←気になってます。

韓流BLだそうですが、表紙見た限り、絵の印象は「竹田やよい+禾田みちる」、内容は往年の少女マンガっぽい感じ。う〜む。

でも一番気になっているのが、「語シスコ先生、大絶賛!」。
どう出るのか…よ…読めない。
←気になってます。

オビの「X文庫新人賞受賞作!」より「栗本薫氏、大絶賛!」というのが、別の意味で気になります。

まあ「山藍紫姫子氏、大絶賛!」(羽化登仙!の人)とか「南原兼氏、大絶賛!」(エクリカリバーの人)とかだったら、気になるどころか、完全防備で身構えますけど。
エッセンシャル(アロマ)オイルの中で、もっとも高価なのがネロリ(オレンジの花から抽出した精油)。チュニジア産の高品質なものは1万円という価格もザラで、なかなか手が出せないというのが現実です。

ネロリ抽出の際に出る副産物オレンジフラワー・ウォーターは、100%天然素材の香料(食用)であり、ネロリより青っぽいシトラスビターないい香りの蒸留水です。

↓ネロリとオレンジフラワー・ウォーターについて((社)日本アロマ環境協会)
http://www.aromakankyo.or.jp/aeaj/activity/travel/tunisia.html
(チュニジアといえば、「カルタゴ」「ネロリ」「スター・ウォーズ」というイメージ)

私は、化粧水パックの際にオレンジウォーターを使用していますが、100mlで2000円くらいするためバシャバシャ大量に使うことはできず、なんとかなんないかな〜と思っていたところ、なんとチュニジア産オレンジフラワーウォーターが、楽天ショップで1208円(!)で購入できるようになりました。240mlで1208円はお安ーい!

ちなみにローズ・ウォーターも同時入荷、こちらもいい香りで大満足♪うわ〜い♪

天然100%フラワー・ウォーターをお探しの方、いかがですか?…って、なんかアフィリエイトっぽい書き方になっちゃった(私には1円も入ってきませんのでー)。
■『型(パウンド)はひとつ!大好きな焼き菓子―パウンド型だけで51のバリエーション』
ISBN:4056039666 単行本 大森 いく子 学研 2005/10 ¥1,575

卵が135g?…2個じゃなく?
無塩バターが80g?…バターは200g単位で売られてるのに、それじゃあケーキ2個作ったとしても40g余っちゃうじゃない。
簡単にムダなくケーキが作れればいいの、時間だってないし。
ケーキの本を買ったら、チーズケーキだのタルトだのと他のケーキのレシピがついてきちゃって、しかもいろんな型使わなきゃいけない。私はパウンドケーキだけでいいのになあ。

お菓子作りが趣味でも、1日かけてじっくり作りたい人もいれば、キッチンにある道具と冷蔵庫にありそうな材料を使って、手軽に作りたい人もいるはず。

本書はまさしくそういう人のためのレシピ本。

小嶋ルミさんの本で目からウロコがポトリだった私だけれども、別の意味でまたポトリだった本が、大森いく子さんの『型(パウンド)はひとつ!大好きな焼き菓子』。

8×6.5×18のパウンド型
無塩バター 100g
グラニュー糖 100g
卵 2個
薄力粉 120g
ベーキングパウダー 小さじ1/2

なんと基本材料がこれだけ!

レシピのほうはというと、まず最初に基本のプレーンパウンドケーキ、それのバリエーションとして、チョコやキャラメル、くるみ、りんご、マーブルケーキ…とあり、なんと計51種類ものレシピが掲載されている!

さらに唸ったのは、「パウンド型を使って、ある程度ケーキ作りに慣れてきたら、こういうのも作りたいんじゃない?…あのね、同じ型でこういうケーキも手軽にできちゃうの」とばかりに、ブレッドタイプケーキや、チーズケーキにフィナンシェ、いちごのショートケーキなどのレシピまで載っていること。ケーキの種類が違っても、全部同じパウンド型を使用しているなんて、初心者からスタートした人の「同じ型ならちょっと違うものでも作ってみたい」心理を読んでるなあ。なんて心憎い!

しかも材料がキッチリしていて、「バター100g(200g入りだと余りナシで2個分)、クリームチーズ250g」などスーパーで売ってる単位だし、なおかつ舌を噛みそうな横文字材料もない。

初心者が失敗しがちな例を挙げ、そのひとつひとつを丁寧に「なぜ?どうしてこうなるの?」から説明してあったり、薄力粉以外の粉やグラニュー糖以外の砂糖、パウンド型以外の型を使用したときにどんな仕上がりになるかが語られていたり、レシピページ上の欄外に、必ずそのレシピのアドバイスや感想などが書かれてあってホロリとさせられたりで、作り手の気持ちを本当によく汲んでいる。最初に現れる目次が、見てすぐわかるようなケーキ写真になっていいるのも、これまた素晴らしい。

パウンドケーキで失敗しがちなのは、バターに卵を入れて混ぜたとき分離してしまうこと。それが避けられるよう、卵白と卵黄に分けて入れるレシピになっていて、しかもわかりやすく的確に書かれてあるため、この本で失敗したという人はいないと思う。味も美味しい。小嶋ルミさんの本にもパウンドケーキは載ってるし、そのコツも書かれてあるけれど、材料や指示が細かいので、簡単に手軽に作りたい人には不向き。ちなみに私の場合、小嶋さんのいうコツで大森レシピのパウンドケーキを作ってマス。

いや〜、感動した。
「ケーキレシピ本大賞」を差し上げたい1冊。

味評価:★★★★(美味しいですよ)
レシピ:★★★★★(型ひとつに材料キッチリなど、着目点が素晴らしい)
本の作り:★★★★★(写真、文字レイアウトも素晴らしい!)
「スポンジケーキはまだムリなので、パウンドケーキを作りたい。難しい手順はわかんない。でもパウンドケーキだけの本で、なおかつ簡単レシピが載ってるのって、意外にないんだよなあ」と思ってたときに出会った本。ちょうど「1」から「2」へ移行する頃で、大森さんのあまりの親切と気遣いに感動した。これまた絶賛されている本で、私も納得の1冊。小嶋さんの本で勉強しても、この本だけはずっと大切にしたいと思うくらい。

ただね…レシピうんぬんの前にちょっと問題があってね…パウンドケーキは作ってから2〜3日後が一番美味しいから、すぐ食べられないのよね…それがね…。だから最近はあまり作らない。
■『おいしい!生地―スポンジ、パウンド、シフォン…焼きっぱなしで極上に』
ISBN:457920901X 単行本 小嶋 ルミ 文化出版局 2004/04 ¥1,575

「お菓子作りが趣味」といっても、求めるスタイルは人それぞれ。

1.時間をかけず簡単レシピで美味しく仕上げたい
2.お菓子作りの工程(行程)をひとつずつ楽しみながら、美味しく仕上げたい
3.材料・道具を探求、時間を惜しまずじっくりレシピ攻略、もっと美味しく仕上げたい

「1」→「2」と段階を踏んだ私は、現在「3」。最初はホットケーキミックスで作るパウンドケーキや蒸しパンで満足していたのに、ある程度できるようになったら、「もしかしてもっとできるかも?」という根拠のない自信が出て、ちょっとこだわってみたくなった、というクチ。

そしたらば、案の定、失敗の連続。

バターに卵を入れた途端に生地が分離する、スポンジケーキはまったく膨らまない、チーズケーキは表面が焦げる、シフォンケーキはボソボソ、バターは無塩?クーベルチュールってなんだー!?

とくにスポンジケーキはなかなか膨らまず、もう何度「モントンでいいや…あいむるーざー」と思ったことか。

それでも持ち前である興味のあることだけに発揮される反骨精神で以って、ケーキレシピ本数冊を勉強した結果、それなりに膨らむようにはなったけれど、やっぱり味がイマイチ、試食担当の家族もみな無言。これならホットケーキミックスで充分のような……

なにがいけないの?
なにか決定的にマズイことでもやってるの、私?

根拠のない自信に満ち満ちていたあの日から一転、挫折と模索の日々を過ごしていたところ――本屋さんで運命的に出会ったのが、本書『おいしい!生地』。

無塩発酵バターや極細グラニュー糖を使う意味。
ハンドミキサーの使い方と速度の違い。
粉を生地に入れる際のヘラ使いテクニック。
チーズケーキとシフォンケーキでは泡立て方が変わるメレンゲ。
すべてグラム単位の材料とデジタルはかり。
オーブンのクセと温度。
材料を入れるタイミング。

そっか!そういうことなのか!

他のレシピ本では教えてくれない道具の使い方、それぞれの状態にする(湯煎する・レンジでやわらかくする・冷やしてカチカチする)バターの意味、材料を入れるタイミング、100回近くまで混ぜ合わせるヘラ使いの重要性…を、一枚ずつ写真で説明、その通りのレシピで作ってみたら――いままでなんだったんだ!?と思うくらいの美味しさ!

シフォンケーキは、よくあるメレンゲ(卵白)重視のシフォンケーキとはまったく違う、卵黄によるしっとりさが感じられるのにフワっとした、「いままで食べたことがない、と云われる」のがよくわかる仕上がりに。

カスタードを入れたスフレチーズケーキは、レシピ通り「泡立て過ぎない細かいメレンゲを入れ、最後は火を消したオーブン」で焼いたら、「忘れられない味になります」と書かれたように口どけの良いホロリとした食感の見事なチーズケーキに。後日購入した、石橋かおり著『シンプルスタイルのチーズケーキ』のレシピで作ったチーズケーキと一緒に8人に出してみたら、8人全員、小嶋レシピケーキを選んだくらい、素晴らしかった。

小嶋さんの本は、「3」のステージに到りながら壁にぶち当たり、停滞していた私を前進させてくれたし、目の前の霧が晴れたことで、気分だけでなく頭の中も爽快になったし、お菓子作りの面白さとこだわり、固定観念を覆すオリジナリティとはなんぞや?を教えてくれた。作ったケーキはどれも定番なのに「いままで作った経験のない美味しさ」があった。感動したーー!

