良かった!
三木さんも小西さんも良かった。

ただ…ね。

人間から虎へと身を堕とし、過去を自嘲する哀しい男。
――そんな李徴は、三木さんのほうが合ってたような?

ミスキャストとは思わないし、演技に文句つける気もない。声のトーンや雰囲気からつい思ってしまうんだろうけど、小西さんには李徴の持つ寂寞や孤独感があまり感じられない。じゃあ逆のほうが良かったかと云うと…小西さんの袁慘は違うよなあ。うん。

大問題は脚本のほうで、あのラストはいただけない。
私が中島敦だったら、あんな解釈のつけたしされたら怒る!

だって…だって『山月記』は――ふたりの哀しみを行間から察する作品だから。

高校の先生が授業で教える解釈だったり、あるいは「みなさん、どう思いますか?」と生徒に訊いて返って来た答えのひとつだったりするんだろうけど、それをCDで語られたら正直困る…。朗読CDだし、ターゲット層や中島敦の文体を考えれば、わかりやすくしたい気持ちはとてもよくわかる。でもあのラストは語りすぎ、それで『山月記』の持つ余韻が削られちゃって、もう別の作品という感じ。このラストのつけたしで、評価がわかれそうな気がする。

「ブロークバック・マウンテン」のラストと同じ。

イニスは "Jack, I swear..."とそこまでしか云えない男なのに、日本語字幕では勝手に「ジャック…いつまでも一緒だよ」となっていた(そんなこと、イニスは映画でも原作でも云っておらーん!)。「ブロークバック~」は、実際にそういう気持ちでもイニスはそれを口に出せない、云えない男だったから…という話だったのに。くっそー。

それでも、この『山月記』の小西さんと三木さんの声で、ベッドをごろんごろん転がりまわって床に落ちそうになってしまい…。好きな声に反応しちゃうのは、自然の摂理(は?)。「小西×三木」はアタシの好み、ということがよくわかった。ほかに「小西×三木」CDはないの?と…うっかり真剣に検索かけちゃったほど。そしたら1件しかヒットなかったとゆー…。そっか…自分はドラマCDでもマイノリティなのね…。

コメント

”D”
2009年9月29日20:29

私はこれ、原作未読だったので、三木さんの、ラストのセリフを言うときの声が好みだなーなんて思ったくらいで、もう、そういうストーリーなんだ、ってすんなり思っちゃったんですよね。
あとであちこちのレビューをみて、このラストが原作ファンのかたにはけっこう不評なんだな、というのを知ったのでした。

秋林 瑞佳
2009年9月29日21:42

原作未読!?…ちょっとちょっと待って!?
Dさんの時代って(そんなに私と離れてないぞー)、高校の現代国語の教科書に「山月記」載ってなかった?そこで読まなかった?

>そういうストーリーなんだ、ってすんなり思っちゃったんですよね。
いや、知らなかったらそうなると思う。あのセリフを云う三木さん、たしかに素晴らしかったし、そういう話だと思うもの。

中島敦は漢文調の文体なので、それをそのままドラマ風の朗読CDでは無理が出るから、セリフを加えて現代調に直したんだなあ…と、そこまではまったく気にならなかったし、声優さんは素晴らしい演技だったし――逆にわかりやすく脚本化したなあと感心してたの。そしたらあのラストにビックリ。えー!?それは違うでしょうーなんでそうなるのー!?って感じ。

でもね…CD自体は好きなの♪小西さんと三木さん、いいよね~♪

”D”
2009年9月29日22:14

高校でやった記憶はないですなあ…。
もし、「やったけど忘れた」状態だったとしても、たぶんこういうのを聴けば「この話、知ってる…?」みたいに思うと思うんだけど、そういう感覚もまったくなかったんですよね。なのでやっぱ習ってないんだと思います。
うーん、時代の問題なのかなあ…?私、私立高校だったし、教科書とかが違っていたのかも知れないね。

秋林 瑞佳
2009年9月30日16:55

うわーないんだー…たしかに教科書が違うかもしんないねー。ちなみに私が覚えている現国教科書に載ってた作品って、「山月記」(これが一番…すごく好きだったんだと思う)、「城の崎にて」、「こころ」くらい。芥川と太宰は覚えてない。載ってたは覚えてるんだけど、どのタイトルだったか…。

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