(^^;))

秋林 瑞佳
2008年10月23日21:38

あきりんは銀のたてごとをならした!
♪ぴろろろろろろろ~ん♪
ボースンがあらわれた!
コマンド?
(ネタが古過ぎて泣く)

>「もうひといき突っ込んでほしい設定」
ありますよねー、昨年ウチのブログでも一部の方を巻き込んで、谷崎さんの「最後のテロリスト」で「なんでそーなるんやー!?」と大騒ぎしましたもの(そしていまだに納得できてないとゆー)。

エダさんはですね、とにかく文章が巧く、よどみというものがありません。基本的にどの作品もストーリーが成立している(=出来上がってる)し、読んでいてツッコミを入れたくなることもほとんどないし、「エダさんの頭の中にあるお話」を読ませてもらっているなあ、という感じがします。

そのせいか「こういうストーリーのほうが良かったのに」と思わせることはあまりないです。評価に関しては、出来不出来の問題ではなく、各作品が読み手にフィットするかどうかで分かれる感じです。←でリンクしているりょうさんもお書きになってましたが、「好みから外れてても読んでしまう」作家なんですよね。あまりにスマート(賢いという意味)なせいか、簡単に定石をヒョヒョイと踏んでいる印象すらあり、逆に「よく出来すぎているので物足りない」と云われるほどです。以前、「エダさんスペシャル!」でも書いたのですが、エダさんの場合、「手堅い」が褒め言葉にならないんですよね…。

たぶんボースンさんなら、私の指摘する「スラスラ読ませる巧さ、文章・ストーリーは成立している、あとは自分の好みかどうか」を、「少年神官」シリーズで感じていただけるのではないでしょうか。

りょう
2008年10月25日0:19

ヨコから失礼しま~す。
『菫の騎士』はせめて上下巻ぐらいの長さがあればよかったですね。じっくり書けば書くほどFTとして面白くなって、もっとBL要素が邪魔になってしまうのかもしれませんが……。

>エダさんの場合、「手堅い」が褒め言葉にならないんですよね…。
ですよね~。なんだか「エダさん基準」があるような気がします…。
「エダさんにしてはイマイチ」=でも★3つ、とか、「さすがエダさん!」=★4つ、とか(笑)
もともとの評価が高いせいか、エダさんなら書けて当たり前という感覚になってしまい、やけに点が辛くなってしまうような気がします…。

ところで、もうすぐ『交渉人~』の発売日ですね!
この作品は珍しく「私の趣味に合っていて、面白い」エダ作品なので楽しみです。

秋林 瑞佳
2008年10月25日18:23

あきりんは銀のたてごとをならした!
♪ぴろろろろろろろ~ん♪
りょうがあらわれた!
コマンド?
(ネタは「ドラクエ3」。でも「コマンド?」は「1」だけだったか…)

>じっくり書けば書くほどFTとして面白くなって、もっとBL要素が邪魔になってしまうのかもしれませんが……。
そうなんですよねえ、「BLとFT、どっちを取るの?」っていったらBLでないといけないレーベルなのに、BLよりFT部分が「本当はもっと書けるんだろうなあ、もったいない」と思わせるなんて他の作家であるかどうか…。BL部分をどう残すかを考えてあんな形になったのかなあ、設定がFTだとしてもBL部分を読んだら定番ストーリーになってますもの。職人だよなあ、と思ってしまいます。

>なんだか「エダさん基準」があるような気がします…。
>エダさんにしてはイマイチ」=でも★3つ、とか、「さすがエダさん!」=★4つ、とか(笑)
>もともとの評価が高いせいか、エダさんなら書けて当たり前という感覚になってしまい、やけに点が辛くなってしまうような気がします…。
もうおっしゃる通り!!

エダさん内の評価が厳しくなるのと同時に、他の作家とも比べてしまいますね。「エダさんにしてはイマイチ」=★3つ → でもこれが他の作家が書いた作品なら★4つ、「さすがエダさん!」=★4つ → でもこれが他の作家が書いた作品なら★5つだろうな、みたいな。

>ところで、もうすぐ『交渉人~』の発売日ですね!
>この作品は珍しく「私の趣味に合っていて、面白い」エダ作品なので楽しみです。
私も楽しみです♪
基本的にりょうさんと私はシュミが違うとゆーのに、その私たちがふたりで「面白い」って云ってるんですから、絶対オススメですよね!うん!うん!うん!

今月末は買うもの多いですよー。あーうー…どこで買おうかな…。

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