ただし、初心者にはちょっとキビシイ内容かも。材料は1グラム単位なのでデジタルはかりが必要だし、材料にもこだわりがあるし、指定と手順は細かい。その時点で敷居が高いと感じる人、「1」のままでいいそれ以上は望まないわ、という人には向かないので注意。

味評価:★★★★★(美味しい!素晴らしい!)
レシピ:★★★★★(ナルホドの連続)
本の作り:★★★(写真が細かい、字が多いので注意)
後日、この本が絶賛されていることを知り、納得した。本に対する思いはみな同じ、いままでの本にはなかった「1工程に対するプロのコツ」が写真付きで書かれてあり、目からウロコが落ちた。自分の中でレベルアップの音が聞こえてくる本。

「固定観念を覆すオリジナリティ」と簡単に書いたけど、小嶋さんはたぶん――試行錯誤を重ねたというか、いままで「したらいけない」と云われていたことまで試して(最近出た『知りたがりの、お菓子レシピ』にあったカスタードクリームレシピなんか、まさにそう)、「いままで食べたことがないと云われる」お菓子を作り出したんだろうな。料理研究家はみなそうなのかもしれない、でも小嶋さんにはスペシャルな情熱を感じる。そしてそのオリジナルレシピを、写真付きの丁寧な説明で書かれた1500円ほどの本で、一般人に教えてくれたことに感謝したい。
■『シンプルスタイルのチーズケーキ』
ISBN:4277613497 単行本(ソフトカバー) 石橋 かおり 雄鶏社 1998/06 ¥1,260

誰も信じちゃくれない、だけど実はケーキ作りの趣味を持つ私は、ここ2ヶ月くらい、週末になるとチーズケーキばかり作ってます。チーズケーキがブーム中。

…で、何冊か持っているレシピ本のうちの1冊が、石橋かおりさん著『シンプルスタイルのチーズケーキ』。

チーズケーキの場合、ベイクドではなくスフレタイプのケーキで、だいたいその人の味がわかるんだけども――石橋さんのスフレチーズケーキの特徴は「失敗が少なく作りやすいが、可もなければ不可もない味」。スーパーで売っている2個入りカットケーキレベル、印象に残らないごくごくフツーのアッサリ味なので、濃厚タイプが好きな人には味気なく感じるんじゃないかな。せっかくスフレタイプなんだから、もう少し口の中でホロリと崩れるような感じにしないと。そうするなら、本に書いてあるほどメレンゲを固く泡立てないほうがいいと思う。あと、これは個人の好みの話になるけど――バニラオイル使いすぎには参っちゃった。ビーンズならわかる、でもオイルは…ちょっとニガテとゆーか、香りがすべてオイルに持っていかれてしまって(レモン果汁を入れるレシピなのに、レモンの香りまで吹っ飛んでしまう)、余計に安っぽい印象を与えると思うんだけど…どうだろう?

他のレシピをみると、どうやら石橋さんはさまざまなチーズを使ったタイプ、つまり変り種チーズケーキがお得意みたい。ただ、いくつか興味深いレシピはあったものの、どれもリピートしたいとは思えなかった。残念。

「写真が綺麗、読みやすい文章、ムダの出ない材料」なので初心者にはいいかな?…よって「まずケーキ作りに慣れる」からスタートしたい人にはオススメ。中級者以上で「プロっぽいチーズケーキ」を望んでいる人には、本屋さんで立ち読みしてから購入を、とアドバイスしておきます。

味評価:★★★(美味しいけど普通、としかいえない)
レシピ:★★★(作りやすいです)
本の作り:★★★★(読みやすいです)
石橋さんはほかにもチーズケーキ本を出されていて、もしかしたらそちらのほうがいいのかもしれません。ただこの本は、レシピ同様、本の写真や文字のレイアウトなども読みやすさ重視な「シンプルスタイル」なので、とっつきやすいですね。うん。
←「ラステロ」ショックが大きいせいで、いまだ積読状態です。

「谷崎泉スペシャル!」は終了しましたが、「ラステロ」について悶々していたのは私ひとりだけでなかったようで、同じ気持ちの方、事情をご存知の方よりコメントを頂いております。由木さん、りんさん、ありがとうございます…嬉しい!
みなさん、長いコメントをお書き下さり…やっぱりいろいろ語りたくなる作品(と作家)だったんだなと、しみじみ感じております。

あ、レス、コメントはお気軽にどうぞ。当ブログは、「ブログ主のコメント返しより先にコメント書いてはいけない」というキマリは一切ありません(逆にそーゆーのニガテ)。
キリカさんから頂きました。

映画バトンです♪

■生まれて初めて劇場で見た映画は?

「メリー・ポピンズ」

小学校の課外授業?…学校側が、映画館を貸切ってみせてくれました。なんでこのタイトルだったんだろう?情操教育を施したかったのかな?…字幕版で観ました。私の映画の記憶はここからです。

私も小学生のとき「のび太の恐竜」を劇場で観ました(みんなで主題歌を大合唱)。同時上映が「ゴジラ対モスラ」で、「こんな古い映画が同時上映だなんて田舎の映画館だからだろうな」と思ってたら、キリカさんがお住まいのところ(東京?)でも同じだったそうで、どうやら全国的に同時上映は「ゴジラ対モスラ」だったようです。20年後に知りましたよー。

■一番最近劇場で見た映画は?

デビッド・リンチ5年ぶり新作「インランド・エンパイア」

……長かった…。

■最近DVD(ビデオ)で見た映画は?

「ピンチクリフ・グランプリ」(昨日観たばかり)

リバイバルで観てDVDを購入。

■一番良かった白黒映画は?

「メトロポリス」(1927)

■一番良かったアクション映画は?

「インディ・ジョーンズ」シリーズ

3が好きです。リバーもいたし。いくらシャイアが可愛くても、リバーには敵わん!

■一番良かったロマンティック映画は?

「ビフォア・サンセット」

■一番良かったアニメ映画は?

「ルパン三世 カリオストロの城」

■一番良かったミュージカルは?

「チップス先生さようなら」

チップス先生役をケビン・クラインでリメイクしてくれないかなと思っていたところ、数年前に「卒業の朝」という映画が公開され観に行ったら、ケビン・クライン演じるハンダート先生が、チップス先生にソックリだったのでビックリした。

■旅をしたくなる映画は?

「ビフォア・サンライズ」

■見るとお腹がすく映画は?

「かもめ食堂」

■泣きたい時に見る映画は?

「ガタカ」

■途中で止めた映画は?

「父の恋人」

■元気が出る映画は?

「デーヴ」

■何回でも見れる映画は?

「ビフォア・サンセット」

■絶対に薦めない映画は?

「ピンクフラミンゴ」無修正版

………。
あの頃私も若かった(幼かったとゆーか)。

■今まで観た映画で一番怖かったのは?

「リング」の貞子。

■人生の勉強になる映画は?

いろんな映画を観続けることが人生の勉強になると思います。
映画に出てくる人たちがいろいろと教えてくれます。
映画を観て育った私は、実用書(「こうすれば××になる!」とか「負け犬がなんとか」とか)には興味がありません。

■好きな映画のジャンルは?

なんでも観ます。

師走ACTION

2007年12月1日 日常
ブログのネタがBL系に偏ってしまった(たぶんキラキラ表紙のアレのせい)ここ数ヶ月。本人としては、映画、「松田美優スペシャル!」、日常、お買い物、料理…いろいろ書こうと思ってたんですよ…ええ、9月から。

もう12月だってば!
B’zのアルバム、出ちゃうってば!

なんでこんな狂っちゃったんだか。

「とりあえず 重い腰上げ 師走アクション」(季語:アクション…冬…って「師走」は?)
■…というわけで、約2ヶ月の間コツコツと書き続け、『最後のテロリスト』で以ってようやっと終了した「谷崎泉スペシャル!」ですが、そもそも「スペシャル!」と銘打ってまで、この飽きっぽい私が、根気良くひとりの作家の作品の感想を書き続けたのには、理由があります。

榎田尤利、木原音瀬、英田サキといった人気作家の作品感想はネット上でもよく見かけるというのに、知名度だけでなく人気だってけっこうあるだろう、シャレードの看板作家といっていいはずの谷崎泉作品となると、これが思ったほど見かけません。そーゆー私自身、オッシーに云われるまで谷崎泉はノーチェック、著作は『パンダ航空1〜3』くらいしか読んだことがなく、しかも「あんまり好みじゃないな〜」と思っていたわけですから(理由:凡庸だったから)、エラソーなことは云えないんですが、実際何作か読んでみると「あ、これは谷崎泉だ」とすぐわかってしまう、個性的で誰にも似てない作家であることが見えてきました。

良く云えば、ライトノベルやBLでは必須だろう立ったキャラが何人も描け、ト書きで読ませるリズミカルな文章スタイル(「谷崎泉スタイル」とゆーか)(注)、リリックの効いたストーリーテリングと心情描写力を天性で持っている作家、悪く云えば、型にハマっていて引き出しが少なく、ト書きで読ませるタイプなので一人称が凡庸になりがち、これ見よがしに伏線と謎を仕掛けておきながらそのすべてを回収しないまま、消化不良気味にストーリー終了となってしまう作品が多く、読み手に「惜しい」「もったいない」と思わせる作家という印象です。

たとえば『しあわせにできる』は、雑誌に長期連載され、さらに文庫収録時に番外編追加という形を取ったことにより、後者の欠点を補った人気シリーズであり、私も好きな作品です。12冊も出ているのに1冊ずつ感想を書いたのは、「どんどん面白くなっていくから。中途半端には終わらない、前者に秀でている作品だよ」と伝えたかったからです。また谷崎先生は、受に対し嗜虐的な攻を書くことが多いので、『しあわせにできる』の1〜3巻あたりまでの久遠寺に堪えられず、「理解できない」と挫折する人(そういう人は少なくないと思う)に「もうちょっと我慢して。じきに久遠寺の背景が見えてくるし、彼も変わっていくから。それでダメならごめんなさい、この感想はアテになりませんよー」という意図もありました。

逆に後者で辛かったのは――正直にいうと『しあわせ』以外の作品ほとんどで、中でも自分好みから完全に外れてしまった『ダブル』は、しんどくて仕方がなかったです。でもつまらないとは思いません。

