木原攻略のご案内
2007年7月25日 Rotten Sisters! コメント (3)
英田サキが好きな人に木原音瀬の作品を薦めるのは、ムズかしい。だってこのふたり、対極に位置する作家なんだもん。
…というわけで、リクエストを頂いた「初心者Dさんにオススメの木原作品は?」を。
手っ取り早く知りたいなら、のっけからモラルを試され、かつ木原要素がだいたい詰まっている『WEED』『FLOWER』『POLLINATION』(三部作)。恋愛中はカッコいいことばかりじゃない、もがいてあがいて醜態晒す、それが当たり前なんだ、ということが書かれてあると思う…けど、それはどの木原作品でも同じか。夢見がちな腐女子に喝!
ポップなコメディなのに、受の***という設定が「やっぱり木原音瀬」と思ってしまう『脱がない男』。私はあまり好きじゃないけど、リブレ系なので読みやすい…というか、リブレ用に読みやすくしてみました、という感じがする。
そして、木原リズムに慣れたら――『箱の中』『檻の外』。
…という感じでしょうか?
ちなみに、私が好きな木原作品は『牛泥棒』。依田沙江美の挿絵がドンピシャ。「2007年上半期ベスト3」のうちの1本で、何度も読み返した木原作品は(今のところ)これだけ。六尺と越中、どっちなのか気になる(…って、なんの話だ)。寓話っぽい時代モノにマジ弱い私は、この「牛泥棒」に娯楽性を感じるんだけどなー。Dさんも好きそうな気がする。そういえばこれが出たとき、榎田さんも別レーベルで明治あたりの時代物作品(例の遊郭モノ)を出していたので、重なって面白いなと思ったナリ。
『吸血鬼と愉快な仲間たち』は未読。でも私にヒットする作品だろうと思っているので、近いうちにポチる予定。
…というわけで、リクエストを頂いた「初心者Dさんにオススメの木原作品は?」を。
手っ取り早く知りたいなら、のっけからモラルを試され、かつ木原要素がだいたい詰まっている『WEED』『FLOWER』『POLLINATION』(三部作)。恋愛中はカッコいいことばかりじゃない、もがいてあがいて醜態晒す、それが当たり前なんだ、ということが書かれてあると思う…けど、それはどの木原作品でも同じか。夢見がちな腐女子に喝!
ポップなコメディなのに、受の***という設定が「やっぱり木原音瀬」と思ってしまう『脱がない男』。私はあまり好きじゃないけど、リブレ系なので読みやすい…というか、リブレ用に読みやすくしてみました、という感じがする。
そして、木原リズムに慣れたら――『箱の中』『檻の外』。
…という感じでしょうか?
ちなみに、私が好きな木原作品は『牛泥棒』。依田沙江美の挿絵がドンピシャ。「2007年上半期ベスト3」のうちの1本で、何度も読み返した木原作品は(今のところ)これだけ。六尺と越中、どっちなのか気になる(…って、なんの話だ)。寓話っぽい時代モノにマジ弱い私は、この「牛泥棒」に娯楽性を感じるんだけどなー。Dさんも好きそうな気がする。そういえばこれが出たとき、榎田さんも別レーベルで明治あたりの時代物作品(例の遊郭モノ)を出していたので、重なって面白いなと思ったナリ。
『吸血鬼と愉快な仲間たち』は未読。でも私にヒットする作品だろうと思っているので、近いうちにポチる予定。
大学で助手をしている亮一郎は、年上の口のきけない使用人・徳馬に、密かに想いを寄せていた。幼い頃に母を亡くした亮一郎にとって、物心ついた頃から傍にいてくれた徳馬は、誰よりも欠け替えのない存在だった。自分の想いで関係を壊したくなくて、亮一郎は想いを告げぬまま、女との結婚を考えるが…。 口のきけない男の秘められた過去と思いとは?互いを想い合う、切ないラブストーリー。『牛泥棒』 ISBN:4883863247 新書 依田 沙江美 蒼竜社 2007/06/29 ¥900
罰ゲーム感想:「総評/総括」
2007年7月23日 Rotten Sisters! コメント (2)
←会社ではこんな風に手で隠して、コソコソ読んでおりました(画像は秋林家で撮ったもの)。堂々と読める本じゃないですからね。ちなみにページは「鈍色の華」。わかんないと思いますけど。後ろにあるのは現在読んでいる本。ジャンルは見事バラバラ。めでたく感想を書き上げたので、お茶の間にうっかり『エロとじv』を忘れてしまうことがなくなりました。冷や汗流さなくてもいーい〜♪
さて。ヨタ話はここまでにして本題を。
コンペティションなわけではないけれども、13本も載ると「どれがよかった?」「どれが好き?」という話になるのが常というもの。KAT-TUNが目の前にいたら、「ねーねー、だれが好き?」という話になるのと同じである(私は田中。好みではないが、そのジャニーズらしからぬ媚びない姿勢と個性を買う)。というわけで、『エロとじv』掲載作品13本中、各賞ベスト3を選んでみた。
★『エロとじv』掲載作品リスト(掲載順・敬称略)
「痴漢電車」 作:鬼塚ツヤコ 扉絵:佐々成美
「バッドステータスv発情中」 作:南原兼 扉絵:ホームラン・拳
「媚薬」 作:水上ルイ 扉絵:池玲文
「兄貴とヤス」 作:英田サキ 扉絵:鹿乃しうこ
「蜜月メイド」 作:水戸泉 扉絵:しょうおとあや
「鈍色の華」 作:木原音瀬 扉絵:鈴木ツタ
「隷従の檻」 作:和泉桂 扉絵:稲荷家房之介
「クリスタル」 作:榎田尤利 扉絵:中村明日美子
「貴人たちの後継儀式」 作:斑鳩サハラ 扉絵:明神翼
「多岐川肛門病院の秘密」 作:山藍紫姫子 扉絵:あさとえいり
「華麗なる賭け」 作:あすま理彩 扉絵:亜樹良のりかず
「縛めの白薔薇」 作:あさぎり夕 扉絵:かんべあきら
「可愛くて、可愛くて。」 作:雪代鞠絵 扉絵:大和名瀬
■コンペティション部門
1.「鈍色の華」 作:木原音瀬 扉絵:鈴木ツタ
2.「クリスタル」 作:榎田尤利 扉絵:中村明日美子
3.「兄貴とヤス」 作:英田サキ 扉絵:鹿乃しうこ
BL短編小説として評価した場合のべスト3。カンヌ風にいうと、パルム・ドールが木原音瀬、グランプリが榎田尤利。一歩間違えれば、読み手に痛恨のトラウマを与えるだろう衝撃作を(またもや)書いてきた木原、スリリングにキッチリ隙なくまとめてきた榎田、愛にあふれたエロにスピーディーな展開が素晴らしかった英田。やっぱりこの三人が抜きん出る形となったという印象。予想通り。
■ある視点部門
1.「多岐川肛門病院の秘密」 作:山藍紫姫子 扉絵:あさとえいり
2.「バッドステータスv発情中」 作:南原兼 扉絵:ホームラン・拳
3.「可愛くて、可愛くて。」 作:雪代鞠絵 扉絵:大和名瀬
「エロとじv」の感想を語り合うと、たぶん「木原さんキョーレツー、エダさん上手いー、英田兄貴エローい」という人気作家3名の話になると思うのだが、そのあと「でさ…アレ、どう思った?」と来るだろう作品を選んでみた。となると、やっぱり山藍紫姫子。「卵を見ると思い出す」という人は多いはず(アタシもだ)。南原兼は、いきなりの猫耳にたまげた。雪代鞠絵が3位なのは、「なにもラストがこの話でなくたって」という理由である。
■萌え出づる大賞
1.【キャラ・ストーリー萌え】「兄貴とヤス」 作:英田サキ 扉絵:鹿乃しうこ
2.【作家萌え】「クリスタル」 作:榎田尤利 扉絵:中村明日美子
3.【シチュエーション萌え】「媚薬」 作:水上ルイ 扉絵:池玲文
短編ながら私にキャラ萌えさせた「兄貴とヤス」が1位。羽鳥とヤスは実に魅力的だった。ヤスが羽鳥に精を吸い尽くされてなければ、またふたりの話が読みたい。2位の「クリスタル」は、榎田尤利の上手さに萌えた。3位の「媚薬」は、正直云えば、キャラの設定に合ったセリフまわしにして欲しかったし、攻が喋りすぎなエロもまったく好みではなかったのだが、「馬丁×王の最後の夜」というシチュエーションに萌えた。
■扉絵大賞
1.池玲文「媚薬」
2.鹿乃しうこ「兄貴とヤス」
3.稲荷家房之介「隷従の檻」
「ヒゲや胸毛や脛毛は当たり前、筋肉ムチムチなエロエロゲイ」というイメージで、「兄貴とヤス」を担当してもいいはずの池玲文が、ひらひらレースの西洋コスプレキャラを担当!しかもまるでアンドレ!!…この衝撃は大きかった。池を抜擢したリブレ編集担当者を褒めたい。秋林絶賛の1枚。鹿乃しうこは、さすがガテン系アクロバット絵師であると納得の1枚。稲荷家房之介は、もう少しアラブっぽかったらよかったかな…なんとなくトルキーだったので。
■惹句大賞
1.「弟分に奪われる極道同士の危険な愛……!!」(「兄貴とヤス」)
2.「誰も見たことのないその華は、誰とも違う輝きを放ち…」(鈍色の華)
3.該当作なし
女性誌(「女性自身」など)の表紙風にまとめた「兄貴とヤス」と、小説の内容が衝撃的なぶん、控え目に抑えた「鈍色の華」を評価したい。
■コラボレーション大賞
1.「兄貴とヤス」 作:英田サキ 扉絵:鹿乃しうこ
2.「鈍色の華」 作:木原音瀬 扉絵:鈴木ツタ
3.「バッドステータスv発情中」 作:南原兼 扉絵:ホームラン・拳
「作品・扉絵・惹句」のベストコラボは「兄貴とヤス」。やっぱり乗って書いたもの勝ちである。
■総評/総括
ロリータ…もといショタ系からJUNE/耽美系まで、読者の属性に対応するべく、それぞれのエキスパートだと思われる作家、そして現在もっとも勢いがあるだろう人気作家3名「榎田尤利・木原音瀬・英田サキ」を揃えた、かなりゴーカな企画本であり、リブレ編集部の意気込みがよく伝わってきた。
がしかし、ヤリっぱなしオチなし陵辱モノばかりで、なにゆえ「エロエロ=陵辱モノ」にみなしたがるのか。
そんな中、エロだけでなく短編小説の面白さを感じさせてくれたTOP3はさすがで、最後にギャラクティカファントム食らわしたり(木原)、スリリングにヒネってきたり(榎田)とただの陵辱モノで終わらない逆転劇に仕上げ、楽しませてくれた。作家自身、楽しみながら書き上げたのではないだろうか。愛に溢れたエロを書いてきた英田作品については、「ラストがちょっとなあ…」と感じるものの、13本中1番人気なのではないかと思う。
さて。
そんな「エロとじv」に対し、私は云いたいことがひとつある。
ヤリっぱなしのオチなし作品は、どんなにいやらしい単語・描写が書かれていても、「面白くない、エロくない、疲れるだけ」。もっと考えてくれ!…エロ特化本とはいえ、読者はラブにストーリーを求める腐女子がメインなんだから。
「13本中、6本が雑誌掲載作品で7本が書き下ろし」だったそうだが、雑誌に1本企画モノとして載るならまだいい。1冊にズラズラズラ〜はやっぱりキツい。もし、同じような企画が第二弾として持ち上がっているのなら、短編小説として成立している作品を載せて欲しい。エロにストーリーが欲しい。ヤリ逃げ厳禁、プリーズ!だ。
以上、約1ヶ月続いた罰ゲームすべて終了。
完
あー…疲れた…。
「エロとじv」で、こんなマジメな(多少ふざけてはいるけど)感想を1本ずつ書いてる人は少ないだろうな。アウトプットして、リブレに郵送しようかと思ったナリ。
さて。ヨタ話はここまでにして本題を。
コンペティションなわけではないけれども、13本も載ると「どれがよかった?」「どれが好き?」という話になるのが常というもの。KAT-TUNが目の前にいたら、「ねーねー、だれが好き?」という話になるのと同じである(私は田中。好みではないが、そのジャニーズらしからぬ媚びない姿勢と個性を買う)。というわけで、『エロとじv』掲載作品13本中、各賞ベスト3を選んでみた。
★『エロとじv』掲載作品リスト(掲載順・敬称略)
「痴漢電車」 作:鬼塚ツヤコ 扉絵:佐々成美
「バッドステータスv発情中」 作:南原兼 扉絵:ホームラン・拳
「媚薬」 作:水上ルイ 扉絵:池玲文
「兄貴とヤス」 作:英田サキ 扉絵:鹿乃しうこ
「蜜月メイド」 作:水戸泉 扉絵:しょうおとあや
「鈍色の華」 作:木原音瀬 扉絵:鈴木ツタ
「隷従の檻」 作:和泉桂 扉絵:稲荷家房之介
「クリスタル」 作:榎田尤利 扉絵:中村明日美子
「貴人たちの後継儀式」 作:斑鳩サハラ 扉絵:明神翼
「多岐川肛門病院の秘密」 作:山藍紫姫子 扉絵:あさとえいり
「華麗なる賭け」 作:あすま理彩 扉絵:亜樹良のりかず
「縛めの白薔薇」 作:あさぎり夕 扉絵:かんべあきら
「可愛くて、可愛くて。」 作:雪代鞠絵 扉絵:大和名瀬
■コンペティション部門
1.「鈍色の華」 作:木原音瀬 扉絵:鈴木ツタ
2.「クリスタル」 作:榎田尤利 扉絵:中村明日美子
3.「兄貴とヤス」 作:英田サキ 扉絵:鹿乃しうこ
BL短編小説として評価した場合のべスト3。カンヌ風にいうと、パルム・ドールが木原音瀬、グランプリが榎田尤利。一歩間違えれば、読み手に痛恨のトラウマを与えるだろう衝撃作を(またもや)書いてきた木原、スリリングにキッチリ隙なくまとめてきた榎田、愛にあふれたエロにスピーディーな展開が素晴らしかった英田。やっぱりこの三人が抜きん出る形となったという印象。予想通り。
■ある視点部門
1.「多岐川肛門病院の秘密」 作:山藍紫姫子 扉絵:あさとえいり
2.「バッドステータスv発情中」 作:南原兼 扉絵:ホームラン・拳
3.「可愛くて、可愛くて。」 作:雪代鞠絵 扉絵:大和名瀬
「エロとじv」の感想を語り合うと、たぶん「木原さんキョーレツー、エダさん上手いー、英田兄貴エローい」という人気作家3名の話になると思うのだが、そのあと「でさ…アレ、どう思った?」と来るだろう作品を選んでみた。となると、やっぱり山藍紫姫子。「卵を見ると思い出す」という人は多いはず(アタシもだ)。南原兼は、いきなりの猫耳にたまげた。雪代鞠絵が3位なのは、「なにもラストがこの話でなくたって」という理由である。
■萌え出づる大賞
1.【キャラ・ストーリー萌え】「兄貴とヤス」 作:英田サキ 扉絵:鹿乃しうこ
2.【作家萌え】「クリスタル」 作:榎田尤利 扉絵:中村明日美子
3.【シチュエーション萌え】「媚薬」 作:水上ルイ 扉絵:池玲文
短編ながら私にキャラ萌えさせた「兄貴とヤス」が1位。羽鳥とヤスは実に魅力的だった。ヤスが羽鳥に精を吸い尽くされてなければ、またふたりの話が読みたい。2位の「クリスタル」は、榎田尤利の上手さに萌えた。3位の「媚薬」は、正直云えば、キャラの設定に合ったセリフまわしにして欲しかったし、攻が喋りすぎなエロもまったく好みではなかったのだが、「馬丁×王の最後の夜」というシチュエーションに萌えた。
■扉絵大賞
1.池玲文「媚薬」
2.鹿乃しうこ「兄貴とヤス」
3.稲荷家房之介「隷従の檻」
「ヒゲや胸毛や脛毛は当たり前、筋肉ムチムチなエロエロゲイ」というイメージで、「兄貴とヤス」を担当してもいいはずの池玲文が、ひらひらレースの西洋コスプレキャラを担当!しかもまるでアンドレ!!…この衝撃は大きかった。池を抜擢したリブレ編集担当者を褒めたい。秋林絶賛の1枚。鹿乃しうこは、さすがガテン系アクロバット絵師であると納得の1枚。稲荷家房之介は、もう少しアラブっぽかったらよかったかな…なんとなくトルキーだったので。
■惹句大賞
1.「弟分に奪われる極道同士の危険な愛……!!」(「兄貴とヤス」)
2.「誰も見たことのないその華は、誰とも違う輝きを放ち…」(鈍色の華)
3.該当作なし
女性誌(「女性自身」など)の表紙風にまとめた「兄貴とヤス」と、小説の内容が衝撃的なぶん、控え目に抑えた「鈍色の華」を評価したい。
■コラボレーション大賞
1.「兄貴とヤス」 作:英田サキ 扉絵:鹿乃しうこ
2.「鈍色の華」 作:木原音瀬 扉絵:鈴木ツタ
3.「バッドステータスv発情中」 作:南原兼 扉絵:ホームラン・拳
「作品・扉絵・惹句」のベストコラボは「兄貴とヤス」。やっぱり乗って書いたもの勝ちである。
■総評/総括
ロリータ…もといショタ系からJUNE/耽美系まで、読者の属性に対応するべく、それぞれのエキスパートだと思われる作家、そして現在もっとも勢いがあるだろう人気作家3名「榎田尤利・木原音瀬・英田サキ」を揃えた、かなりゴーカな企画本であり、リブレ編集部の意気込みがよく伝わってきた。
がしかし、ヤリっぱなしオチなし陵辱モノばかりで、なにゆえ「エロエロ=陵辱モノ」にみなしたがるのか。
そんな中、エロだけでなく短編小説の面白さを感じさせてくれたTOP3はさすがで、最後にギャラクティカファントム食らわしたり(木原)、スリリングにヒネってきたり(榎田)とただの陵辱モノで終わらない逆転劇に仕上げ、楽しませてくれた。作家自身、楽しみながら書き上げたのではないだろうか。愛に溢れたエロを書いてきた英田作品については、「ラストがちょっとなあ…」と感じるものの、13本中1番人気なのではないかと思う。
さて。
そんな「エロとじv」に対し、私は云いたいことがひとつある。
ヤリっぱなしのオチなし作品は、どんなにいやらしい単語・描写が書かれていても、「面白くない、エロくない、疲れるだけ」。もっと考えてくれ!…エロ特化本とはいえ、読者はラブにストーリーを求める腐女子がメインなんだから。
「13本中、6本が雑誌掲載作品で7本が書き下ろし」だったそうだが、雑誌に1本企画モノとして載るならまだいい。1冊にズラズラズラ〜はやっぱりキツい。もし、同じような企画が第二弾として持ち上がっているのなら、短編小説として成立している作品を載せて欲しい。エロにストーリーが欲しい。ヤリ逃げ厳禁、プリーズ!だ。
以上、約1ヶ月続いた罰ゲームすべて終了。
完
あー…疲れた…。
「エロとじv」で、こんなマジメな(多少ふざけてはいるけど)感想を1本ずつ書いてる人は少ないだろうな。アウトプットして、リブレに郵送しようかと思ったナリ。
罰ゲーム感想終了のお知らせ
2007年7月22日 Rotten Sisters!
←こんな感じ。ちょっと色が青っぽくてすみません。ちなみにチラリと見えるのは「兄貴とヤス」の扉絵。当たり前ですが、ヤバイので全部は見せられましぇん…。画像をクリックすると、ちょっと大きくなるケド。見たい方は、本屋さんでキラキラ表紙を探して下さい。品切れらしいですが、もしかしたらどこか(ヴィレッジ・ヴァンガード以外)で、アナタを待っているかもしれませんよ?
やっとこすっとこ、「エロとじv」感想13本、書き上げました。
エイドリア〜〜〜ン!という達成感より、66本あった「IN THE LIFE」ツアーの最終公演終了後、イナバさんがステージ横で泣いたという気持ちがわかります。「もう明日からノドの心配をしなくていいんだ〜終わったんだ〜…」=「長かった…しんどかった…終わらないかと思った…うわ〜〜ん!もう明日から、感想書かなきゃ!と心配しなくてもいいんだ〜〜!」。
読む時間がなかなか取れないので、本を会社に持ち込み、bk1でDLしたA3サイズのブックカバーをこっそり印刷して本に掛け、昼休み時間にわざわざ暗い場所を陣取り、開いた本の左上にある小説タイトルを隠しながら(だってすんごいタイトルなのがあるんだもん…)コソコソ読んだりしました。そしてその姿を、Tさんと一緒にやって来たオッシーに見られ、「なにやってるんですか〜♪」と後ろから驚かされたりしました。
…今に見てろよ…>オッシー
明日、ままりん(母)からPCを奪取できれば、総括を書きたいと思います。
やっとこすっとこ、「エロとじv」感想13本、書き上げました。
エイドリア〜〜〜ン!という達成感より、66本あった「IN THE LIFE」ツアーの最終公演終了後、イナバさんがステージ横で泣いたという気持ちがわかります。「もう明日からノドの心配をしなくていいんだ〜終わったんだ〜…」=「長かった…しんどかった…終わらないかと思った…うわ〜〜ん!もう明日から、感想書かなきゃ!と心配しなくてもいいんだ〜〜!」。
読む時間がなかなか取れないので、本を会社に持ち込み、bk1でDLしたA3サイズのブックカバーをこっそり印刷して本に掛け、昼休み時間にわざわざ暗い場所を陣取り、開いた本の左上にある小説タイトルを隠しながら(だってすんごいタイトルなのがあるんだもん…)コソコソ読んだりしました。そしてその姿を、Tさんと一緒にやって来たオッシーに見られ、「なにやってるんですか〜♪」と後ろから驚かされたりしました。
…今に見てろよ…>オッシー
明日、ままりん(母)からPCを奪取できれば、総括を書きたいと思います。
■『エロとじv―b-BOYアンソロジー』
ISBN:4862631908 単行本 リブレ出版 2007/06 ¥1,100
!たいしてネタバレしてませんが、いちおうネタバレ注意報!
