図書館で借りて読みました。
(絶版みたいで手に入らなかった…)
実話をもとにした児童文学。
第二次世界大戦下のポーランド。ゲットーから脱出したユダヤ人少年は、その時まだ八歳だった。森と農村を放浪する過酷な日々は、少年から片手と過去の記憶をうばった。けれども、少年はけっしてくじけなかった。あどけない笑顔の持ち主は、知恵と力をつくし、ときには友情に支えられて、ホロコーストの嵐を生きぬいていったのだ。

当事者でも8歳の子供だったら、社会経験値がないも同然「どうしてそうなったのか」「どういう状況に置かれていて、自分はまずどう行動するべきなのか」なんてわかるわけない。いい人と悪い人の区別もなかなかできない。いっぱい失敗して学習する。そして大人になって落ち着いてまわりが見えたとき、「そうか、あのとき自分はそういう立場だったんだな」「あの人はいい人だったんだな」と客観的に理解できるんだろうなあ、と読みながら思った。

お父さんやお母さん、兄弟、友だちが突然いなくなって、自分ひとりで生きていくのが大変な状況、常に死と隣り合わせ…だったら、悲しいなんていってられないのかもしれない。だからなのか、過酷な日々を送っていても主人公の描写に悲壮感はなく、逆にたくましさを感じるほど。出てくるドイツやロシアの軍人がみな悪い人ではなく、少年とのやりとりでも人間味のあるエピソードが挿入されていてほっこりしたり。かと思えば、少年に対するあまりに残酷な仕打ちでショックを受けたり。

山あり谷ありストーリーの中で救われるのは、どんなにひどい目に遭っても少年の心は憎しみで満ち溢れていないこと。希望を持っているからというのではなく生きることに必死で精一杯だから、ということがとても切ないけれど。

いいお話でした。

映画化して日本でも公開されるとのこと。

生きるために記憶を消した男の子 「ふたつの名前を持つ少年」公開!
http://ddnavi.com/news/234821/

公式サイト
http://www.futatsunonamae.com/
(トレイラー付。映画のほうが抒情的ですね)

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