前者と後者の狭間で大ショックを受けたのが、『最後のテロリスト』。感想をバカ長く書いてしまったのは、「こんなことを思ってるの、私だけなん!?」と訴えたかったからです。同じことを思い、悶々されていたというりんさんが熱く燃え滾る情熱的なコメントを書いて下さったように、このシリーズに対しては…私もいまだフクザツな思いで胸がいっぱいです。本についてくるアンケートハガキに、惜しくて悔しいどうにもやり過ごせないこの思いを書いて編集部に送ろう、谷崎センセにお手紙でこの思いを伝えよう…と、何度思ったことか。結局どちらもやめ、自分のブログでアップするにとどめました。

自分がこれほどBLに入れ込むのは久しぶりです。クリーンヒットしたときの谷崎作品が私に与える影響は大きい…と、思い知らされました。今後も谷崎チェックはしていきますが――りんさん、そして『しあわせ』感想にてコメントを書いて下さった由木さんが感じておられること、そして私が「スペシャル!」で書いたことがどんな形でもいいので――いい方向にそれとなく伝わるといいなあと思います。

大洋図書(SHYノベルズ)、谷崎センセを引き抜いてくれないかな…。指摘してくれそうな気がする。

■(注)ト書きで読ませるリズミカルな文章スタイル(「谷崎泉スタイル」とゆーか)
以前にも書いた「ダブル(神)視点三人称」のこと。視点が切り替わると混乱するのに、谷崎作品にはそれがない。

基本的に「谷崎劇場」で、「谷崎泉=神」視点、頭の中でストーリーが出来上がっていて、それを客観的に書いてるという感じ。別の言い方をすれば「谷崎監督の演出による群像劇」。キャラの後ろにカメラがついていて、あっちこっち変わる。「視点はひとつ」セオリーを覆しているけど、私は支持したいです。

以下、私が感覚的に思うこと。

「ト書きで読ませる=リズムがいいのでセンテンスが長くても気にならない」。

ライトノベルやBLでは、「なぜここで?リズムが崩れちゃうよ」と思うくらい、やたら改行する作家が多いけれど(それにどーしても慣れない私。ただし火浦功除く)、谷崎センセは1ページに文章が比較的埋まっており、無意味で無駄な改行がない。句読点の入れ方なども独特。それはたぶんリズムを重視しているからで、ト書きでキャラ心情を読ませることが上手い人ならではだと思うし、実際にサクサク読める。次のページでこの一文をトップに持ってこよう、という意識を感じる箇所が見受けられると、「うんうん、よくわかる、私もそうするなあ」と思う反面、急転のための一文を思い切りよく数行区切っておきながら、その後の展開が肩透かしだと、「やりすぎたね」と感じるときもある。字面はリズムほど気にしてないように感じる。

「秋林さん、なんでそんなこと書くの?」…って、そうだなあ、「スラムダンク」の湘北vs.山王工業で、河田が花道のマークについたとき、花道の滞空力、ブロックジャンプに跳んだあと猛ダッシュできる体力に「コイツはすごい。誰もそんなところ見てないだろうが」と思うシーンがあるでしょ?…あの河田と同じ。「サクサクと読めるのは、リズムを考えているから。誰もそんなこと気にとめないかもしれないけど」。

■秋林の「谷崎作品ベスト3」

1.『最後のテロリスト 1 〜胎動〜 』(+『16』)
2.『しあわせにできる』
3.(いまのところ)該当なし

未読で積読状態なタイトルがあるので、もしかしたらその中に3位があるかも。

■秋林の「谷崎キャラ ベスト3」

1.遠野凪(『最後のテロリスト』)
2.菅生威士(『最後のテロリスト』)
3.結城涼子(『しあわせにできる』

『しあわせ』キャラは、本田や久遠寺じゃなく結城さんが好きなの…。

■りょうさん、ボースンさん、由木さん、りんさん、私と同じように郵便局員さんを脅した(←え?違う?)夜霧さん、コメントありがとうございました!

以上、「谷崎泉スペシャル!」でした♪
■『最後のテロリスト 3 〜鳴動〜 』
ISBN:4576071033 文庫 谷崎泉(挿絵:シバタフミアキ) 二見書房 2007/06 ¥650
蓮が姿を消して五年。セキは仕事を続けていたが、興津組の内部抗争に深く関わっている上、日本への勢力拡大を目論むチャイニーズマフィア・劉につけ狙われることに。自分はただの故買屋だ。大きくなんてなりたくない──そんなセキの思いとは裏腹にあらゆる人間が彼のもとに集まってくる。すべてが潮時と感じ、日本を出ようと思い始めたセキの前に、自分を翻弄した唯一の男、蓮が現れる。理屈も立場も飛び越え、言葉を失わせ、ただ互いの熱を求め合う邂逅。しかし──。シリーズ完結巻!

一部の熱狂的なファンの支持により絶賛評が多い中、2巻感想で「謎を背負いながら端折るとはどーゆーことだ」「セキがなあ…」とブッタ斬り評を書いた私も、考えてみりゃ「コソコソしていたい、目立ちたくない、目立とうなんてとんでもない」というタイプ――なーんだそりゃセキと一緒じゃん?と気付いてさらに呆然、そんな状態で手に取った、故買屋セキが主人公の「ラステロ」第3巻である。

!以下、ネタバレ注意報!

いくら「作家が書きたいもの≠私が期待していたもの」だったからといって、まずキャラありきだろうと思われる(だから私もそんな読み方をしている)ライトノベルやBLジャンルで、これだけ面白くて立ったキャラと、パンチラインの効いたセリフを連発されたら、「つまらん!」だなんて絶対に斬り捨てられないし、思ってもいない。でもやっぱり谷崎泉らしいとゆーか、嗜虐的な攻がどーしてあの受を選ぶのかイマイチわからず、1巻の「威士→凪」が分かりやす過ぎた分、今回はいつも以上に「なんで蓮はセキがいいわけ?」という疑問が残る。「綺麗になったな…」(え?そうなの?>蓮) 「…俺にはお前の趣味が一生、理解できんと思うわ。どこがええねん」(うん、アタシもそう思う>威士)…ダメだ、こりゃ!>私

蓮とセキが歪(いびつ)な関係しか持てないのは、よくわかる。ふたりは心より身体のほうが正直、恋だの愛だのという甘い感情からはほど遠い…恋愛らしきもの、しかできない似た者同志だということが、2〜3巻通してず〜っと語られているから。

結局、「ラステロ」はそれがメインストーリーだったようで、蓮だけでなく威士にとってもキーパーソンであるはずの氷川は簡単に殺されてしまって、ヒョイ出のチャイニーズマフィアによってうっちゃわれるし、あれだけ振られた蓮を巡る謎はスッキリと明らかにされないままだし、蓮の「いつ倒れるかわからない」爆弾は切なくさせるような効果もなく不発に終わったし、威士と蓮が興津のトップにのし上がって行くさまもイマイチわからず(ちょっと!凪は〜!?)、最後のテロリストを看取ったのち、蓮のいる日本へ戻ろうと考えたかどうかをちらつかせたセキだけに、綺麗なエンドマークがついたという印象だ。谷崎センセはセキが好きなんじゃないのかな。セキは、江木や弓削、劉、麻生にまでモテモテ。「受がモテモテ」は、谷崎作品の基本だと思うから。

セキはたしかに私の好みから外れているが、蓮と邂逅(←読めますか?「かいこう:思いがけなく出会うこと」)し、早朝にベッドで目を覚ましたのセキの心情描写はせつなく、これこそ谷崎節の醍醐味で、相変わらず素晴らしい。

たとえば、「蓮より早く目が覚めてシャワーを浴びに行く」という一行で済ますことができる行動なんだけども、「蓮の寝顔が目に入った→情を感じた→身体を起こした→カーテンからの明かりを見て朝だと気付いた→狭いユニットバスに入った→曇った鏡に映る自分の赤い痣を見つけた→思わず目を背けてバスから出た」。セキの、自分自身そして蓮への複雑な思いが伝わってくる。数行かけて、受が攻を思う気持ち、そしてそのシグナルを読み手にじわりと伝える描写が、谷崎センセは本当に上手くて毎回唸ってしまう(「しあわせにできる」の感想でも書いたけど)。そんなちょっとした数行なんて別にいいじゃん、と思われるかもしれない。でもこういう描写をする書き手に対し、「なんて素晴らしい、感動した、わかってる、ちゃんと伝わってきてるから」と云いたい。そんなところまで感想を書いている人は少ないだろうから。がしかし。そういう心理描写は卓越しているのに、なんで肝心要を端折るのだーーーー!?

谷崎泉がターニングポイントを向かえる作品になる!…と、1巻を読んだときに思ったんだけどな…。

評価:★★★(悶々悶々悶々…なんでこんな思いを…うううう…)
威士の顔に傷が残ったら――許さへんで!!覚えときや!>セキ
全3巻通して、蓮は威士と一緒にいるほうが素敵でカッコ良かった。「威士・蓮・凪」の三人の話がもっと読みたかったなあ。それにしても、興津の次代No.1と2はともにホモか。う〜む、興味深い。

「ラステロ」はシバタさんの表紙効果によりBLっぽくなく、一見するとフツーのライトノベル風。これだったらカバーをつけずに茶の間に置いておいても平気ね♪と、そのまま置きっぱなしにしたところ――次の日、裏表紙が表になって置かれていることに気付き、顔面蒼白。裏表紙にあらすじとパンチラインが書かれてあるシャレード文庫、ちなみに「ラステロ」3巻はデカデカと――

俺にはそんな価値などない。
男に抱かれて
嬌声をあげるような、屑だ。


…………。
ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!

自分を屑だというそんなアナタが主人公の本を読む私は――滓?それとも塵、でしょうか?