■「縛めの白薔薇」 作:あさぎり夕 扉絵:かんべあきら
扉惹句:「尊大な社長は、元華族の美しい青年を貶め、快楽を貪る。」
社長×元華族な陵辱/姦計モノ。初あさぎり作品。BL作品を次々と世に送り出している作家なのに、どーしてもどーしてもどーしても、その著作に手が出せなかった。なぜってそれはビコーズ――私が、「りぼん」と云えば池野恋(『ときめきトゥナイト』)、「なかよし」と云えばあさぎり夕(『あこがれ冒険者』)、という2大少女マンガ誌黄金時代のピークに育った世代だからだー!ガーン!!
…というわけで、心中複雑な思いで読み始めたのだが――これ、ものすごーく古くないだろうか?…耽美だというのではなく、純粋に古臭い。いやだって、名門元華族の青年に白薔薇だよ?「白い庭」に「ホワイトガーデン」というルビが付いてるんだよ?…別にいいじゃん、と云われればそれまでだけど。
文章は上手いというより手堅いという印象。漢字が多めなのだが、無意味に選択していないのがわかる。ひらがな・カタカナとのバランスが良く、句読点の配置も的確、古臭い(失礼!)という全体の雰囲気を壊していない。字面をかなり意識しているんだろうなと思わせる。うーん、最初に目に入ってくる印象を考えているあたり、さすが小説を書いてもマンガ家だなあ…と、つい文体や文章についてばかり感想を書いてしまうのは、惹句通りのストーリーだからで、ほかに云いようがないからである。困った。
評価:★★(興味が沸いてこない人、多そうだ)
秋林好み度:★(わざとレトロなのではなく、本当にレトロなのは好みじゃない)
BL界におけるあさぎり夕のポジションって、どうなんだろう?現在10〜20代半ばで、「あさぎり夕作品でBLを知りました。昔、よく読んだんですよ」という人は多そうである。ただ、そういう人があさぎり作品をそのまま読み続けていくかというと――本作を読む限り、かなり難しい話のように思える…。
次!
■「可愛くて、可愛くて。」 作:雪代鞠絵 扉絵:大和名瀬
扉惹句:「生徒会長室でハダカにされて、憧れの先輩に弄ばれる…!」
生徒会長&副会長×下級生モノ。これも惹句通りのストーリーで、そのまま終わっていくため、ほかに云いようがない。あえて云うなら、「風邪引くよー」という困った作品である。絵師・大和名瀬は、その通りの仕事をしていると思う。以上。
評価:★(お好きな人はどうぞ)
秋林好み度:★(大人っぽい学園モノってない?「あふれそうなプール」みたいな)
雪代鞠絵というペンネームが可愛いと思う…という感想を書くのもなあ…。
終わったー!
ISBN:4862631908 単行本 リブレ出版 2007/06 ¥1,100
2007年6月19日『エロほんv』と同時発売!!キラキラ表紙が目印!業界騒然!! ボーイズノベルの最強作家陣ここに集まる!小説b-Boyで初登場以降、ありえないほどの人気エッチ企画が、新作書き下ろし6本を加えてアンソロジー化★ 空前絶後のエッチを見よ!
ラインナップ
英田サキ、あさぎり夕、あすま理彩、斑鳩サハラ、和泉 桂、榎田尤利、鬼塚ツヤコ、木原音瀬、南原 兼、水戸 泉、水上ルイ、山藍紫姫子、雪代鞠絵
!たいしてネタバレしてませんが、いちおうネタバレ注意報!
■「縛めの白薔薇」 作:あさぎり夕 扉絵:かんべあきら
扉惹句:「尊大な社長は、元華族の美しい青年を貶め、快楽を貪る。」
社長×元華族な陵辱/姦計モノ。初あさぎり作品。BL作品を次々と世に送り出している作家なのに、どーしてもどーしてもどーしても、その著作に手が出せなかった。なぜってそれはビコーズ――私が、「りぼん」と云えば池野恋(『ときめきトゥナイト』)、「なかよし」と云えばあさぎり夕(『あこがれ冒険者』)、という2大少女マンガ誌黄金時代のピークに育った世代だからだー!ガーン!!
…というわけで、心中複雑な思いで読み始めたのだが――これ、ものすごーく古くないだろうか?…耽美だというのではなく、純粋に古臭い。いやだって、名門元華族の青年に白薔薇だよ?「白い庭」に「ホワイトガーデン」というルビが付いてるんだよ?…別にいいじゃん、と云われればそれまでだけど。
文章は上手いというより手堅いという印象。漢字が多めなのだが、無意味に選択していないのがわかる。ひらがな・カタカナとのバランスが良く、句読点の配置も的確、古臭い(失礼!)という全体の雰囲気を壊していない。字面をかなり意識しているんだろうなと思わせる。うーん、最初に目に入ってくる印象を考えているあたり、さすが小説を書いてもマンガ家だなあ…と、つい文体や文章についてばかり感想を書いてしまうのは、惹句通りのストーリーだからで、ほかに云いようがないからである。困った。
評価:★★(興味が沸いてこない人、多そうだ)
秋林好み度:★(わざとレトロなのではなく、本当にレトロなのは好みじゃない)
BL界におけるあさぎり夕のポジションって、どうなんだろう?現在10〜20代半ばで、「あさぎり夕作品でBLを知りました。昔、よく読んだんですよ」という人は多そうである。ただ、そういう人があさぎり作品をそのまま読み続けていくかというと――本作を読む限り、かなり難しい話のように思える…。
次!
■「可愛くて、可愛くて。」 作:雪代鞠絵 扉絵:大和名瀬
扉惹句:「生徒会長室でハダカにされて、憧れの先輩に弄ばれる…!」
生徒会長&副会長×下級生モノ。これも惹句通りのストーリーで、そのまま終わっていくため、ほかに云いようがない。あえて云うなら、「風邪引くよー」という困った作品である。絵師・大和名瀬は、その通りの仕事をしていると思う。以上。
評価:★(お好きな人はどうぞ)
秋林好み度:★(大人っぽい学園モノってない?「あふれそうなプール」みたいな)
雪代鞠絵というペンネームが可愛いと思う…という感想を書くのもなあ…。
終わったー!
■『エロとじv―b-BOYアンソロジー』
ISBN:4862631908 単行本 リブレ出版 2007/06 ¥1,100
普段は映画ネタをメインで書いている当ブログ。
←でリンクさせて頂いているシューさんがおっしゃるように、「急に毛色の違うBlog」になってきました。
……。いっそのこと、ブログ名を「秋林瑞佳のナナイロブログ♪」にしようかな。…って、しないけど。
■「クリスタル」 作:榎田尤利 扉絵:中村明日美子
扉惹句:「エレベーターという密室が、二人のありのままを暴き出す――」
BL界でも、その文章力・描写力はバツグンだと思われる榎田尤利による、エレベーター内での上司×部下、年下攻モノ――とりあえずは。
↓参考:榎田作品感想(『交渉人は黙らない』『犬ほど素敵な商売はない』)
http://diarynote.jp/d/25683/20070502.html
(同日更新しているので、他に1本の感想があります)
最年少取締役、自分のルックスに自信アリの27歳・狩野が主人公、その彼による一人称で話は進む――なんてスラスラと読めるんだろう。榎田尤利の一人称は、相変わらず上手くて隙がない。主人公になりきって書いてるんだろうな、きっと。千の仮面を持つ作家とゆーか、PCの前では頭の中が女優になっているんじゃないだろーか?
榎田尤利の代表作は、たぶん「魚住くんシリーズ」だと思うのだが、私にはちょっとセンシティブ過ぎるところがあって、キライじゃないけど特別好きというわけではなかった。もう少し、エンタテインメントを感じさせるものを書いてくれないかな〜と思ってるうち、数年が経ち、気が付けばファンタジー小説まで手がける、エンタ調節自由自在な人気作家となっていた。恐るべし。
!以下、ネタバレ注意報!
さて。本作は、鬼塚ツヤコ作「痴漢電車」の感想の際に、「同じ『密空間で陵辱、年下攻、ワケありの攻と受』という設定で、このあと素晴らしい出来のスリリングな短編が出てくる」と評した作品である。短編好きにはたまらない上手さ。惚れ惚れする。
ストーリーは、事故で動かないエレベーター内に取り残された攻・上司(年下)である狩野が、狩野の元教育係で現在は部下である芳原(年上)を堕としめ、奪っていく――というもの。これだけ書けば、「なんだまた陵辱ものか」と思われてしまうのだが、最後に…とゆーか、結果的に堕とされた(喰われた)のは、実は俺節な狩野のほうだった、という密室逆転劇である。ただの陵辱もので終わらない/終わらせない、ひとヒネリ半、加えてきた仕上げを高く評価したい。
ただの逆転劇で終わるなら「ひとヒネリ」で終わる。なぜそれに「半」をつけたのか。榎田尤利が初めて書いたと思われるスカ**(秋林さんビックリ)が、「クリスタル」に繋がって逆転劇の切り札になっていく――その流れが「半」であり、見事だったからである。最後のシメの一行もイイ。「半」をさりげなく加えてくる作家が榎田尤利なんだと思う。断言するけど、フツーの作家なら「ヒネリ」で終わるね。
エロはさほど激しくはないが、私にはこれくらいで充分。
隙および死角ナシ、ベタ褒めの1本。
評価:★★★★★(ブリリアーント!)
秋林好み度:★★★★(なんで一個足りないの?と云われそう)
タイトルの付け方が上手いなあ。フツーの作家だったら(という書き方はたいへん失礼である…すみません)「体感エレベーター」とかなんとか、凡庸なのをそのまま付けそうだ。絵師・中村明日美子による扉絵は、なんとなく爬虫類系なイメージ。好き嫌いは出てくると思うけど、エダ作品には新鮮に映る。惹句は可もなく不可もなく、凡庸。これがちょっともったいなかったかな…。
しっかし…エダさんがスカを書くなんてなあ。正直、私はソッチ系がニガテなんだけど、狩野というキャラならやりそうだし、グロくて嫌味ないやらしさがない。さらに「クリスタル」を活かすためのソレだとわかるので、やっぱり上手いとしか云えず。
ISBN:4862631908 単行本 リブレ出版 2007/06 ¥1,100
2007年6月19日『エロほんv』と同時発売!!キラキラ表紙が目印!業界騒然!! ボーイズノベルの最強作家陣ここに集まる!小説b-Boyで初登場以降、ありえないほどの人気エッチ企画が、新作書き下ろし6本を加えてアンソロジー化★ 空前絶後のエッチを見よ!
ラインナップ
英田サキ、あさぎり夕、あすま理彩、斑鳩サハラ、和泉 桂、榎田尤利、鬼塚ツヤコ、木原音瀬、南原 兼、水戸 泉、水上ルイ、山藍紫姫子、雪代鞠絵
普段は映画ネタをメインで書いている当ブログ。
←でリンクさせて頂いているシューさんがおっしゃるように、「急に毛色の違うBlog」になってきました。
……。いっそのこと、ブログ名を「秋林瑞佳のナナイロブログ♪」にしようかな。…って、しないけど。
■「クリスタル」 作:榎田尤利 扉絵:中村明日美子
扉惹句:「エレベーターという密室が、二人のありのままを暴き出す――」
BL界でも、その文章力・描写力はバツグンだと思われる榎田尤利による、エレベーター内での上司×部下、年下攻モノ――とりあえずは。
↓参考:榎田作品感想(『交渉人は黙らない』『犬ほど素敵な商売はない』)
http://diarynote.jp/d/25683/20070502.html
(同日更新しているので、他に1本の感想があります)
最年少取締役、自分のルックスに自信アリの27歳・狩野が主人公、その彼による一人称で話は進む――なんてスラスラと読めるんだろう。榎田尤利の一人称は、相変わらず上手くて隙がない。主人公になりきって書いてるんだろうな、きっと。千の仮面を持つ作家とゆーか、PCの前では頭の中が女優になっているんじゃないだろーか?
榎田尤利の代表作は、たぶん「魚住くんシリーズ」だと思うのだが、私にはちょっとセンシティブ過ぎるところがあって、キライじゃないけど特別好きというわけではなかった。もう少し、エンタテインメントを感じさせるものを書いてくれないかな〜と思ってるうち、数年が経ち、気が付けばファンタジー小説まで手がける、エンタ調節自由自在な人気作家となっていた。恐るべし。
!以下、ネタバレ注意報!
さて。本作は、鬼塚ツヤコ作「痴漢電車」の感想の際に、「同じ『密空間で陵辱、年下攻、ワケありの攻と受』という設定で、このあと素晴らしい出来のスリリングな短編が出てくる」と評した作品である。短編好きにはたまらない上手さ。惚れ惚れする。
腕のオメガは午後一時四十三分を指している。エレベーターが止まっても時間を確認できる(どんな状態下でも冷静に自分を保てる自信家の俺節タイプで)、オメガ(それなりにお金を持っている)を持つ男――たった一行で人物像が浮かび上がる。他の作家なら「時計に目をやると午後一時四十三分だった」とか書きそうだよなあと、冒頭のこれだけでシビれる私も、かなりヘンではある。
ストーリーは、事故で動かないエレベーター内に取り残された攻・上司(年下)である狩野が、狩野の元教育係で現在は部下である芳原(年上)を堕としめ、奪っていく――というもの。これだけ書けば、「なんだまた陵辱ものか」と思われてしまうのだが、最後に…とゆーか、結果的に堕とされた(喰われた)のは、実は俺節な狩野のほうだった、という密室逆転劇である。ただの陵辱もので終わらない/終わらせない、ひとヒネリ半、加えてきた仕上げを高く評価したい。
ただの逆転劇で終わるなら「ひとヒネリ」で終わる。なぜそれに「半」をつけたのか。榎田尤利が初めて書いたと思われるスカ**(秋林さんビックリ)が、「クリスタル」に繋がって逆転劇の切り札になっていく――その流れが「半」であり、見事だったからである。最後のシメの一行もイイ。「半」をさりげなく加えてくる作家が榎田尤利なんだと思う。断言するけど、フツーの作家なら「ヒネリ」で終わるね。
エロはさほど激しくはないが、私にはこれくらいで充分。
隙および死角ナシ、ベタ褒めの1本。
評価:★★★★★(ブリリアーント!)
秋林好み度:★★★★(なんで一個足りないの?と云われそう)
タイトルの付け方が上手いなあ。フツーの作家だったら(という書き方はたいへん失礼である…すみません)「体感エレベーター」とかなんとか、凡庸なのをそのまま付けそうだ。絵師・中村明日美子による扉絵は、なんとなく爬虫類系なイメージ。好き嫌いは出てくると思うけど、エダ作品には新鮮に映る。惹句は可もなく不可もなく、凡庸。これがちょっともったいなかったかな…。
しっかし…エダさんがスカを書くなんてなあ。正直、私はソッチ系がニガテなんだけど、狩野というキャラならやりそうだし、グロくて嫌味ないやらしさがない。さらに「クリスタル」を活かすためのソレだとわかるので、やっぱり上手いとしか云えず。
■『エロとじv―b-BOYアンソロジー』
ISBN:4862631908 単行本 リブレ出版 2007/06 ¥1,100
連休中になんとしてでも罰ゲームを終わらせたい。
…妖精さ〜ん!!
そっか…夜霧さんは、英田兄貴の「デッドロック」をお買いになったのですね。「キラキラ表紙のアレ」は、書泉ブックマートになかったのかしら…って、それ以前に「キラキラ表紙のアレ」を手にする夜霧さんだなんて、想像デッドロック、そんなのできましぇん…。
!たいしてネタバレしてませんが、いちおうネタバレ注意報!
■「多岐川肛門病院の秘密」 作:山藍紫姫子 扉絵:あさとえいり
扉惹句:「こ…こんなの、もう『お医者さんごっこ』じゃないっ!」
「エロとじv」最大の異色作(木原音瀬の作品は別枠シード)。当たり前である。耽美やJUNEと呼ばれた女性向け同性愛作品がBL(ボーイズラブ)としてポップ化、市民権を得た平成の世になっても、耽美/JUNEを背負い、堂々と立ち続け、独自の世界を創り上げている作家・山藍紫姫子の作品だからだ。
需要はあるだろうが、そんな生きた化石とも云える(失礼!)耽美作家が、なんで「ポップでエッチ、セレブとイケメン」なリブレに!?…と驚いたのだが、前回「貴人たちの後継儀式」の感想で、「エロシーンがマンネリ化するのはわかってたはず(違うか?>編集部)」と書いたことを、これでリブレに謝らねばなるまい。ごめんちゃい!悪かった!…まさか山藍紫姫子を連れて来るとは思わなかったよ!
現在、山藍センセがどの雑誌でどのような作品を発表されているのか、まったく知らないため、どうしても昔のキョーレツな印象しか思い出せないのだが(両性具有とかー)、本作はなんとなく「キャラ年齢を下げセレブにし、リブレ風を意識してみました」という感じがする。ポップなBLに遜った耽美とでも云うか。お道具の使いっぷりや、非日常の世界をゾクリと感じさせるキャラたちは相変わらずというあたりが、まさにそれ。ただし、センセは楽しんで遜っておられるとみた。う〜ん。私は耽美からBLへの移行世代だし、「作品の理解はしたいが属性がない」としか云えず、なんともツライ。…ごめんちゃい…。
評価:★(お好きな人はどうぞ。需要はあると思うので)
秋林好み度:★(すみません…)
評価は★1つだが、これもまたヘタというのではなく「お好きな人はどうぞ」というもの。需要はあると思う。山藍センセは今後、どの方面へ行かれるのだろう?クオバディース!…ところで。絵師・あさとえいりが完全ミスマッチ。ポップ仕様にしたいのはわかるのだが、やっぱここは四谷シモーヌなんじゃ?
次!
■「華麗なる賭け」 作:あすま理彩 扉絵:亜樹良のりかず
扉惹句:「賭けに負けたとき、その身体は男の性玩具となる――」
カジノが舞台の――いち、にー、さん、しー……複数プレイもの。ハイ、みなさんご一緒にー!………。「華麗なる賭け」なんて、完全タイトル負けだと思うんだが…どうだろう?
主人公は美貌(お約束)のディーラー。そのほか、ホテル王だのとセレブが出てくるんだが、複数な上に独特な文章で読みづらいことも手伝って、誰が誰やらサッパリわかんねー!…私の読解力ももはやここまで。相関図を書きながら読み進めようかと一瞬思ったが、ペンを持ちながら「え〜っと、いま上に乗っかってるのがー…」だなんて、やってられるかっ!…ということで諦めた。
カジノが舞台でなくても成立するほど、内容はヤリっぱなしのオチなし、さらにキャラ萌えなしの三無短編である。それにしても、相当エログレードの高い表現をしているはずなのに、なんでエロを感じさせないんだろう?…ちょっと考えながら読んでみた。うーん。コトの最中だというのに「〜なのだ」「〜のだ」と、文章を断定形にしてくるのが煩わしく、また興ざめだからかもしれない。まるで書き手による実況中継のよう。これは寒い。ガッカリ。
評価:★★(つまらない)
秋林好み度:★(カンベン)
惹句もなあ…「性玩具」って、そんな直接的過ぎてつまらない。せっかくカジノものなんだから「切り札」にするとか、そんな風にして欲しかったなあ。絵師・亜樹良のりかずは頑張って描いている…が、生理的に受け付けられない扉絵だった。ニガテ。忘れたい。
次!
ISBN:4862631908 単行本 リブレ出版 2007/06 ¥1,100
2007年6月19日『エロほんv』と同時発売!!キラキラ表紙が目印!業界騒然!! ボーイズノベルの最強作家陣ここに集まる!小説b-Boyで初登場以降、ありえないほどの人気エッチ企画が、新作書き下ろし6本を加えてアンソロジー化★ 空前絶後のエッチを見よ!
ラインナップ
英田サキ、あさぎり夕、あすま理彩、斑鳩サハラ、和泉 桂、榎田尤利、鬼塚ツヤコ、木原音瀬、南原 兼、水戸 泉、水上ルイ、山藍紫姫子、雪代鞠絵
連休中になんとしてでも罰ゲームを終わらせたい。
…妖精さ〜ん!!
そっか…夜霧さんは、英田兄貴の「デッドロック」をお買いになったのですね。「キラキラ表紙のアレ」は、書泉ブックマートになかったのかしら…って、それ以前に「キラキラ表紙のアレ」を手にする夜霧さんだなんて、想像デッドロック、そんなのできましぇん…。
!たいしてネタバレしてませんが、いちおうネタバレ注意報!
■「多岐川肛門病院の秘密」 作:山藍紫姫子 扉絵:あさとえいり
扉惹句:「こ…こんなの、もう『お医者さんごっこ』じゃないっ!」
「エロとじv」最大の異色作(木原音瀬の作品は別枠シード)。当たり前である。耽美やJUNEと呼ばれた女性向け同性愛作品がBL(ボーイズラブ)としてポップ化、市民権を得た平成の世になっても、耽美/JUNEを背負い、堂々と立ち続け、独自の世界を創り上げている作家・山藍紫姫子の作品だからだ。
需要はあるだろうが、そんな生きた化石とも云える(失礼!)耽美作家が、なんで「ポップでエッチ、セレブとイケメン」なリブレに!?…と驚いたのだが、前回「貴人たちの後継儀式」の感想で、「エロシーンがマンネリ化するのはわかってたはず(違うか?>編集部)」と書いたことを、これでリブレに謝らねばなるまい。ごめんちゃい!悪かった!…まさか山藍紫姫子を連れて来るとは思わなかったよ!