ZERO STARS … 論外/問題外作
★ … お好きな人はどうぞ。
★★ … つまんない。
★★★ … 退屈はしないしけっこう面白い。
★★★★ … 面白い。佳作/秀作。エクセレント。
★★★★★ … 天晴れ。傑作。ブリリアント。
■『最後のテロリスト 2 〜鼓動〜』
ISBN:457607086X 文庫 谷崎泉(挿絵:シバタフミアキ) 二見書房 2007/05 ¥580
氷川の指示で警察庁幹部・唐沢の養子になり、東京の大学に進んだ蓮。良家の子息を演じながらも、内面は渇き、飢えていた。そんな時、耳に入ってきた故買屋・セキの存在。ヤクザとクスリを嫌い、決して人前に姿を現さない慎重な仕事の手腕に興味を覚えた蓮は、セキの正体を突き止めようと画策する。果たしてセキは蓮の欲望を満たすにふさわしい、極上の獲物だった。追いつめ、身体を征服し、心を奪う――。抑圧されてきた蓮の激しい本性が迸る、シリーズ第二弾、蓮とセキの出会い編!

現時点(2007年11月)において、秋林の2007年BL小説カバー絵ベスト1作品。

!以下、ネタバレ注意報!

興津組の若頭補佐・氷川に拾われた形で菅生家に入り、威士の義弟となった蓮が主人公の第2巻である。

カリスマ性を持ち、一見荒っぽいがまっすぐな気質を持つ威士と正反対の蓮。常に影を引き摺り、怜悧な頭脳を持っているが、ワイズというよりクレバー(賢明というより狡猾)、内面を周囲に覚らせない――そんな彼には、さらに複雑で興味深い背景がある。

まず、いつ倒れても(≒死んでも)おかしくない爆弾を脳内に抱えているという身体的な事情。その怪我の後遺症によって無痛症となり、ナイフで刺されても背中に爪を立てられも、本人はまったく痛みを感じない。蓮が血を流がす場面はよく出てくるのだが、事情を知らない人間の目には平然としている蓮が不気味に映るだろう。まるでサイコダイバー美空(夢枕獏)である。もともと長生きできそうにないタイプだと思っていたが、それらの設定によって蓮はさらにギリギリな時限の――生き急がねばならないエッジに立たされた感がある。読み手としては実に切ないのだが、本人は気にするどころか「残された時間」を受け入れており、その上で「威士と興津のトップに立ち」、「氷川とケリをつける」ことを第一の身上としている。氷川との確執については、どうやら蓮の実の父親が関係しているらしいのだが、氷川は多くを語ろうとせず、蓮自身も父親を知らないため、正面から「氷川vs蓮」が描かれないと真実はわからない。抱えるものは影や爆弾だけでない――という実に複雑で魅力的な設定(もちろんルックス上々の美形である)と背景を背負った蓮は、威士以上に腐女子心をそそってくれる面白い存在なのである。表紙カバー絵は、そういう蓮を見事に表現していると思う。

そんな蓮が、威士や氷川と離れて数年ぶりにひとりとなる2巻では――単独で悪さをしていた、威士と出会う前の蓮、つまり彼本来の姿を見ることができる。だが昔とは違い、威士や氷川に洋三といったしがらみ(≒身内)と情が増えたことによって、自分のシマではない東京においては、大学生で警視庁キャリア・唐沢の息子という仮面を被り、おのれのポジションを常に把握・確認しながら、悪さをせねばならない。ガキのままではいられないのは威士だけでなく蓮も同じ、自由はあるが縛りもある状況下で、蓮はある日、運命の相手・セキを見つけることになる。「この男をなんとしてでも手に入れたい、たとえ汚い手を使っても」――読んでいてこっぱずかしくなるほど純愛路線(←ホメてます)だった1巻とは対照的、淡々と描写される蓮の内面の黒さにクラクラさせられ、とくにカジノシーンで見せる蓮の駆け引き、狡猾さは見事であり、「なんて素晴らしいの!」とその描写を絶賛していた…のだが。

また、やられた。
肝心要、核心を端折られてしまった。

!以下、完全ネタバレしていますので要注意!

まず、興津5代目が死んだことによる跡目争いを避けるため、氷川が蓮とともに中国へ行くことに「?」である。なぜ中国なのか。海外へ留学だの引越しだのと、その唐突さは、まるで大昔のTVドラマ、もしくは韓国ドラマのよう。変化球で逃げたとしか思えない。ここは日本で「仁義なき戦い」(そして流れる「仁義なき戦い」のテーマ…若いにーちゃんたちが主人公なので、もちろん布袋寅泰バージョンだ!)、京都と東京の同時進行、威士は関西で自分の「アキレスの踵」である凪を守ることで精一杯、蓮は平然と(!)大学生をしながらも、影で興神会を証拠なく(←最大ポイント)次々と陥れていく――が、思いがけずセキが巻き込まれてしまい(あるいはセキが興神会関係者で蓮の敵として現れ、いつしか惹かれ合ってしまうとか。ああ…なんてハーレクインなの!)、身動きが取れなくなる。威士も蓮も互いを必要としているが、ひとりで行動せねばならない。だがふたりの前に次々と敵が現れて――といった展開を期待していたのに。

さらに大ショックだったのは、氷川の扱いだ。なぜ氷川が中国で殺されないといけないのか。いや違うな、正確にいうと――なぜ氷川の最期にして最後の「氷川vs.蓮」が描かれなかったのか。ここを端折ってどうする!?…氷川と蓮の確執がどうなったか、何度も出てきて長く感じる蓮とセキの情事を削ってでも、書くべきじゃないのか!?…ガッカリだ、私は密林の書評のように手放しで絶賛はできない!

「○○年後――」と容赦なく時が流れていくので、文庫から読んでる身としては取り返しのつかないストーリー展開に、ただただ呆然とするだけ。威士と蓮を中心に、凪やセキが関わってくるストーリーだと思っていたのに、「ラステロ」の実質的な主人公は――もしかしてセキで、谷崎センセはそのセキが一番のお気に入りなんじゃ?と気付いた時点で、大ショックである。セキの本名「真冬」だし、タイトルは『最後のテロリスト』だし。

2巻は、嗜虐的にセキを奪っていく蓮が描かれている。谷崎作品ではよく嗜虐的な攻が出てくるので(威士みたいなタイプが珍しい。だから威士が好きだという人は多いと思う)、「ああ、またか。理解できない」とニガテな人にはつらく感じるかもしれない。ただ今回は蓮が複雑で面白いキャラであり、ダークな彼を理解できなくてもいいと思っていたので、私はさほどイヤにならなかったのだが、セキが蓮のいう「極上な獲物」には到底思えなかった。逃げてばかり、あるいはよがってばかりだったし、簡単に蓮の手に落ちたように思える。セキはもっと手強い相手だと思ってたのに。なにか特別な…たとえばあの蓮をキリキリ舞いさせ、ぎゃふんと云わせるような(って蓮はそんなこと云わないだろうけどさ)スペシャルな出会い方をし、ふたりの間に食うか食われるかの熾烈な駆け引きと緊張感――セキを貶めようとして逆に陥れられる蓮、とかね――が、あったならば面白かったかも。

なぜ蓮はセキを手に入れたいのか。「自分とセキが似てるから」って――それってつまり蓮はナルシストだってこと?……。またしてもショックを受けてしまった。

とりあえず3巻へ。

評価:カジノシーンまで★★★★★、それ以降は★★★(呆然)
威士と蓮の物語だと思ってた。それを求めるほうが少数派なのかな…。さまざまな出版社からさまざまな内容のBLが出ている昨今、エロやラブを削ってでも「血よりも濃い絆」を読ませてくれるBLが出てきたっていいのに。そういう本を読みたいと心底願ったし、実際1巻はそういう内容だったし、絵師もBL系ではないシバタさんがスタイリッシュにキメてくれたので、私は飛び上がるほど嬉しかったんだと思う。なんで1巻が面白かったんだろう?とちょっと考えてみた。「ラステロ」は、もともと私家版で出たシリーズで、文庫化にあたり、威士と蓮(そして凪)の出会い編が書かれたのだそう。2〜3巻が本編で、1巻は番外編という位置づけになるの?…ってことは、「番外編のほうが面白い」と云われる作家の番外編から、私は読んでしまったのか。そっか……。文庫派はツライね…。

ZERO STARS … 論外/問題外作
★ … お好きな人はどうぞ。
★★ … つまんない。
★★★ … 退屈はしないしけっこう面白い。
★★★★ … 面白い。佳作/秀作。エクセレント。
★★★★★ … 天晴れ。傑作。ブリリアント。
■『16』 some novels Books no,16
IZUMI TANIZAKI 2006年

『最後のテロリスト』全3巻を読み終わって、「いやさ〜、キミにオススメしてもらった『しあわせにできる』、たしかに面白かったんだけども、どっちかとゆーとキャラ的には『ラステロ』のほうがヒットしたってか、好みだったんだよね。2〜3巻の内容はともかく」と、いつもの居酒屋でオッシーに語ったらば。

オッシー:「そうだと思いましたよ。だって読書中の秋林さんの顔、すごい真剣でしたから。近寄りがたいっていうか。仕事場でだってあんな顔してる秋林さん、見たことないですもん、僕。当ててあげましょうか?…威士・蓮・凪がお気に入りなんでしょ?」

………。
ほっとけや!(←まだエセ関西弁)

オッシー:「そういえば、『ラステロ』番外編が私家版で出てますよ。買ったらどうですか?…買ったら、回して下さいね。僕もキャラ的にヒットしたんです。好きなんですよね――嘉手納が」

嘉手納って……あの「おっさん嘉手納」かっ!?

………。
お前も物好きなやっちゃな――選り取り見取りのくせに!>オッシー

…というわけで、本編の消化不良を癒してくれるだろう私家版『16』(注)を、楽天にて購入。私と同じように「ちょっと!威士と凪はどうなったの!?もっと読みたいんだけど!」と思った方がおられるかもしれないので、あえて私家版の感想をば。

(注)『16』:まだ楽天で売ってますよー。

■「棘」
「ラステロ」番外編。エピソードとしては本編1巻と2巻の間くらい?舞台はもちろん京都。背景がすべてわかって読める短編自体が谷崎作品では稀、ストレスまったくなしで読めた。嬉しい。本編をフォローする番外編というよりは小ネタ、メンツを保つために芸妓と浮気した威士、隠したつもりが凪にバレちゃった!いつもなら間に入ってくれるはずの蓮はいないし…あ〜あ、知らへんでぇ〜、凪、めっちゃ怖いからな〜♪という痴話ゲンカ話である。

「夫婦喧嘩は犬も食わない」ので、「ラステロ」と威士と凪に興味のない人にはあまりヒットしない内容だと思うが、それを抜きにしても…正味30ページほどの短編で、各エピソードが実に効果的に並べられてるね、これ。上手いなあ。その中でも、犬も食わないシーン(…)を挟んで描かれるふたりの事情、凪によって語られる「棘」の意味とそれがまったく理解できない威士――が最大の「ラステロ」ポイントだと思う。

決して甘ったるくならない。なぜふたりの間に緊張感が存在しているのか。格差カップルなのになぜ惹かれ合っているのか。甘くならないのは、「ラステロ」の世界観、凪の性格による影響を受けてるせいもあるけど、BL短編にありがちな「ヤってお終い、ほら仲直り♪」では終わらない、理由付けとなる各エピソードの持つ説得力と時間軸の切り方に上手さがあるから。それでもめっちゃエロ(=犬も食わないシーン)を入れて来たあたり――グッジョブ!である。…座布団は3枚でいいかしら?>タニザキーノせんせー

で、そのエロなんだけれども。「普段からは想像できないほど乱れる凪」にクラクラさせられたのは…威士だけじゃない、アタシもだ〜〜っ!

だって!…私、この本の前にシバタフミアキの絵で本編読んじゃったんだもん!…シバタさんのあの絵であれを想像する、だなんて――動悸・息切れ・目眩を併発、強烈なギャップ食らってクラクラだっつーの!発行当時の2006年に読んだ人(および谷崎センセ)、ゴメン!…これ絶対、「本編(1巻)→16」の順で読んだほうがいいと思う。

「誰を抱いてもいいよ。威士にとって俺が一番だって分かっているから、平気だ。でも、相手の人に情を起こさせるような抱き方はしないで欲しい」

!!!!!!!!!!!!!!!
なんて強烈なパンチライン、こんなことアタシも云ってみたーーーいっ!

威士と一緒にギャップでクラクラしたい人、楽天内C書店に今すぐアクセスだ!

評価:私家版なので評価対象外
「ラブシーンでクラクラさせられた」と書いたけれど、あの凪をあんな風にした威士も罪な男だよ、まったく。それにしても――あの状態で凪を抱えて隣の部屋へ…って、それってつまり駅(品位を損ねるので自粛)。……やっぱ威士ってスゴい。つくづく感心した。

あと、ひとつ提案があるんだけどね――ヤクザはメンツの世界だとわかってるけどさ、そんな全面防弾硝子でスモーク仕様な黒のメルセデスAMG(アナタにピッタリ過ぎ!)でお迎えだなんて、そりゃー凪にも嫌がられるって、どうせお金持ってるんだから、もう1台「凪お迎え号」を買ったら?アウディあたり――そうだな、R8選びたい気持ちをぐっと抑えてここはQ7、カラーはブルーなんてどう?>威士

■『16』にはもう1編オリジナルの短編が載っていますが、私にはコンボなヒットとならなかったので、感想はナシ。印象としてはそうだな…クリスタル文庫っぽい感じ、かな。

■「おっさん嘉手納」の下の名前がこの本で判明。鉄平ちゃん、だって♪
「たそがれて ひとり淋しく イバラ道」(季語なし)

■本日の「腐女子的任務」
谷崎作品の中では(たぶん)1番人気であろう「しあわせにできる」シリーズの久遠寺×本田より、マニア向けなのかもしれない「最後のテロリスト」の威士×凪にすっかり心奪われ、3巻読了後「あれで終わりなん!?威士は!?凪は!?なんでやー!?」とゴロついた日々を過ごしていたところ、番外編が私家版『16』に載っていると知り、慌てて楽天にアクセス、『AND,』とともにポチっっとな!購入、数日後「9/29に発送しました」メールを受信、ゆうびん問い合わせシステムで到着予定日確認をしてみたら――「9/30(日)中央郵便局に到着しました。お届けは10/1(月)です」。

― 今日は9/30(日)―

ダメだって!
今日はいるけど、月曜日は誰もいないの、受け取れないの!
でも火曜日まで待っていられなーい!

こうなったら、中央郵便局に問い合わせTELだ!

局員さん:「はい、中央郵便局です」

私:「もしもし?休日窓口さんですか?…いまネットで確認したんですけど、今日、No.***********の荷物がそちらに届いているんです。いまから取りに行ってもいいですか?」

局員さん:「は?配達はなかったのですか?」

私:「いえ、未配達状態で…あのその…ネットで確認したら『本日:中央郵便局に到着 明日:配達予定』となっていて、明日は受け取れないので、今日先に受け取りたいだけなんですけど」

局員さん:「はあ…。でも今日は12時30分で業務を終了しております」

― 現在の時刻:12時40分 ―

私:「はあ!?だって日曜日は夕方までやってるってありましたよ?」

局員さん:「すみません、10/1民営化スタート準備のため、今日は通常より早く閉めさせて頂いたんです」

私:「えええええええええ!?そんなの困りますっ!今日受け取れなきゃヤダ!たった10分の差じゃないですかっ!なんとかしてもえらえませんか!?」

局員さん:「そう云われても…」

私;「そこをなんとか!」

局員さん:「わかりました。荷物はたしかに届いておりますのでお渡しします。ただし窓口は閉まっているので、そのまま駐車場の前の、仕分け業務場所のドアのところでお渡しすることになりますが、そこまで来て頂けますか?」

私:「ありがとうございますっ!すぐ行きますっ!」

局員さん:「どれくらいで着きます?」

私:「いまから30分後くらいかな」

局員さん:「……」

私:「…徒歩なんです」

局員さん:「何人かいると思いますので、誰でもいいので声をかけて下さい」

私:「わかりました」

雨がざーざー容赦なく降る中、秋林、40度の熱と足の痛みに耐え終わったばかりの身体にムチ打って、中央郵便局へ。

私:「あの〜すみませ〜ん…荷物を受け取りに来た秋林ですけど〜…」

局員さん:「あーちょっと待ってください。××さ〜ん!荷物受取の人が来ましたよー!」

電話対応して下さった局員さん:「あ、どうも。お電話の方ですね?いま荷物を取ってきます――はい、こちらです。身分証明お持ちですか?」

秋林、運転免許証(持ってるけど運転できない)を取り出し、荷物をゲット。

郵便局さん、どうもありがとうございました♪
年賀状、今年は買いますので!

■とりあえず『16』感想も明日あたりに書きます。
■『最後のテロリスト 1 〜胎動〜 』
ISBN:4576070614 文庫 谷崎泉(挿絵:シバタフミアキ) 二見書房 2007/04 ¥580
威士は関西に拠点を置く興津組の金庫番・菅生洋三の息子で、本人の意思と関わりなく次代の幹部候補と目されている。そんな威士が謎の生い立ちを持つ青年・蓮の看病を言いつけられる。頭部に予断を許さない傷を残す蓮だったが、威士は次第にその怜悧さと陰のある魅力に気づかされていく。そして、同時に堅気の世界に住む大学生・凪と出会う。凪は日々抗争にさらされる威士に安らぎをもたらし恋情をかき立てるが……。宿命によって安穏とした生き方を許されない男たちの、いびつで一途な愛を描く三部作第一弾、威士編!

現時点(2007年11月)において、秋林の2007年BL小説ベスト1作品。

書き手はシャレードの看板作家・谷崎泉。お得意ないつもの「受がモテモテ♪」コメディではなく、極道の世界に巻き込まれていく青年たち(威士・凪・蓮)を硬質な筆致で描いたシリアスな(ラブ)ストーリー、絵師は、80年代半ば某マンガの大ブームにうっかり呑み込まれて青春時代を過ごしてしまった30代以上女子なら知らないわけがない、あのシバタフミアキ(でかした!感動だ!よくぞ引っ張ってきた!うおおおおお!>シャレード編集部)、通常のシャレード文庫と一線を画するつや消しマット表紙カバーに、BL小説とは思えないスタイリッシュなデザイン――と、プロデュース側のスペシャルな気合いが感じられる1冊である。

!以下、ネタバレ注意報!

『最後のテロリスト』(以下「ラステロ」)の第1巻は、少年院を出所したばかりの18歳・威士が主人公。舞台は京都。

ヤクザの資金源となる金貸し業を営む父親を持ち、幼い頃より組幹部・氷川に目を掛けられていることから、いずれ自分は極道に身を置く運命だと気付いている威士。だが、なかなかそれを受け入れることができず、中途半端な自分を持て余す日々を過ごすうち、蓮と凪――ふたりと運命的な出会いをする。切れる頭脳と何事にも動じない冷静さを持つ蓮は、(氷川の策略で)義弟となり自分を補佐。住む世界がまったく違う凪は、ある問題を抱えており、彼に恋をしたことで威士は微妙な立場になってしまう。ふたりによって血よりも濃い絆を知る威士。葛藤に苦しみ、苦難を乗り越えながら、次第に大人へと成長していく…というストーリー。

密林の商品説明を引用しているのに、わざわざ自分でもあらすじを書いてしまったのは、谷崎泉のストーリーテリングが実にわかりやすく、そのことに思わず感動、嬉しくてたまらなかったからである。

1冊読みきりもしくは3巻ほどで終わるシリーズだと、謎や伏線を引っ張りすぎるあまり、読み手はキャラの心情把握ができず、置いてけぼりを食らったままストーリーが終了、消化不良に陥って「ああ、なんてもったいない!なんて惜しいんだ!」という印象が持たれているだろう谷崎作品(違います?>みなさま)において、この「ラステロ1」は、かつてないほど、主要キャラ…とくに威士(攻)と凪(受)が、丁寧に丁寧に描きこまれている。

――タニザキーノせんせっ!
書けるじゃないの!(←たいへん失礼)
私ゃ感動したっ!!

途中「○○年後――」と端折られたり、蓮を巡る謎(氷川との関係など)が明らかにされなかったのは、この際仕方ないとしよう、谷崎作品である以上、ちょっとはそういった個性は残されていいはず。それより――威士と凪だってばっ!