現在、山藍センセがどの雑誌でどのような作品を発表されているのか、まったく知らないため、どうしても昔のキョーレツな印象しか思い出せないのだが(両性具有とかー)、本作はなんとなく「キャラ年齢を下げセレブにし、リブレ風を意識してみました」という感じがする。ポップなBLに遜った耽美とでも云うか。お道具の使いっぷりや、非日常の世界をゾクリと感じさせるキャラたちは相変わらずというあたりが、まさにそれ。ただし、センセは楽しんで遜っておられるとみた。う〜ん。私は耽美からBLへの移行世代だし、「作品の理解はしたいが属性がない」としか云えず、なんともツライ。…ごめんちゃい…。
評価:★(お好きな人はどうぞ。需要はあると思うので)
秋林好み度:★(すみません…)
評価は★1つだが、これもまたヘタというのではなく「お好きな人はどうぞ」というもの。需要はあると思う。山藍センセは今後、どの方面へ行かれるのだろう?クオバディース!…ところで。絵師・あさとえいりが完全ミスマッチ。ポップ仕様にしたいのはわかるのだが、やっぱここは四谷シモーヌなんじゃ?
次!
■「華麗なる賭け」 作:あすま理彩 扉絵:亜樹良のりかず
扉惹句:「賭けに負けたとき、その身体は男の性玩具となる――」
カジノが舞台の――いち、にー、さん、しー……複数プレイもの。ハイ、みなさんご一緒にー!………。「華麗なる賭け」なんて、完全タイトル負けだと思うんだが…どうだろう?
主人公は美貌(お約束)のディーラー。そのほか、ホテル王だのとセレブが出てくるんだが、複数な上に独特な文章で読みづらいことも手伝って、誰が誰やらサッパリわかんねー!…私の読解力ももはやここまで。相関図を書きながら読み進めようかと一瞬思ったが、ペンを持ちながら「え〜っと、いま上に乗っかってるのがー…」だなんて、やってられるかっ!…ということで諦めた。
カジノが舞台でなくても成立するほど、内容はヤリっぱなしのオチなし、さらにキャラ萌えなしの三無短編である。それにしても、相当エログレードの高い表現をしているはずなのに、なんでエロを感じさせないんだろう?…ちょっと考えながら読んでみた。うーん。コトの最中だというのに「〜なのだ」「〜のだ」と、文章を断定形にしてくるのが煩わしく、また興ざめだからかもしれない。まるで書き手による実況中継のよう。これは寒い。ガッカリ。
評価:★★(つまらない)
秋林好み度:★(カンベン)
惹句もなあ…「性玩具」って、そんな直接的過ぎてつまらない。せっかくカジノものなんだから「切り札」にするとか、そんな風にして欲しかったなあ。絵師・亜樹良のりかずは頑張って描いている…が、生理的に受け付けられない扉絵だった。ニガテ。忘れたい。
次!
■『エロとじv―b-BOYアンソロジー』
ISBN:4862631908 単行本 リブレ出版 2007/06 ¥1,100
長いです…ってか、意図的に長くしました。
■「鈍色の華」 作:木原音瀬 扉絵:鈴木ツタ
扉惹句:「誰も見たことのないその華は、誰とも違う輝きを放ち…」
萌えで推し量れぬ作家、木原音瀬(このはら・なりせ)の登場である。
木原音瀬は、私にとってたいへん厄介な作家だ。新作が出れば、本屋へ行って手に取り、そしてレジへと向かうのだけれども、「木原作品vs.私」とゆーか、読む前に身構えてしまい、帰宅後しばらく本と対峙することになる。「動かざること山の如し」とは、まさにこのこと(…引用間違ってます>秋林さん)。購入してから読むに至るまで、数日〜数週間かかるということもザラ。たとえばストレートに甘さを与えてくれる英田サキなら、すぐさま通勤電車の中で(もちろん、カラー口絵クリップ留め処置は必至だ!)ページをめくることもできるが、木原音瀬となるとなかなかそうもいかない。読みたくない…のではなく、読もうという気分になるまでどうしても手が出せず、モヤモヤっとしてしまうからである。
エンタテインメントなファンタジー産物であるはずのBLで、自分が持っているモラルのレベルがどうであるか、方向が間違っていないかと、読み進めていくうちにだんだんと気になってくるのは、彼女の作品ぐらいだと思う(鬼畜系作家とは別次元…とゆーかアナザープラネッツな話である)。BLにおける常識(≒甘いお約束)を、簡単に覆してくることも多々ある木原作品には、鬼畜・健気関わらず、ヘビー級の一途さを見せるキャラが多く登場してくるのだが、大概キャラにその自覚がないため、悲壮さが全体に漂わず、淡々として乾いた文章がマイペースで続くこともあって(「木原リズム」とでも云うか)、読み手は「せつなさ」を通り越した「痛さ」を感じてしまう。
感動が待ってるかもしれない、いや待ってるに違いない――でも、そこに至るまでがとにかく「痛い」。作品によっては、私も我慢しっぱなしである。
…以上、私が勝手に位置づけた木原音瀬イメージを踏まえ、以下、「鈍色の華」の感想を。
!マジで完全ネタバレ注意報!
参った…スゴイよ、これ…。
アゼン → ボーゼン → ガクゼン だ!!
受は40代後半で白髪まじりのまったく冴えない窓際リーマン。
攻は仕事で取引交渉中の得体知れずな年下ガイジン2名。
社長の監視のもと、料亭で接待複数プレイ。
攻が受を「baby」と呼ぶ。
女体盛りならぬ中年男盛り。
ひぃぇえええええええええええ!
……。
さすがに私も一瞬、ロープを掴みかけた。
フツーならば、「エロとじv」に収録されている他の作家のように、鬼畜道ここに極まれりなエロでオチなく終わっていく、もしくは「イヤイヤ、ああ〜ん♪」で「攻が受を手に入れて最後にニンマリ」という作品になるところなのだが、書き手は木原音瀬、フツーに始まりフツーで終わるはずがない。
40代後半でリストラに怯える窓際リーマン、典型的なダメオヤジである鶴谷。仕事上だけでなく、ひとりの人間としても彼に興味を持つ者はいない。そんな彼が、契約を結ぼうとしている米国大企業の重要人(しかもふたり!)に突然、セックスの相手として指名される。なぜ鶴谷?…理由はいらない。わかるわけがないし、わからないままでいいからである。相手はガイジン、典型的なダメオヤジには得体の知れない肉食人種、怖い相手だ。読み手は鶴谷とともに混乱しながら、そのままエロへ。萌えなど一切ない、鬼畜スレスレ、例の「木原リズム」で淡々と描かれている(木原音瀬は感嘆符「!」を使用しない)、実に怖いエロである。本作は(とりあえず)BLにカテゴライズされているが、ホラー、もしくはSF(スペキュレーティブ・フィクション)のようでもあり――読んでいると、安部公房の『箱男』をなんとなく思い出してしまった。
私は短編小説/映画が大好きでよく読む/観るのだが、BLとしてでなく短編小説としても、本作の完成度はおっそろしく高いと感じる。次元が違う、アナザープラネッツな出来。社長の前で鶴谷がある告白をし、唐突に話は終わっていくのだが、ラストを鶴谷のセリフで締めくくっているあたり、印象的な短編小説をどう書くか、感覚でわかってる作家だなと思う(プロに対し、たいへん失礼な云い方になってしまうが)。榎田尤利もまたしかり。鶴谷の告白を聞いた社長のリアクションなんて、いらないでしょ?…だってそれは読み手と同じはずだから。同情したいけどできない鶴谷視点で始まり、最後は社長に同調する(注)。なんて素晴らしい。
エロにドン引きされることは別にして、もしかしたら海外で短編小説賞を獲れるかもよ?…ってか、なんでこれが「エロとじv」に載ってるんだ!?
評価:★★★★★(BLってスゴイ。木原音瀬みたいな作家がいるんだから)
秋林好み度:★★★(…だからね、評価と好みは違うの。私にオヤジ受属性はないし、何度も読み返したい作品でもないから)
絵師の鈴木ツタはグッジョブだと思うが、三段も落としてくるストーリーに、主人公がくたびれたリーマンということで、国枝彩香で見たかったかな…。惹句は…そうだな、けっこういい感じ、合ってると思う。
本作で初めて木原作品を読んだ人(Dさんだ、Dさん!)、なにもこんなキョーレツな作品を選ばなくたって…と云いたいところだが、「読んでみなければわからない」「人の評価を聞いてから読むかどうかを決めよう」な木原作品なだけに、「なんだこりゃ!?」という感想を聞いても、「お気の毒でした」としか云えない…。たとえば、三島由紀夫の作品を初めて読む人に薦めるならば『潮騒』、いきなり『禁色』は薦めないでしょ?
■(注)ちょっと分かりにくいかなと思ったので補記
「40代後半・白髪まじり・まったく冴えない窓際リーマン」という設定だけで、共感しづらく「うっ…」とくる。鶴谷の接待場面は「かわいそう、ひどい」と思うには思うけど、あまりの非日常かつ異常な状況に、読み手は自分の中に棲むモラルとの葛藤で必死になってしまい、彼に同情する余裕がなく、ただただ傍観するだけ。その場面が終わってホっとしてたら、読み手の知らないうちに、鶴谷が豹変していた。最後の告白。読み手は社長とともに愕然となる。
ISBN:4862631908 単行本 リブレ出版 2007/06 ¥1,100
2007年6月19日『エロほんv』と同時発売!!キラキラ表紙が目印!業界騒然!! ボーイズノベルの最強作家陣ここに集まる!小説b-Boyで初登場以降、ありえないほどの人気エッチ企画が、新作書き下ろし6本を加えてアンソロジー化★ 空前絶後のエッチを見よ!
ラインナップ
英田サキ、あさぎり夕、あすま理彩、斑鳩サハラ、和泉 桂、榎田尤利、鬼塚ツヤコ、木原音瀬、南原 兼、水戸 泉、水上ルイ、山藍紫姫子、雪代鞠絵
長いです…ってか、意図的に長くしました。
■「鈍色の華」 作:木原音瀬 扉絵:鈴木ツタ
扉惹句:「誰も見たことのないその華は、誰とも違う輝きを放ち…」
萌えで推し量れぬ作家、木原音瀬(このはら・なりせ)の登場である。
木原音瀬は、私にとってたいへん厄介な作家だ。新作が出れば、本屋へ行って手に取り、そしてレジへと向かうのだけれども、「木原作品vs.私」とゆーか、読む前に身構えてしまい、帰宅後しばらく本と対峙することになる。「動かざること山の如し」とは、まさにこのこと(…引用間違ってます>秋林さん)。購入してから読むに至るまで、数日〜数週間かかるということもザラ。たとえばストレートに甘さを与えてくれる英田サキなら、すぐさま通勤電車の中で(もちろん、カラー口絵クリップ留め処置は必至だ!)ページをめくることもできるが、木原音瀬となるとなかなかそうもいかない。読みたくない…のではなく、読もうという気分になるまでどうしても手が出せず、モヤモヤっとしてしまうからである。
エンタテインメントなファンタジー産物であるはずのBLで、自分が持っているモラルのレベルがどうであるか、方向が間違っていないかと、読み進めていくうちにだんだんと気になってくるのは、彼女の作品ぐらいだと思う(鬼畜系作家とは別次元…とゆーかアナザープラネッツな話である)。BLにおける常識(≒甘いお約束)を、簡単に覆してくることも多々ある木原作品には、鬼畜・健気関わらず、ヘビー級の一途さを見せるキャラが多く登場してくるのだが、大概キャラにその自覚がないため、悲壮さが全体に漂わず、淡々として乾いた文章がマイペースで続くこともあって(「木原リズム」とでも云うか)、読み手は「せつなさ」を通り越した「痛さ」を感じてしまう。
感動が待ってるかもしれない、いや待ってるに違いない――でも、そこに至るまでがとにかく「痛い」。作品によっては、私も我慢しっぱなしである。
…以上、私が勝手に位置づけた木原音瀬イメージを踏まえ、以下、「鈍色の華」の感想を。
!マジで完全ネタバレ注意報!
参った…スゴイよ、これ…。
アゼン → ボーゼン → ガクゼン だ!!
受は40代後半で白髪まじりのまったく冴えない窓際リーマン。
攻は仕事で取引交渉中の得体知れずな年下ガイジン2名。
社長の監視のもと、料亭で接待複数プレイ。
攻が受を「baby」と呼ぶ。
女体盛りならぬ中年男盛り。
ひぃぇえええええええええええ!
……。
さすがに私も一瞬、ロープを掴みかけた。
フツーならば、「エロとじv」に収録されている他の作家のように、鬼畜道ここに極まれりなエロでオチなく終わっていく、もしくは「イヤイヤ、ああ〜ん♪」で「攻が受を手に入れて最後にニンマリ」という作品になるところなのだが、書き手は木原音瀬、フツーに始まりフツーで終わるはずがない。
40代後半でリストラに怯える窓際リーマン、典型的なダメオヤジである鶴谷。仕事上だけでなく、ひとりの人間としても彼に興味を持つ者はいない。そんな彼が、契約を結ぼうとしている米国大企業の重要人(しかもふたり!)に突然、セックスの相手として指名される。なぜ鶴谷?…理由はいらない。わかるわけがないし、わからないままでいいからである。相手はガイジン、典型的なダメオヤジには得体の知れない肉食人種、怖い相手だ。読み手は鶴谷とともに混乱しながら、そのままエロへ。萌えなど一切ない、鬼畜スレスレ、例の「木原リズム」で淡々と描かれている(木原音瀬は感嘆符「!」を使用しない)、実に怖いエロである。本作は(とりあえず)BLにカテゴライズされているが、ホラー、もしくはSF(スペキュレーティブ・フィクション)のようでもあり――読んでいると、安部公房の『箱男』をなんとなく思い出してしまった。
私は短編小説/映画が大好きでよく読む/観るのだが、BLとしてでなく短編小説としても、本作の完成度はおっそろしく高いと感じる。次元が違う、アナザープラネッツな出来。社長の前で鶴谷がある告白をし、唐突に話は終わっていくのだが、ラストを鶴谷のセリフで締めくくっているあたり、印象的な短編小説をどう書くか、感覚でわかってる作家だなと思う(プロに対し、たいへん失礼な云い方になってしまうが)。榎田尤利もまたしかり。鶴谷の告白を聞いた社長のリアクションなんて、いらないでしょ?…だってそれは読み手と同じはずだから。同情したいけどできない鶴谷視点で始まり、最後は社長に同調する(注)。なんて素晴らしい。
エロにドン引きされることは別にして、もしかしたら海外で短編小説賞を獲れるかもよ?…ってか、なんでこれが「エロとじv」に載ってるんだ!?
評価:★★★★★(BLってスゴイ。木原音瀬みたいな作家がいるんだから)
秋林好み度:★★★(…だからね、評価と好みは違うの。私にオヤジ受属性はないし、何度も読み返したい作品でもないから)
絵師の鈴木ツタはグッジョブだと思うが、三段も落としてくるストーリーに、主人公がくたびれたリーマンということで、国枝彩香で見たかったかな…。惹句は…そうだな、けっこういい感じ、合ってると思う。
本作で初めて木原作品を読んだ人(Dさんだ、Dさん!)、なにもこんなキョーレツな作品を選ばなくたって…と云いたいところだが、「読んでみなければわからない」「人の評価を聞いてから読むかどうかを決めよう」な木原作品なだけに、「なんだこりゃ!?」という感想を聞いても、「お気の毒でした」としか云えない…。たとえば、三島由紀夫の作品を初めて読む人に薦めるならば『潮騒』、いきなり『禁色』は薦めないでしょ?
■(注)ちょっと分かりにくいかなと思ったので補記
「40代後半・白髪まじり・まったく冴えない窓際リーマン」という設定だけで、共感しづらく「うっ…」とくる。鶴谷の接待場面は「かわいそう、ひどい」と思うには思うけど、あまりの非日常かつ異常な状況に、読み手は自分の中に棲むモラルとの葛藤で必死になってしまい、彼に同情する余裕がなく、ただただ傍観するだけ。その場面が終わってホっとしてたら、読み手の知らないうちに、鶴谷が豹変していた。最後の告白。読み手は社長とともに愕然となる。
■『エロとじv―b-BOYアンソロジー』
ISBN:4862631908 単行本 リブレ出版 2007/06 ¥1,100
マジでしんどくなってきました。
これが罰ゲームというものなのね――グッバイ、私の休日よ。
妖精さんがやって来て、代わりに感想を書いてくれないかなー。
【お知らせ】
感想をつらつらと13本並べるのはツライので、1本文につき3本にします。
ただし、「これは面白いので感想をスペシャルに書きたい」作品の場合、1本だけのUPにします。
「BLにおける小説と挿絵と惹句は、一蓮托生な関係である」と思っているので、それらについても感想を述べます。
■「蜜月メイド」 作:水戸泉 扉絵:しょうおとあや
扉惹句:「この屋敷では、毎晩メイドが主の夜伽をすることが決まってるんだよ」
「なんで男でメイド?」ってそんなこと訊くな!…ってか私が訊きたい!…ってか「エロとじv」なんだから仕方ない!ここはガマンだ!…な、水戸泉による勝ち組セレブ(と本編に書いてある)×高校生メイドもの。
猫耳は1行目で痛恨の一撃、メイドは5行目でザラキだった。
……メイド属性のない秋林さん、ザオリク待ち。合掌。
評価:NO STAR(せめて執事にしてくれ!)
秋林好み度:NO STAR(ザオラル不可。ザオリク待ち。クリフトを呼んでくれ!)
読了できなかった唯一の作品。何度もチャレンジしたが、どうしても読み進めず。水戸泉という名前はよく見かけるのだが(まわしが山吹色の某元力士ではなく)、なんとなく住む世界が違うような気がして、いままで読んだことがなかった。この作家はいつもこんな拙い文章を書いてるの?…それとも、五百香ノエルのロリータエロ「りぼん絵日記」(ニガテ)のように、内容に合わせて、言葉足らずの舌足らずな文体にしてる?…どっちだ?(たぶん後者、わざとだと思う)…どちらにしてもこの短編読む限り、普段から気が付けばエロ曼荼羅な作風なんじゃ?…そして掲載順が「英田サキの後で木原音瀬の前」なんてのは、ちょっと残酷な仕打ちじゃないのか?>編集部
次!
■「隷従の檻」 作:和泉桂 扉絵:稲荷家房之介
扉惹句:「アラブの後宮で、官能に堕とされる王子は…!?」
奴隷×王子による下克上、且つ衆人環視(←漢字合ってる?姦視?)モノ。書き手が中堅・和泉桂なので、比較的こなれた文章である。及第点は充分にクリアしているのだが、キョーレツな設定および個性のある5〜6本を前に読んだせいか、サラサラサラサラサラ〜っと流してしまって、「ハイ、おしまい」。なんだか印象に残らない1本だった。よく云えば読みやすい、悪く云えば特長/特徴がなく、感想も書きにくい作品とでも云うか。「媚薬」と、設定およびネタがビミョーにかぶっているのだが、全編ヤリっぱなしで、パンチライン(Punch Line…「(冗談などの)急所となる文句、 落ち」という意。『プログレッシブ英和中辞典』引用)がない話はツライ。絵師・稲荷家房之介は、「百日の薔薇」を読んだときに、「この人、欧州系よりアラブやトルキーのほうが似合いそうだ」と思ったので、今回の抜擢はナイスだと思う。あんまりアラブっぽくないけど。
評価:★★☆(面白い/面白くないの前に、印象に残らない)
秋林好み度:★★(ストーリーがありそうで実質なかった。なんだそれ?)
扉惹句読むまで、これがアラブだとはまったく気付かなかった。秋林 念願 のアラブデビューが、うっかり「エロとじv」になってしまった。ショックである。
BLを読んでいると、「この近年で、見かけるようになった表現」というものに出くわし、「そっか〜、いまこの表現がBLでは流行りなのね」と思うことがしばしばある。表現に時代性があるとゆーか。最近だと「瞠目する」「片眉を上げる」「眉根を寄せる」。次に来るのは、本作にも出てきた「雄蕊(蘂)【ゆうずい】」(木原音瀬の新刊『牛泥棒』でも出てきた)じゃないだろうか。雄蕊、ゆーずい、ユウズイ。いや〜便利だ、これ。字を書いて声に出して読んでも、一般人にはなんのことだかわかるまい。「一発でイミわかる人=腐女子」だな。…ともあれ、時代はユウズイだ!…たぶん。
次!
■「貴人たちの後継儀式」 作:斑鳩サハラ 扉絵:明神翼
扉惹句:「セレブが行う成人儀式 それはたまらなく淫靡で…vvv」
どうつけようか最後まで悩んだんだろうな〜という印象の、ちょっとモタつくタイトルである。セレブ青年たち×18歳高校生モノ。
「18歳になったら、一族の中でもとりわけ優れた資質を備えた成人男子と契って、ユウズイ(さっそく利用だ!)からのナニを注いでもらうことで一人前となり、一族として認められる」って、なんじゃそりゃ?(←BLにおいて禁句です>秋林さん)…貴人たちの後継儀式というより、奇人たちの貫通儀式である。
まさに「リブレ(BE×BOY)=ポップでエッチ、セレブとイケメン」そのもの、看板に偽りナシの内容なのだが…マンネリでつまらない。いつも思うんだが、この手の儀式モノはなぜ受をポジティブホモにしないのだろう。「イヤイヤ、ああ〜ん♪」で、「攻が受を手に入れて最後にニンマリ」というものばかりだ。ロザリーン・ヤングちゃん自らが、自己のフェティシズムと妄想を赤裸々に綴った、究極のエロティシズム本『ロザリーン・ヤングはじめての告白』(不思議と好感が持てるんだからオドロキだ)のようにならぬものか。躾よく育てられた、若く美しい18歳の男の子。隠された欲望とフェティシズム。そんな彼がある儀式を妄想し始める――とか。攻主導でない、潔く凛とした受視点を希望。
評価:★★(つまらない)
秋林好み度:★(カンベン)
これも印象に残らない。13本も並ぶのだから、エロシーンがマンネリ化するのはわかってたはず(違うか?>編集部)。設定と視点を変えるだけでも、かなり内容が違ってくると思うんだけどなあ。ただし、明神翼の絵は「ポップでエッチ、セレブとイケメン」になるので、適材適所だろう。
次!
ISBN:4862631908 単行本 リブレ出版 2007/06 ¥1,100
2007年6月19日『エロほんv』と同時発売!!キラキラ表紙が目印!業界騒然!! ボーイズノベルの最強作家陣ここに集まる!小説b-Boyで初登場以降、ありえないほどの人気エッチ企画が、新作書き下ろし6本を加えてアンソロジー化★ 空前絶後のエッチを見よ!
ラインナップ
英田サキ、あさぎり夕、あすま理彩、斑鳩サハラ、和泉 桂、榎田尤利、鬼塚ツヤコ、木原音瀬、南原 兼、水戸 泉、水上ルイ、山藍紫姫子、雪代鞠絵
マジでしんどくなってきました。
これが罰ゲームというものなのね――グッバイ、私の休日よ。
妖精さんがやって来て、代わりに感想を書いてくれないかなー。
【お知らせ】
感想をつらつらと13本並べるのはツライので、1本文につき3本にします。
ただし、「これは面白いので感想をスペシャルに書きたい」作品の場合、1本だけのUPにします。
「BLにおける小説と挿絵と惹句は、一蓮托生な関係である」と思っているので、それらについても感想を述べます。
■「蜜月メイド」 作:水戸泉 扉絵:しょうおとあや
扉惹句:「この屋敷では、毎晩メイドが主の夜伽をすることが決まってるんだよ」
「なんで男でメイド?」ってそんなこと訊くな!…ってか私が訊きたい!…ってか「エロとじv」なんだから仕方ない!ここはガマンだ!…な、水戸泉による勝ち組セレブ(と本編に書いてある)×高校生メイドもの。
猫耳は1行目で痛恨の一撃、メイドは5行目でザラキだった。
……メイド属性のない秋林さん、ザオリク待ち。合掌。
評価:NO STAR(せめて執事にしてくれ!)
秋林好み度:NO STAR(ザオラル不可。ザオリク待ち。クリフトを呼んでくれ!)
読了できなかった唯一の作品。何度もチャレンジしたが、どうしても読み進めず。水戸泉という名前はよく見かけるのだが(まわしが山吹色の某元力士ではなく)、なんとなく住む世界が違うような気がして、いままで読んだことがなかった。この作家はいつもこんな拙い文章を書いてるの?…それとも、五百香ノエルのロリータエロ「りぼん絵日記」(ニガテ)のように、内容に合わせて、言葉足らずの舌足らずな文体にしてる?…どっちだ?(たぶん後者、わざとだと思う)…どちらにしてもこの短編読む限り、普段から気が付けばエロ曼荼羅な作風なんじゃ?…そして掲載順が「英田サキの後で木原音瀬の前」なんてのは、ちょっと残酷な仕打ちじゃないのか?>編集部
次!
■「隷従の檻」 作:和泉桂 扉絵:稲荷家房之介
扉惹句:「アラブの後宮で、官能に堕とされる王子は…!?」
奴隷×王子による下克上、且つ衆人環視(←漢字合ってる?姦視?)モノ。書き手が中堅・和泉桂なので、比較的こなれた文章である。及第点は充分にクリアしているのだが、キョーレツな設定および個性のある5〜6本を前に読んだせいか、サラサラサラサラサラ〜っと流してしまって、「ハイ、おしまい」。なんだか印象に残らない1本だった。よく云えば読みやすい、悪く云えば特長/特徴がなく、感想も書きにくい作品とでも云うか。「媚薬」と、設定およびネタがビミョーにかぶっているのだが、全編ヤリっぱなしで、パンチライン(Punch Line…「(冗談などの)急所となる文句、 落ち」という意。『プログレッシブ英和中辞典』引用)がない話はツライ。絵師・稲荷家房之介は、「百日の薔薇」を読んだときに、「この人、欧州系よりアラブやトルキーのほうが似合いそうだ」と思ったので、今回の抜擢はナイスだと思う。あんまりアラブっぽくないけど。
評価:★★☆(面白い/面白くないの前に、印象に残らない)
秋林好み度:★★(ストーリーがありそうで実質なかった。なんだそれ?)
扉惹句読むまで、これがアラブだとはまったく気付かなかった。秋林
BLを読んでいると、「この近年で、見かけるようになった表現」というものに出くわし、「そっか〜、いまこの表現がBLでは流行りなのね」と思うことがしばしばある。表現に時代性があるとゆーか。最近だと「瞠目する」「片眉を上げる」「眉根を寄せる」。次に来るのは、本作にも出てきた「雄蕊(蘂)【ゆうずい】」(木原音瀬の新刊『牛泥棒』でも出てきた)じゃないだろうか。雄蕊、ゆーずい、ユウズイ。いや〜便利だ、これ。字を書いて声に出して読んでも、一般人にはなんのことだかわかるまい。「一発でイミわかる人=腐女子」だな。…ともあれ、時代はユウズイだ!…たぶん。
次!
■「貴人たちの後継儀式」 作:斑鳩サハラ 扉絵:明神翼
扉惹句:「セレブが行う成人儀式 それはたまらなく淫靡で…vvv」
どうつけようか最後まで悩んだんだろうな〜という印象の、ちょっとモタつくタイトルである。セレブ青年たち×18歳高校生モノ。
「18歳になったら、一族の中でもとりわけ優れた資質を備えた成人男子と契って、ユウズイ(さっそく利用だ!)からのナニを注いでもらうことで一人前となり、一族として認められる」って、なんじゃそりゃ?(←BLにおいて禁句です>秋林さん)…貴人たちの後継儀式というより、奇人たちの貫通儀式である。
まさに「リブレ(BE×BOY)=ポップでエッチ、セレブとイケメン」そのもの、看板に偽りナシの内容なのだが…マンネリでつまらない。いつも思うんだが、この手の儀式モノはなぜ受をポジティブホモにしないのだろう。「イヤイヤ、ああ〜ん♪」で、「攻が受を手に入れて最後にニンマリ」というものばかりだ。ロザリーン・ヤングちゃん自らが、自己のフェティシズムと妄想を赤裸々に綴った、究極のエロティシズム本『ロザリーン・ヤングはじめての告白』(不思議と好感が持てるんだからオドロキだ)のようにならぬものか。躾よく育てられた、若く美しい18歳の男の子。隠された欲望とフェティシズム。そんな彼がある儀式を妄想し始める――とか。攻主導でない、潔く凛とした受視点を希望。
評価:★★(つまらない)
秋林好み度:★(カンベン)
これも印象に残らない。13本も並ぶのだから、エロシーンがマンネリ化するのはわかってたはず(違うか?>編集部)。設定と視点を変えるだけでも、かなり内容が違ってくると思うんだけどなあ。ただし、明神翼の絵は「ポップでエッチ、セレブとイケメン」になるので、適材適所だろう。
次!
■『エロとじv―b-BOYアンソロジー』
ISBN:4862631908 単行本 リブレ出版 2007/06 ¥1,100
エロの感想は夜に書くのがいいのかも。
だって夜になると、私の中で別アプリケーションが起動するから。……。
【お知らせ】
感想をつらつらと13本並べるのはツライので、1本文につき3本にします。
ただし、「これは面白いので感想をスペシャルに書きたい」作品の場合、1本だけのUPにします。
「BLにおける小説と挿絵と惹句は、一蓮托生な関係である」と思っているので、それらについても感想を述べます。
…というわけで、4本目の英田サキ作品はピンUPです。
!星評価後に完全ネタバレ注意報!
■「兄貴とヤス」 作:英田サキ 扉絵:鹿乃しうこ
扉惹句:「弟分に奪われる極道同士の危険な愛……!!」
「水を得た魚はこう泳ぐのよっ!」と云わんばかり、ヤクザを与えると素晴らしい泳ぎっぷりを披露してくれる英田兄貴である。その中でも英田兄貴にしては珍しいと思われる、年下攻な舎弟×兄貴モノ。
さて。英田兄貴と云えば、比較的硬派な文体にリズミカルな行間(「文章に文字では書かれていない筆者の真意や意向」という意。『大辞林 第二版』引用)を持ち、女性読者が多いBL業界でも容赦ナシ、警察機構やヤクザ内情など漢字多めでガンガン描き、読み手をグイグイっと引っ張っていく作家である。極道モノを好んで書くBL作家はたいへん多いが、英田兄貴のように、「硬派と甘ーいラブが同居しているドラマティックかつハーレクイン、でもやっぱり腐女子向けなストーリー」を提供してくれる作家となると、あまりいない…と思う。
というわけで、そんな英田サキによる短編「兄貴とヤス」なのだが……
英田兄貴、いやらしすぎます。。
掲載誌が間違ってる…とゆーより、「ペンネームを変えて、ウチでゼヒ書きませんか?」と、モノホンのゲイ雑誌(Badiとか)からお声がかかりそうなエロ(しかも短編だし)に、恥ずかしながらうろたえてしまった。掲載順では4本目にあたる本作だが、いったいこれまでの3本はなんだったんだ?…と思うくらい、一気に目が覚めるエロである。いやーもービックリしたってば!
受の兄貴・羽鳥は(冷めた性格のようだが)侠気に溢れた漢キャラで、たいへんな魔性の男殺しである。隠喩なんぞまったくナシ、あからさまな文句の連発(ちょっとここでは書けない。興味ある方は「エロとじv」を買いましょう)で、ヤスを誘うシーンは強烈、あんな姿であんなことを云われたら、ヤスの理性がぶっ飛ぶのも当然だ。英田兄貴お得意の受キャラが、「魔性の男殺し」であることはけっこう知られていると思うのだが、羽鳥はその中でもセクシャルバイオレットNo.1だろう。一方、攻のヤスは可愛らしく、「蒲田行進曲」銀ちゃんとヤス、「傷だらけの天使」修と亨…などが好きな人(アタシだアタシ!)にはツボである。
エロのグレードは高めとはいえ、短編小説として非常によくまとまっている。出だしは緊張感があり、英田兄貴の硬派な記述でヤクザ抗争の背景もわかりやすい。羽鳥がなにゆえセクシャルバイオレットNo.1なのか、不破というキャラを巧みに使い、その所以たる過去を描いているところも上手い。フツーの作家だったら無理矢理という展開をみせるだろうに、断らない/断れない羽鳥というのがいいね。英田兄貴、最近出た長編2作(『DEADSHOT』『いつわりの薔薇に抱かれ』)より、コッチの短編のほうが面白くないっスか?
そして絵師の鹿乃しうこが、また素晴らしい(一瞬、徳川蘭子さんの昔の絵かと思ったというのはナイショだ)。本作を読んでいる間、頭の中では鹿乃しうこ画によるキャラが動いていた。こんなに相性がいいなんてなあ。ガテン系アクロバット絵師の鹿乃しうこなら、英田兄貴が描くあ〜んなことやこ〜んなことも対応可能だろう。短編小説で終わらすのはもったいない。羽鳥とヤスは魅力的だ。もっとふたりのエピソードをくれ!「エロとじv」一番人気は本作だろう、「原作:英田サキ 画:鹿乃しうこ」でマンガ化希望だ!>編集部
評価:★★★★(エクセレント、たいへん面白い…けどね…)
秋林好み度:★★★★★(たいへん好み…なんだけどね…)
あんな兄貴を満足させようと思ったら毎日タイヘンだろうな…ヤスが心配である。朝のご挨拶も、「おはようございます」ではなく「お疲れさまでした」になりそうだ。
扉惹句を考えたのは、たぶん編集部の担当さんなんだろうけど…ノリにノってるなあ。小説・扉絵がともにノってる以上、惹句もノらざるを得なかったのかもしれないが。ところで、本作がゲイ小説でなくBLに留まっている理由を挙げるとするなら、「絵師が鹿乃しうこ、不破がフツーのルックスだと思われる、ラストがたいへん甘い」からだと思う。これがもし、「絵師が田/亀/源/五郎、不破が出腹のハゲ、羽鳥が縛られ(あわわ…)ラストが壮絶、タイトルが『兄貴いじめ』」だったらと思うと、さすがの私もドン引きする…ってか、止めてくれ!編集部!…そんな想像する私も私か…。
次!
…のその前に。
実はここからが感想の本題になるかもしれない。
ずいぶんと「兄貴とヤス」をホメているのに、なぜ星評価が★★★★★(5つ)ではなく★★★★(4つ)、★1つマイナスなのか?
キャラ良ーし!エロ良ーし!ラブ良ーし!緊張感良ーし!と、たいへん魅力的にストーリーが展開していたというのに、最後の最後、話のシメにガッカリ、「英田兄貴…またそうするの?」と思ってしまったからである。
!以下、完全に結末を明かしていますので要注意!
鉄砲玉となりヤマを踏むことで、もしかしたらヤスとはもう二度と会えないかもしれない。そうなれば今夜は最後の夜になる。なんとなくヤスの気持ちには気付いていた、ならば餞別代りに自分をヤスに与えてもいい。でも欲しいと感じていたのは、ヤスだけじゃない…実は自分も同じじゃないのか?餞別というのは口実じゃないのか?――と、ここまではもうなんて素晴らしい!手放しで絶賛したい!いやホント、マジで!
ところがである。
そのせつなさと緊張感が、ラストでブッタ切れてしまう。
メロメロメロウで終わってしまう。
これだけ盛り上げといて、「襲撃当日の朝、ニュース見てたらガサ入れで森岡が逮捕され、ヤマを踏まなくてよくなりました。ヤスのためにヤクザ辞めようかと思います。めでたしめでたし」になるのか。羽鳥は(感情は冷めていても)肝っ玉の据わった、背中に極彩色の鳳凰を彫った男だぞ!?なんでだ!?…羽鳥は最後までヤクザとして格好が良く、またヤスも「兄貴ならなんでもいい」ではなくて、「ヤクザとしての兄貴」に惚れていて欲しかった。
そりゃー私だって甘いのは好きだ。BLではラブが最優先だろうし、最後に出てくるヤスの「ねがい」にいじらしさを感じ、ホロリとさせられ、繰り返して読んでるうちに「これでいいのかな、やっぱ」とも思ったさ。
…でも。
たとえば、である。
シャワーを浴びず、ヤスの匂いを身体に残したまま、羽鳥は翌朝ひとり現場へと向かう。標的を見つけ、ベレッタの引き金を引き、弾は森岡にヒットする。羽鳥の様子がおかしいと感じたヤスが目の前に現れた瞬間、羽鳥に弾丸が一弾、また一弾と撃ち込まれる。崩れ落ちる羽鳥、泣き叫ぶヤス。昨晩あんなに愛した鳳凰が、ヤスの腕の中でいま、息絶えようとしている。ヤスのために生きれたらどんなによかったかと思いながら、羽鳥は静かに目を閉じる――とか。
羽鳥をかばってヤスが撃たれる。逆上した羽鳥が修羅と化す、とか。
森岡を狙ってた第三の男が現場に現れ、羽鳥の目の前で森岡絶命。土壇場でヤマを踏まずに済む。自分はヤクザを辞めるつもりはないが、ヤクザ向きでないヤスはカタギに戻したい。だが、愛する男がヤマを踏むことになっていたと知ったヤスは、もう二度と羽鳥を危ない目に遭わせたくないと、鳳凰を守る虎(龍でもいい)になることを決意する。ヤスの本気を知り、ともに極道で生きると覚悟を決める羽鳥。あの優しい男がいつの間に…と思っていると、ヤスがある「ねがい」を口にした。その内容に「やっぱりヤスだ」と愛おしさがこみ上げ、目を細めながら「ねがい」を叶える羽鳥だった――とか。
そんな風に、渋く美しくエンドマークつけてもよかったんじゃないだろうか。甘い話、ヤリっぱなしでオチてない話、まとまっていない話――は他の作家が書いている(失礼!)。ベタだけど正統派な作品が、1本くらいあっても良かったように思える。
受が辞める辞めないと云い出すあたりに、ヤクザや恋愛に対する腐女子…いや女子の願望がどうしても見え隠れする。
英田作品にありがちなんだけども、受キャラはとても魅力的、人より秀でた才能を持っているという設定なくせ、仕事に対するプライドや意地というものが感じられない。「ラブ>>>仕事に対するプライド」、つまり「恋は盲目」で、「仕事を辞めなければラブが成就しない」。
英田兄貴は「エス」シリーズで名をあげた人である。昨年「エス」が、なぜ熱狂的に支持されたかというと、椎葉と宗近の「相手より上に立ちたいというプライド」のぶつかり合いが、ラブに発展していく――その過程が面白かったからなんだと思う。刑事としての椎葉には魅力があったし、2巻の「咬痕」――永倉の一件で自家中毒を起こしフラフラになる椎葉、ふたりの間にあるものが徐々に変わってきていることに気付き、覚悟を決め始める宗近――は、素晴らしかった。3巻目あたりから少し展開が強引で、一件落着後に椎葉が「刑事を辞める」と云い出したとき、正直ガッカリした。だが、ヤクザでいたくない宗近で折り合いが付いたと思う。
私は英田兄貴に「エスの人」で終わって欲しくない。いろいろ云われ、雑音も聞こえていると思うが、いま兄貴には「書きたいものを書く」だけじゃなく、「甘く終わる以上のなにか」が必要なんじゃないだろうか。「魚住くんシリーズ」以降、榎田尤利はさらに名をあげた。木原音瀬は木原音瀬しか書けないものを書き、一目を置かれている。私は英田兄貴にもそんな風になって欲しいと切に願っている――迷惑かもしれないが。
読者というのは貪欲だ。もっと面白いものを読ませろと、次々と作家に要求する。しんどい話である。だが、英田作品なら反響は大きいだろうし、ダイレクトに届くはず。英田兄貴――頑張ってくれ!
ISBN:4862631908 単行本 リブレ出版 2007/06 ¥1,100
2007年6月19日『エロほんv』と同時発売!!キラキラ表紙が目印!業界騒然!! ボーイズノベルの最強作家陣ここに集まる!小説b-Boyで初登場以降、ありえないほどの人気エッチ企画が、新作書き下ろし6本を加えてアンソロジー化★ 空前絶後のエッチを見よ!
ラインナップ
英田サキ、あさぎり夕、あすま理彩、斑鳩サハラ、和泉 桂、榎田尤利、鬼塚ツヤコ、木原音瀬、南原 兼、水戸 泉、水上ルイ、山藍紫姫子、雪代鞠絵
エロの感想は夜に書くのがいいのかも。
だって夜になると、私の中で別アプリケーションが起動するから。……。
【お知らせ】
感想をつらつらと13本並べるのはツライので、1本文につき3本にします。
ただし、「これは面白いので感想をスペシャルに書きたい」作品の場合、1本だけのUPにします。
「BLにおける小説と挿絵と惹句は、一蓮托生な関係である」と思っているので、それらについても感想を述べます。
…というわけで、4本目の英田サキ作品はピンUPです。
!星評価後に完全ネタバレ注意報!
■「兄貴とヤス」 作:英田サキ 扉絵:鹿乃しうこ
扉惹句:「弟分に奪われる極道同士の危険な愛……!!」
「水を得た魚はこう泳ぐのよっ!」と云わんばかり、ヤクザを与えると素晴らしい泳ぎっぷりを披露してくれる英田兄貴である。その中でも英田兄貴にしては珍しいと思われる、年下攻な舎弟×兄貴モノ。
さて。英田兄貴と云えば、比較的硬派な文体にリズミカルな行間(「文章に文字では書かれていない筆者の真意や意向」という意。『大辞林 第二版』引用)を持ち、女性読者が多いBL業界でも容赦ナシ、警察機構やヤクザ内情など漢字多めでガンガン描き、読み手をグイグイっと引っ張っていく作家である。極道モノを好んで書くBL作家はたいへん多いが、英田兄貴のように、「硬派と甘ーいラブが同居しているドラマティックかつハーレクイン、でもやっぱり腐女子向けなストーリー」を提供してくれる作家となると、あまりいない…と思う。
というわけで、そんな英田サキによる短編「兄貴とヤス」なのだが……
英田兄貴、いやらしすぎます。。
掲載誌が間違ってる…とゆーより、「ペンネームを変えて、ウチでゼヒ書きませんか?」と、モノホンのゲイ雑誌(Badiとか)からお声がかかりそうなエロ(しかも短編だし)に、恥ずかしながらうろたえてしまった。掲載順では4本目にあたる本作だが、いったいこれまでの3本はなんだったんだ?…と思うくらい、一気に目が覚めるエロである。いやーもービックリしたってば!
受の兄貴・羽鳥は(冷めた性格のようだが)侠気に溢れた漢キャラで、たいへんな魔性の男殺しである。隠喩なんぞまったくナシ、あからさまな文句の連発(ちょっとここでは書けない。興味ある方は「エロとじv」を買いましょう)で、ヤスを誘うシーンは強烈、あんな姿であんなことを云われたら、ヤスの理性がぶっ飛ぶのも当然だ。英田兄貴お得意の受キャラが、「魔性の男殺し」であることはけっこう知られていると思うのだが、羽鳥はその中でもセクシャルバイオレットNo.1だろう。一方、攻のヤスは可愛らしく、「蒲田行進曲」銀ちゃんとヤス、「傷だらけの天使」修と亨…などが好きな人(アタシだアタシ!)にはツボである。
エロのグレードは高めとはいえ、短編小説として非常によくまとまっている。出だしは緊張感があり、英田兄貴の硬派な記述でヤクザ抗争の背景もわかりやすい。羽鳥がなにゆえセクシャルバイオレットNo.1なのか、不破というキャラを巧みに使い、その所以たる過去を描いているところも上手い。フツーの作家だったら無理矢理という展開をみせるだろうに、断らない/断れない羽鳥というのがいいね。英田兄貴、最近出た長編2作(『DEADSHOT』『いつわりの薔薇に抱かれ』)より、コッチの短編のほうが面白くないっスか?