正式構成員ではないがヤクザな18歳、190cmを越える美丈夫の武闘派で、策略がなにより苦手、まっすぐな気質を持つ威士。病気入院中の母とふたりで暮らす20歳の国立大学生で、育ちがよく、凛とした美貌と強い精神力を持ち、決して逆境には負けない凪(マジ強いぞー!最強だー!)。BL版「泥だらけの純情」、育ちや環境・性格までまったく違う年下攻の格差カップル――威士が凪に惹かれていく様に胸キュンだ。出会って数日後、勢いのまま告ってみれば(「俺のもんにならへんか?」…ええわぁ♪)フラれて失恋。数年後に再会、嫌がらせから彼を守りたいと思うのに、大人たちの事情によって阻まれた上、凪本人にまで拒否される。どうにもならない気持ちで空回り。でもやっぱり俺は凪を守りたいねん――って、うわ〜〜ん!せつないよう!

!以下、激しくネタバレ注意報!

ある事情から頑なだった凪が、威士の存在が特別だと気付いて気持ちを告白、覚悟を決めて身を任すシーンは真摯だ。例のダブル三人称神視点、威士と凪の感情が交差する。威士を選ぶことは、凪にとって崖から飛び降りて落ちて行くようなもの。決めたのは凪自身、だけどひとりじゃない。威士と抱き合って落ちてゆく。威士も最後まで守り抜く覚悟を決め、凪を手に入れる――。秋林、ふたりの真摯な純愛シーンを読んでるうちに、思わず正座(居酒屋で待ち合わせ中にその姿をオッシーに見られ、「なに真剣に読んでるんですか?」…やかましいわ!今いいとこなんや!邪魔したらあかんで!!←すっかりエセ関西弁)。「俺のもん、いつも欲しいと思ってて」(威士)…パンチラインもキマったあっ!――未熟かもしれないけれど若さっていい。もう私は「初めてみたいに抱きしめ合いたいと 誰もがみな望み 夢見ている(byイナバ)」立場だから。

威士と凪には、この後に試練が待ち受けているが、ひどい目に遭って傷ついても強い凪は、自分の気ままでいられない世界に正面から向かっていかねばならない威士に、厳しいことを云ってのける。そして蓮。凪だけじゃない、あんたがいないと威士はダメなのよ!(菅生家の縁側で爪を切ってる蓮に威士が語りかけるシーンに萌え♪)…威士とふたりで興津のトップに立ってくれ!うわ〜ん!

ラストシーンも素晴らしい。別れと始まりの春――桜が目に浮かび、威士たちと一緒に眺めている気分になる。

全体を通してみれば、キーパーソンである氷川がイマイチ役割を果たしていない、ヤクザ描写が手ぬるいといった甘さがどうしても感じれるんだけども、威士と凪そして蓮の物語がたいへん魅力的だったのでノープロブレム――2巻の蓮編に期待だ!

評価:★★★★★★★★★★(1巻は殿堂入り決定!)
私の評価が異常に高いのは、文体、キャラクター、ストーリーが好みだっただけでなく、1巻の舞台が京都であるという設定にもツボを突かれたから。凪と同じ、西洋史専攻の学生として大学4年間を過ごした京都は、私にとっても特別、一生忘れられない。

谷崎センセは京都ご在住ではないと思うが、出てくる地名はいかにもとゆーか的確で、たとえば大阪→京都を車で移動なら「天王山トンネルの渋滞」を覚悟するし、凪が暮らしているマンションが北山(洒落た高級住宅街。京都で歴史を勉強している学生ならば、北山の資料館には必ず行く)、威士の実家が東山(お寺が多く伝統的で、中心街へも行きやすい)、蓮が住んでいて悪さをしていた場所が山科(東インターや大津に近く宇治へと続く住宅街で、ちょっと…な印象)というのも超納得だ。東山から山科なら、蹴上経由の四ノ宮ではなく五条回りで行くよね。うんうん。

そしてなんといっても絵師・シバタフミアキ!…ハードなヤクザ系を得意とする絵師なら、東の横綱・石原理や西の横綱・奈良千春の名前をまず思い浮べるが、この1巻は既存ヤクザBLとちょっと違う、なにかこう…真摯なドラマ性が感じられるので、たとえば奈良画伯だと禁忌や鬼畜(ごめんなさい…>画伯)、イシハーラ先生だと硬派でギャングなイメージが先行してしまうため、もともとBL系の人ではないシバタさんのほうがしっくりくると思う(1巻は)。とくに凪は美しくても女々しいわけではなく(ってか、蓮も逆らえないほどの最強っぷりだっつーの)凛とした人。カラー口絵にある凪のイラストは、ズバリそのイメージだと思うんだけどなあ…。

ちなみに、私が大萌えしたのは威士が凪と一緒にいるカット。威士の着ているジャージの胸元に「adidas」のロゴが!…やっぱシバタさんだ〜きゃっほう!!(←大バカ)…あと、爪を切ってる蓮もいいね♪

ところで。あのシバタさんが、そーゆーシーンの絵を実際にお描きになったか、一部の人(アタシだアタシ!)には大問題だったはず。結果的にあの場面は――「普通ではない威士」の色っぽさが出てて、私は良かったと思うんだけどなあ…。

ZERO STARS … 論外/問題外作
★ … お好きな人はどうぞ。
★★ … つまんない。
★★★ … 退屈はしないしけっこう面白い。
★★★★ … 面白い。佳作/秀作。エクセレント。
★★★★★ … 天晴れ。傑作。ブリリアント。
■『ダブル ―犬も歩けば棒に当たる―』『ダブル ―花より団子―』『ダブル ―論より証拠―』 (『ダブル1〜3』)
ISBN: 4344808371/434480998X/434480998X 単行本 谷崎泉(挿絵:小路龍流) 幻冬舎コミックス 2007/05 ¥898
清楚な面立ちの鴻上と精悍な容貌の村上は、高校の時に恋人同士として付き合っていたが、気まずい別れ方をしていた。あれから会わないまま、十年以上の月日が経った今、二人は刑事として再び巡り会う。未だに村上は鴻上を想っていたが彼にさけられ続け、一方の鴻上も過去への罪悪感からか、自分に素直になれないでいた。そんな折、ある爆破事件を解決する為、急遽村上と鴻上はチームを組むことになる。お互いに相手を意識しながら事件解決を目指すが…。

JUNEっぽいものを目指して撃沈した、もしくは、レーベルと挿絵イメージに助走から着地まで引き摺られ転んでしまったという印象の(申し訳ないが、そうとしかいえない)失敗作『エスケープ』から3年。多少似た設定を残しつつも、ストーリーやキャラを新たに、谷崎泉が満を持してリベンジ作に挑んだ(と私が勝手に思っている)、謎解きミステリーというより捜査に重点を置いてラブを絡めた、キャリア(年上)×刑事(年下)モノ。

まずキャラ設定に驚く。攻(村上)は大型ワンコ、受(鴻上)はそれに合わせて年上クールビューティのツンデレだ。谷崎泉でワンコ×ツンデレ――なんだかずいぶん売れ線なカップル設定にしたような感じだが、なにを書いても谷崎泉とゆーか、相変わらず受がワケあり状態で、やっぱり過去は多く語られない。そのため村上は一苦労に二苦労重ね、またもや苦戦を強いられる攻キャラである。

独特の神視点(ダブル視点三人称とでもゆーか)谷崎節が復活、主要キャラもそれぞれに動いてくれるため、『エスケープ』よりサクサクと読めるんだが――今度は登場人物が多すぎてMY脳内にて捌ききれず、「あれ?コイツ誰だったっけ?」となってしまうことしばしば。捜査モノなので、刑事だの容疑者だのとキャラが多くなるのは仕方がないとはいえ、ラブも絡んでいるし、当て馬らしき黒柳の存在はあるしで、ここはなんとかキャラを把握しておきたい…ギブミー相関図っ!と思っていたら、なんと2〜3巻に付いてきた<相関図(でも足りなかった…ガーン!)。本作に限らず、谷崎作品は通りすがりの人にすら名前があるものと覚悟したほうがいい。

!以下、ネタバレ注意報!

1巻は爆弾事件、2〜3巻は汚職絡みの麻薬捜査――捜査の進行とともに村上と鴻上のラブ再燃、鴻上の過去に千葉研修の謎などが明らかになっていく。BL系の刑事モノとして、充分読ませる作品に仕上がっている。がしかし、黒柳と鴻上の関係や、高校卒業時に爆発したという村上の思いなどが端折られ、またしても「だーかーら!みんな、そこを読みたいんだってば!>谷崎センセ」という消化不良を起こしてしまった。残念というより無念である。

残念だったのは、好みの作品ではなかったことか。おかしいなあ、年下大型ワンコはキライじゃないはず、キラキラ表紙のアレのときだって「好きだ」と云ってたのに――

↓キラキラ表紙のアレ「兄貴とヤス」(英田サキ)感想
http://diarynote.jp/d/25683/20070701.html
(「エロ不足を実感、修行する」って…英田兄貴!問題はエロじゃなくオチだってば!)

なんでだ?としばし考え、出した結論は――「受がクールビューティだったから」。勝気だったりどーしよーもないバカだったりする方が、私にはヒットする模様。また、谷崎作品にしては珍しい甲斐甲斐しい年下ワンコくん攻も、BLではよく見かけるタイプだったせいか、逆に凡庸な印象を(私に)与えてしまったらしく、村上の優しさにイラついてしまった。作品が問題というより、すべて私のツボを外してしまったということだろう。本編より、書き下ろしとして巻末についてきた番外編「磯の鮑の片想い編1〜3」(高校時代の村上と鴻上の話)のほうが面白く感じたあたり、私の差し出す「論より証拠」だな…ごめんちゃい!>谷崎センセ

評価:★★★(挿絵も好みじゃなかった…)
当て馬な活躍をすると思ってた黒柳には、まったく以って肩透かしを食らわされたよ!ったくっ!…っつーことはなんだ、当て馬まで好みから外れたということか!?(ガーン!)