そして絵師の鹿乃しうこが、また素晴らしい(一瞬、徳川蘭子さんの昔の絵かと思ったというのはナイショだ)。本作を読んでいる間、頭の中では鹿乃しうこ画によるキャラが動いていた。こんなに相性がいいなんてなあ。ガテン系アクロバット絵師の鹿乃しうこなら、英田兄貴が描くあ〜んなことやこ〜んなことも対応可能だろう。短編小説で終わらすのはもったいない。羽鳥とヤスは魅力的だ。もっとふたりのエピソードをくれ!「エロとじv」一番人気は本作だろう、「原作:英田サキ 画:鹿乃しうこ」でマンガ化希望だ!>編集部
評価:★★★★(エクセレント、たいへん面白い…けどね…)
秋林好み度:★★★★★(たいへん好み…なんだけどね…)
あんな兄貴を満足させようと思ったら毎日タイヘンだろうな…ヤスが心配である。朝のご挨拶も、「おはようございます」ではなく「お疲れさまでした」になりそうだ。
扉惹句を考えたのは、たぶん編集部の担当さんなんだろうけど…ノリにノってるなあ。小説・扉絵がともにノってる以上、惹句もノらざるを得なかったのかもしれないが。ところで、本作がゲイ小説でなくBLに留まっている理由を挙げるとするなら、「絵師が鹿乃しうこ、不破がフツーのルックスだと思われる、ラストがたいへん甘い」からだと思う。これがもし、「絵師が田/亀/源/五郎、不破が出腹のハゲ、羽鳥が縛られ(あわわ…)ラストが壮絶、タイトルが『兄貴いじめ』」だったらと思うと、さすがの私もドン引きする…ってか、止めてくれ!編集部!…そんな想像する私も私か…。
次!
…のその前に。
実はここからが感想の本題になるかもしれない。
ずいぶんと「兄貴とヤス」をホメているのに、なぜ星評価が★★★★★(5つ)ではなく★★★★(4つ)、★1つマイナスなのか?
キャラ良ーし!エロ良ーし!ラブ良ーし!緊張感良ーし!と、たいへん魅力的にストーリーが展開していたというのに、最後の最後、話のシメにガッカリ、「英田兄貴…またそうするの?」と思ってしまったからである。
!以下、完全に結末を明かしていますので要注意!
鉄砲玉となりヤマを踏むことで、もしかしたらヤスとはもう二度と会えないかもしれない。そうなれば今夜は最後の夜になる。なんとなくヤスの気持ちには気付いていた、ならば餞別代りに自分をヤスに与えてもいい。でも欲しいと感じていたのは、ヤスだけじゃない…実は自分も同じじゃないのか?餞別というのは口実じゃないのか?――と、ここまではもうなんて素晴らしい!手放しで絶賛したい!いやホント、マジで!
ところがである。
そのせつなさと緊張感が、ラストでブッタ切れてしまう。
メロメロメロウで終わってしまう。
これだけ盛り上げといて、「襲撃当日の朝、ニュース見てたらガサ入れで森岡が逮捕され、ヤマを踏まなくてよくなりました。ヤスのためにヤクザ辞めようかと思います。めでたしめでたし」になるのか。羽鳥は(感情は冷めていても)肝っ玉の据わった、背中に極彩色の鳳凰を彫った男だぞ!?なんでだ!?…羽鳥は最後までヤクザとして格好が良く、またヤスも「兄貴ならなんでもいい」ではなくて、「ヤクザとしての兄貴」に惚れていて欲しかった。
そりゃー私だって甘いのは好きだ。BLではラブが最優先だろうし、最後に出てくるヤスの「ねがい」にいじらしさを感じ、ホロリとさせられ、繰り返して読んでるうちに「これでいいのかな、やっぱ」とも思ったさ。
…でも。
たとえば、である。
シャワーを浴びず、ヤスの匂いを身体に残したまま、羽鳥は翌朝ひとり現場へと向かう。標的を見つけ、ベレッタの引き金を引き、弾は森岡にヒットする。羽鳥の様子がおかしいと感じたヤスが目の前に現れた瞬間、羽鳥に弾丸が一弾、また一弾と撃ち込まれる。崩れ落ちる羽鳥、泣き叫ぶヤス。昨晩あんなに愛した鳳凰が、ヤスの腕の中でいま、息絶えようとしている。ヤスのために生きれたらどんなによかったかと思いながら、羽鳥は静かに目を閉じる――とか。
羽鳥をかばってヤスが撃たれる。逆上した羽鳥が修羅と化す、とか。
森岡を狙ってた第三の男が現場に現れ、羽鳥の目の前で森岡絶命。土壇場でヤマを踏まずに済む。自分はヤクザを辞めるつもりはないが、ヤクザ向きでないヤスはカタギに戻したい。だが、愛する男がヤマを踏むことになっていたと知ったヤスは、もう二度と羽鳥を危ない目に遭わせたくないと、鳳凰を守る虎(龍でもいい)になることを決意する。ヤスの本気を知り、ともに極道で生きると覚悟を決める羽鳥。あの優しい男がいつの間に…と思っていると、ヤスがある「ねがい」を口にした。その内容に「やっぱりヤスだ」と愛おしさがこみ上げ、目を細めながら「ねがい」を叶える羽鳥だった――とか。
そんな風に、渋く美しくエンドマークつけてもよかったんじゃないだろうか。甘い話、ヤリっぱなしでオチてない話、まとまっていない話――は他の作家が書いている(失礼!)。ベタだけど正統派な作品が、1本くらいあっても良かったように思える。
受が辞める辞めないと云い出すあたりに、ヤクザや恋愛に対する腐女子…いや女子の願望がどうしても見え隠れする。
英田作品にありがちなんだけども、受キャラはとても魅力的、人より秀でた才能を持っているという設定なくせ、仕事に対するプライドや意地というものが感じられない。「ラブ>>>仕事に対するプライド」、つまり「恋は盲目」で、「仕事を辞めなければラブが成就しない」。
英田兄貴は「エス」シリーズで名をあげた人である。昨年「エス」が、なぜ熱狂的に支持されたかというと、椎葉と宗近の「相手より上に立ちたいというプライド」のぶつかり合いが、ラブに発展していく――その過程が面白かったからなんだと思う。刑事としての椎葉には魅力があったし、2巻の「咬痕」――永倉の一件で自家中毒を起こしフラフラになる椎葉、ふたりの間にあるものが徐々に変わってきていることに気付き、覚悟を決め始める宗近――は、素晴らしかった。3巻目あたりから少し展開が強引で、一件落着後に椎葉が「刑事を辞める」と云い出したとき、正直ガッカリした。だが、ヤクザでいたくない宗近で折り合いが付いたと思う。
私は英田兄貴に「エスの人」で終わって欲しくない。いろいろ云われ、雑音も聞こえていると思うが、いま兄貴には「書きたいものを書く」だけじゃなく、「甘く終わる以上のなにか」が必要なんじゃないだろうか。「魚住くんシリーズ」以降、榎田尤利はさらに名をあげた。木原音瀬は木原音瀬しか書けないものを書き、一目を置かれている。私は英田兄貴にもそんな風になって欲しいと切に願っている――迷惑かもしれないが。
読者というのは貪欲だ。もっと面白いものを読ませろと、次々と作家に要求する。しんどい話である。だが、英田作品なら反響は大きいだろうし、ダイレクトに届くはず。英田兄貴――頑張ってくれ!
■『エロとじv―b-BOYアンソロジー』
ISBN:4862631908 単行本 リブレ出版 2007/06 ¥1,100
前口上も終わったことだし、さて感想を書くか!と思ったら、このアンソロジー、13本も掲載されている!しまった…。全部書き上げるまでマジ1週間かかるよ、こりゃ!
【お知らせ】
感想をつらつらと13本並べるのはツライので、1本文につき3本にします。
ただし「これは面白いので感想をスペシャルに書きたい」作品の場合、1本だけのUPにします。
「BLにおける小説と挿絵と惹句は、一蓮托生な関係である」と思っているので、それらについても感想を述べます。
!マジで完全ネタバレ注意報!
■「痴漢電車」 作:鬼塚ツヤコ 扉絵:佐々成美
扉惹句:「満員電車の中、私の体に絡みつく忌まわしい手の正体は……」
オープニング1本目は痴漢電車モノである。年下攻。おおまかなストーリーは「満員電車の中で、若き美貌の国税局官僚が見知らぬ男から陵辱される。ところがその男の正体はなんと…」というもので、キャラが鬼塚ツヤコ得意の「嗜虐的な攻、そんな攻を拒めない自虐的な受」、よって彼女のファンはいつも通りに読めるだろう。
だが私にはつまらなかった。いやだってさ、「子供の頃(攻は小学生、受は中学生)に家庭の事情で別れても、ずーっと受が好きでした」という攻の設定からしてすでに無理があるのに(少女マンガっぽいが)、10数年後に再会し、いきなり受をここぞとばかりに電車で陵辱するか?…受も受だ。「ずっと気になってた」って、そんな10数年も経って再会したばっかりなのに?…もとから嗜虐的な攻というのは共感を得にくい。BLは男性向けより共感を必要とする。ラブにストーリーを求めるからだ。読み手に少しでもその共感を与えようと、ふたりの過去や背景を描いてはいるのだが、全部描こうとしている。そんなの短編では無理だろう。攻の一人称ならまだいいが、受視点の三人称だから余計に苦しい。せっかく短編なんだから、もっとスリリングにキメてくれ!
痴漢電車なんだから(?)無理な背景や過去は余計だ。いっそ受をもとからホモな設定の一人称にして、「好きな同僚(上司でも部下でもいい)と仕事先に向かう満員電車で、痴漢に遭いました。恥ずかしくてたまらないのに、嗚呼!カラダは云うことをきかない。そんな姿を好きな相手に見られるなんて!」ときて、ラストで「実はそいつが!」と、シンプルに持ってきたほうがいいと思うんだけどなあ。
評価:★★(つまらない)
秋林好み度:★★(ニガテ…というより興味ナシ)
同じ「密空間で陵辱、年下攻、ワケありの攻と受」という設定で、このあと素晴らしい出来のスリリングな短編が出てくるだけに、どうしても辛口になってしまう。絵師の佐々成美は上手い。でも、扉絵で完全ネタバレしているのはどうだろう?…誰が触っているかわからない、というところから始まっているので、攻の顔がわからないほうがよかったような…。辱めによって顔の赤い受、そんな受に容赦なく伸ばされる無数の手、誰だかわからない後姿の攻…とかね。惹句は可もなく不可もなく。
次!
■「バッドステータスv発情中」 作:南原兼 扉絵:ホームラン・拳
扉惹句:「かわいいお尻にしっぽをつけてあげる。」
私にとって初南原作品。なんとなく住む世界が違うような気がして、いままで読んだことがなかった。でもたしか、あの伝説のオビ惹句「そう…。そのまま飲みこんで。僕のエクスカリバー…」がついたのは、この人の本だよね?…という話はさておき。
パブリックスクールもの。絵師がホームラン・拳なので、パブリックスクールものでありがちな大人っぽい耽美系ではないはず、だいたい扉惹句からしてヤバイ、もしかしてこれは…と警戒していたが、1行目「お兄様の猫耳」が目に入った瞬間――まったく猫耳属性のない秋林に痛恨の一撃!HP300ダメージ、ステータスはバッドどころがAWFUL!ゲームオーバー!
抵抗もできず、撃沈となった1本。合掌。
評価:★(お好きな人はどうぞ)
秋林好み度:NO STAR(沈没中)
ちゃんと読了はした。猫耳つけててもやることはやるなあ、カワイイのにみんな下半身はたいそうなごリッパ屋だ、という印象。ティミーとかフランシスとか、いろいろソレっぽい名前が出てくるが、My提案として「ジュリアン」というのはどうだろう?……。評価は★としたが、これはヘタというのではなく、純粋に「お好きな人はどうぞ」というもの。南原兼は作風にあった文章を書いている。属性のある人にとっては、逆に上手い作家と云えるんじゃないだろうか。私にとっては「エクスカリバーの人」だが。
次!
■「媚薬」 作:水上ルイ 扉絵:池玲文
扉惹句:「陛下を犯し、欲望を注ぎ込みたい。何度そう思ったことか…!!」
西洋が舞台。馬丁(馬の世話係)×陛下(王様)な下克上モノ。池玲文による扉絵が素晴らしい。西洋コスプレはツボ(だってアタシ西洋史学専攻だったし)。しかも攻の馬丁がまるでアンドレだ!ブラボー!
西洋のコスプレ下克上モノにおける攻の定番は、昔から馬丁か庭師である。「チャタレイ夫人の恋人」のメラーズだって、庭師だ(あ、森番か)。フツーの使用人より馬丁や庭師のほうが、断然ハンキー(逞しくセクシーな男、という意)だからで、攻を陛下の馬丁とした水上ルイはよくわかっているね、うんうん。これでキャラの年齢設定がもうちょっと上の年下攻(本作の設定は攻馬丁が28歳、受陛下が17歳。個人的には攻が20代後半、王様30代前半がストライクだ)だったら、もっとツボだったのだが。あんまりコドモな受はちょっと…。でも13本もある以上、ピッタシカンカンは難しいだろう。ゼイタクは云ってられない。
受の一人称による展開は、人となりと状況が把握しやすいので、短編では効果的だ。臣下による腐敗政治の結果、国は崩壊、明日には敵国に奴隷として差し出される運命の王。その最後の夜、媚薬を盛って相手に思いを遂げたい――というストーリーはありがちではあるが、誰がどのように媚薬を使ったかにヒネリがあって、ナルホドそうきたかとちょっと感心した。
がしかし。ベストかと思われた受一人称がなあ…。ラブシーンというかエロシーンになった途端、一気に「陛下によるエロ実況中継」になってしまうのがツライ。しかもダラダラダラダラ。ヘタすりゃバカップルに見える。攻もベラベラと喋り過ぎ、もっと無口のほうがハーレクインっぽいと思うんだが…どうだろう?
評価:★★★(面白いほうに入る…かな)
秋林好み度:★★★(まあまあ、かな。設定は好きなんだけどね)
17歳の男の子が自分のソレを「蕾」と表現するだろうか?というギモンは残る。ところで、私は今回初めて水上ルイの作品を読んだのだが、エロシーンでクセがあるね、この人。
「……アアッ!……アアッ!……すごい……」
「……くうっ……っ」
エロシーンになると、「三点リーダ×2 あえぎ声 三点リーダ×2」。
(三点リーダ→「…」のこと)
つまり、カギカッコのセリフが「三点リーダ2つで始まって、セリフを挟み、三点リーダ2つで終わる」という法則。ご本人は気付いていないだろう。必ず改行されることもあって、これ、連発されるとものすごーく紙面から浮いて見える。ぱっとページ開くだけで、どこからエロが始まって終わるか、わかってしまう。「ああ、ヤってるヤってる」という感じ。…いいんだか、悪いんだか。
次!
ISBN:4862631908 単行本 リブレ出版 2007/06 ¥1,100
2007年6月19日『エロほんv』と同時発売!!キラキラ表紙が目印!業界騒然!! ボーイズノベルの最強作家陣ここに集まる!小説b-Boyで初登場以降、ありえないほどの人気エッチ企画が、新作書き下ろし6本を加えてアンソロジー化★ 空前絶後のエッチを見よ!
ラインナップ
英田サキ、あさぎり夕、あすま理彩、斑鳩サハラ、和泉 桂、榎田尤利、鬼塚ツヤコ、木原音瀬、南原 兼、水戸 泉、水上ルイ、山藍紫姫子、雪代鞠絵
前口上も終わったことだし、さて感想を書くか!と思ったら、このアンソロジー、13本も掲載されている!しまった…。全部書き上げるまでマジ1週間かかるよ、こりゃ!
【お知らせ】
感想をつらつらと13本並べるのはツライので、1本文につき3本にします。
ただし「これは面白いので感想をスペシャルに書きたい」作品の場合、1本だけのUPにします。
「BLにおける小説と挿絵と惹句は、一蓮托生な関係である」と思っているので、それらについても感想を述べます。
!マジで完全ネタバレ注意報!
■「痴漢電車」 作:鬼塚ツヤコ 扉絵:佐々成美
扉惹句:「満員電車の中、私の体に絡みつく忌まわしい手の正体は……」
オープニング1本目は痴漢電車モノである。年下攻。おおまかなストーリーは「満員電車の中で、若き美貌の国税局官僚が見知らぬ男から陵辱される。ところがその男の正体はなんと…」というもので、キャラが鬼塚ツヤコ得意の「嗜虐的な攻、そんな攻を拒めない自虐的な受」、よって彼女のファンはいつも通りに読めるだろう。
だが私にはつまらなかった。いやだってさ、「子供の頃(攻は小学生、受は中学生)に家庭の事情で別れても、ずーっと受が好きでした」という攻の設定からしてすでに無理があるのに(少女マンガっぽいが)、10数年後に再会し、いきなり受をここぞとばかりに電車で陵辱するか?…受も受だ。「ずっと気になってた」って、そんな10数年も経って再会したばっかりなのに?…もとから嗜虐的な攻というのは共感を得にくい。BLは男性向けより共感を必要とする。ラブにストーリーを求めるからだ。読み手に少しでもその共感を与えようと、ふたりの過去や背景を描いてはいるのだが、全部描こうとしている。そんなの短編では無理だろう。攻の一人称ならまだいいが、受視点の三人称だから余計に苦しい。せっかく短編なんだから、もっとスリリングにキメてくれ!
痴漢電車なんだから(?)無理な背景や過去は余計だ。いっそ受をもとからホモな設定の一人称にして、「好きな同僚(上司でも部下でもいい)と仕事先に向かう満員電車で、痴漢に遭いました。恥ずかしくてたまらないのに、嗚呼!カラダは云うことをきかない。そんな姿を好きな相手に見られるなんて!」ときて、ラストで「実はそいつが!」と、シンプルに持ってきたほうがいいと思うんだけどなあ。
評価:★★(つまらない)
秋林好み度:★★(ニガテ…というより興味ナシ)
同じ「密空間で陵辱、年下攻、ワケありの攻と受」という設定で、このあと素晴らしい出来のスリリングな短編が出てくるだけに、どうしても辛口になってしまう。絵師の佐々成美は上手い。でも、扉絵で完全ネタバレしているのはどうだろう?…誰が触っているかわからない、というところから始まっているので、攻の顔がわからないほうがよかったような…。辱めによって顔の赤い受、そんな受に容赦なく伸ばされる無数の手、誰だかわからない後姿の攻…とかね。惹句は可もなく不可もなく。
次!
■「バッドステータスv発情中」 作:南原兼 扉絵:ホームラン・拳
扉惹句:「かわいいお尻にしっぽをつけてあげる。」
私にとって初南原作品。なんとなく住む世界が違うような気がして、いままで読んだことがなかった。でもたしか、あの伝説のオビ惹句「そう…。そのまま飲みこんで。僕のエクスカリバー…」がついたのは、この人の本だよね?…という話はさておき。
パブリックスクールもの。絵師がホームラン・拳なので、パブリックスクールものでありがちな大人っぽい耽美系ではないはず、だいたい扉惹句からしてヤバイ、もしかしてこれは…と警戒していたが、1行目「お兄様の猫耳」が目に入った瞬間――まったく猫耳属性のない秋林に痛恨の一撃!HP300ダメージ、ステータスはバッドどころがAWFUL!ゲームオーバー!
抵抗もできず、撃沈となった1本。合掌。
評価:★(お好きな人はどうぞ)
秋林好み度:NO STAR(沈没中)
ちゃんと読了はした。猫耳つけててもやることはやるなあ、カワイイのにみんな下半身はたいそうなごリッパ屋だ、という印象。ティミーとかフランシスとか、いろいろソレっぽい名前が出てくるが、My提案として「ジュリアン」というのはどうだろう?……。評価は★としたが、これはヘタというのではなく、純粋に「お好きな人はどうぞ」というもの。南原兼は作風にあった文章を書いている。属性のある人にとっては、逆に上手い作家と云えるんじゃないだろうか。私にとっては「エクスカリバーの人」だが。
次!
■「媚薬」 作:水上ルイ 扉絵:池玲文
扉惹句:「陛下を犯し、欲望を注ぎ込みたい。何度そう思ったことか…!!」
西洋が舞台。馬丁(馬の世話係)×陛下(王様)な下克上モノ。池玲文による扉絵が素晴らしい。西洋コスプレはツボ(だってアタシ西洋史学専攻だったし)。しかも攻の馬丁がまるでアンドレだ!ブラボー!
西洋のコスプレ下克上モノにおける攻の定番は、昔から馬丁か庭師である。「チャタレイ夫人の恋人」のメラーズだって、庭師だ(あ、森番か)。フツーの使用人より馬丁や庭師のほうが、断然ハンキー(逞しくセクシーな男、という意)だからで、攻を陛下の馬丁とした水上ルイはよくわかっているね、うんうん。これでキャラの年齢設定がもうちょっと上の年下攻(本作の設定は攻馬丁が28歳、受陛下が17歳。個人的には攻が20代後半、王様30代前半がストライクだ)だったら、もっとツボだったのだが。あんまりコドモな受はちょっと…。でも13本もある以上、ピッタシカンカンは難しいだろう。ゼイタクは云ってられない。
受の一人称による展開は、人となりと状況が把握しやすいので、短編では効果的だ。臣下による腐敗政治の結果、国は崩壊、明日には敵国に奴隷として差し出される運命の王。その最後の夜、媚薬を盛って相手に思いを遂げたい――というストーリーはありがちではあるが、誰がどのように媚薬を使ったかにヒネリがあって、ナルホドそうきたかとちょっと感心した。
がしかし。ベストかと思われた受一人称がなあ…。ラブシーンというかエロシーンになった途端、一気に「陛下によるエロ実況中継」になってしまうのがツライ。しかもダラダラダラダラ。ヘタすりゃバカップルに見える。攻もベラベラと喋り過ぎ、もっと無口のほうがハーレクインっぽいと思うんだが…どうだろう?
評価:★★★(面白いほうに入る…かな)
秋林好み度:★★★(まあまあ、かな。設定は好きなんだけどね)
17歳の男の子が自分のソレを「蕾」と表現するだろうか?というギモンは残る。ところで、私は今回初めて水上ルイの作品を読んだのだが、エロシーンでクセがあるね、この人。
「……アアッ!……アアッ!……すごい……」
「……くうっ……っ」
エロシーンになると、「三点リーダ×2 あえぎ声 三点リーダ×2」。
(三点リーダ→「…」のこと)
つまり、カギカッコのセリフが「三点リーダ2つで始まって、セリフを挟み、三点リーダ2つで終わる」という法則。ご本人は気付いていないだろう。必ず改行されることもあって、これ、連発されるとものすごーく紙面から浮いて見える。ぱっとページ開くだけで、どこからエロが始まって終わるか、わかってしまう。「ああ、ヤってるヤってる」という感じ。…いいんだか、悪いんだか。
次!