今回初めてリンクスロマンス(幻冬舎)に手を出した。これはリンクスに限ったことではないのだけど、やはりSHYノベルス(大洋図書)好きには重く、ホールドがシンドイ(内容ではなく本自体に重さがあるという意)。みんなSHYのサイズや装丁を見習おうよ…。

絵師の小路龍流さんもなあ…ゴメンなさい、個人的にはニガテなタイプ。最初表紙を見たとき、村上がヤクザかと思ってしまった。BL評価は、好みやツボに思いっきり左右されてしまうもんなんだなと、しみじみ実感。

ZERO STARS … 論外/問題外作
★ … お好きな人はどうぞ。
★★ … つまんない。
★★★ … 退屈はしないしけっこう面白い。
★★★★ … 面白い。佳作/秀作。エクセレント。
★★★★★ … 天晴れ。傑作。ブリリアント。
■「エスケープ」
ISBN:4415088511 文庫 谷崎泉(挿絵:如月七生) 光風社出版 2003/04 ¥500
12年前兄が殺された事件に蟠りを残したまま関係し、一度は別れた榎本と兄の友人国枝。今また刑事として、いわくつき部署11係(通称バラ)で再会した二人の前で、過去を彷彿させる連続バラバラ事件が発生!再会しても自分を拒まない彼の本心を測りかね榎本の迷いは深まり…。すれ違う二人の想いは…。

光風社クリスタル文庫といえば、『魚住くん』シリーズ(榎田尤利)・『DESPERADO』シリーズ(柏枝真郷)・『間の楔』(吉原理恵子)といった、今はなきJUNEの名作かつ代表するシリーズに、『ドクター×ボクサー』シリーズ(剛しいら…しまった!これもJUNE掲載作品だった…)など、アクの強い作品ラインナップを抱えた、濃い目の個性がキラリと渋く光る(光ってるの!)レーベルである。でも本文フォントは妙に丸っこくてポップ。レーベルイメージに合ってないと思う。

なので、そんなレーベルに谷崎泉作品があるとは思わなかったよーっ!でも絶版で手に入らないよーっ!どうしよー!?…と困っていたら、N駅前にある某古本屋チェーン店の棚に陳列されているのを発見。即日捕獲。以下感想。

!以下、ネタバレ注意報!

――苦しい、重い、つらい。
ストーリーの内容やプロット(構想・筋立て)ではなく、展開が。サクサクと読ませるあの谷崎泉が、もがいて苦しんでいる。レーベルのイメージ(たぶんこの場合「DESPERADO」)と、絵師・如月七生さんの挿絵に、引きずられているかのよう。書き手の迷いが伝わってくるため、読み手も同調してつらくなる。

作品のカテゴリとしてはミステリー系BL(刑事モノ)になると思うのだが、ミステリーとBL、正直どっちつかずの印象。主要キャラによる捜査に面白みがないし、唐突に犯人像が浮かび上がり、よくわからないうちに事件が解決しているため、ミステリーとしてはどうにも消化不良。BLとしてみても、ラブよりも部署11係(通称バラ)の人間関係に描写が割かれた上に、ラブシーンは数行、ストイックを通り越したキャラは虚無僧のようで味気ない。榎本と国枝が「焼けぼっくいに火」となっかなかならない理由――どんな過去がふたりに影響を与えているのか――この作品でも後半にならないとわからないため、カメより遅いラブ進展に、焦らされるどころかまたもやイラつく。そして過去が語られても、国枝がなぜそこまでこだわっているのか、イマイチわからなかった。

それでも「つまらない」と切り捨てられないのは、これもまた雰囲気が悪くない作品だからで、たとえば榎本が国枝に対しもう少しドラマティックに動いてくれたり(20代で若いんだから)、過去や秘密を持ち越し過ぎないで、早めにふたりの事情がわかって、さらに国枝が素直になっていたら、BLとして共感を得たかもしれない。

ミステリー調な作品は初めてだったのか、素材はいいんだけども、まな板の上でどう切ったらいいのかわからない――素材だけで勝負し、失敗したという印象の1本。雰囲気は悪くないだけに…ああ!もう!本当に惜しいったら!

評価:★★☆(惜しい作品を「つまらない」と切り捨てられない)
センセにも失敗したという自覚はあると思う。この失敗が経験のひとつになり、また勉強となって次に繋がるはずで――リベンジだ、リベンジ!

カバーデザインについて少し。クリスタル文庫さん、あのね――如月七生さんによる濃厚なブラウン調の絵に、カジュアルな丸ゴシック風フォントでネイビーのタイトル文字って、なんじゃそりゃ!?…雰囲気ブチ壊しだってば!バカもんっ!…ここはやはりイタリックがかった明朝体を選択するのがベストじゃないのかっ!?

ZERO STARS … 論外/問題外作
★ … お好きな人はどうぞ。
★★ … つまんない。
★★★ … 退屈はしないしけっこう面白い。
★★★★ … 面白い。佳作/秀作。エクセレント。
★★★★★ … 天晴れ。傑作。ブリリアント。
■『地上に堕ちる間に』
ISBN:4773002972 単行本 谷崎泉(挿絵:北畠あけ乃) 笠倉出版社 2005/06 ¥900
寄り添うように育ち、岳雪が何よりも大切にしてきた幼馴染み・諒。幼い頃のまま盲目的な信頼を寄せてくる諒への気持ちを持て余し、重荷に感じた後ろめたさから、諒と離れようとする岳雪。諒は全てだった岳雪を突然失う絶望に傷付きながら、笑って送りだそうとする。すれ違いながらも、お互いへの離れがたさが恋だったことに気付くふたりだったが…。たったひとつの恋が成就する、ピュア・ラブストーリー。

現在、購入可能な谷崎泉作品の中で、もっともリリカルな文体で以って、もっともセンシティブなストーリーが綴られている1本。

本当に冬が好きなんだろうな。キャラに冬がらみの名前をつけることが多い谷崎センセだけども、作品まるごと冬や雪をイメージさせているあたり、あとがきを読まなくたって本作が特別なポジションにある作品だとわかる。

★B’zのミニアルバム「FRIENDS II」を聴きながら読むことをオススメします。

!以下、ネタバレ注意報!

ある秘密と事情から、岳雪は小さい頃から諒の傍にいた。恋人ではないけれど特別な関係だ。諒にとって岳雪は「神様」、彼を愛しているのだが、その気持ちを抱えるだけで伝えてはいない。大人になって、ふたりはそれぞれ仕事を持ち、自立しているものの、諒は精神的に岳雪を頼っている(が、そんな素振りを本人は見せようとしない。でもバレバレ)。岳雪は昔のように諒を重荷にはしていないようだが、実際どう思っているのかわからない(重荷にしていた頃の話がもっと欲しかった)。そこにフランス人デザイナーのクリストフが諒に接近してきて、ふたりの関係に変化が…という設定。

小さい頃から思い続けたたったひとつの恋、後にも先にも諒には岳雪だけ――ピュアな初恋が大人になって成就するのは感動的、実際にはありえないだろう恋に、ピュアな心が磨耗している私なんかはやっぱり憧れてしまうんだけれども、ドラマティックに盛り上がらないまま時間が流れていき、次から次へとシーンが移り変わっていくのがとにかくつらい。諒の心情描写は丁寧だが、岳彦が諒をどう思っているのかよくわからない。クリストフでいいじゃんか、とまで思ってしまう。諒が抱える「ある秘密と事情」(とても悲しい)がなかなか語られないため、焦らされてヤキモキというのを通り越して、イライラする。

最後にふたりの思いが通じ合うシーンは感動的なはずなのに、モタついたぶんスッキリせず、なんだか「冬」「雪」というイメージとシチュエーションに、ストーリーが流されていったように思えた。残念。

雰囲気が素晴らしい。決してつまらなくはない。
とにかくもったいない…そんな作品。

評価:★★★(もっとドラマティックだったらなあ)
当て馬がガイジンでフランス男っつーのは、やっぱ腐女子ドリーム?…「いつまでも待つ」だなんて、当て馬の定番セリフとはいえ、云わせた諒も罪な男だなあ。クリストフもせっかくフランス男なんだから、そんなあみんなこと云わず…って、近くのあみんより遠くの神様、登場したときからクリストフの負けは決定的だったか。諒に会うたびに花を贈ってたなんて、女扱いしたあたりマズかったような気も…。

本作の表紙を見て「うおお!北畠あけ乃さんだ!センシティブ系の!」と、ちょっとだけ驚いた。谷崎センセとは(たぶん)初コラボ。大物/売れっ子絵師さんが、谷崎作品に絵をつけている印象があまりない(陸裕さん除く)ので、売れっ子絵師である北畠さんの抜擢が嬉しかったし、実際ピッタリだと思った。クロスノベルスはセンシティブ系作品が多いレーベルのように(私は)思えるので、谷崎センセもレーベルに合わせて作品をチョイスしたような感じがする。う〜む。

諒と岳雪の故郷・金沢は、たしかに雪が降るし、雪国といっていい都市のひとつだと思う。でも新潟や長野より降らないし積もらない。本格的に降り出して「うえ〜ん、雪かき…」となるのは、1月中旬以降。12月はさほど降らない(から、そんな時期にドカ雪降った2005年、みんな油断して慌てた)。やっぱ雪化粧の兼六園イメージが強いんだろうな。市民は雪が降る前に湿気との闘いだ!…加湿器なんてとんでもない、除湿機フル稼働!

こんな現実的なツッコミしているなんて、やっぱピュアな心が磨耗しきって崩壊してるね…>私

ZERO STARS … 論外/問題外作
★ … お好きな人はどうぞ。
★★ … つまんない。
★★★ … 退屈はしないしけっこう面白い。
★★★★ … 面白い。佳作/秀作。エクセレント。
★★★★★ … 天晴れ。傑作。ブリリアント。
■『AND, (I can make your HAPPINESS)』
I can make your HAPPINESS SPECIAL BOOK 2007
IZUMI TANIZAKI

最終巻を読了したとき、余韻を残す終わり方について、「泣いたって笑ったってLife goes on(byイナバ)」「最後に打たれたのはピリオドではなくカンマ」という感じでとても良かったよと、いつもの居酒屋で目を細めながらオッシーに語ったらば。

オッシー:「あの〜…感慨深げなところ、申し訳ないですけど…私家版で出てますよ、続き。しかも最終巻発売後に出た本が何冊かあって、そのうち2タイトルが『Life goes on』『AND,』。偶然って怖いですね」

………。
谷崎センセと時差テレパシー?

それとも星座のエレメントが風とか?…違います。やぎ座だそうです。
血液型がAB型とか?…違います。B型だそうです。

というわけで、楽天に出店している某書店にて『AND,』(と『16』)を楽天ポイント使用して購入。この手の本を通販したのは、「誓ったはずだぜ!キャプテン2」」以来、遠い目になりながら、以下感想。

■「秘密の花園」
「本田、殿の実家へ行く」編。本編後半の展開がマジメだったせいで、私すっかり忘れてたよ!「しあわせにできる」=「本田モテモテ騒動記」だってことを。とゆーわけで、「殿のご母堂の誕生日お祝いパーティ参加のためにベルサイユで江戸城な実家へ赴いた本田、久遠寺家全員(昴不在)+徳永黄門様にモテて困っちゃう〜♪」の巻、である。あと特記すべきは…そうだな、各務の婚約か。本田がショックを受けるのもわかる、あの各務が本田差し置いて(ってヘンだけど)人生のひとつの節目、結婚をするっつーんだもの。めでたいけど心中フクザツだ。

そして、本編でも語られていたように、薔薇の栽培と交配が趣味という殿のご尊父・巌さん。文庫収録の番外編では徳永黄門様視点だったせいか、ずいぶんとキツめの性格をお持ちだと思ったのに、今回は意外と丸く感じた。年齢のせい?本田のせい?息子三人ホモ遺伝子をちらつかせてるせい?…ま、「果実を見れば木がわかる」というわけで、巌さんも本田ダイスキーと判明、ぜひとも「雪彦」という薔薇を(殿にナイショで)作って欲しい。ところで巌さん。さすがにご自身の名前「巌」という薔薇なんて作ってないでしょうね?

■「哀愁のハワイ航路」
「森田家出、ハワイ逃亡記」編。徳永家の秘書で、独身貴族「結婚できない男」森田さん。とうとう結婚包囲網に疲れてしまい、仕事を投げ出してハワイへ逃亡、というお話。うん、まあ、あんな 悪代官 社長の傍にいたら、どうやったって風車の矢七は結婚できないよね。結婚しても「仕事と私、どっちが大切なの!?」とかなんとか奥さんに云われそうだー。で、その森田さん。今回初めてお名前が祐一さんであると知りましたよー。そっかそっか。祐一さんだったのか。…個人的には徳永家の長女・深雪ちゃんといい仲になって欲しいと思うけど、20歳以上年離れてるからなあ。え?結城さん?結城さんなんですか??…殿だけでなく、映にまで振り回されるんですよ?いいんですか??

評価:私家版なので評価対象外
『しあわせにできる4』の感想(http://diarynote.jp/d/25683/20070919.html)で、「もしかして本田のいない隙に、殿のお世話係でハウスキーピング担当者が、こっそり本田の部屋に潤滑剤を持ち込んで補充してるんじゃないのか?」と書いたら、マジいたよ!殿のお世話係「赤塚くん」という担当者が!(「秘密の花園」で登場)…彼は白金の本田・久遠寺邸に出入りを許可され(本田了承済)、ふたりの不在中に掃除や洗濯などをしているらしいが、三田独身寮時代もこっそり出入りしていたとみた(だって、殿がタンスに自分の衣類を入れたりなんて想像できなーい!)。そっかそっか、キミだったのかー。いや〜、毎回すまないね、ホントお疲れ様。本田と殿に代わり、そしてファンを代表してキミに感謝だ!…殿に補充を頼まれなくたって、たぶんもう減り具合で「今日は1本にしておこう」といった判断をしていると思うが、殿はああ見えて意外とロマンチストだ。イベントやアニバーサリーのあとは必ず補充…いや、掃除をしにきてくれ!
■『しあわせにできる 12』
ISBN:4576070606 文庫 谷崎泉(挿絵:陸裕千景子) 二見書房 2007/04 ¥560
本田の仲介によってかつての共同経営者・藪内と和解した久遠寺は、余命いくばくもない彼から会社を引き継ぐべく日芳退社を決意する。一緒に新しい会社で働こうという久遠寺の言葉に、本田の心は揺れる。想いが徐々に身の内から溢れ、言葉や態度に表れてゆくことへのおそれ、職場が離れすれ違いが増えていくことへの不安…。一方、久遠寺の退社を知った3課の面々は情報収集に躍起。東郷の意外な行き先も決まり、プロジェクト2課と合同の送別会へと話題は流れていく。少しずつ、それぞれの道が分かれていく仲間たち。久遠寺と本田もまた、二人で歩む人生を誓い合う──。書き下ろしは本田の早とちりも微笑ましい送別会幹事奮闘記。シリーズ最終巻!

「それぞれの人生、わかれても道は続く編」(「しあわせ23」「しあわせ24」)と、文庫用書下ろし番外編「結城さんっ!がんばれ、各務に負けるな! 〜ビバ!送別会幹事対決〜 」(←そんなタイトルではありません!「しあわせ三角また来て四角」)収録。

!以下、ネタバレ注意報!

企業で働いている以上、いつまでも同じメンツで一緒に仕事できるわけもなく、殿は日芳退社→ロングランナー専務就任(予定)、新人・東郷は殿の後任として建材3課からプロジェクト2課へ異動、そして複雑な思いに駆られつつも日芳に残ることを決めた本田…と、それぞれがそれぞれの道へ歩み出す――最終巻である。

多忙で激務に追われる毎日に耐えられたのは、単に責任感からという理由だけでなく、たとえば一緒に働いている仲間と、なんだかんだ云いながらも楽しく仕事ができていたからとか、意思疎通が容易で「コイツとならレベルの高いことができる、こういうヤツはほかにいない」というパートナーがいて、互いに切磋琢磨できていたからだとか、問題のあった新人が成長、使えるようになっていくさまを見ているのがちょっと嬉しかったりとか、そういう充実した人間関係や恵まれた環境に、わが身が置かれていたからなんじゃないかと、ふと思うことがある。

たいがいあとになってからそう気付くもので、何年か経ち、当時一緒に働いていた仲間と近況報告のついでに、つらかったことですら「そうそう、そんなことあったよねー」と、笑い話に変えて思い出語りしてしまったりする。きっと本田を含めた3課の人間にとって、殿はそういう「思い出語り」で駆り出される人になるんだろうなあ、殿ってキョーレツだったもんなあ…と、落合さんの涙のシーンを読んでいて、(相変わらず)腐女子最末席組の私は(BLなのに!)ラブそっちのけで、しんみりそんなことを思ってしまった。別に悲しい話ではないのに。

11巻の最後で殿は本田に「一緒に働こう」と誘い、12巻はそのことで本田が揺れる。日芳でまだやりたい(やり遂げてないという意識があるんだと思う)という思い。殿と一緒に働くことの楽しさ・面白さを知っていて、なおかつ、環境が変わる彼を支える意味でも、ロングランナーへ行ったほうがいいのだろうかという思い――まさに狭間。人生の岐路だから、考えるよね…。

でもまあ、日芳で殿と一緒にあのまま働いていたら、たしかに殿と本田の関係がバレてたかも。「お互い独身で何年も一緒に住んでるんだって、あのふたり!…本田さんったら『いつもアイツがみなさんに迷惑かけてすみません』なんて、云ってたわよ〜、あっやしいったら!」。絶対いるぞ、そんな女子社員!(わははは!)

熟考した本田、日芳を去る殿、送別会を開く建材3課(&プロジェクト2課)。ほかに劇的な大事件が起こることもなく(結城さん除く)、場面は流れ、物語はしっとりとフィナーレをむかえる。だが、ラストで打たれるのは「これで終わり」というピリオドではなく、「ここでちょっと区切らせてね」というカンマ。本田と殿のストーリーは、新たな章をむかえ、そして続いていく。山あり谷あり(映あり昴あり)、泣いたって笑ったってLife goes on(byイナバ)――「できちゃった♪ふたりの内面が、しみじみと描かれていいねえ…彼らの人生はこれからどうなるのかなあ…」なんてそこまで思ったBLは、依田沙江美の『真夜中を駆けぬける1・2』以来だ(…って、『真夜中〜』もシャレードやんか!)。

この私が12巻を一気読み。
面白かったです、ありがとう!>谷崎センセ&陸裕センセ

12巻のカラー口絵、最終巻らしくっていいなあ。
しみじみといいね、うん。

評価:★★★★☆(しみじみと感じ入ってしまった。半星は結城さんに)
シリーズ評価:★★★★★(後半の展開が特に好きです)
←でリンクしている夜霧のネオンサインさんが、「BLというのは100人の腐女子がいれば100通りのはまる理由があり1000通りの萌えツボがある」と書かれておられていて、ドキっとしちゃった。このシリーズでは私、人と思いっきり違う萌え方をしてしまったかもしれない。頭の中が思い出走馬灯状態だったもの。だからBLの感想になってない(すみません…)。

で、めでたく終了した「しあわせにできる」。本編読んでいる間、個人的にず〜っと気になってたのが殿のアシスタント結城さん(女性)。あんな仕事の鬼のアシスタントなんて、ものすご〜く大変だったはず。ちょこちょこっと名前が出てくる程度、「クールで事務的、イマイチ協調性がない」だなんて書かれてたけど、いったいどんな人かしら?一度ちゃんと本編中に出てきてくれないかな?と思ってたら、最後の番外編で大フィーチャー(陸裕さんの挿絵付き!)、お花男・各務くんと爆笑対決だ!わはは!…いや〜結城さん、アナタの気持ちわかる!…でも相手が悪かったね〜!わはははは!

ZERO STARS … 論外/問題外作
★ … お好きな人はどうぞ。
★★ … つまんない。
★★★ … 退屈はしないしけっこう面白い。
★★★★ … 面白い。佳作/秀作。エクセレント。
★★★★★ … 天晴れ。傑作。ブリリアント。

■表紙キャラは、左「本田雪彦」(主人公)と右「久遠寺皇」(殿。本田の恋人でダンナ)

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