本日の「感想の前口上など」
2007年6月24日 Rotten Sisters!ISBN:4862631908 単行本 リブレ出版 2007/06 ¥1,100
■前口上
業界を震撼させたビブロスの倒産から1年。BL部門がリブレ出版として復活、そのめでたき記念企画本が『エロとじv』である。普段の私であれば完全スルー、タイトルを聞いたら「なんじゃそりゃ!?」のひとことで済ませ、表紙のキラキラ具合にドン引きするだろうが、友人オッシーとの賭けに敗北、その罰ゲームとして「本の店頭購入&ガチンコ感想を書く」ことに。罰ゲームとはいえ、書くと決めた以上は妥協せず、真剣に読んで1本ずつ感想を書きたいと思う。ただし、要する体力と時間、そして文字数がいつもの倍になること必至なため、ちびちび更新になるかもしれない。どうかご容赦を。
尚、「私はこの作家の短編が面白かった!」という方がおられましたら、ぜひご一報を。映画でも小説でも、競作系短編集というものは感想の語り合いが一番楽しいので…って、単にひとりにしないで欲しいだけ…優しく暖かい目、プリーズ。
■作品評価について
★ … お好きな人はどうぞ
★★ … つまらない
★★★ … 面白い
★★★★ … エクセレント、たいへん面白い
★★★★★ … ブリリアント、素晴らしい!
■秋林好み度について
★ … カンベン
★★ … ニガテ
★★★ … まあまあ
★★★★ … なかなか好み
★★★★★ … たいへん好み
■前口上
業界を震撼させたビブロスの倒産から1年。BL部門がリブレ出版として復活、そのめでたき記念企画本が『エロとじv』である。普段の私であれば完全スルー、タイトルを聞いたら「なんじゃそりゃ!?」のひとことで済ませ、表紙のキラキラ具合にドン引きするだろうが、友人オッシーとの賭けに敗北、その罰ゲームとして「本の店頭購入&ガチンコ感想を書く」ことに。罰ゲームとはいえ、書くと決めた以上は妥協せず、真剣に読んで1本ずつ感想を書きたいと思う。ただし、要する体力と時間、そして文字数がいつもの倍になること必至なため、ちびちび更新になるかもしれない。どうかご容赦を。
尚、「私はこの作家の短編が面白かった!」という方がおられましたら、ぜひご一報を。映画でも小説でも、競作系短編集というものは感想の語り合いが一番楽しいので…って、単にひとりにしないで欲しいだけ…優しく暖かい目、プリーズ。
■作品評価について
★ … お好きな人はどうぞ
★★ … つまらない
★★★ … 面白い
★★★★ … エクセレント、たいへん面白い
★★★★★ … ブリリアント、素晴らしい!
■秋林好み度について
★ … カンベン
★★ … ニガテ
★★★ … まあまあ
★★★★ … なかなか好み
★★★★★ … たいへん好み
■『DEADHEAT』
ISBN:4199004254 文庫 英田サキ(挿絵:高階佑) 徳間書店 2007/02 ¥560
本編で1巻の内容を説明してくれるから大丈夫だろうと思い、2巻から読み始めたツワモノな私であるが、マグショットな1巻から、いきなりスーツ姿でFBI特別捜査官とCIA契約エージェントになっているカバー絵のふたりである。次巻(最終巻)はどうなるんだろう?…と思ったら、いきなりミリタリーなふたりになってた。
!以下、マジでネタバレ注意報!
今回はFBIとCIAかあ、英田サキって「惹かれ合ってはいけない立場のふたり」というシチュエーションがとことん好きなのね…と思いつつ手に取った、個人的にいまだ攻の名前に抵抗が残るディック&ユウト「デッドなんちゃら」シリーズにして、当て馬の真打ち登場の第2巻である。
相変わらずストーリーはテンポよく流れていくのだが、FBI特別捜査官になっても、これまた相変わらず「その捜査能力はどうよ?」、恋は盲目状態なユウトには参る。当て馬兼協力者のロブ(以下、教授)だけで解決できそうだ。姫っぷりはカワイイのだが、頼むからもっとしっかりしてくれ!簡単に人を信用してベラベラ喋るな!アナタ、FBIでしょ!?…と云いたくなってしまう。ただし、ラストで決意を新たにコルブス逮捕を誓ってくれたので(理由はやっぱりディック絡みではあるが)、次巻での活躍を期待しよう。
さて。問題はディックである。
「金髪、碧眼、高身長の一見クールビューティ。でも実は好きな相手に甲斐甲斐しい、甘いタイプ」という、たいへんなギャップ持ちのBLウケが良い色男のはずなのに、このシリーズでよく目にする感想といえば、「ネトがステキ♪再登場が嬉しい♪」「ディックより教授のほうがいいんじゃない?」(秋林調べ 6/24現在)。今のところ、ユウトとカラダを合わせねば、読み手にディックの本音が具体的に伝わってこないので、当て馬が魅力的に思えるのは仕方がないと云えるだろう。ただ、海千山千な教授にあれだけ迫られてるくせ、多少フラつきながらも(腐女子はそれが嬉しい)、生殺し且つ袖にし続けるユウトを見ていると、よっぽどディックとは具合が良かったのね、ヤツは上手いんだ、そっかそっか…などと思ってしまう。………。とりあえずディックに関しても、次巻でのさらなる(そっち面以外の)魅力爆発&活躍を期待しよう。
ちなみに、1巻の感想で「攻のキメ台詞(パンチライン)が、私にはなかなかクリーンヒットしない。ジョージ・クルーニーが云ったら、ピッタリくるような台詞が欲しい」と嘆いたのだが、この2巻ではなんと別の場所に見事クリーンヒット!
「チーズピザを頼む。悪いがオリーブオイルを瓶ごとつけてくれ」
コトの真っ最中に電話をし、「オイルをくれ」とルームサービスを要求するディック!
そんなディックに対し、ユウトは――
「本番の前に腹ごしらえ?」
………。
英田センセとディック&ユウトには申し訳ないのだが、どうしてもこらえきれず、終電の中(乗客は私ひとり)で大爆笑してしまった。これはコントなのか!?
せっかく盛り上がっていたところに、オイルが届くまでインターミッションを強いられるのは興ざめだと思うのだが…どうだろう?…若ければアダルトな駆け引きなんて必要ない、俺たちにとってジョージ・クルーニーはオヤジだ、というところか。ただ個人的に、なにゆえチーズピザを選んだのか、ディックに訊きたい。オリーブオイルを丸ごと一瓶なら、チーズピザよりアンチョビピザのほうが自然である。ハナからピザが目的じゃないということを、読者とユウトに知らしめたかったのか。云われなくても、日ごろからオリーブオイルの別利用法ばかり読んでる腐女子は即理解できるだろう、でも当のユウトがあれじゃ…。
キャラクターたちにとっては、ニッチもサッチもいかないデッドヒートな状況を見せる2巻。でも読んでるコッチとしては、なんだか楽しい展開になってきたので、最終巻となる3巻『DEADSHOT』に期待したいと思う。
評価:★★★
好きか嫌いかは別として、BLでは王道なキャラ設定とエピソード展開で定番なのに読ませるなあ、という印象。あと出てきていないのは「媚薬」くらいか。子供っぽいユウトが気になる。キャラ文庫はターゲット年齢層低めだから、それに合わせているだけ?…警察機構を嬉々として書く英田サキの魅力が、それで半減しなければいいけど。
そして、もうひとり気になるキャラが教授。なんつーか、もう登場した時点でフラれるのが決定的だとわかるとゆーか、別所哲也かジェイムズ・マーズデン、という当て馬ぶりを好演しているだけに、主人公カップルより幸せになって欲しい、とつい思ってしまう私である。
NO STAR … 論外/問題外作
★ … お好きな人はどうぞ。
★★ … つまんない。
★★★ … 退屈はしないしけっこう面白い。
★★★★ … 面白い。佳作/秀作。
★★★★★ … 天晴れ。傑作。
ISBN:4199004254 文庫 英田サキ(挿絵:高階佑) 徳間書店 2007/02 ¥560
宿敵コルブスを追えば、いつかディックに会える──。
密かな希望を胸にFBI捜査官に転身したユウト。彼を縛るのは、愛を交しながら決別を選んだCIAのエージェント・ディックへの執着だけだった。
そんなある日、ユウトはついにコルブスに繋がる企業との接触に成功!! ところがそこで変装し別人になり済ましたディックと再会し!?
敵対する二人が燃え上がる刹那──デッドエンドLOVE第2弾!!
本編で1巻の内容を説明してくれるから大丈夫だろうと思い、2巻から読み始めたツワモノな私であるが、マグショットな1巻から、いきなりスーツ姿でFBI特別捜査官とCIA契約エージェントになっているカバー絵のふたりである。次巻(最終巻)はどうなるんだろう?…と思ったら、いきなりミリタリーなふたりになってた。
!以下、マジでネタバレ注意報!
今回はFBIとCIAかあ、英田サキって「惹かれ合ってはいけない立場のふたり」というシチュエーションがとことん好きなのね…と思いつつ手に取った、個人的にいまだ攻の名前に抵抗が残るディック&ユウト「デッドなんちゃら」シリーズにして、当て馬の真打ち登場の第2巻である。
相変わらずストーリーはテンポよく流れていくのだが、FBI特別捜査官になっても、これまた相変わらず「その捜査能力はどうよ?」、恋は盲目状態なユウトには参る。当て馬兼協力者のロブ(以下、教授)だけで解決できそうだ。姫っぷりはカワイイのだが、頼むからもっとしっかりしてくれ!簡単に人を信用してベラベラ喋るな!アナタ、FBIでしょ!?…と云いたくなってしまう。ただし、ラストで決意を新たにコルブス逮捕を誓ってくれたので(理由はやっぱりディック絡みではあるが)、次巻での活躍を期待しよう。
さて。問題はディックである。
「金髪、碧眼、高身長の一見クールビューティ。でも実は好きな相手に甲斐甲斐しい、甘いタイプ」という、たいへんなギャップ持ちのBLウケが良い色男のはずなのに、このシリーズでよく目にする感想といえば、「ネトがステキ♪再登場が嬉しい♪」「ディックより教授のほうがいいんじゃない?」(秋林調べ 6/24現在)。今のところ、ユウトとカラダを合わせねば、読み手にディックの本音が具体的に伝わってこないので、当て馬が魅力的に思えるのは仕方がないと云えるだろう。ただ、海千山千な教授にあれだけ迫られてるくせ、多少フラつきながらも(腐女子はそれが嬉しい)、生殺し且つ袖にし続けるユウトを見ていると、よっぽどディックとは具合が良かったのね、ヤツは上手いんだ、そっかそっか…などと思ってしまう。………。とりあえずディックに関しても、次巻でのさらなる(そっち面以外の)魅力爆発&活躍を期待しよう。
ちなみに、1巻の感想で「攻のキメ台詞(パンチライン)が、私にはなかなかクリーンヒットしない。ジョージ・クルーニーが云ったら、ピッタリくるような台詞が欲しい」と嘆いたのだが、この2巻ではなんと別の場所に見事クリーンヒット!
「チーズピザを頼む。悪いがオリーブオイルを瓶ごとつけてくれ」
コトの真っ最中に電話をし、「オイルをくれ」とルームサービスを要求するディック!
そんなディックに対し、ユウトは――
「本番の前に腹ごしらえ?」
………。
英田センセとディック&ユウトには申し訳ないのだが、どうしてもこらえきれず、終電の中(乗客は私ひとり)で大爆笑してしまった。これはコントなのか!?
せっかく盛り上がっていたところに、オイルが届くまでインターミッションを強いられるのは興ざめだと思うのだが…どうだろう?…若ければアダルトな駆け引きなんて必要ない、俺たちにとってジョージ・クルーニーはオヤジだ、というところか。ただ個人的に、なにゆえチーズピザを選んだのか、ディックに訊きたい。オリーブオイルを丸ごと一瓶なら、チーズピザよりアンチョビピザのほうが自然である。ハナからピザが目的じゃないということを、読者とユウトに知らしめたかったのか。云われなくても、日ごろからオリーブオイルの別利用法ばかり読んでる腐女子は即理解できるだろう、でも当のユウトがあれじゃ…。
キャラクターたちにとっては、ニッチもサッチもいかないデッドヒートな状況を見せる2巻。でも読んでるコッチとしては、なんだか楽しい展開になってきたので、最終巻となる3巻『DEADSHOT』に期待したいと思う。
評価:★★★
好きか嫌いかは別として、BLでは王道なキャラ設定とエピソード展開で定番なのに読ませるなあ、という印象。あと出てきていないのは「媚薬」くらいか。子供っぽいユウトが気になる。キャラ文庫はターゲット年齢層低めだから、それに合わせているだけ?…警察機構を嬉々として書く英田サキの魅力が、それで半減しなければいいけど。
そして、もうひとり気になるキャラが教授。なんつーか、もう登場した時点でフラれるのが決定的だとわかるとゆーか、別所哲也かジェイムズ・マーズデン、という当て馬ぶりを好演しているだけに、主人公カップルより幸せになって欲しい、とつい思ってしまう私である。
NO STAR … 論外/問題外作
★ … お好きな人はどうぞ。
★★ … つまんない。
★★★ … 退屈はしないしけっこう面白い。
★★★★ … 面白い。佳作/秀作。
★★★★★ … 天晴れ。傑作。
■『DEADLOCK』
ISBN:4199004084 文庫 英田サキ(挿絵:高階佑) 徳間書店 2006/09/27 ¥580
端正な描線で人気の絵師・高階佑の手による、美形男ふたりの監獄服マグショット(逮捕時に撮られる写真)、という表紙からもわかるように、本作は刑務所モノである。栗本薫「終わりのないラブソング」(たいへん古くて申し訳ない)、木原音瀬「箱の中」など、本作以外にもBLレーベルの刑務所モノは数あるが、米国のムショが舞台というのは珍しい。海外ドラマ「プリズン・ブレイク」の影響か。ただし、表紙をめくって最初に出てくるカラー口絵からは、刑務所モノというよりヤンキー学園モノという印象を受けてしまうが。
!以下、ほんのりネタバレ注意報!
さまざまな男たちのエゴが渦巻く刑務所。自由を取り戻すため、孤立無援なユウトの捜査が密かにいま幕を開けた――という具合に、海外刑務所モノ定番と云える「狭い空間で圧迫していく密な人物相関」がハードに描かれるのかと思っていたら、登場人物たちはみな信じられないくらい人が良く、人種がどーの言語がこーのといろいろ書かれているわりに、みな日本人的な考え方をするため、舞台が海の向こう、かつムショである必要性があるのか疑問に感じた。がしかし、考えてみれば、青山出版社から出ているようなギャングスタ・ノベル要素を、我がニッポンのBLに求めること自体おかしい話であり、間違っているのは私のほう、ダメじゃんか!>秋林…というわけで、以下、心の底から悔い改めて感想を。
テロリスト探しで必死というより、ムショ内アイドルになっていく過程がメインストーリーかと思うくらい、見事な姫っぷりを見せてくれる主人公ユウトである。有能な麻薬捜査官だったという経歴を裏付ける捜査能力を感じさせてくれないのが、ちょっとツライところか。読んでる側としては、誰がコルブスなのか、キャラクターの立ち位置を見れば簡単にわかってしまう上、トントン拍子で話が進んでいくので、なんだか物足りない。2時間サスペンスのような印象だ。ただ逆に云えば、読者層を選ぶ設定のわりにテンポがよく、主人公が外国人でもジャパニーズアメリカンなので比較的思い入れしやすく、心情吐露かつ説明的な文章は比較的多めで、ラブなエピソードと展開と表現も「どこかで読んだような」印象(別に悪いことじゃない)、意図的に間口を広めにしてある作品と云えるため、キャラ萌えしながらラブを楽しみたい、という人にはオススメだと思う。
ただなあ…BLでは海外の刑務所なんてあんまりお目にかかれない設定だけに、できれば1巻だけで出所/脱獄して欲しくなかった。ユウトが完膚なきまでに打ちのめされ(シャワー室の1件だけでなく)、閉塞感と絶望感、そこから這い上がっていく姿というものが足りなかった。根性を見せて欲しかった。成長が感じられなかった。(私には)甘すぎた。
冤罪で刑務所に放り込まれ、プライドはズタズタ、いったいなにを、そしてだれを信じていいのか。そんな状況下でディックと出会い、牽制しながらも芽生えて燃えた恋はスーパースペシャル、ロマンス的というより運命的だ。だけれども最後まで互いの身上はどうしても明かせない、なぜならそれは――「待て、次巻!」だったら……嗚呼!もっと萌えたのにぃ!
評価:★★★
サクサクっと読める。こーゆーのが売れるんだろうなあ、という印象。書きたいシーンはいろいろあるけれど、削れるところは削って、みんなが読みたいラブシーンはしっかり入れ、1冊にまとめ上げるって作業はタイヘンなんだろうな。そう思うと、「こうしたらいいんじゃないか」「トントン拍子だ」なんて書くのは、悪い気がする。
ただ英田サキ作品で毎回思うのは、攻のキメ台詞(パンチライン)が、私にはなかなかクリーンヒットしないということ。モタついてどーにもキマらない。ジョージ・クルーニーが云ったらピッタリくるような台詞、待ってますから!>英田センセ
ところで。著者のあとがきによると、タイトルの「DEADLOCK」という言葉は、直訳すれば「膠着状態」「行き詰まり」、IT用語では「処理停止」と書かれてあったけれども、タイトルの意味うんぬんの前に、まず攻の名前「ディック」をなんとかして欲しかったと、「三点リーダ+ディック」の連発ページを見るたびに思ってしまう…。
NO STAR … 論外/問題外作
★ … お好きな人はどうぞ。
★★ … つまんない。
★★★ … 退屈はしないしけっこう面白い。
★★★★ … 面白い。佳作/秀作。
★★★★★ … 天晴れ。傑作。
ISBN:4199004084 文庫 英田サキ(挿絵:高階佑) 徳間書店 2006/09/27 ¥580
同僚殺しの冤罪で、刑務所に収監された麻薬捜査官のユウト。監獄から出る手段はただひとつ、潜伏中のテロリストの正体を暴くこと―!!密命を帯びたユウトだが、端整な容貌と長身の持ち主でギャングも一目置く同房のディックは、クールな態度を崩さない。しかも「おまえは自分の容姿を自覚しろ」と突然キスされて…!?囚人たちの欲望が渦巻くデッドエンドLOVE。
端正な描線で人気の絵師・高階佑の手による、美形男ふたりの監獄服マグショット(逮捕時に撮られる写真)、という表紙からもわかるように、本作は刑務所モノである。栗本薫「終わりのないラブソング」(たいへん古くて申し訳ない)、木原音瀬「箱の中」など、本作以外にもBLレーベルの刑務所モノは数あるが、米国のムショが舞台というのは珍しい。海外ドラマ「プリズン・ブレイク」の影響か。ただし、表紙をめくって最初に出てくるカラー口絵からは、刑務所モノというよりヤンキー学園モノという印象を受けてしまうが。
!以下、ほんのりネタバレ注意報!
さまざまな男たちのエゴが渦巻く刑務所。自由を取り戻すため、孤立無援なユウトの捜査が密かにいま幕を開けた――という具合に、海外刑務所モノ定番と云える「狭い空間で圧迫していく密な人物相関」がハードに描かれるのかと思っていたら、登場人物たちはみな信じられないくらい人が良く、人種がどーの言語がこーのといろいろ書かれているわりに、みな日本人的な考え方をするため、舞台が海の向こう、かつムショである必要性があるのか疑問に感じた。がしかし、考えてみれば、青山出版社から出ているようなギャングスタ・ノベル要素を、我がニッポンのBLに求めること自体おかしい話であり、間違っているのは私のほう、ダメじゃんか!>秋林…というわけで、以下、心の底から悔い改めて感想を。
テロリスト探しで必死というより、ムショ内アイドルになっていく過程がメインストーリーかと思うくらい、見事な姫っぷりを見せてくれる主人公ユウトである。有能な麻薬捜査官だったという経歴を裏付ける捜査能力を感じさせてくれないのが、ちょっとツライところか。読んでる側としては、誰がコルブスなのか、キャラクターの立ち位置を見れば簡単にわかってしまう上、トントン拍子で話が進んでいくので、なんだか物足りない。2時間サスペンスのような印象だ。ただ逆に云えば、読者層を選ぶ設定のわりにテンポがよく、主人公が外国人でもジャパニーズアメリカンなので比較的思い入れしやすく、心情吐露かつ説明的な文章は比較的多めで、ラブなエピソードと展開と表現も「どこかで読んだような」印象(別に悪いことじゃない)、意図的に間口を広めにしてある作品と云えるため、キャラ萌えしながらラブを楽しみたい、という人にはオススメだと思う。
ただなあ…BLでは海外の刑務所なんてあんまりお目にかかれない設定だけに、できれば1巻だけで出所/脱獄して欲しくなかった。ユウトが完膚なきまでに打ちのめされ(シャワー室の1件だけでなく)、閉塞感と絶望感、そこから這い上がっていく姿というものが足りなかった。根性を見せて欲しかった。成長が感じられなかった。(私には)甘すぎた。
冤罪で刑務所に放り込まれ、プライドはズタズタ、いったいなにを、そしてだれを信じていいのか。そんな状況下でディックと出会い、牽制しながらも芽生えて燃えた恋はスーパースペシャル、ロマンス的というより運命的だ。だけれども最後まで互いの身上はどうしても明かせない、なぜならそれは――「待て、次巻!」だったら……嗚呼!もっと萌えたのにぃ!
評価:★★★
サクサクっと読める。こーゆーのが売れるんだろうなあ、という印象。書きたいシーンはいろいろあるけれど、削れるところは削って、みんなが読みたいラブシーンはしっかり入れ、1冊にまとめ上げるって作業はタイヘンなんだろうな。そう思うと、「こうしたらいいんじゃないか」「トントン拍子だ」なんて書くのは、悪い気がする。
ただ英田サキ作品で毎回思うのは、攻のキメ台詞(パンチライン)が、私にはなかなかクリーンヒットしないということ。モタついてどーにもキマらない。ジョージ・クルーニーが云ったらピッタリくるような台詞、待ってますから!>英田センセ
ところで。著者のあとがきによると、タイトルの「DEADLOCK」という言葉は、直訳すれば「膠着状態」「行き詰まり」、IT用語では「処理停止」と書かれてあったけれども、タイトルの意味うんぬんの前に、まず攻の名前「ディック」をなんとかして欲しかったと、「三点リーダ+ディック」の連発ページを見るたびに思ってしまう…。
NO STAR … 論外/問題外作
★ … お好きな人はどうぞ。
★★ … つまんない。
★★★ … 退屈はしないしけっこう面白い。
★★★★ … 面白い。佳作/秀作。
★★★★★ … 天晴れ。傑作。
山田ユギの威力
2007年5月15日 Rotten Sisters!
←6月号表紙に新シリーズ掲載。
そして表紙にはでっかい赤文字で――
山田ユギ
そりゃーみんな買いますって、「山田ユギの弁護士モノ」が載ってるならば!
いつもならウチの近所の本屋さんでも、それなりに余ってるはずの「BE×BOY」なのに、この6月号だけはもうありません。もともとBL誌ってのは、「立ち読みするくらいなら買ったほうがよい雑誌」(ビコーズ、そのほうが恥ずかしくないから)。でもこんなに見かけないなんて。
山田ユギの新連載、「働く男」が主人公――そんなの面白いに決まってるじゃありませんか。実際、面白かった……山田ユギは天才だー!
秋に出る「ドア」シリーズの新装版コミックスに入るのかな?…「ドア」1〜2巻はちゃんと持ってますよ、でもこのマンガが入るならば私は絶対に買います。
だって…山田ユギなんだから。
■山田ユギ「夢を見るヒマもない」感想
http://diarynote.jp/d/25683/20070108.html
(ホントにハズレがない…スゴイ人です)
ISBN:B000PMGBGA 雑誌 リブレ出版 2007/05/07 ¥590
そして表紙にはでっかい赤文字で――
山田ユギ
そりゃーみんな買いますって、「山田ユギの弁護士モノ」が載ってるならば!
いつもならウチの近所の本屋さんでも、それなりに余ってるはずの「BE×BOY」なのに、この6月号だけはもうありません。もともとBL誌ってのは、「立ち読みするくらいなら買ったほうがよい雑誌」(ビコーズ、そのほうが恥ずかしくないから)。でもこんなに見かけないなんて。
山田ユギの新連載、「働く男」が主人公――そんなの面白いに決まってるじゃありませんか。実際、面白かった……山田ユギは天才だー!
秋に出る「ドア」シリーズの新装版コミックスに入るのかな?…「ドア」1〜2巻はちゃんと持ってますよ、でもこのマンガが入るならば私は絶対に買います。
だって…山田ユギなんだから。
■山田ユギ「夢を見るヒマもない」感想
http://diarynote.jp/d/25683/20070108.html
(ホントにハズレがない…スゴイ人です)
ISBN:B000PMGBGA 雑誌 リブレ出版 2007/05/07 ¥590
悩める電脳仔羊
2007年5月14日 Rotten Sisters!
←今日、本屋さんで見かけてビックリ。
「Hug」ってナニ?
「大人乙女」ってナニ?
どーやら新しいBL誌なようで、いったいどこが出したの?と思って手にとって見たら――飛鳥新社でした。
旧ビブロス「腐った教師の方程式」「FAKE」の文庫本が、飛鳥新社から出てるのを見て、「へー、そーなんだー。飛鳥新社って桜沢エリカなイメージなのにねー」と思ってたら、こんな雑誌を創刊してくるとは。知らなかったよー。
作家陣を見ると、こだか和麻、真東砂波、そして石原理――ふむ、旧ビブロス「BE×BOY」創刊時を思い出すなあ、マガビー立役者とゆーか、看板作家3名だし――なんて思ってたら、真東砂波がこの「Hug」で、「FAKE」(「FAKE Second Season」)の続編を描いてるときて、また軽いショックを受けちったい。そっかここだったのか。引越しされたよー。
そして個人的に大ニュースだったのは、「石原理『あふれそうなプール』初文庫化、書き下ろしアリ」。
待っててよかった!…嬉しい♪
で、その問題の「Hug」。創刊された以上、やはり中身をチェックしたい、なんてったって私は好奇心いっぱいメフィストタイプだし…と思ったんですケドね、本にシュリンクかかってて、読めなーーーーーい!
雑誌の傾向が気になる…。
マガビー(人気もエロもポップなメジャーBL誌)系?
キャラ(作画力の高い作家を揃えた少女マンガっぽいBL誌)系?
麗人(やばいぐらいにアダルト、痛いくらいにドラマチック!BL誌)系
ピアス(麗人ほどかっ飛んでない、でも大人向け大御所JUNEなBL誌)系?
CRAFT(いい意味で曖昧かつ透明感のあるマンガの多い、ガロ的なBL誌)系?
目指しているのは――どこなの?…CRAFTではないだろう、さすがに。
作家陣が笠井あゆみから沖麻実也まで、とバラエティに富んでる上に、表紙が小林智美なもんだから、余計わかんねーーーーーー!!
ただ表紙左側の作家陣を見ると、なんとなく「麗人」と「ピアス」の中間のように思える。それってつまり、私の好みからはちょっと外れてしまうということか…と云ってるくせに、本棚に竹書房の本があるのはナゼ?。「特集:紫煙」だなんて、素直に「煙草」と書かないあたりに耽美性を感じるし。でも「FAKE」が載ってるんでしょ?…わからん。「大人乙女」ってビミョー。
結局は「買って読んで確かめて、次号で見極めろ」ってことでしょうか。
そうは云ってもなあ…山田ユギが載ってたら買うんだけど。
――さて、どうしよう?
ちなみに、私は作家で選ぶので「このBL誌が好き!」とは云えません。ただ「CRAFT」はいい感じかも?と思ってる…って、がーん。やっぱり私はBL誌でも大洋図書派になるのか。……。「CRAFT」は大洋図書から出ています。
ISBN:B000PTYSTU 雑誌 飛鳥新社 2007/05/12 ¥780
「Hug」ってナニ?
「大人乙女」ってナニ?
どーやら新しいBL誌なようで、いったいどこが出したの?と思って手にとって見たら――飛鳥新社でした。
旧ビブロス「腐った教師の方程式」「FAKE」の文庫本が、飛鳥新社から出てるのを見て、「へー、そーなんだー。飛鳥新社って桜沢エリカなイメージなのにねー」と思ってたら、こんな雑誌を創刊してくるとは。知らなかったよー。
作家陣を見ると、こだか和麻、真東砂波、そして石原理――ふむ、旧ビブロス「BE×BOY」創刊時を思い出すなあ、マガビー立役者とゆーか、看板作家3名だし――なんて思ってたら、真東砂波がこの「Hug」で、「FAKE」(「FAKE Second Season」)の続編を描いてるときて、また軽いショックを受けちったい。そっかここだったのか。引越しされたよー。
そして個人的に大ニュースだったのは、「石原理『あふれそうなプール』初文庫化、書き下ろしアリ」。
待っててよかった!…嬉しい♪
で、その問題の「Hug」。創刊された以上、やはり中身をチェックしたい、なんてったって私は好奇心いっぱいメフィストタイプだし…と思ったんですケドね、本にシュリンクかかってて、読めなーーーーーい!
雑誌の傾向が気になる…。
マガビー(人気もエロもポップなメジャーBL誌)系?
キャラ(作画力の高い作家を揃えた少女マンガっぽいBL誌)系?
麗人(やばいぐらいにアダルト、痛いくらいにドラマチック!BL誌)系
ピアス(麗人ほどかっ飛んでない、でも大人向け大御所JUNEなBL誌)系?
CRAFT(いい意味で曖昧かつ透明感のあるマンガの多い、ガロ的なBL誌)系?
目指しているのは――どこなの?…CRAFTではないだろう、さすがに。
作家陣が笠井あゆみから沖麻実也まで、とバラエティに富んでる上に、表紙が小林智美なもんだから、余計わかんねーーーーーー!!
ただ表紙左側の作家陣を見ると、なんとなく「麗人」と「ピアス」の中間のように思える。それってつまり、私の好みからはちょっと外れてしまうということか…と云ってるくせに、本棚に竹書房の本があるのはナゼ?。「特集:紫煙」だなんて、素直に「煙草」と書かないあたりに耽美性を感じるし。でも「FAKE」が載ってるんでしょ?…わからん。「大人乙女」ってビミョー。
結局は「買って読んで確かめて、次号で見極めろ」ってことでしょうか。
そうは云ってもなあ…山田ユギが載ってたら買うんだけど。
――さて、どうしよう?
ちなみに、私は作家で選ぶので「このBL誌が好き!」とは云えません。ただ「CRAFT」はいい感じかも?と思ってる…って、がーん。やっぱり私はBL誌でも大洋図書派になるのか。……。「CRAFT」は大洋図書から出ています。
ISBN:B000PTYSTU 雑誌 飛鳥新社 2007/05/12 ¥780
ISBN:4813011276 新書 松田美優(挿絵:奈良千春) 大洋図書 2006/04/24 ¥903
とりあえず今は画像だけ。
ちびちび書いてきます。
■『交渉人は黙らない』『犬ほど素敵な商売はない』の感想を書き上げました。
とりあえず今は画像だけ。
ちびちび書いてきます。
■『交渉人は黙らない』『犬ほど素敵な商売はない』の感想を書き上げました。
■『ラブシック』
ISBN:4062559218 文庫 橘紅緒(挿絵:笹上) 講談社 2006/12/02 ¥609
表紙カバー絵に、万年青コーナー腐女子も完全ノックアウト、よろよろよろよろ…(中略)めいて、密林ポチリにて購入。表紙は男ふたりでも、あまりベタベタしない構図にクールでシブイ配色、タイトル文字はシンプルにキメた白ゴシック体で、明朝体を選択していないところが素晴らしい。実に心憎いデザインだ。最近こーゆーのが少ないからホント貴重。←でリンクしているはゆたさん同様、私も「イラストは無きゃ無いで読みますが、あるとどうしても色々と左右されがちです」なため、装丁だけなら文句ナシ★★★★★。挿絵担当の笹上さんって初めて見るけど、「スクリーントーン多めの高階佑」という感じで、なかなか良い。いい人を見つけてくれたよ、ありがとう!>講談社
!以下、ネタバレ注意報!
…と、装丁のホメはさておき。あらすじに目を通すと、なにやらたいへんせつない恋物語のようだったので、そーゆーのが大好きな私は、イラストによる相乗効果もあり、かなり期待して読み始めたのだが、攻氏の万里(ばんり)がなあ…。リッチで生活感がなく、外国の血が入っている美しい優男という設定は、(好みではないけど)まあいいとして、「…なの?」「…ってこと?」などと、会話がほとんど疑問形で進むもんだから、え〜い!このオレ様がキサマに日本語を教えてやる!と、終始イライライライラ…(中略)イラ。イラついては落ち着いてエロも読めないということを教えてくれた1本である。
がしかし、つかみどころがないフシギちゃん優男がなにより好物で、そんな攻に傷つけられながら振り回されてしまう受、というシチュエーションが好きな人には、ストライクゾーンど真ん中といえるので、オススメしておこう。
ストーリーを簡単に云ってしまうと、「当て馬を投げられたのに、いつの間にか好きになってしまった」系か。ただし、主人公・朗(ロウ)の姉でキーパーソンでもあるはずの奈帆の描写が甘く(彼女のイラストすらない!)、BLにありがちな「女に魅力がない」ため、いっそのこと姉ではなく兄という設定のほうがよかったのでは?…せっかくBLなんだし。
あとたいへん残念なのは、一度別れたふたりの間に流れた時間が短すぎるため、朗のせつなさが心に響かないこと。「一年前に出逢い、あっという間に恋に落ちた」ふたり。でもその恋は8ヶ月しか持たず、冒頭の再会シーンから4ヶ月前に終わっていた…って、そんな、たった4ヶ月後に再会って短すぎるでしょ!…せめて1年、できれば2〜3年、5年以上でもいい。たった4ヶ月では、再会シーン後に描かれるであろう「このふたりの過去にいったいなにがあったのか」「再び恋に落ちるのか」に、興味(いや、「萌え」か)が薄れる。再会も出会ったときと同じクリスマスにしたいのはわかる、でもそれは別れて何年後かでもいいはずで、「あの年のクリスマスも〜」と出だしたほうが、胸キュンだと思うんだが。金持ちのボンである朗がホストになってしまうほど(源氏名でなく本名でホストやってるなんて信じられないけど)、ふたりの間にはなにかあったはず。おかげで、フラッシュバックを狙っただろう時間軸を前後させた文章も、その効果がさほど感じられない。もったいない。
あの頃は若かった、でもいろいろ経験して大人になった、そして再会。ふたりの間に流れた時間が、二度目の恋にせつなさを与える――たとえ攻がフシギちゃん優男でも、そんな風に描いてくれたらば、また別の印象や評価を持ったと思う。
評価:★★☆
「つまんない」とは云えない…けど、面白いとも云えない。「もうちょっとなんとかなったのでは?」という印象。でもこれはこれでいいのかもしれない。せつなさに基準はないのだから。
NO STAR … 論外/問題外作
★ … お好きな人はどうぞ。
★★ … つまんない。
★★★ … 退屈はしないしけっこう面白い。
★★★★ … 面白い。佳作/秀作。
★★★★★ … 天晴れ。傑作。
ISBN:4062559218 文庫 橘紅緒(挿絵:笹上) 講談社 2006/12/02 ¥609
「俺はあんたのなに?」ボーイズバーで働く奥菜朗の前に、客と一緒に現れた男は、朗が夏に別れた恋人、赤穂万里だった。一年前に出逢い、あっという間に恋に落ちた。魅力的なぶん、厄介な相手だとわかっていても、気持ちを止めることはできなかった。とてもとても好きで、夢中だった。そう、万里のてひどい裏切りを知るまでは…。ほろ苦く、そして甘い恋の物語、ついに登場。注:たいへん長くなってしまったので、「ダイジェスト」を外しました。
表紙カバー絵に、万年青コーナー腐女子も完全ノックアウト、よろよろよろよろ…(中略)めいて、密林ポチリにて購入。表紙は男ふたりでも、あまりベタベタしない構図にクールでシブイ配色、タイトル文字はシンプルにキメた白ゴシック体で、明朝体を選択していないところが素晴らしい。実に心憎いデザインだ。最近こーゆーのが少ないからホント貴重。←でリンクしているはゆたさん同様、私も「イラストは無きゃ無いで読みますが、あるとどうしても色々と左右されがちです」なため、装丁だけなら文句ナシ★★★★★。挿絵担当の笹上さんって初めて見るけど、「スクリーントーン多めの高階佑」という感じで、なかなか良い。いい人を見つけてくれたよ、ありがとう!>講談社
!以下、ネタバレ注意報!
…と、装丁のホメはさておき。あらすじに目を通すと、なにやらたいへんせつない恋物語のようだったので、そーゆーのが大好きな私は、イラストによる相乗効果もあり、かなり期待して読み始めたのだが、攻氏の万里(ばんり)がなあ…。リッチで生活感がなく、外国の血が入っている美しい優男という設定は、(好みではないけど)まあいいとして、「…なの?」「…ってこと?」などと、会話がほとんど疑問形で進むもんだから、え〜い!このオレ様がキサマに日本語を教えてやる!と、終始イライライライラ…(中略)イラ。イラついては落ち着いてエロも読めないということを教えてくれた1本である。
がしかし、つかみどころがないフシギちゃん優男がなにより好物で、そんな攻に傷つけられながら振り回されてしまう受、というシチュエーションが好きな人には、ストライクゾーンど真ん中といえるので、オススメしておこう。
ストーリーを簡単に云ってしまうと、「当て馬を投げられたのに、いつの間にか好きになってしまった」系か。ただし、主人公・朗(ロウ)の姉でキーパーソンでもあるはずの奈帆の描写が甘く(彼女のイラストすらない!)、BLにありがちな「女に魅力がない」ため、いっそのこと姉ではなく兄という設定のほうがよかったのでは?…せっかくBLなんだし。
あとたいへん残念なのは、一度別れたふたりの間に流れた時間が短すぎるため、朗のせつなさが心に響かないこと。「一年前に出逢い、あっという間に恋に落ちた」ふたり。でもその恋は8ヶ月しか持たず、冒頭の再会シーンから4ヶ月前に終わっていた…って、そんな、たった4ヶ月後に再会って短すぎるでしょ!…せめて1年、できれば2〜3年、5年以上でもいい。たった4ヶ月では、再会シーン後に描かれるであろう「このふたりの過去にいったいなにがあったのか」「再び恋に落ちるのか」に、興味(いや、「萌え」か)が薄れる。再会も出会ったときと同じクリスマスにしたいのはわかる、でもそれは別れて何年後かでもいいはずで、「あの年のクリスマスも〜」と出だしたほうが、胸キュンだと思うんだが。金持ちのボンである朗がホストになってしまうほど(源氏名でなく本名でホストやってるなんて信じられないけど)、ふたりの間にはなにかあったはず。おかげで、フラッシュバックを狙っただろう時間軸を前後させた文章も、その効果がさほど感じられない。もったいない。
あの頃は若かった、でもいろいろ経験して大人になった、そして再会。ふたりの間に流れた時間が、二度目の恋にせつなさを与える――たとえ攻がフシギちゃん優男でも、そんな風に描いてくれたらば、また別の印象や評価を持ったと思う。
評価:★★☆
「つまんない」とは云えない…けど、面白いとも云えない。「もうちょっとなんとかなったのでは?」という印象。でもこれはこれでいいのかもしれない。せつなさに基準はないのだから。
NO STAR … 論外/問題外作
★ … お好きな人はどうぞ。
★★ … つまんない。
★★★ … 退屈はしないしけっこう面白い。
★★★★ … 面白い。佳作/秀作。
★★★★★ … 天晴れ。傑作。
■『愛され過ぎて孤独』
ISBN:4813008909 新書 剛しいら(挿絵:新田祐克) 大洋図書 2002/05 ¥903
新田祐克による表紙絵が素晴らしい。絶対的な母親を亡くした3人兄弟(ひとりには血の繋がりがない)+親代わり1人という、複雑な家族形態を持つ4人の男。それぞれが持つベクトルはバラバラだが、次第に交錯していく――というのを、キャラの表情と構図だけで予感させる。次男・千尋の髪の流れ具合が、海から吹いてくる風を感じさせるあたりもまた絶妙。さすが一枚絵の巨匠、グッジョブだ!…というわけで、これまた挿絵にそそられ、続編『愛し過ぎた至福』とともに密林ポチリ購入。ただし、剛しいらにも興味があったと記しておく。
!以下、ネタバレ注意報!
いわゆる兄弟モノ。なおかつ、三男(血の繋がりナシ)×長男、親代わり(血の繋がりナシ)×次男…つまり一家総ホモ。正直、涙が出そうになったが、ぐっとこらえて読み進めることができたのは、書き手が剛しいらであり、彼女の作風らしく、主要キャラたちが四六時中、恋愛オンリーであっぷあっぷしてるのではなく、4人それぞれがそれぞれの形と模様で持っている「海」「家族」「サーフィン」「湘南」への思いが伝わってきて、ごく一般の青春小説のように感じられたからなんだと思う。この私にGO WESTのアルバム(サザンは持ってないのよ…ゴメン)を引っ張り出させたほど、(ラブシーン以外は)爽やかな気持ちでいられた――後半、クライマックスまでは。
!以下、ディープにネタバレ注意!
クライマックスで、死んだ母と行方不明の父の謎、三男を引き取った背景が明らかになるのだが、あんまりにも突飛すぎて、頭の中が真っ白。涼の継母が深海と千尋の実父(!)…って、そんなのアリ?どーしてそんな設定にする!?なんでなんでなんでなんで!?…ナゼの嵐に吹っ飛ばされ、ビッグウェーブにさらわれ、頭の中は真っ白だ。理解するまで頭が回らず、人物相関図を書こうかと思ったくらい。あー…ベタだけど感傷的な『愛され過ぎて孤独』なんてタイトルも、雰囲気が出てていい感じだと思ったのに…そんなオチさえなければなあ…トホホ。一気に冷めたよ。『愛され過ぎて孤独』というより『驚かされ過ぎて呆然』だ。「マーは人魚」に1票。
評価:★★★
それにしても問題は次男の千尋だ。いくら血が繋がらないからと云っても、弟に「深海(長男)を抱きたいなら抱いちまえ」と、フツーけしかけるか?…倫理と常識と節度がぶっ飛んでる。あ、だから挿絵が新田祐克なのか。そっかそっか。なんだか千尋が香藤(『春抱き』)に見えてきたよ。
■『愛し過ぎた至福』
ISBN:4813000975 新書 剛しいら(挿絵:新田祐克) 大洋図書 2003/02 ¥903
前作の「グルーヴィング・ラブ」が、本作では「ディープ・ラブ」になってる(あらすじより)。まあ、たしかにディープな関係だ。滅多にない。
!以下、ほんのりネタバレ注意報!
…というわけで、爽やかな気分はどこへやら、すっかり別の波にさらわれてしまった観のある続編。今度は「深海と千尋の母親が、どうやってあの父親と子をもうけたのかの謎」が明かされたらどうしよう…と心配になり、本気でページをめくる指に迷いが出た。私も小心者である。結局それは杞憂で終わって、なんとか読了できたけど。
うんうん、かわいいね、千尋が。バカで。剛さん、香藤が完全憑依した千尋を書いてるよ。キュートでラブリーだ。私は涼×深海より大樹×千尋派なので嬉しい。千尋に持っていかれたことによって、ラストが救われた1冊。
評価:★★★
あ〜参った、参った。こんな目に遭うなんて。だからBLは止められないってもんだ!
NO STAR … 論外/問題外作
★ … お好きな人はどうぞ。
★★ … つまんない。
★★★ … 退屈はしないしけっこう面白い。
★★★★ … 面白い。佳作/秀作。
★★★★★ … 天晴れ。傑作。
ISBN:4813008909 新書 剛しいら(挿絵:新田祐克) 大洋図書 2002/05 ¥903
「おれだけのものだ。誰にも渡さない」歯科医を目指す大学生・深海は海辺の家にプロサーファーの次男・千尋、複雑な事情を持つ高校生の三男・涼と暮らしていた。家族の中心であった母親を亡くして以来、どこか危うい雰囲気のなか、三人は漠然とした不安と焦燥を抱えていた。そして、そんな三人を兄のように見守る大樹。危うい均衡を保っていたある日、千尋が涼をそそのかした。深海を抱きたいなら抱いちまえ、と。男たちの狂おしい恋を描いたグルーヴィング・ラブ、鮮烈に登場。
新田祐克による表紙絵が素晴らしい。絶対的な母親を亡くした3人兄弟(ひとりには血の繋がりがない)+親代わり1人という、複雑な家族形態を持つ4人の男。それぞれが持つベクトルはバラバラだが、次第に交錯していく――というのを、キャラの表情と構図だけで予感させる。次男・千尋の髪の流れ具合が、海から吹いてくる風を感じさせるあたりもまた絶妙。さすが一枚絵の巨匠、グッジョブだ!…というわけで、これまた挿絵にそそられ、続編『愛し過ぎた至福』とともに密林ポチリ購入。ただし、剛しいらにも興味があったと記しておく。
!以下、ネタバレ注意報!
いわゆる兄弟モノ。なおかつ、三男(血の繋がりナシ)×長男、親代わり(血の繋がりナシ)×次男…つまり一家総ホモ。正直、涙が出そうになったが、ぐっとこらえて読み進めることができたのは、書き手が剛しいらであり、彼女の作風らしく、主要キャラたちが四六時中、恋愛オンリーであっぷあっぷしてるのではなく、4人それぞれがそれぞれの形と模様で持っている「海」「家族」「サーフィン」「湘南」への思いが伝わってきて、ごく一般の青春小説のように感じられたからなんだと思う。この私にGO WESTのアルバム(サザンは持ってないのよ…ゴメン)を引っ張り出させたほど、(ラブシーン以外は)爽やかな気持ちでいられた――後半、クライマックスまでは。
!以下、ディープにネタバレ注意!
クライマックスで、死んだ母と行方不明の父の謎、三男を引き取った背景が明らかになるのだが、あんまりにも突飛すぎて、頭の中が真っ白。涼の継母が深海と千尋の実父(!)…って、そんなのアリ?どーしてそんな設定にする!?なんでなんでなんでなんで!?…ナゼの嵐に吹っ飛ばされ、ビッグウェーブにさらわれ、頭の中は真っ白だ。理解するまで頭が回らず、人物相関図を書こうかと思ったくらい。あー…ベタだけど感傷的な『愛され過ぎて孤独』なんてタイトルも、雰囲気が出てていい感じだと思ったのに…そんなオチさえなければなあ…トホホ。一気に冷めたよ。『愛され過ぎて孤独』というより『驚かされ過ぎて呆然』だ。「マーは人魚」に1票。
評価:★★★
それにしても問題は次男の千尋だ。いくら血が繋がらないからと云っても、弟に「深海(長男)を抱きたいなら抱いちまえ」と、フツーけしかけるか?…倫理と常識と節度がぶっ飛んでる。あ、だから挿絵が新田祐克なのか。そっかそっか。なんだか千尋が香藤(『春抱き』)に見えてきたよ。
■『愛し過ぎた至福』
ISBN:4813000975 新書 剛しいら(挿絵:新田祐克) 大洋図書 2003/02 ¥903
「愛してるよ、…だから自由にしてやる」海のそばの大空歯科医院の次男・千尋が子供の頃から片恋していた相手・大樹と恋人関係になって数ヶ月。だが、ふたりの関係は微妙なものになっていた。体の関係もこのところ途絶えている。大樹がおれの気持ちに応えてくれたのは、恋からじゃないのかも…大樹が大切だからこそ別れなくてはならない。そう心に決めた千尋だが…!?一方、大空家の長男・深海と血の繋がらない弟・涼の恋はさらに絆を強めていくのだが、思いがけない事が起きて…熱い男たちのディープラブ。
前作の「グルーヴィング・ラブ」が、本作では「ディープ・ラブ」になってる(あらすじより)。まあ、たしかにディープな関係だ。滅多にない。
!以下、ほんのりネタバレ注意報!
…というわけで、爽やかな気分はどこへやら、すっかり別の波にさらわれてしまった観のある続編。今度は「深海と千尋の母親が、どうやってあの父親と子をもうけたのかの謎」が明かされたらどうしよう…と心配になり、本気でページをめくる指に迷いが出た。私も小心者である。結局それは杞憂で終わって、なんとか読了できたけど。
うんうん、かわいいね、千尋が。バカで。剛さん、香藤が完全憑依した千尋を書いてるよ。キュートでラブリーだ。私は涼×深海より大樹×千尋派なので嬉しい。千尋に持っていかれたことによって、ラストが救われた1冊。
評価:★★★
あ〜参った、参った。こんな目に遭うなんて。だからBLは止められないってもんだ!
NO STAR … 論外/問題外作
★ … お好きな人はどうぞ。
★★ … つまんない。
★★★ … 退屈はしないしけっこう面白い。
★★★★ … 面白い。佳作/秀作。
★★★★★ … 天晴れ。傑作。
■『犬ほど素敵な商売はない』
ISBN:4813011322 新書 榎田尤利(挿絵:志水ゆき) 大洋図書 2006/06/26 ¥903
大洋図書(SHYノベルズ)より上梓の榎田尤利2006年度作品。「また大洋図書?そこばっかり読んでない?」と云われそうだが、そんなことはない。面白そうだなとポチったら、たまたまSHYノベルズだっただけの話である。48130が大洋図書発行物のISBN-10を示している(4が日本、8130が大洋図書)、とは覚えてしまったが。
鞭、首輪、調教、男娼、屈辱、羞恥、SM、コンプレックス…と書くと、「愛にはいろんなカタチがある」「共依存愛」といった使い古されたキャプションや惹句がつきそうな、たいへんアダルト路線のハード系BLに思える。が、読んでみると、榎田尤利+志水ゆき(挿絵)というコラボから期待できるように、また、表紙絵が黒紫系ではなく、白系であることからも予想がつくように、たいへん甘い内容だった。
!以下、ネタバレ注意報!
ストーリーを簡単に云ってしまうと、「愛に執着する攻(轡田)と愛を知らない受(倖生)による、カタワレ探し」。調教はあくまでも素材であり、描かれるのは不器用な純愛。映画「セクレタリー」のBL版かもしれない(違うのは、轡田が相手を思い過ぎてしまうところか)。「犬」になりながらも愛を求め、次第に「人間」となっていく倖生の姿は感動的だ。轡田の狂おしいまでにひたむきな愛も胸を衝く。そのあたりがBLらしい、腐女子の求めるせつなさである。とても甘い(手ぬるいというのではなく、純粋にスウィートという意)。特殊な素材でどう調理すればいいのか、さじ加減はどれくらいなのか――この絶妙な味は榎田尤利だからこそ出せるのだと思う。ぜひともレシピが知りたいものだ。
ただし後半…というか終わりごろ、倖生の前で暁彦が過去を語り出すくだりが唐突で、なおかつ露骨に説明的である。暁彦が語ったほうがたしかにわかりやすい、でも本作は台詞からト書き、行間に至るまでリズムが命な作品だと思うので、均衡を保つため、もう少し違う展開でもよかったかなと思う。個人的にはラストシーンの演出が甘くどく、ラブラブ過ぎるのだが――たぶん腐女子にはそれが一般的にウケるのだろう。榎田尤利は、そのあたりの味付けをよく知っている作家だ。
評価:★★★★
作家名は「榎田尤利」(えだ・ゆうり)。30人中1人くらいの割合で「榎田犬利」(えのきだ・いぬとし)と書かれてしまうんじゃないかと思ったので、念のため。
通挿絵の担当が、いつどのように決まるのかは知らないのだが、作品のイメージに合わせてイラストレーターが決まるというより、榎田作品の場合、榎田尤利がイラストレーターに合わせて書いているんじゃないかと思ってしまうのは、出来不出来や好みは別として、なんでも書けてしまう作家という印象からか。私も彼女が書くというならアラブでも手に取る。その際、挿絵担当は、(画伯が無理なら)さいとうちほでよろしく。
NO STAR … 論外/問題外作
★ … お好きな人はどうぞ。
★★ … つまんない。
★★★ … 退屈はしないしけっこう面白い。
★★★★ … 面白い。佳作/秀作。
★★★★★ … 天晴れ。傑作。
ISBN:4813011322 新書 榎田尤利(挿絵:志水ゆき) 大洋図書 2006/06/26 ¥903
悪い子だ。発情してしまったのか?自覚のあるろくでなし・三浦倖生は、うだるように暑い夏のある日、会員制のデートクラブ『Pet Lovers』から『犬』として、寡黙で美しい男・轡田の屋敷に派遣される。そこで倖生を待っていたのは厳格な主人・轡田の厳しい躾の日々だった。人でありながら犬扱いされることへの屈辱と羞恥。そして、身体の奥底に感じる正体不明の熱…。次第に深みにはまっていくふたりだったが!?究極のコンプレックス・ラブ。
大洋図書(SHYノベルズ)より上梓の榎田尤利2006年度作品。「また大洋図書?そこばっかり読んでない?」と云われそうだが、そんなことはない。面白そうだなとポチったら、たまたまSHYノベルズだっただけの話である。48130が大洋図書発行物のISBN-10を示している(4が日本、8130が大洋図書)、とは覚えてしまったが。
鞭、首輪、調教、男娼、屈辱、羞恥、SM、コンプレックス…と書くと、「愛にはいろんなカタチがある」「共依存愛」といった使い古されたキャプションや惹句がつきそうな、たいへんアダルト路線のハード系BLに思える。が、読んでみると、榎田尤利+志水ゆき(挿絵)というコラボから期待できるように、また、表紙絵が黒紫系ではなく、白系であることからも予想がつくように、たいへん甘い内容だった。
!以下、ネタバレ注意報!
ストーリーを簡単に云ってしまうと、「愛に執着する攻(轡田)と愛を知らない受(倖生)による、カタワレ探し」。調教はあくまでも素材であり、描かれるのは不器用な純愛。映画「セクレタリー」のBL版かもしれない(違うのは、轡田が相手を思い過ぎてしまうところか)。「犬」になりながらも愛を求め、次第に「人間」となっていく倖生の姿は感動的だ。轡田の狂おしいまでにひたむきな愛も胸を衝く。そのあたりがBLらしい、腐女子の求めるせつなさである。とても甘い(手ぬるいというのではなく、純粋にスウィートという意)。特殊な素材でどう調理すればいいのか、さじ加減はどれくらいなのか――この絶妙な味は榎田尤利だからこそ出せるのだと思う。ぜひともレシピが知りたいものだ。
ただし後半…というか終わりごろ、倖生の前で暁彦が過去を語り出すくだりが唐突で、なおかつ露骨に説明的である。暁彦が語ったほうがたしかにわかりやすい、でも本作は台詞からト書き、行間に至るまでリズムが命な作品だと思うので、均衡を保つため、もう少し違う展開でもよかったかなと思う。個人的にはラストシーンの演出が甘くどく、ラブラブ過ぎるのだが――たぶん腐女子にはそれが一般的にウケるのだろう。榎田尤利は、そのあたりの味付けをよく知っている作家だ。
評価:★★★★
作家名は「榎田尤利」(えだ・ゆうり)。30人中1人くらいの割合で「榎田犬利」(えのきだ・いぬとし)と書かれてしまうんじゃないかと思ったので、念のため。
通挿絵の担当が、いつどのように決まるのかは知らないのだが、作品のイメージに合わせてイラストレーターが決まるというより、榎田作品の場合、榎田尤利がイラストレーターに合わせて書いているんじゃないかと思ってしまうのは、出来不出来や好みは別として、なんでも書けてしまう作家という印象からか。私も彼女が書くというならアラブでも手に取る。その際、挿絵担当は、(画伯が無理なら)さいとうちほでよろしく。
NO STAR … 論外/問題外作
★ … お好きな人はどうぞ。
★★ … つまんない。
★★★ … 退屈はしないしけっこう面白い。
★★★★ … 面白い。佳作/秀作。
★★★★★ … 天晴れ。傑作。
■『交渉人は黙らない』
ISBN:4813011470 新書 榎田尤利(挿絵:奈良千春) 大洋図書 2007/02/23 ¥903
挿絵が奈良千春画伯!出版元が大洋図書(SHYノベルズ)!
…とくれば、やはりまたヤクザなのか?…でもいいかげんヤクザは飽きてきたんだよな、かといって画伯でアラブなんてないだろうし…と、一瞬いろいろな思いが頭の中を駆け巡ったが、よくよく見れば、書き手は榎田尤利。意味なく無体なことはしない作家だし、絵師はたしかに画伯でも、表紙の肌色率は低く(重要ポイントだ!)、凛々しいスーツ男がキリリと立っている。なによりタイトルからしてダーク系ヤクザものとは思えない。リーマンか弁護士か?…否、受が交渉人(ネゴシエーター)で、攻がベンツではなくカローラに乗っている(!)ヤクザという、ちょっと毛色の変わったカップリングによるコメディタッチな仕事人ものだった…って、結局ヤクザは出てくるか。
私も芽吹と同じで、ネゴシエーターなら真下正義よりサミュエル・L・ジャクソン(映画「交渉人」)であるが、BLで主役を張ってるのは初めて見た。ネゴシエーター(以下、ネゴ屋)なんてIQ高の駆け引き上手な腹芸職人は、読み手を唸らすほど弁が立ち、説得力のあるキャラが書けないと、確実にボロが出る設定である。だが榎田尤利、見事やってのけた。しかも本編はそのネゴ屋・芽吹による一人称。じーさん視点の三人称から始まり、す〜っと芽吹の一人称へ。そして芽吹の一人称から、これまたす〜っとキヨ視点の三人称エピローグへ。三人称を加えて角度を変えることにより、芽吹の人となりが深く知れる。素晴らしい。榎田尤利の榎田尤利たる所以か。さすが、その実力・文章力においてはBL界(ほぼ)トップ、上から数えたほうが確実に早い人気作家である。
!以下、ほんのりネタバレ注意報!
主人公に据えられた芽吹は、愛や恋が体にすぐさま直結する10〜20代の若者でなく、メロウな愛染かつら時代を過ごした経験もない、ワケありで「ラブより仕事」な30代。交渉中は喋りまくるが、その喋りは頭の中でも同じなようで、ヤクザとして再会した兵頭との過去からラブシーンまで、読み手に実況中継するかのごとく、一人称で語りまくる(頭の中で)。その思考とスピードと分析力は、妄想癖を取り除いた村上くん(『東京大学物語』江川達也)レベル、まさに「交渉人は黙らない」だ。兵頭と絡んでいる最中でも、よくあれだけ教えてくれる…とゆーか考えられるな、感心する。
コメディなので、芽吹と兵頭の会話にテンポがあって楽しい。夫婦漫才のようだ。兵頭は、BLにありがちな、やたらと容姿端麗なだけの経済ヤクザではなく、頭はいいが実は高校時代の恋を引きずる不器用なヤクザ。恋に不器用な年下攻ヤクザに、仕事以外は不器用な受ネゴ屋――実にウキウキとヤキモキさせてくれるふたりである。年下攻と不器用ラブはツボだし、女々しくない受というのも好感度は高い。ただ、全体的にエピソードがギュウギュウ詰めであることは否めず、急ぎすぎてもったいない印象がある。続編を考えていないのか、考えられていないのかはわからないが、キヨやさゆりさんや兵頭の舎弟など脇キャラも立っていて、このままにしておくには惜しい。どちらにしろ、続編希望だ。兵頭とのラブな展開、芽吹の仕事っぷりはもっと読みたい。追記:続編は来年の秋だそーです。来年?2008年ってこと?…遠ひ…。
評価:★★★★☆
ヤクザが出てくる作品だが、他人に見られたら心底マズい「人目注意報」発令なカラー口絵はなく、本編中の挿絵数点においては、ほのぼのさすら感じられ、「奈良画伯でほのぼの?うわ〜ん、何年ぶりかしら♪」と、泣きそうになるくらい感動した。その喜びで胸いっぱいのまま読み進めていたところ、最後の最後で画伯入魂のクリップ止め必至カット登場。別の感情から泣きそうになった。奈良画伯の奈良画伯たる所以か(画伯がシャンピニョン系でないことを願う)。うおおおおおお!!油断してしまったあああああーーっ!!…これから本作をお読みになるご予定の方、電車の中などではご注意を。
NO STAR … 論外/問題外作
★ … お好きな人はどうぞ。
★★ … つまんない。
★★★ … 退屈はしないしけっこう面白い。
★★★★ … 面白い。佳作/秀作。
★★★★★ … 天晴れ。傑作。
ISBN:4813011470 新書 榎田尤利(挿絵:奈良千春) 大洋図書 2007/02/23 ¥903
「あんたは…俺のオンナにふさわしい」
元検事で元弁護士、その上美貌と才能まで持ち合わせた男、芽吹章は暴力・脅迫・強制この三つが反吐が出るほど大嫌いだ。弱き立場の人を救うため、国際紛争と嫁姑問題以外はなんでもござれの交渉人として、「芽吹ネゴオフィス」を経営している。そんなある日、芽吹の前に一人の男が現れた。しかもヤクザになって!!
兵頭寿悦…できることなら、二度と会いたくない男だった…!
挿絵が奈良千春画伯!出版元が大洋図書(SHYノベルズ)!
…とくれば、やはりまたヤクザなのか?…でもいいかげんヤクザは飽きてきたんだよな、かといって画伯でアラブなんてないだろうし…と、一瞬いろいろな思いが頭の中を駆け巡ったが、よくよく見れば、書き手は榎田尤利。意味なく無体なことはしない作家だし、絵師はたしかに画伯でも、表紙の肌色率は低く(重要ポイントだ!)、凛々しいスーツ男がキリリと立っている。なによりタイトルからしてダーク系ヤクザものとは思えない。リーマンか弁護士か?…否、受が交渉人(ネゴシエーター)で、攻がベンツではなくカローラに乗っている(!)ヤクザという、ちょっと毛色の変わったカップリングによるコメディタッチな仕事人ものだった…って、結局ヤクザは出てくるか。
私も芽吹と同じで、ネゴシエーターなら真下正義よりサミュエル・L・ジャクソン(映画「交渉人」)であるが、BLで主役を張ってるのは初めて見た。ネゴシエーター(以下、ネゴ屋)なんてIQ高の駆け引き上手な腹芸職人は、読み手を唸らすほど弁が立ち、説得力のあるキャラが書けないと、確実にボロが出る設定である。だが榎田尤利、見事やってのけた。しかも本編はそのネゴ屋・芽吹による一人称。じーさん視点の三人称から始まり、す〜っと芽吹の一人称へ。そして芽吹の一人称から、これまたす〜っとキヨ視点の三人称エピローグへ。三人称を加えて角度を変えることにより、芽吹の人となりが深く知れる。素晴らしい。榎田尤利の榎田尤利たる所以か。さすが、その実力・文章力においてはBL界(ほぼ)トップ、上から数えたほうが確実に早い人気作家である。
!以下、ほんのりネタバレ注意報!
主人公に据えられた芽吹は、愛や恋が体にすぐさま直結する10〜20代の若者でなく、メロウな愛染かつら時代を過ごした経験もない、ワケありで「ラブより仕事」な30代。交渉中は喋りまくるが、その喋りは頭の中でも同じなようで、ヤクザとして再会した兵頭との過去からラブシーンまで、読み手に実況中継するかのごとく、一人称で語りまくる(頭の中で)。その思考とスピードと分析力は、妄想癖を取り除いた村上くん(『東京大学物語』江川達也)レベル、まさに「交渉人は黙らない」だ。兵頭と絡んでいる最中でも、よくあれだけ教えてくれる…とゆーか考えられるな、感心する。
コメディなので、芽吹と兵頭の会話にテンポがあって楽しい。夫婦漫才のようだ。兵頭は、BLにありがちな、やたらと容姿端麗なだけの経済ヤクザではなく、頭はいいが実は高校時代の恋を引きずる不器用なヤクザ。恋に不器用な年下攻ヤクザに、仕事以外は不器用な受ネゴ屋――実にウキウキとヤキモキさせてくれるふたりである。年下攻と不器用ラブはツボだし、女々しくない受というのも好感度は高い。ただ、全体的にエピソードがギュウギュウ詰めであることは否めず、急ぎすぎてもったいない印象がある。続編を考えていないのか、考えられていないのかはわからないが、キヨやさゆりさんや兵頭の舎弟など脇キャラも立っていて、このままにしておくには惜しい。どちらにしろ、続編希望だ。兵頭とのラブな展開、芽吹の仕事っぷりはもっと読みたい。追記:続編は来年の秋だそーです。来年?2008年ってこと?…遠ひ…。
評価:★★★★☆
ヤクザが出てくる作品だが、他人に見られたら心底マズい「人目注意報」発令なカラー口絵はなく、本編中の挿絵数点においては、ほのぼのさすら感じられ、「奈良画伯でほのぼの?うわ〜ん、何年ぶりかしら♪」と、泣きそうになるくらい感動した。その喜びで胸いっぱいのまま読み進めていたところ、最後の最後で画伯入魂のクリップ止め必至カット登場。別の感情から泣きそうになった。奈良画伯の奈良画伯たる所以か(画伯がシャンピニョン系でないことを願う)。うおおおおおお!!油断してしまったあああああーーっ!!…これから本作をお読みになるご予定の方、電車の中などではご注意を。
NO STAR … 論外/問題外作
★ … お好きな人はどうぞ。
★★ … つまんない。
★★★ … 退屈はしないしけっこう面白い。
★★★★ … 面白い。佳作/秀作。
★★★★★ … 天晴れ。傑作。